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●原文:
●詠佳人 玄齋
(下平聲一先韻・五言古詩・一韻到底格)
浮 生 ? 険 難 萬 事 不 能 全
是 因 自 招 禍 無 由 告 皇 天
況 是 輕 薄 子 佳 人 詠 詩 箋
休 言 浮 薄 極 戀 慕 盡 意 宣
●
佳 人 詠 花 事 不 如 解 自 然
沈 痾 禁 外 出 佳 句 習 詩 仙
名 花 喩 傾 國 飛 燕 詠 可 憐
玉 山 見 峯 頂 月 下 逢 嬋 妍
時 結 巫 山 夢 笑 看 君 王 前
欲 畫 汝 美 貌 総 不 如 言 筌
養 心 刪 舊 句 工 夫 盡 吟 箋
終 生 爲 君 詠 莫 知 詩 幾 篇
●書き下し文:
題: 「佳人(かじん)を詠(えい)ず」 浮生(ふせい)は屡々(しばしば)険難(けんなん)にして 万事(ばんじ)全(まっと)うする能(あた)わず
是(これ)は自(みずか)ら禍(わざわい)を招(まね)くに因(よ)り、
皇天(こうてん)に告(つ)ぐるに由(よし)なし
況(いわ)んや是(こ)の軽薄子(けいはくし)
佳人(かじん)を詩箋(しせん)に詠(えい)ぜんとは
言うを休(や)めよ浮薄(ふはく)の極(きわ)まれりと
恋慕(れんぼ) 意(い)を尽(つ)くして宣(の)べん
●
佳人(かじん)を花事(かじ)に詠(えい)ぜんとするには 自然(しぜん)を解(かい)するに如(しかず)かず
沈痾(ちんあ) 外出(がいしゅつ)を禁(きん)ずれば
佳句(かく)は詩仙(しせん)に習わん。
名花(めいか)を傾国(けいこく)に喩(たと)え
飛燕(ひえん)の可憐(かれん)なるを詠ず
玉山(ぎょくざん)の峰頂(ほうちょう)に見て
月下(げっか)の嬋妍(せんけん)たるに逢わん
時に巫山(ふざん)の夢を結び
笑うて看(み)る君王(くんのう)の辺(へん)
汝が美貌(びぼう)を画(えが)かんと欲(ほっ)すれば
総(すべ)ては言筌(げんせん)に如(し)かず
心を養(やしな)いて旧句(きゅうく)を刪(けず)り
工夫(くふう)を吟箋(ぎんせん)に尽くさん
終生(しゅうせい)君が為(ため)に詠ずれば
詩の幾篇(いくへん)なるかを知ること莫(な)し
●現代語訳:
題: 「美しい女性(当時のお相手の方)を漢詩に詠んでおりました」 はかない人生では、何度も困難な状況に陥って、 あらゆる物事をなし遂げることができないことがよくあります。 そうなったのは自分が災いを招いてしまったからなのです。
天に自分の悲運を訴える理由がないのです。 ましてや、この浮わついてあてにならぬ男
(当時の私をデフォルメして描いています)は、
美しい人(当時のお相手の方)を詩を書き付ける紙に 綴るというのですから、
なおさら、ひどい目に遭うことでしょう。
しかしその詩人は、
「軽々しい言葉もきわまったとは言わないでほしいのです。
私の当時の恋い焦がれる気持ちを、すっかり言い尽くして
みたいのです」
と言って、次のように詩を詠んでおりました。
●
美しい女性(当時のお相手の方)を、 この春のお花見の時期に詩に詠むには、
自然のありさまを理解するのが一番なのですが、
私は長い病気で、外に出ることを禁じられていますので、
素晴らしい詩句を、詩仙(しせん)と呼ばれた、
唐の詩人の李白(りはく)に習うことにします。
李白(りはく)は皇帝の玄宗(げんそう)と妃の楊貴妃(ようきひ)が
宮中の離れにある沈香亭(じんこうてい)という休憩のための小屋で、
牡丹の花を眺めていたときに、玄宗に命じられて作った
三首の漢詩の『清平調詞(せいへいちょうし)』の中で、
人々にもてはやされる美しい牡丹の花を、
その美しさで国を傾けるという美女のたとえに使って、
昔の前漢の成帝(せいてい)の皇后であった
趙飛燕(ちょうひえん)の美しくてかわいらしい
様子に楊貴妃をたとえて詩に詠んでいました。
そういうなまめかしく美しい女性は、仙女の西王母(せいおうぼ)が
住む山の群玉山(ぐんぎょくざん)の山のてっぺんや、 月の光の下で、逢うことができると詠んでおりました。 あるいは戦国時代の南方にあった楚(そ)の国の襄王(じょうおう)が
夢の中で巫山(ふざん)という山で契りを交わし女神にたとえていたり、
笑顔で天子(てんし: 皇帝の玄宗のことです)が
眺めている美女、そんな風にも詠んでいたのです。
美しいあなた(当時のお相手の方)の顔を描こうとすれば、
これらは全てあなたの美しさを描く手段に他ならないのです。それは、
魚を捕まえるワナはどんなにきれいでも魚を捕まえられなければ
役に立たないように、言葉もあなたへの想いを伝えられなければ、
どんなに素敵な言葉でも意味がないのです。
ですから、私は人が本来持っている立派な心を
さらに立派に育てていきながら、
以前に作った詩句の無駄なところを削って、詩を作っているのです。
そういう手だてを講じて、それを詩を書き付ける紙の中に
出し尽くそうと思います。
こうして一生の間、あなたのために詩を詠んでいけば、
どれほどの詩の数になるのかを知ることができないほど、
一杯になることでしょう。
(そんな当時の気持ちを漢詩に詠んでおりました。)
●語注:
※佳人(かじん): 美しい女性(当時のお相手の方)のことです。
※浮生(ふせい): 定まることのない、はかない人生のことです。
※険難(けんなん): 困難で苦しい人生の局面のことです。
※皇天(こうてん): 天、または天の神のことです。
※況(いわんや〜をや): 「まして〜はなおさらである」という意味です。
※軽薄子(けいはくし): 浮ついてあてにならない人のことです。
当時の私自身をデフォルメして詠んでいました。
※詩箋(しせん): 詩を書き付けるための紙のことです。
「吟箋(ぎんせん)」も同様です。
※浮薄(ふはく): 言動が軽々しくてしっかりしていないことです。
※恋慕(れんぼ): 恋い焦がれることです。
※尽意(じんい、いをつくす): 想いをすっかり言い尽くすことです。
※花事(かじ): 春のお花見のことです。
※沈痾(ちんあ): 長い間かかっている病気のことです。
※佳句(かく): 良い詩句のことです。
※詩仙(しせん): 唐の詩人の李白(りはく)のことです。
※名花(めいか): 人にもてはやされる美しい花のことです。
※傾国(けいこく): 国を傾けるほどの美女、という意味です。
これは前漢の歌い手であった李延年(りえんねん)の『歌』の中で、
「一度振り返ると、一つの城の城主が その美女のとりこになってその城を傾け、 もう一度振り返ると、その国の君主が その美女のとりこになってその国を傾ける」 と詠んでいたのが由来となっています。 ※飛燕(ひえん):趙飛燕(ちょうひえん)のことです。
前漢の成帝(せいてい)の皇后で、舞がうまく、燕のように舞うことから
この名前が付けられたそうです。成帝との間に子どもが無く、
皇子の一人である哀帝(あいてい)を支持したけれども、
この哀帝の死後、後に前漢の王朝を乗っ取った王莽(おうもう)
によって宮廷を追われて自殺した、悲劇の女性です。
※可憐(かれん): 感動してしみじみすることです。
※玉山(ぎょくざん): 群玉山(ぐんぎょくざん)という仙人の住む山です。
仙女の西王母(せいおうぼ)が住んでいる山のことです。
※峰頂(ほうちょう): 山の頂上のことです。
※嬋妍(せんけん): あでやかな女性を指します。
花や月の美しさを讃えるために使われます。
※巫山(ふざん): 雨の女神の住む山の名前です。戦国時代の
南方の国の楚(そ)の国の詩人の宋玉(そうぎょく)の詩の
『高唐賦(こうとうふ)』によると、 楚の国の襄王(じょうおう)が
夢の中で女神と契りを交わしたとされています。
※君王(くんのう): 天子(てんし)、つまり皇帝のことです。
ここでは唐の玄宗(げんそう)を指します。
※言筌(げんせん): 『荘子(そうじ)』に出てくる言葉で、
言葉を手段として使うことです。「筌(せん)」は魚を捕まえる
ワナのことで、魚を捕まえるワナはどんなにきれいでも
魚を捕まえられなければ役に立たないように、
言葉も気持ちを伝えられなければ、どんなに素敵な言葉でも
意味がない、というたとえに使われています。
※養心(ようしん、こころをやしなう): 人が本来持っている立派な心を
さらに立派に育てることです。
※旧句(きゅうく): 以前に作った詩句のことです。
※刪(けずる): 詩句の不要な部分を省いて、きちんとした形に
仕上げることです。
※終生(しゅうせい): 「一生(いっしょう)」のことです。
※莫(なし): 「無し(なし)」と同じ意味です。
●解説:
これは五言古詩(ごごんこし)の一韻到底格(いちいんとうていかく)と
言って、一句五文字で構成される詩句を
一つの韻目(いんもく: 同じ韻の文字のグループ)で
ずっと詠んでいくものです。偶数句の末尾で韻を踏みます。
規則の緩いものですので、長い句を詠むことができます。
言い換えれば、規則が緩い分、長い句にしないといけないと思います。
この漢詩は私が作った当初は漢詩はもともと六十四句の
一つの漢詩だったのですが、その中では二つのことをんでいますので、
二つに分けることにしました。その漢詩のひとつめがこの漢詩です。
苦しい状況の中で美女(当時のお相手の方)に想いを伝えようと
漢詩を詠もう、そういう、少し浮ついたような男という設定で
当時の私自身を描こうと思って、漢詩を詠んでおりました。
私は元来、そういう男ではありませんが、そういう設定で
詠んでおりました。
私は長患いで外に出るのを禁じられているので、
その代わりに唐の詩人の李白に漢詩を習うことにした、
と続いておりました。
その習った漢詩というのが、『清平調詞(せいへいちょうし)』
という三首の漢詩です。これは皇帝の玄宗と
妃の楊貴妃が宮中の離れにある
沈香亭(じんこうてい)という休憩のための小屋で、
牡丹の花を眺めていたとき、玄宗に命じられて作った漢詩です。
この詩の中で、李白は楊貴妃を前漢の成帝(せいてい)の皇后の
趙飛燕(ちょうひえん)にたとえたり、果ては仙人の山に住む仙女や、
昔の王様が夢の中で逢った女神にたとえたり、 そんな李白の美しい詩句を讃える風に詠んでいました。
その上で、そんな美しい言葉も「言筌(げんせん)」に
過ぎないのだと、そんな風に詠みました。
「言筌(げんせん)」という言葉は『荘子』に出てくる言葉で、
魚を捕まえるワナはどんなにきれいでも魚を捕まえられなければ
役に立たないように、言葉も気持ちを伝えられなければ、
どんなに素敵な言葉でも意味がない、という意味で使われる言葉です。
言葉を想いを伝える手段として使うこと、それは言葉の上で
きれいな詩を作ることよりも大切なことだと、私は思います。
そのために人間本来の持つ心をさらに養っていって、
詩句をしっかりと考えて、これからも当時のお相手の方のために
詩を詠んでいこう、そういう気持ちを最後に込めていました。
私は病気が進行していって、私自身の身体がどうなっていくのか
ということをかなり正確に理解しています。
そのことで最近私は自分の将来のことをあまりに深刻に
考えすぎていて、周囲の人にもとても心配をさせてしまい、
申し訳ない気持ちになっていました。
しかしこの漢詩を実際に作っていく中で、楽しい気持ちになっている
中で、どうなるかも定かでない将来のことを
あまりに思い詰めていることに気づきました。
これからはもう少し冷静に過ごしていって、
できる限り明るく生きていこうと、そう思ったことを詠んでいました。
これからも体調に気をつけて、気持ちを明るくして、
その上でしっかり学んでいこうと思い、
当時のその気持ちを詠んでおりました。
これからもしっかりとがんばっていこうという気持ちと
多くのブログ友の方々への感謝の気持ちとを詠んでおりました。
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漢詩
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今晩はいつも特に嬉しいコメントありがとうございます。古今東西男は美しい女性に心を動かすのです!エネルギーの源ですね!共に暮らしていると尚更こんどは情も深くなります!この特に素晴らしい漢詩に応援の☆ポチですよ!
2012/4/29(日) 午後 10:14 [ 清水太郎の部屋 ]
うわぁ、長くて僕にはきついですね。
ですが、いつも通り詳しい解説が役に立ちます。
僕も目先のことに集中しなければ。
宿題とか……………。
2012/4/29(日) 午後 10:48 [ - ]
こころが安定しているときよりも、多少不安定なときのほうが何かを吐き出せて、多く詩歌が作れるように感じます、玄さんはどうでしょうか?^^ 傑作。
2012/4/30(月) 午前 0:01
す、凄い……。
(としか、言い様がないのです)
ポチ☆
2012/4/30(月) 午前 7:01 [ 澤木淳枝 ]
清水太郎さん、おはようございます。コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
日々きちんと努力を重ねて向上していこうと思います。
これからもしっかりとがんばります。
2012/4/30(月) 午前 7:31
都会の蝙蝠さん、おはようございます。コメントありがとうございます。
長い漢詩ですが、難易度としては一句七文字で八つの句を作る
七言律詩よりは難易度の低いものです。
この漢詩で気を付けなければならないのは、ネタ切れです。
本当に詠むべきことが定まっていないと、すぐにネタに詰まるのです。
ですから僕にとって、自分の気持ちを吐き出すことのできる
この漢詩の形式が一番合っているように思います。
わかりやすい解説になっていて良かったです。
文字数は長いですので、じっくりと読んでいただければと思います。
僕も目の前のことを地道にきちんとこなしていこうと思います。
これからもしっかりとがんばります。
2012/4/30(月) 午前 7:38
ひろちんさん、おはようございます。コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
本当にどん底の時には漢詩を作ることはできませんが、
少し冷静になったときに自分を励ます材料として、
漢詩を作ることが役に立つということが分かってきました。
これからも漢詩を詠みながら心を養っていこうと思います。
これからもしっかりとがんばります。
2012/4/30(月) 午前 7:39
澤木淳枝さん、おはようございます。コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
韻をきちんと踏むことさえできれば、平仄も考える必要はありませんので、
(ものの本によれば、さらに韻を踏まない句の末尾は仄声にするとあります)
あとは何を詠むかという勝負です。この部分はしっかりと多くのことを学んでいって、
お相手の方への気持ちを詠んでいければいいなと思っています。
これからも長い漢詩も作っていけように頑張っていきます。
2012/4/30(月) 午前 7:43
2012/4/30(月) 午前 7:04 の鍵つきの内緒さん、ご指摘のコメントをありがとうございます。
すぐにブログ本文の該当箇所を修正いたしました。
2012/4/30(月) 午前 7:45
学校の授業以上のことをここでは学べるのでいいですね。
僕も彼女にちゃんと気持ち伝えないとなぁ……
2012/4/30(月) 午前 9:30 [ - ]
翼さん、おはようございます。お久しぶりです。コメントありがとうございます。
明らかに授業の範囲は超えてしまっていますので、きちんといろんな人が
読むことができるようにと、分かりやすく書くことを心がけています。
僕もお相手の方への気持ちをきちんと漢詩にできるように、
これからもがんばっていきます。
日々しっかりと過ごしていきます。
2012/4/30(月) 午前 10:12
大作ですね。
ほんらいの自分とは違う 人物設定で詠んでみる・・・。
新しいですね〜 色んな人生を想像できて 楽しいかも!!
体調に気をつけて 沢山の詩を詠んでいただきたいです!!
2012/4/30(月) 午前 10:46
ある おかんさん、おはようございます。コメントありがとうございます。
漢詩も俳句と同じで、写生を尊ぶところがありますから、
あまりこういうフィクションは好まれないのですが、
こういう漢詩を作るのが本当に楽しいのです。
唐の詩人で有名な玄宗と楊貴妃の長編の詩の『長恨歌(ちょうごんか)』の
作者である白居易(はくきょい)の漢詩などにこういう漢詩の
手がかりを得て作っています。
これからも健康に気をつけて、いろんな漢詩に挑戦していきます。
今日もしっかっりと勉強していきます。
2012/4/30(月) 午前 11:53
はなない人生はおくりたくないですね^^;
悔い残さず、投げ出さず、精一杯を尽くす・・・それに尽きます^^
美しい女性・・・楊貴妃・・・世界三大美女ですね^^
僕的には蝶蝉(チョウセン)も美しい女性かなとも思います^^
やはり昔の人は感性豊かで素晴らしい事を言っていますよね^^
いつも玄さんの詩を読みながらそう思います☆
2012/4/30(月) 午後 9:53
ミライサクさん、こんにちは。コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
言葉にするとそれに尽きますね。僕もきちんと頑張っていきます。
貂蝉(ちょうせん)、結構難しい字を使いますよね。
三国志でも有名な女性ですね。呂布を籠絡して董卓を討たせた、
そういう陰謀の中に生きた女性ですね。
実際には架空の人物とされていますが、
民間伝承の中には面白い話がいっぱいありますね。
昔の人と言っても、いろんな人物が居ますので調べていくのも楽しいですね。
こういう所もきちんと学んで、漢詩に役立てていこうと思います。
今日もしっかりとがんばっていきます。
2012/5/1(火) 午後 1:18
玄様、はせにはもう玄様の世界には、入る事は出来ませんが逞しく成長した貴方を見ることは嬉しい事です。
美しい方と幸せになってください。
2012/6/14(木) 午前 1:26
はせさん、こんにちは。コメントをありがとうございます。
お相手の方のためにも、今は努力を重ねる時だと思っています。
これからもしっかりと学んでいこうと思います。
2012/6/14(木) 午後 5:30