玄齋詩歌日誌

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右大臣の郷里で、その娘の朧月夜の君と源氏が密会をしていた場面です。


ここからが本文です。



源氏と中将が歌遊びをしていた頃、尚侍(ないし: 朧月夜の君)が郷里に帰っていました。
彼女は以前から瘧病(わらわやみ)に長い間苦しんでいたので、

「まじない(呪術による治療)などを(禁忌のある宮中を離れて)郷里で気楽に行おう」

と思ってのことです。


  (注)瘧病(わらわやみ): 子供に多い病気で、マラリアに近い熱病といわれています。
   「疫病(えやみ)」や「瘧(おこり)」とも呼ばれます。


加持・祈祷などもさせて、病気が快方に向かったので、誰もが嬉しく思っていました。

その頃に、尚侍はいつものように、

「これは滅多にない機会ね」

と、源氏とお互いに示し合わせて、無理をおして毎夜毎夜、二人でひそかに逢っていました。
若い盛りの名家の面影を持っている人が、少し病で痩せている容貌は、いかにも美しいものでした。

皇太后(もと弘徽殿の女御。朧月夜の君の姉)も、尚侍と同じ所にいる頃でありますので、
源氏は聞こえてくる物音などを、とても恐ろしく思っていました。

しかし源氏は危険の多いこのような状況であればこそ、なおさら恋心のつのる
性癖を持っているので、ひどく人目を忍んででも、逢瀬を重ねていきました。

その様子を見た女房たちもあったのでしょうけれども、女房たちは厄介なことに
なったと思って、皇太后にその様子を申し上げる者はおりませんでした。
(皇太后と尚侍の)父の右大臣も、やはり二人の関係を予期してはいませんでした。


雨が突然にものすごい勢いで降ってきて、雷もひどく鳴り響いていたある日の夜明けに、
右大臣の子供たちや皇太后に仕える役人たちが騒ぎ立てて、あちらこちらに集まっていました。
女房たちも雷におびえて、尚侍の部屋の近くに寄り集まってきました。

源氏は何とも困ったことだと思って、帰っていくことも出来ずに、夜が明けてしまいました。
尚侍の帳の周りにも、女房たちが何人も並んで座っていましたので、
源氏は(自分が見つかるのではないかと)とても胸がどきどきしていました。
源氏と尚侍の事情を知っている女房の二人ほどは、途方に暮れていました。

雷が鳴り止んで、雨が少し止んできた頃、右大臣がやって来て、
まずは皇太后の部屋を訪ねていきました。にわか雨に紛れていたので、
源氏も尚侍も、それに気づくことはありませんでした。

右大臣は軽率にも尚侍の居間に入り込んで、御簾を上げながら、

「具合はどうだい。とてもひどい昨夜の雨の様子に、お前の身を案じながらも、
 今まで見舞いにも来ることはできなかったのだよ。中将や宮の亮などは、見舞いにやって来たかい」


などと言う右大臣の様子には、早口で落ち着きがありませんでした。
源氏はこのような危機においても、舅の左大臣の様子をふと思い出して、
この右大臣の様子はそれと比べようのないほどに劣っていると思って、苦笑していました。
本当に、きちんと居間に入ってから話をすれば良かったのですが。

尚侍は、とても困ったことになったと思い、ゆっくりと帳台の外まで膝行って出てきました。
右大臣は尚侍の顔がとても赤くなっているのを見て、

「まだ、熱で苦しんでいるのかい」

と、心配して、

「なぜお前は普段と違ってそんな顔色をしているのだい。物の怪は本当に面倒なものだね。
 加持・祈祷をもう少し期限を延ばしてさせるべきだったね」

などと右大臣が言っていると、二藍の薄い色の男物の帯が、尚侍の衣にからみついてきているのを
右大臣が見つけて、

「変だな」

と思い、また、懐紙の、(見慣れぬ筆跡で)いろいろと字を書いているものが、
几帳の下に落ちていました。

「これはいったい、どうしたことなのだろう」

と、右大臣は驚いて、

「これは誰の字のものなのだろう。見慣れない物のようだね。私にお寄越しなさい。
 これを取って、誰の物かを確かめてやろう」

と父親に言われて、尚侍は振り返ると、彼女もそれを見つけました。
父親をこれ以上ごまかす術もないので、どのようにも返事ができませんでした。
尚侍が我を忘れた様子でいるので、

「子供ながらに、『恥ずかしい』と思っているのだろう」

と、右大臣ほどの方であれば、思いめぐらせなければいけないのですが、
とてもせっかちで、落ち着きのない父親である右大臣には、そのような
配慮を巡らす余裕もなく、懐紙を手に取ったまま、几帳から奥を覗いてみると、
とてもなよなよとして、(悪事が発覚して)気兼ねする様子もないような男が、
尚侍の側で添い寝をしているのが見えました。

右大臣に見られて初めて、そっと顔を隠して、あれこれと身を隠そうとしていました。

右大臣は情けなく悔しく、不愉快に思いましたが、面と向かっては、この男に言葉を告げることは
できませんでした。腹が立つあまりに目がくらむほどの気分になったので、この懐紙を持って、
皇太后の寝殿へ渡っていきました。

尚侍は自他の区別もなくしたほどに思い乱れて、死にそうな気がしていました。
源氏も彼女を気の毒に思いながら、

「とうとう私のくだらない振る舞いが積もり積もって、人の非難を受けなければならなくなった」

と思っていましたが、女君(朧月夜の君)の気の毒な様子に、いろいろと慰めの言葉をかけていました。



ここまでが本文です。

とうとうばれてしまいました。以前は御所の中でも危ない橋を渡っていましたが、
さすがに右大臣の実家では発覚してしまいますね。

右大臣のうろたえる様子を、紫式部はいろいろと悪く書いていますが、
僕には右大臣をとてもかわいそうに思いました。


次回は、右大臣がこの事実を娘の皇太后(もと弘徽殿の女御)に伝える場面です。
ここは皇太后の実家でもあるので、激しく怒ることが予想されます。

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