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吟閨情 玄齋 (下平聲七陽韻)
静 夜 堪 孤 枕
啼 痕 掩 幾 行
連 宵 連 夜 待 君 王
猶 在 傾 城 麗 質 凝 明 粧
我 愛 終 無 語
曾 遊 底 可 忘
受 寵 通 夜 倚 西 廂
約 誓 二 人 比 翼 作 鴛 鴦
書き下し文:
閨情を吟ず 玄齋 (下平声七陽韻)
静夜 孤枕に堪え
啼痕 幾行をか掩わん
連宵連夜 君王を待ちて
猶お傾城の麗質 明粧を凝らす在り
我が愛 終に語る無きも
曾遊 底ぞ忘るべけんや
寵を受け夜を通して西廂に倚り
約誓す二人 比翼の鴛鴦とならんと
現代語訳:
静まりかえった夜に独り寝に耐え、
涙の痕を何筋ほど隠したことでしょう。
毎夜毎夜、天子(皇帝)をお待ちしていますが、
なおも国を傾ける美しさを生まれつきもっている美女が、
さらに美しい装いを凝らしているのです。
ついに私の愛を語ることはありませんでしたが、
かつての楽しみを、どうして忘れることができましょうか。
天子の寵愛を受け、ひと晩中、母屋の西の脇にある部屋にもたれかかり、
二人で翼を並べて飛ぶ鴛鴦(おしどり)になろうと固く誓ったことを。
語注:
※閨情(けいじょう): 閨(ねや: 寝室)の中の男女のありさま、
あるいは色事のことです。
※静夜(せいや): 静まりかえった夜のことです。
※孤枕(こちん): 独り寝(相手がいなくてひとりだけで寝ること)の枕、
または独り寝そのものを指す言葉です。
※啼痕(ていこん): 涙の痕のことです。
※連宵連夜(れんしょうれんや): 「毎夜毎夜」という意味です。
「宵」も「夜」もともに夜を指しています。
※君王(くんのう): 君主、つまり国を治める長のことです。天子(皇帝)を指します。
※傾城(けいせい): 君主が色香に迷って国を危うくするほどの美女のことです。
※麗質(れいしつ): 生まれつきの美しさのことです。
※明粧(めいしょう): 美しい化粧、美しい装いのことです。
※曾遊(そうゆう): 以前の楽しみ、以前の遊びのことです。
※底(なん ぞ〜): 唐や宋の時代の俗語で、「どうして〜か」という意味です。
※通夜(つうや、よるをとおして): 一晩中という意味です。
※西廂(せいしょう): 寝殿造りで母屋の西にある「脇屋(母屋の外側に作られた
屋根に覆われた部屋)」のことで、女性が住むことが多い場所です。
※約誓(やくせい): とりきめて誓うこと、固く約束することです。
※比翼(ひよく): 翼を並べて飛ぶことです。
※鴛鴦(えんおう): おしどりのことです。
解説:
これは填詞(てんし)の一つで南歌子(なんかし)と呼ばれるものです。
填詞(てんし)とは中国の歌曲の一つで、宋の時代に流行ったものです。
そこから宋詞(そうし)などとも呼ばれています。
詞譜(しふ)と呼ばれる譜面に合わせて詩句をはめ込んでいくもので、
厳密な平仄などのルールに従わなければならないものです。
さらにその中の南歌子(なんかし)は、
唐の時代の宮中で歌われた曲の一つだそうです。
今回はその替え歌を作ってみたつもりです。
これは昔の皇帝の王宮の閨(ねや: 寝室)の男女の話を詞にしてみました。
最後の部分は唐の白居易(白楽天)の玄宗と楊貴妃の愛を詠んだ
長篇の詩である「長恨歌(ちょうごんか)」の、
「在 天 願 作 比 翼 鳥 , 在 地 願 爲 連 理 枝 。
(天にありては願わくは比翼の鳥となり、
地にありては願わくは連理の枝とならん)」
(訳)空にいるときは比翼の鳥(翼が一つで二羽並んで飛ぶ鳥)となり、
地にいるときは連理の枝(二つの別々の木の枝がくっついているもの)
となって添い遂げましょう。
という部分をもじったものです。
めちゃくちゃ難しいと、作ってみて改めて思いました。
さらに欲を言えば月や花などに託して詠じてみたいところですが、
填詞の第一号はこんなところだということを記しておこうと思いました。
一般の方には七言の絶句でも十分難しいということですから、
この填詞などはもしかしたら意味不明なものになってしまうかもしれませんが、
ときにはこういう勉強も僕には必要ですので、どうかご容赦願います。
今後もブログ記事はできる限りわかりやすい内容につとめていきます。
故宮の写真は、以下のサイトのフリー素材を利用いたしました。
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