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●原文:
雨窓讀書 玄齋 (上平聲一東韻) 午 閑 耽 読 子 房 功 名 臣 運 謀 帷 幄 中 状 況 一 轉 親 戰 記 梅 霖 窓 外 作 天 工
●書き下し文: 題「雨窓(うそう)読書(どくしょ)」
午(ひる)閑(しずか)に耽読(たんどく)す子房(しぼう)の功
名臣(めいしん) 謀(ぼう)を運(めぐ)らす帷幄(いあく)の中
状況一転する戦記(せんき)に親(した)しめば
梅霖(ばいりん) 窓外(そうがい)にて天工(てんこう)を作(な)さん
●現代語訳: 題「雨の日の窓際で、本を読んでいた時のことを詠みます」
午後の静かな時に読書に熱中していました。その本は、
漢の国を建国した高祖(こうそ: 初代皇帝)の劉邦(りゅうほう)の 参謀であった、張良(ちょうりょう)の功績について書いてあります。 張良というすぐれた家臣は、戦場で幕を張りめぐらせてある場所で、
作戦計画を立てておりました。 その計画で状況が一気に変わる、そんな状況を描いた、
大昔の戦争の記録を示した文章を読んでいますと、 窓の外では梅雨時の雨が、自然の力のたくみな細工を 施しているところでした。 ●語注:
※雨窓(うそう): 雨の日の窓ぎわのことです。
※耽読(たんどく): 熱中して読みふけることです。
※子房(しぼう): 漢の高祖劉邦の参謀であった張良の字です。
※名臣(めいしん): すぐれた家臣のことです。
※運謀(ぼうをめぐらす): はかりごとをめぐらすことです。
※帷幄(いあく): 戦場で幕を張りめぐらせて、作戦計画を立てる
場所のことです。
※戦記(せんき): 戦争の様子や経過を書いた記録のことです。
※梅霖(ばいりん): 「梅雨(つゆ)」のことです。
※窓外(そうがい): 窓の外のことです。
※天工(てんこう): 自然の力によるたくみな細工のことです。
●解説: これは今月の課題詩です。もうひとつの課題詩を現在作っています。 家の外が雨の中、本を読んで熱中する様子を読んでいました。
歴史書の『史記(しき)』の、漢の国を建国した
高祖(こうそ: 初代皇帝)の劉邦(りゅうほう)の参謀であった、
張良(ちょうりょう)の功績について書いてある、
「留侯世家(りゅうこうせいけ)」の部分を読んでいるころを描いてみました。
留侯(りゅうこう)というのは、劉邦が中国を統一した後に、
張良に北方の斉(せい)の国の広大な領地を与えようとすると、
張良は、「陛下と最初にお会いした、留(りゅう)という土地を
領地に頂くだけで十分です」 と言って、その土地だけを領地としてもらったことから来ております。
張良についてのおおよその所は、 Wikipedia のページを 見ていただければと思います。
Web ページ: 張良 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%B5%E8%89%AF この漢詩の二句目は、劉邦が張良の功績をたたえて 北方の斉(せい)の国の広大な領地を与えようとする場面の
言葉が元になっています。
(史記の原文)
運籌策帷帳中、決勝千裏外、子房功也。自択斉三万戸。
(史記の書き下し文)
籌策(ちゅうさく)を帷帳(いちょう)の中に運(めぐ)らせ、
勝(しょう)を千里(せんり)の外に決するは、子房(しぼう)の功なり。
自(みずか)ら択(えら)ぶは斉(せい)の三万戸(さんまんこ)なり。
(史記の現代語訳)
戦場に張りめぐらせた幕の中ではかりごとをめぐらせて、
千里もの遠くに離れた場所での勝利を決めることができたのは、
子房(しぼう: 張良の字(あざな))の功績によるものです。 だから私は北方の斉(せい)の国の三万もの多くの家々のある
領地を授けようと思います。 (ここまでが史記の現代語訳です)
劉邦は張良がいなければ確実に死んでいた場面が何度もあり、 読んでいくと張良の才能がどれほどかがよくわかります。
劉邦やその夫人の呂后(りょこう)の粛清を恐れていたとは言っても、
そこまでの手柄を立てて、「陛下との思い出の場所だけで十分です」
とはなかなか言えないものだと思います。
一方で劉邦も、何の実績もなかった張良を信じて使ってみて、
優秀だったから正式に参謀にしたわけですが、
これは何気なく書いてはありますが、正直、責任ある地位に立ってみて、
こういう事ができるかというと、とても難しいことだと思います。
戦略ゲームと実際との違う部分の一つだと思います。
劉邦も張良も、ともに優れていたと思うところです。
朱子学の大成者である南宋の儒学者の朱熹(しゅき)が、
本人の語録の『朱子語類(しゅしごるい)』の中で、 「老子の言葉を本当に身につけた人」と評価していることも相まって、 張良は私の最も好きな歴史上の人物の一人です。 私も老子の言葉を身につけていくためにも、 しっかりと学んでいこうと思います。
とりあえず、今月の課題詩を仕上げていきます。
今日もがんばって学んでいきます。 |
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今日はいつも特に嬉しいコメントありがとうございます。この漢詩に応援の☆ポチですよ!
2012/6/17(日) 午後 1:05 [ 清水太郎の部屋 ]
清水太郎さん、こんにちは。コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
今日もしっかりと勉強をしていきます。今日も元気に過ごしていきます。
2012/6/17(日) 午後 4:18
雨音やその様も詩なんですね。
感嘆のポチです☆ポチです。
2012/6/17(日) 午後 4:59 [ 甘夏 ]
甘夏さん、こんばんは。コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
雨音の中で本を読む、そんな静かな光景を詠んでみました。
これからもしっかりと学んでいきます。
2012/6/17(日) 午後 6:27
梅雨は気温・気圧・湿度が急激に変化するので調子の良くない季節です。
しずかに降る梅雨の雨を見るのは好きなんですけどね。傑作。
2012/6/18(月) 午前 0:38
おはようございます。
玄齋さん 天気も回復して体調も回復するば 晴れ晴れですね。
頑張って下さい。
2012/6/18(月) 午前 7:52 [ 大阪グレースボクシングジム ]
ひろちんさん、おはようございます。コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
僕も梅雨時に体調を崩さないように健康に気をつけていきます。
梅雨の中の紫陽花なども見事な眺めですね。
今日も元気に学んでいきます。
2012/6/18(月) 午前 9:56
ヤマガタさん、おはようございます。温かいコメントをありがとうございます。
晴天のころにはすっきりとした体調で過ごしていきたいなと思います。
これからも体調に気をつけながらがんばっていきます。
2012/6/18(月) 午前 9:59
梅雨の鬱陶しいひ日 兵法?に思いを馳せながら
雨の作り出す 美しいようすに心引かれて
玄さんの心が 雄大な大地を包み込む感じです。
今日も体調良く いい日ですように!! P
2012/6/18(月) 午後 1:10
ある おかんさん、こんにちは。コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
歴史書の中の名軍師の張良の伝記を読んだ時の感想を詠んでいます。
現実の戦争は大嫌いですが、こういう昔の歴史に思いを馳せて、
壮大な世界に触れるのは楽しいです。
雨の中でも読書をして、元気に過ごしていこうと思います。
恵みの雨が作り出す自然の景色も眺めていこうと思います。
これからも元気にがんばっていきます。
2012/6/18(月) 午後 1:25
雨窓讀書、拝読しました。
雨はあまり好きではないですけど、雨の日に一人家で読書に耽るのは私は嫌いではありません。
詩を詠まれた時の情景が目に浮かびます。
本の中では遥か古代の武将が作戦会議。いわばこれは「人工」というべきでしょうか。それも常人にはなし難い「人工」。
ふと窓に目をやると、それは人智の及びがたい(最も今は天気予報はありますが・・(笑))天の仕業。つまり天工。
そのような対比を私は勝手に解釈しました。
さて、玄斎さんは張良がお好きなのですね。
私は十八史略程度しか古典を読んだ事がないのですが、個人的には韓信が好きです。
韓信が劉邦に捕らえられた時に述べた言葉「陛下不能将兵、而善将将。此信所以為陛下禽。且陛下所謂天授、非人力也。」に深い感動を覚えます。
2012/6/23(土) 午後 0:09 [ 三島 ]
三島さん、こんにちは。コメントをありがとうございます。
懇切丁寧なコメントが嬉しいです。しっかりとお返事コメントをしていきます。
「人工」と「天工」の対比、そうですね。同じようなことを考えておりました。
戦況を一変するほどの策、そういうものを楽しみ熱中して読む、そんな中でも、
窓の外では自然が静かに万物を生長させている姿があった、というところから、
学ぶべきものは名軍師である張良の軍略や生き方だけではなくて、
彼が倣っていた老子の天地自然の道理をきちんと感得すべきではないか、
そんなことを、梅雨時の光景に合わせて考えていた、そういうところです。
(その2へ続く)
2012/6/23(土) 午後 2:16
(その2)
韓信、軍略という意味では僕も憧れの対象ですね。
劉邦が彼を大将軍に登用するという英断がなければ、
後世に名を留めることなく、せいぜい下士官の一人として
一生を終えていたのではないかと思います。
この時点ですでに劉邦に負けていたのではと思います。
韓信には、このときの恩が念頭にあったので、
反乱の機を逸したのだと思います。
僕は『十八史略』は読んでいませんが、それと同じ文章が
『史記』の「巻九十二 淮陰侯列伝 第三十二」にありますね。
劉邦が捕らえた韓信に、「どうして私に捕らえられてしまったのか?」
と、笑って質問をした時の韓信の返答ですね。
いい機会ですので、一度訳してみますね。
(その3へ続く)
2012/6/23(土) 午後 2:26
(その3)
●原文:
信曰、
「 陛下不能將兵、而善將將、此乃言之所以為陛下禽也。
且陛下所謂天授、非人力也 」
(その4へ続く)
2012/6/23(土) 午後 2:28
(その4)
●書き下し文:
信(しん)の曰(いわ)く、
「 陛下は兵に将たる能(あた)わずして、善く将に将たり、
此れ乃(すなわ)ち之を陛下の擒(とりこ)となる所以(ゆえん)なりと言えり。
且(か)つ陛下の所謂(いわゆる)天授(てんじゅ)にして、
人の力に非(あら)ざるなり 」
(その5に続く)
2012/6/23(土) 午後 2:33
(その5)
●現代語訳:
韓信は次のように劉邦に返答しました。
「陛下(劉邦)は実際に兵を動かす将軍になることはできませんが、
陛下はその将軍たちを動かす総大将としての能力に長けているのです。
これこそが私(韓信)が陛下に捕らえられてしまう理由なのです。
そしてこれは陛下がいわば天から授けられた才能なのですから、
人の力で得られるものはないのです」と。
(その6に続く)
2012/6/23(土) 午後 2:39
(その6)
これは韓信の正しい劉邦の人物評なのだと思います。
外から見れば劉邦のしていることはどんな人もすぐにできそうに思えて、
実際にはそんな容易なことではないのだと、かつて自分を抜擢してくれた
恩人の劉邦に対して、韓信自身も実際に人を動かしてみて痛感したことを
率直に述べたものだと思っています。
本当に難事を成したのは劉邦であるということの分かるエピソードで、
僕も好きな一節です。
こういうところを理解するのは楽しく、また大切なことなのだと思っています。
詩人と儒学者の一端にいる者として、重要な教訓を、こういう事を学ぶ中で、
しっかりと養っていきたいなと思っています。今日もしっかりとがんばっていきます。
2012/6/23(土) 午後 2:46
久々にブログを見てとても驚いています。
人との交流においては極力誤解無きよう努める事は大事だと思っています。
特に顔が見えず、意思伝達がほとんど文字だけのネットの世界にあっては、誤解は容易に起こりえますから、私も可能な限り注意はしていました。
故に玄斎さんが私を誤解される事になってしまったのは、気の利かなかった私の落ち度としかいいようがありません。
しかし私としても、たとえお信じになられないとしても、誤解である事は弁解しなければいけません。
私は現在の生活上、週末に限っても、頻繁に更新する事ができません。
従ってコメントもすぐには返答できません。
特にきちんと考えてコメントして頂いた方には尚更です。
日記「学び路」に書いていただいたコメントは、非常に丁寧に書いてあって有難かったと同時に、早々には返答できないと思いました。
意味を斟酌して、じっくりと返答したいと思っていましたが、かりそめにも「無視」しようという気は更々ありませんでした。
しかし、返答が遅かったのは私の落ち度です。
ともかくもコメントの数々非常にうれしかったです。
感謝しています。
2012/6/29(金) 午後 10:59 [ 三島 ]
三島さん、了解しました。三島さんへの批判は私の早とちりのようです。すみません。
コメントについては別の場所に保存してありますので、
最新の二つについてはすぐに復旧いたします。
私も心に余裕を持って過ごしていかなければと思いました。
私の誤解に基づく三島さんへの批判に相当する一つ前のコメントを削除いたします。
勇気を持って弁解のコメントをしてくれたことにも感謝いたします。
2012/6/30(土) 午後 0:04