玄齋詩歌日誌

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小樽港マリーナ・ウィングベイ小樽の夜景
北海道札幌写真集
 
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 秋夜海港  玄齋  (七言古詩・換韻格)
 
秋 宵 醒 醉 歩 埠 頭,  波 靜 溟 海 月 華 浮。
 
幾 望 畫 舫 泊 小 港,  巧 結 錦 纜 固 係 留。
 
嗚 呼 萬 事 雖 得 處,  萬 感 失 處 似 汎 舟。
 
嗚 呼 望 天 茲 有 光,  今 宵 圓 月 君 見 不。
 
遍 照 四 海 猶 皓 皓,  遙 看 南 方 只 悠 悠。
 
 ●
 
佳 人 嬌 容 窺 明 鏡,  天 上 嫦 娥 胸 裏 映。
 
忽 醒 微 醉 在 一 室,  慕 情 託 文 掲 短 檠。
 
寄 信 幾 千 既 多 言,  案 句 幾 百 復 新 詠。
 
幾 耐 夜 寒 身 冷 灰,  一 看 盈 月 心 清 淨。
 
曾 聞 月 精 盗 丹 液,  切 望 求 此 以 重 聘。
 
如 今 無 術 乞 仙 藥,  須 努 向 上 努 養 病。
 
君 擬 仙 女 在 天 上,  我 因 恋 情 與 愛 敬。
 
以 此 情 愛 茲 再 誓,  爲 君 幸 福 竭 我 命。
 
 
 
書き下し文:
 
 題「秋夜(しゅうや)海港(かいこう)」
 
良夜 酔いを醒まさんと埠頭を歩き、
波は静かなる溟海 月華 浮かぶ。
幾たびか画舫を望みて小港に泊まり、
巧みに錦纜を結びて固く係留せり。
嗚呼 万事 処を得ると雖も、
万感 処を失うこと汎舟に似たり。
嗚呼 天を仰げば茲に光 有り、
今宵の円月 君 見るや不や。
遍く四海を照らして猶も皓々として、
遙に南方を看れば只だ悠々たり。
 
 ●
 
佳人の嬌容を明鏡に窺い、
天上の嫦娥 胸裏に映る。
忽ち微酔を醒まして一室に在り、
慕情 文に託さんと短檠を掲ぐ。
信を寄すること幾千にして既に言多きも、
句を案ずること幾百 復た新たに詠ぜん。
幾たびか夜寒に耐えて身は冷灰なるも、
一たび盈月を看れば心は清浄たり。
曾て聞く 月精の丹液を盗むを、
切に望みて 此を求むるに重聘を以てせんとす。
如今 仙薬を乞うに術 無ければ、
須らく向上に努めて養病に努めん。
君を仙女の天上に在るに擬うるは、
我の恋情と愛敬に因る。
此の情愛を以て茲に再び誓わん、
君の幸福の為に我が命を竭さんと。
 
 
現代語訳:
 
 題:「秋の夜の港を詠みます」
 
月のきれいな夜に、私は酔いをさまそうと波止場を歩いていると、
暗い海の上に、月の光が浮かんでいるのが見えます。
何度か美しい遊覧船が小さな港に停泊するのを見て、
たくみに美しいともづな(船をつなぐための綱)を結んで、
固くつなぎ止めていました。
ああ、万事はあるべきところに落ち着いているというのに、
いろんな痛切な気持ちが落ち着くところもないようすは、
水に浮かぶ舟のようだ。
ああ、夜空を見上げてみるとここに光がある。
今夜の満月を、あなたは見ているでしょうか。
すみずみまで四方の海を照らしてもまだ鮮やかに輝いていて、
遠くの南の方まで、海が果てしなく広がっているのです。
 
 ●
 
美しい人のなまめかしい姿を、くもりのない鏡のような月にうかがい見て、
月にいるという嫦娥(じょうが) という仙女(せんにょ)が、
私の心の中に映ってきました。
私はたちまちほろ酔いの状態からさめて、ある一室にいました。
恋い慕う気持ちを文章に託そうと、短いロウソクの台を持ち上げました。
今まで手紙を何千通とすでに多く送っています。
そして詩句を考えることは何百という数であり、
ここでまた新たに詩を作ろうと思います。
何度か夜の寒さに耐えて、体は火の気の無くなった
冷たい灰のようですが、
一度、満月を見ると、心が清らかになりました。
その月に住んでいる仙女はかつて不老不死の薬を盗んだと
聞いていましたので、
この薬を求めるために手厚い礼をつくして招きたいと
心から願っていました。
しかし今は、その薬を乞うて求める方法もないので、
私はあらゆることを向上させようと努めて、病気の療養に努めます。
あなたを天上の月にいる仙女のように考えているのは、
私のあなたを恋い慕う気持ちと、あなたを愛し敬う気持ちによるのです。
この私の愛情の気持ちでもってここに再び誓います。
あなたの幸せのために私の命をつくすことを。
 
語注:
 
※良夜(りょうや): 月のきれいなの夜のことです。
 
※埠頭(ふとう): 船着き場、波止場のことです。
 
※溟海(めいかい): 暗くて果てしない海のことです。
 
※月華(げっか): 月の光のことです。
 
※画舫(がほう): 美しい遊覧船のことです。
 
※錦纜(きんらん): 錦のような美しいともづなのことです。
  ともづなとは、船をつなぎ止める綱のことです。
 
※嗚呼(ああ): 感心したときや残念なときに出す感嘆の声のことです。
 
※万感(ばんかん): 様々な痛切な気持ちのことです。
 
※汎舟(はんしゅう): 浮かんでいる舟のことです。
 
※茲(ここに): 「此処に(ここに)」と同じです。
 
※今宵(こんしょう): 「今夜(こんや)」と同じです。
 
円月(えんげつ): 満月のことです。
 
※四海(しかい): 四方の海のことです。
 
※皓皓(こうこう): 明るくて鮮やかな様子です。
 
※悠悠(ゆうゆう): 遠くはるかな様子を表す言葉です。
 
※佳人(かじん): 美しい女の人のことです。
 
※嬌容(きょうよう): なまめかしい姿のことです。
 
※明鏡(めいきょう): くもりのないきれいな鏡のことで、
  ここでは月を表現しています。
 
※嫦娥(じょうが) : 月に住んでいるという美しい天女です。
  西王母(せいおうぼ)という仙女から不老不死の薬を
  盗んだという伝説があります。別名を「月精(げっせい)」といいます。
 
※微酔(びすい): ほろ酔いのことです。
 
※慕情(ぼじょう): 恋い慕う気持ちのことです。
 
※短檠(たんけい): 短いロウソクの台のことです。
 
※夜寒(やかん): 夜の寒さのことです。
 
※冷灰(れいかい): 火の気の無くなった冷たい灰のことです。
 
※丹液(たんえき): 不老不死の薬のことです。
  「仙薬(せんやく)」も同じです。
 
※切望(せつぼう): 心から望むことです。
 
※重聘(じゅうへい): 手厚い礼をつくして招くことです。
 
※如今(じょこん): 現在のことです。
 
※須(すべからく〜すべし): 「〜しなければならない」という意味です。
 
※養病(ようびょう): 病気の療養をすることです
 
※恋情(れんじょう): 恋い慕う気持ちのことです。
 
※愛敬(あいけい): 愛し敬うことです。
 
※情愛(じょうあい): 愛情のことです。
 
※竭(つくす): 力を出しつくすことです。
 

解説:
 
 秋の夜の港に立ったときの切ない気持ちをもとに、
 お相手の方への気持ちを詠んだ七言古詩(しちごんこし)です。

 これは七言古詩の中の換韻格(かんいんかく)と呼ばれるもので、
 平声(へいせい)で韻を踏んだ後は仄声で韻を踏み、
 仄声(そくせい)で韻を踏んだ後は平声で韻を踏む、
 ということを繰り返して詩を作るものです。
 何回韻を変えてもいいのですが、韻の変わり目が
 きちんとお話の変わり目にもならないといけないことには
 注意する必要があります。
 
 この詩では黒丸のところで韻を変えています。
 前半では下平声の十一尤の韻で、
 後半では仄声の去声(きょせい)の二十四敬の韻で、
 韻を踏んでいます。
 
 夜に輝く満月、その明るさと、
 その中に嫦娥(じょうが)、あるいは月精(げっせい)という天女を
 お相手の方と重ね合わせるように心の中に思い浮かべる、
 そういう情景を詠んでいました。
 
 僕にとっての希望の光がお相手の方だとすれば、
 その光を灯し続けるために努力し続けるのが
 僕の役割だと思っています。
 
 そのためにこれからも、身体に気をつけながらも
 全力で努力していこうと思います。

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