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最初に申し上げておきます。普段、漢詩や漢文になじみのない方、
あるいは、漢詩や漢文に苦手意識を持たれている方は、
後半の記事の現代語訳から読んでみて下さい。
私は漢詩や漢文で最も大切なのは、
「そこに何が書かれているか」ということだと考えています。
私は自分で作った漢詩にも現代語訳を付けるようにしています。
その際には常にわかりやすい説明ができるようにと、
気をつけて現代語訳と解説を書いています。
どんな人にも分かりやすく説明をすることを第一に考えています。 この記事もブログの制限文字数の 5,000 文字をこえていますので、
記事を前半と後半の二つに分けています。
この前半の記事は原文と書き下し文と語注になっています。
現代語訳と解説については後半の記事をご覧になって下さい。
コメント欄もその後半の記事に設けています。
後半の記事
以上のこと、よろしくお願いいたします。
●原文:
●詠志學 玄齋
(下平聲一先韻・五言古詩・一韻到底格)
叔 父 苦 宿 疾 壯 年 終 天 年 懷 舊 其 慈 愛 痛 哭 入 黄 泉
老 僧 讀 經 後 和 光 法 號 傳
愧 不 聞 解 説 字 書 調 幾 篇
老 子 佛 典 裏 字 義 驚 深 淵
更 求 謙 虚 意 須 欲 窮 三 玄
欲 明 覺 悟 意 把 句 自 號 玄
●
老 子 短 言 裏 真 意 唯 窈 然
莊 子 繁 言 裏 驚 人 如 倒 顛
老 莊 兩 不 解 書 生 愧 不 賢
經 書 知 不 讀 論 語 一 讀 捐
淺 學 求 助 長 誤 解 守 舊 堅
一 儒 足 教 我 南 宋 陸 九 淵
六 經 吾 註 脚 箴 言 俄 豁 然
此 語 非 豪 語 古 人 深 意 沿
六 經 照 平 素 經 義 在 眼 前
老 莊 照 平 素 一 道 窺 無 邊
窮 理 得 端 緒 老 子 對 諸 編
翻 訳 五 千 字 叔 父 供 墓 前
●書き下し文:
題: 「志学(しがく)を詠ず」
叔父は宿疾(しゅくしつ)に苦しみ
壮年(そうねん)にして天年(てんねん)を終う
其(そ)の慈愛(じあい)を懐旧(かいきゅう)し
黄泉(こうせん)に入るを痛哭(つうこく)す
老僧(ろうそう)読経(どきょう)の後(のち)
和光(わこう)の法号(ほうごう)伝(つた)う
解説を聞かざるを愧(は)じ
字書(じしょ) 幾篇(いくへん)をか調べん
老子(ろうし) 仏典(ぶってん)の裏(うち)
字義(じぎ)の深淵(しんえん)なるに驚く
更に謙虚(けんきょ)の意を求めて
須(すべか)らく三玄(さんげん)を窮(きわ)めんと欲(ほっ)す
志学(しがく)の決意(けつい)を示さんとして
句(く)を把(と)りて自(みずか)ら玄(げん)と号(ごう)す
●
老子(ろうし)短言(たんげん)の裏(うち)
真意(しんい) 唯(た)だ窈然(ようぜん)たるのみ
荘子(そうし)繁言(はんげん)の裏(うち)
人を驚(おどろ)かせること倒顛(とうてん)するが如(ごと)し
老荘(ろうそう) 両(ふた)つながら解せず
書生(しょせい)の賢(けん)ならざるを愧(は)ず
経書(けいしょ)長く読まず
論語(ろんご)は一読(いちどく)して捐(す)つ
学は浅(あさ)くして助長(じょちょう)するを求め
誤りて旧を守ること堅しと解すればなり
一儒(いちじゅ) 我を教うるに足る
南宋(なんそう)の陸九淵(りくきゅうえん)なり
六経(りくけい)吾(わ)が註脚(ちゅうきゃく)なりと
箴言(しんげん)俄(にわか)に豁然(かつぜん)たり
此(こ)の語 豪語(ごうご)に非(あら)ず
古人(こじん)の深意(しんい)に沿(そ)う
六経(りくけい)を平素(へいそ)に照らせば
経義(けいぎ)眼前(がんぜん)に在(あ)り
老荘(ろうそう) を平素(へいそ)に照らせば
一道(いちどう)の無辺(むへん)なるを窺(うかが)わん
窮理(きゅうり)の端緒(たんしょ)を得て
老子(ろうし)の諸編(しょへん)に対(たい)す
五千字を翻訳(ほんやく)して
叔父の墓前(ぼぜん)に供えん
●語注:
※志学(しがく): 学問に志を立てることです。
※宿疾(しゅくしつ): 以前からの病気のことです。
※壮年(そうねん): 働き盛りの年頃のことです。
三十〜四十位を言います。
※天年(てんねん): 天から授かった寿命のことです。
※慈愛(じあい): 慈しみ愛する気持ちのことです。
※懐旧(かいきゅう): 自分の生涯の過去のことをしのぶことです。
※黄泉(こうせん): あの世のことです。
※痛哭(つうこく): 激しく泣き叫ぶことです。
※老僧(ろうそう): 年老いた僧侶のことです。
※読経(どきょう): お経を声を出して読むことです。
※和光(わこう): (解説をご覧になって下さい)
※法号(ほうごう): 戒名のことです。
※字書(じしょ): 文字の音や意味などを説明した本です。
※仏典(ぶってん): 仏教の経典のことです。
※字義(じぎ): 文字の意味のことです。
※深淵(しんえん): 物事が奥深くて計り知れないこと。
※謙虚(けんきょ): 態度を控えめにして相手にへりくだることです。
※須(すべからく〜すべし): 「〜しなければならない」という意味です。
※三玄(さんげん): 『老子』『荘子』『易』の三種類の書のことです。
※把句(はく、くをとる): 文章から言葉の一部を抜き出すことです。
※号(ごうす): 号を名乗ることです。
※短言(たんげん): 短い言葉のことです。
※裏(うち): 「中」と同じ意味です。
※真意(しんい): 本当の意味のことです。
※窈然(ようぜん): 奥深くてよく見えないという意味です。
※繁言(はんげん): くだくだしくて長い言葉のことです。
※倒顛(とうてん): 逆さまにひっくり返ることです。
※書生(しょせい): 世間知らずの学者のことです。
※経書(けいしょ): 儒学の経典である四書五経のことです。
※助長(じょちょう): 何か成果を得ようと無理なことをして、
かえって台無しにしてしまうことです。『孟子』に出てくる言葉です。
※一儒(いちじゅ): 一人の儒学者のことです。
※南宋(なんそう): 宋の王朝の後期をさして言います。北方から
騎馬民族の女真族の国の金が攻めてきて、皇帝の一族が南方に
逃れた頃を指します。それ以前を北宋(ほくそう)と言って
区別しています。
※陸九淵(りくきゅうえん): 南宋の儒学者で、号は象山(しょうざん)
です。朱子学の大成者である朱熹(しゅき)のライバルで、
後の明の時代の陽明学(ようめいがく)につながる
学問を始めた人です。
※六経(りくけい)吾(わ)が註脚(ちゅうきゃく): (解説で述べます)
※箴言(しんげん): いましめとなる言葉のことです。
※俄(にわか): 「突然」という意味です。
※豁然(かつぜん): 疑いや迷いが解けて、物事がはっきりすることです。
※豪語(ごうご): 偉そうに傲慢なことを言うことです。
※古人(こじん): 昔の人のことです。
※深意(しんい): 奥底にある深い意味のことです。
※平素(へいそ): 普段の日常のことです。
※経義(けいぎ): 経書(けいしょ)に書かれている意味のことです。
※無辺(むへん): 広々として限りがないことです。
※窮理(きゅうり): 儒学の五経の一つである、昔の易の本である
『易経(えききょう)』の中の言葉で、物事の道理を究めることです。
※端緒(たんしょ): 手がかりのことです。
※五千字(ごせんじ): 『老子』の本文の五千文字を指して言います。
(後半の記事に続きます)
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