玄齋詩歌日誌

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むば玉の闇のうつつは定かなる夢にいくらもまさらざりけり    読み人知らず(『古今和歌集』 恋三 647)

八重葎茂れる宿の寂しきに人こそ見えね秋は来にけり    恵慶法師(『拾遺集』 秋 140)

訪ふ人もなき宿なれどくる春は八重葎にもさはらざりけり    (『古今和歌六帖』 二 宿 1306)

今更に訪ふべき人も思ほえず八重葎してかどさせりてへ    読み人知らず(『古今和歌集』 雑下 975)

いかでかは尋ね来つらむ蓬生の人も通はぬわが宿の道    読み人知らず(『拾遺集』 雑賀 1202)



解説

桐壺帝が若宮(源氏)の様子を知るために、桐壺更衣の郷里に命婦を派遣する場面です。


ここからが本文です。



野分(のわき)のような激しい風が吹いて、急に肌寒くなった夕暮れ時に、
帝は普段よりも桐壺更衣のことを思い出されることが多くなり、
靫負の命婦(ゆげいのみょうぶ)という人を、桐壺更衣の郷里へお遣わしになりました。


  (注)野分(のわき): (野の草を吹いて分けるというところから)秋に吹く激しい風
   のことです。現在の台風を意味します。「野分立つ(のわきだつ)」は、野分らしい
   風が吹くという意味です。

  (注)靫負の命婦(ゆげいのみょうぶ): 父か兄または夫が「靫負の尉(ゆげいのじょう)」
   である、五位以上の女官の呼び名のことです。「靫負の尉(ゆげいのじょう)」とは、
   衛門府(えもんふ: 宮城の諸門および大内裏(だいだいり)の警備担当の役所)に仕える
   三等官のことです。


夕月夜の美しい頃に、内裏から命婦を遣わせて、そのまま帝は物思いに耽っておられました。
以前はこのような時節には、音楽の遊びなどをさせておりました。そのときの桐壺更衣の、
特に優れた琴の音をかき鳴らして、ほんの少し申し上げる言葉や、人より優れた雰囲気や姿が、
幻となって急に帝の御自身の身に寄り添うように思し召していることさえも、
「闇のうつつ」にはやはり劣ったものでした。



  (注)『闇のうつつ』は、以下の短歌の引用です(一首目)。
   むば玉の闇のうつつは定かなる夢にいくらもまさらざりけり    読み人知らず(『古今和歌集』 恋三 647)

   訳: 闇の中で逢った現実は、はっきりと確かな夢のなかでの逢瀬に、
    どれほどもまさるものではありませんでした。


   桐壺更衣の幻は、闇の中での現実よりも劣る、儚い夢のようだったという意味ですね。



命婦は、桐壺更衣の郷里に到着して、車を門の中へ引き入れられた頃から、
周りのもの寂しい雰囲気を感じていました。

桐壺更衣の母君は長らく未亡人になっていましたが、一人娘の桐壺更衣のために、
邸をあれやこれやと飾り立てて、感じのよい外見になるようにして暮らしていましたが、
その娘が亡くなって、悲しみ嘆くあまりに分別を失って臥せっている間に、
雑草の丈が高くなり、今回の野分の風で、ひどく荒れたような感じがしていて、
月影だけが、幾重にも生い茂っている雑草に遮られることもなく、邸の中に差し込んでいました。



  (注)本文、「八重葎にもさはらず(幾重にも生い茂っている雑草に遮られることもなく)」は、
   以下の短歌の引用です(二首目・三首目・四首目)。


   八重葎茂れる宿の寂しきに人こそ見えね秋は来にけり    恵慶法師(『拾遺集』 秋 140)

   訳: 幾重にも雑草が生い茂っている寂しい宿に、人の姿は見えないが
    秋はやって来ているのだなあ。


   訪ふ人もなき宿なれどくる春は八重葎にもさはらざりけり    (『古今和歌六帖』 二 宿 1306)

   訳: 訪れる人もいない宿だけれども、やって来る春には、幾重にも生い茂っている雑草も
    遮ることはできない。


   今更に訪ふべき人も思ほえず八重葎してかどさせりてへ    読み人知らず(『古今和歌集』 雑下 975)

   訳: 今となっては訪れる人がいるとは思えません。今は幾重にも生い茂っている雑草に
    門が閉ざされていると伝えてください。


   雑草が生えてひと気のない寂しい様子がわかります。



南向きの座敷に命婦を招いて、(桐壺更衣の)母君も、悲しみですぐにはものが言えませんでした。

「(娘を亡くしても、)今まで生きてきたことがとても辛うございます。このような御使者が、
 露に濡れた雑草が深く茂っている中をかき分けて、このあばら屋にお入りになることも、
 とても恥ずかしく思います」



  (注)本文、「蓬生の露分け入りたまふにつけても」は、以下の短歌の引用です(五首目)。

   いかでかは尋ね来つらむ蓬生の人も通はぬわが宿の道    読み人知らず(『拾遺集』 雑賀 1202)

   訳: どうして訪ねてやってくるのだろう。こんな雑草が生い茂って、人も通わない私の宿への道に。


   もう人が通わなくなったあばら屋に、どうしてやってくるのか、
   という問いかけが含まれているようですね。



と母君は言って、本当に堪えられないほどに泣きました。



ここまでが本文です。


人が通わなくなって寂しい、桐壺更衣の郷里の雰囲気が、引用の短歌の中にも表れていますね。
未だに桐壺更衣の幻を見ている桐壺帝にも、もの寂しい雰囲気を感じています。
桐壺更衣の死に堪えられない、母君と桐壺帝の深い悲しみを感じました。

次回は命婦が桐壺帝の手紙を母君に渡す場面です。

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