玄齋詩歌日誌

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老子

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宮崎県の高千穂峡(たかちほきょう)
Photo by (c) Tomo.Yun
http://www.yunphoto.net
 
 
『老子』の第六章の翻訳の後半です。
合計で 5,000 文字を超えていますので、
記事を前半と後半の二つに分けています。
 
この後半は現代語訳(意訳)と、補足をした部分です。
 
前半は原文と書き下し文と、個々の文章への解説の部分です。
 
 前半の記事
 
 
コメント欄は、この後半の記事の方にのみ設けています。
 
この点についてご了承願います。宜しくお願いいたします。
 
 
 
●現代語訳:
 
 
『道』、つまりあらゆる物事を生み出す自然の道理は、
谷のくぼんだ部分に山の雨水が集まってくるように、
 
あらゆる物事を生み出し、受け入れていくような不思議な作用があり、
『谷の不思議な作用』、つまり『谷神(こくしん)』という名前でたとえられて、
 
それは谷の水を汲み尽くそうとしても汲み尽くせないような
谷川の水のように、究め尽くそうとしても、その行き着く先に
たどり着かないものなのです。
これをたとえて『死せず』と言っているのです。
 
 
これをさらに名づけて、『玄牝(げんぴん)』と言っています。
それは、『玄(げん)』、あらゆる道の源となる、
『牝(ひん)』すべてを受け入れ、生み出すという女性のような作用、
つまり、『あらゆる道を生み出す不思議な女性のような作用』を
意味しているのです。
 
 
その、すべてを受け入れ、生み出すという女性のような作用を持つ
道の源である『玄牝(げんぴん)』は、万物が生み出される
天地の『根源(こんげん)』、つまり、天地を生み出すもとである
と言われています。
 
この『天地を生み出すもと』とされている道は、
永遠に存在し続けるようなものであり、
これを使っても使いつくすことはなく、
究めても究めつくすことのできない、そういう性質のものなのです。
 
 
 
●補足:
 
 
この第六章の意味を考える上で引用されている
『論語』の一節を引きます。
 
『論語』の「述而(じゅつじ)第七」の篇の一節です。
 
 
(論語の原文)
 
子曰:「述而不作,信而好古,竊比於我老彭。」
 
 
(論語の書き下し文)
 
子の曰わく、
 
「述べて作らず、信じて古(いにしえ)を好むは、
 竊(ひそか)に我を老彭(ろうほう)に比(ひ)す。」
 
 
(論語の現代語訳)
 
孔子はこう言いました。
 
「昔のことを述べ伝えるだけで新しく文章を制作することはせず、
 昔の徳と知恵に優れた聖人(せいじん)の言葉を信じて
 その聖人の文章を好むという姿勢を取っているのは、
 
 殷の時代の賢人で、八百年ほど生きたという彭祖(ほうそ)の、
 昔の聖人の言葉を信じてそれを伝えることだけに力を注いだ
 その姿勢を尊重しているからこそなのです。」
 
と。
 
 
(ここまでが論語の現代語訳です)
 
 
老彭(ろうほう)を老子(ろうし)だと書いてしまっている人がいますが、
きちんと註釈を読めば殷(いん)の時代の賢人の彭祖(ほうそ)を
指すことがわかります。
 
 
「昔のことを述べ伝えるだけで新しく文章を制作しない」というのは、
昔の儒学者の基本的な態度なのです。
 
だから後世の文章や詩を解釈するのは、とても長い文章であっても
新しい時代になればなるほどわかりやすいのです。
 
常に基本が昔の文章によるものなのですから、
昔の文章を理解していれば、そこから後世の詩文を理解するのは
わりあいにすぐにできるのです。
 
常に昔の文章を元に、新しい説明が加わるだけなのです。
それを頭に入れて、基本的な漢文に慣れ親しんでいれば、
後世のものは把握するのは容易だということです。
 
 
昔の言葉というのはまさに『玄牝(げんぴん)』、
「すべてを受け入れ、生み出す道のもと」となっているのです。
 
漢文を理解する上では基本的なテキスト、
『論語』などの儒学の書物の四書五経(ししょごきょう)
『老子』、『荘子』、『韓非子(かんぴし)』、『孫子』、
 
これらの内容を理解していけば、いろんな漢文もきちんと理解できる、
ということが言えると思います。
 
 
この『老子』の翻訳をするときも、常にこれらの文章を参照しています。
これからも確認を怠らずに、翻訳作業をしていこうと思います。
 

閉じる コメント(23)

清水太郎さん、コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
この第六章は今日の午後に一気に書き上げました。
これからもきちんとがんばっていきます。

2012/2/19(日) 午前 7:47 白川 玄齋

ひろちんさん、コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。

基本的に道教では宗教的な解釈をしていたと思いますが、
森三樹三郎 著の『老荘と仏教』を読むと、社会階層によって
とらえ方がかなり異なると思います。

科挙を受けて官僚や学者となった人たちは、平日は儒学でも、
家に帰ったあとは老荘の書物に親しむ、そういうつきあい方であった反面、
民衆と皇帝自身は仏教も道教も神秘的な信仰としてとらえていた、
そういう違いがあるようです。

なぜ「皇帝自身」が民衆に近いかというと、後宮に入った女性は
一般民衆のでであることが多いために、その女性の信仰を
そのまま受け入れてしまうことがあったようです。

こういう所で皇帝と官僚の間に隙間ができて、そこを宦官に
つけねらわれるということがあったように思います。

(その2へ続く)

2012/2/19(日) 午前 7:52 白川 玄齋

(その2)

こう考えていきますと、学者や官僚が考える『老子』の解釈は、
どちらかというと儒学に引っ張られて考えている部分があって、
その人たちの解釈によれば、あまり神秘的にとらえることが
少なかったのではないかと思います。

こういう所をしっかりととらえながら、
これからも訳していこうと思います。

2012/2/19(日) 午前 7:53 白川 玄齋

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奥が 深いけれど、今のわたしの 気持ちに そうような 内容です。
玄さんの 説明が いつも ついているので、敬遠しがちなものも 安心して 入っていけますね。
感謝!!

2012/2/20(月) 午後 6:11 [ 遊夢 ]

歩歩さん、コメントありがとうございます。
いろんな人がきちんと読めるように、わかりやすい現代語訳と
解説を常に付けるように心掛けていきます。
これからもしっかりと訳していきます。

2012/2/20(月) 午後 6:18 白川 玄齋

こんばんは✿
頑張ってらっしゃいますねっ
玄さん♪

現代語訳を読ませていただくと
とてもわかりやすいです*^-^*
傑作ポチッ✿ฺ *・。.♦♫♦♫.。・*゜*・。.♦♫♦♫.。・*゜*・。✿ฺ

2012/2/20(月) 午後 8:43 ゆーみん♪

ゆーみんさん、コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
いつも助けてもらって感謝しています。嬉しいです。
あなたを含めて多くの方に読んでいただけるように、
これからもわかりやすく訳していきます。
これからもきちんと学んでいきます。

2012/2/20(月) 午後 9:44 白川 玄齋

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『この六章も、天地に満ちる「道」、つまり自然の道理の性質を述べたものです。』
『これは道というものがどのような特徴を持っているか、というたとえなのです。』


玄齋さんの論説が分かりのは、文章のつながりを常に念頭において解説しておられるからでしょう(^^)v ポチ☆ポチ☆ポチ☆

「この一章をとても神秘的で宗教的に解釈する本が多い」と指摘した上で、さらりと「谷」「牝」を使った一種の比喩(ひゆ)ですとかわす(?)ところが楽しいです(^^)。

2012/2/20(月) 午後 9:46 [ 56rinyahoo ]

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『四文字句による詩は「一句一解(いっくいっかい)」、つまり、その四文字の一句で独立した文章になっているからなのです』

『一つの文章を構成する文字数が多いほど意味が確定的になって、行間をどう埋めるかの配慮も少なくてすむので訳しやすいのです。』



今回は、漢文をどうのように読みとるべきかを丁寧に教えていただく箇所が印象的です。

2012/2/20(月) 午後 9:52 [ 56rinyahoo ]

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『常に基本が昔の文章によるものなのですから、昔の文章を理解していれば、そこから後世の詩文を理解するのはわりあいにすぐにできるのです。』


後世の人の詩文には、常に古人の文章を引用しているようですね。古人の文章が故事や格言として尊重されていたのかなと想像しました(^^ゞ

2012/2/20(月) 午後 10:03 [ 56rinyahoo ]

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≪漢文を理解する上では基本的なテキスト、『論語』などの儒学の書物の四書五経(ししょごきょう)『老子』、『荘子』、『韓非子(かんぴし)』、『孫子』、これらの内容を理解していけば、いろんな漢文もきちんと理解できる、ということが言えると思います。≫


古典の勉強が何故必要かを教えていただき、ありがとうございます。
『論語』などの儒学の書物の四書五経、『老子』、『荘子』、『韓非子』、『孫子』等、原文にも注意して読むことにします(^^)。

2012/2/20(月) 午後 10:10 [ 56rinyahoo ]

普通の人にはなかなか出来ない事をやり遂げていらっしゃる貴方さまは凄いと思います。
全ての歌や詩も昔から伝わった物を基にしてつくられるのでしょうね。
唯最近と若い人は大切な日本語さい満足に使わず独自の言葉で話し、それが広まると言葉になると云われますが、漢文など学んで居られる貴方様の目からは如何に思われますか?・・・・ぼち☆〜〜〜

2012/2/21(火) 午前 6:06 [ - ]

56rinyahoo さん、コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
いつも丁寧なコメントを頂いて、とても嬉しいです。

最初の方でこの章が全体としてどのようなことを述べているかを
言うことで、全体の見通しが良くなるのではと思いました。
章の文章が二つ三つに分かれていたとしても、
全体をどのようにつなげるかを考えて、訳すように気をつけています。

「谷神」と「玄牝」を、女性を象徴する神秘的 or 宗教的なシンボルとして
見ている訳が邦訳としても一般的ですが、あえて僕がそれを
繰り返す必要はないと、いろんな学者の註釈を見ながら思いました。
僕は今回は「喩(たと)え」としてとらえている註釈を中心に見ていました。

(その2へ続く)

2012/2/21(火) 午前 9:45 白川 玄齋

(その2)

>> 四文字句による詩は「一句一解(いっくいっかい)」、
>> つまり、その四文字の一句で独立した文章になっているからなのです

前回訳した嵇康(けいこう)の四字句の詩の「憂憤詩(ゆうふんし)」が
なぜ訳しにくいかというのが、この上記の理由です。
これは弘法大師(空海)の著した詩論の
『文筆眼心抄(ぶんぴつがんしんしょう)』により分かったことです。
これもまた近々少しずつ訳していこうと思います。

『韓非子』などは一つ一つがとても長い文章ですが、
論理が整然としていて、とても読みやすいです。
短い文章の方が、かえって訳すのに時間がかかります。

(その3へ続く)

2012/2/21(火) 午前 9:45 白川 玄齋

(その3)

今回、補足で引用した『論語』の一節のように、科挙を突破した官僚たちの
文学に対する態度は「述べて作らず」、昔の言葉の説明はしても創作はしない、
創作といっても新たな説明&補足にとどめているものが多く、
日記に近いものであっても昔の言葉の出てくる話が多いです。

もちろん小説等も作られていたのですが、それはあまり主流なものとしては
当時の社会の中では受け取られていなかったようです。
これに批判を加えていたのが、陽明学の左派の、後に危険思想が元で獄中で死んだ
李卓吾(り たくご)などがいます。儒学の経書を不要とする反面、
水滸伝などの小説の方を高く評価する、そういう考えだったそうです。

(その4へ続く)

2012/2/21(火) 午前 9:46 白川 玄齋

(その4)

日本では科挙もなく、さらに教育科目も江戸時代とは全く異なる現代で、
漢文基礎的なテキストを学ぶ必要性はどこにあるのか、
僕なりに考えていた部分です。

漢文の勉強は
現代語訳 -> 書き下し文 -> 原文
の順番に進めていけばわかりやすいのではないかと個人的には思います。

僕も今後ともきっちりと学んで訳していこうと思います。
いつも丁寧なコメントが嬉しいです。感謝しています。

2012/2/21(火) 午前 9:47 白川 玄齋

みなよさん、コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
最近、 facebook などをしていると、僕がしているようなことをする人は
厳密に言えばごく少ないということがあらためてわかりました。

より昔の文章が頭に入っていれば、それより新しい文章の理解は
容易になる、ということは言えると思います。

(その2へ続く)

2012/2/21(火) 午前 10:07 白川 玄齋

(その2)

最近、中学生の人たちから、「わかりやすいです」とか「面白いです」
というコメントを頂くことが結構良くあります。
案外、漢文などに興味のある若い人は結構いるのだと思います。
その興味の芽をどこかで潰しているのではないかというのが気がかりな所です。

漢文や古典はどのように自分自身に活かしうるか、
という基礎の基礎をきちんと理解し納得させた上で、
その上で道徳とか、大切なことをその人その人それぞれに
学ばせていけばいいのではと思っています。

漢詩も正直に言えばそう簡単でもないですが、
一度はまるといくらでも勉強していって、すぐに作れるようになります。
若い人の持つエネルギーはすごいですから、そのはまる状況に
どう持っていくかが大切だと思っています。

僕もきちんと漢詩と漢文を今後も学んでいこうと思います。

2012/2/21(火) 午前 10:09 白川 玄齋

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こんにちは
『玄(げん)』
という字は、深いものなのですね・・・
勉強になりました。

2012/3/16(金) 午後 2:13 testpilot

テストパイロットさん、コメントありがとうございます。
僕も自分のハンドルネームに「玄」と付けたときには、
深いものだとは思っていましたが、訳していく中でもっと深い
意味があるということが分かってきました。
そのことに第一章を訳したときに気づきました。
以前の記事にコメントを頂けるのもとても嬉しいです。
今日もきちんと学んでいきます。

2012/3/16(金) 午後 2:52 白川 玄齋


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