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偶感(讀夜船閑話) 玄齋 (入聲十七洽韻)
書 中 大 異 修 禪 業
偶 得 軟 酥 仙 道 法
未 識 高 僧 意 奈 何
養 生 無 碍 窮 深 洽
書き下し文:
「偶々感ず(夜船閑話を読んで)」 玄齋 (入聲十七洽韻)
書中 大いに禅業を修むるに異なり
偶々得たり軟酥の仙道の法を
未だ高僧の意の奈何なるかを識らざるも
生を養えば深洽を窮むるに碍無し
現代語訳:
その本の中身は、禅に関する事柄を学ぶのとは大きく異なっていて、
予期せぬ事に、仙人が使う術の一つである、「軟酥(なんそ)」という
チーズのような乳製品をイメージして行う治療法を知ることが出来たのだ。
一体この本を書いた白隠慧鶴(はくいんえかく)という徳の高い僧侶が、
どのような真意を持っているのかはわからないけれども、
健康を増進して命を長らえることによって、広くて奥深い境地を
きわめつくす時に、それを妨害する物が何もなくなるということがわかった。
語注:
※偶感(ぐうかん、たまたまかんず): ふと心に感じた感想のことを言います。
※夜船閑話(やせんかんな): 禅僧の白隠慧鶴(はくいんえかく)の著書で、仙人の
白幽(はくゆう)から内観の法(ないかんのほう: イメージによる病気の治療法)
を伝授されるという話です。
※白隠慧鶴(はくいんえかく): (1686〜1769)江戸中期に
駿河(静岡県の中央部)に生まれた僧侶で、
禅宗の臨済宗(りんざいしゅう)の中興の祖とされています。
号は鵠林(こくりん)です。
信濃飯山正受庵の道鏡慧端(どうきょうえたん)の法を嗣ぎ、
故郷の松陰寺(しょういんじ)に住持しました。
京都の妙心寺(みょうしんじ)の第一座(寺院の第一位の僧)とも
なりましたが、のちに諸国を遊歴し、禅の民衆化・革新を遂行し、
詩文や禅画もよく残した人物です。
著書には「夜船閑話(やせんかんな)」や「遠羅天釜(おらでがま)」
などがあります。
※禅業(ぜんぎょう): 仏教の禅に関する事柄のことです。
※偶(たまたま): 予期しないうちに、ふと、という意味です。
※軟酥(なんそ): 白隠が仙人の白幽から伝授された
イメージによる病気の治療法のことで、
軟酥(なんそ)という乳製品を思い浮かべて行うものです。
「軟」の実際の字は「輭」ですが、表示が出来ない環境があるので
俗字の「軟」の方を使っています。
※仙道(せんどう): 中国の道教や神仙思想の中で、仙人が使う術や
不老不死に到る方法のことを指していいます。
※識(し る): 「知る」と同じ意味です。
※高僧(こうそう): 徳の高い僧侶のことです。
ここでは禅僧の白隠慧鶴を指して言っています。
※奈何(いか なる): 「どのようであるか」という意味です。
※養生(ようじょう、せいをやしなう): 健康に注意して生命を保ち、
それによって長生きをすることです。
※無碍(むげ、さまたげなし): 全ての外物や現象にとらわれずに、
自由自在に物事を心得て、何にも妨害されることがないことです。
※窮(きわ める): 最後まで突き詰めていくことです。
※深洽(しんこう): 広くて奥深い境地のことです。
解説:
禅僧の「白隠慧鶴(はくいんえかく)」の著書である
『夜船閑話(やせんかんな)』を読んで思い付いたところを漢詩にしてみました。
普通は漢詩の絶句は平仄(ひょうそく)の平声(へいせい)で韻を踏みますが、
この絶句は側体(そくたい)と言いまして、仄声(そくせい)の一つである
入声(にっしょう)で韻を踏んでいます。
この漢詩を作る際に、まず承句を作り、その時の七文字目が
入声の「法」でしたので、起句と結句でそれに合わせて韻を踏んでいます。
偶然に仄声になったために、この際、一種の作詩のトレーニングのために、
あえて難しい韻を使って七言絶句を作ってみようと思いました。
この詩ではその『夜船閑話(やせんかんな)』の内容について詠んでいます。
この本は修行中の白隠(白隠慧鶴)が、禅病(ぜんびょう)という
坐禅の修行の際にかかってしまうという諸々の身体の異常を治すために、
仙人の白幽(はくゆう)の元を訪れて、
病気を治して長寿になる仙人の術を尋ねるという話です。
その白幽から学んだ仙人の術である「軟酥(なんそ)の法」の内容を
簡単に説明します。
# かなり怪しい分野に踏み込んできていますが、
# 漢詩の説明のために書いただけですので、
# その点はご了承下さい。
これは内観(ないかん)というイメージを使って行う治療法です。
(一)まず軟酥(なんそ)という色と香りのよいチーズのような乳製品が、
鴨の卵のような形と大きさをしており、
それが頭のてっぺんに乗っている様子を想像します。
(二)その香りや味が頭の中へしみこんで頭をうるおし、さらに身体の骨を伝って
身体の内部を下へとしみ通って流れていく様子を思い浮かべて、
それが足の先まで続くようにイメージします。
(三)その流れが次第に身体からあふれ出して、身体中を暖めて浸す様子が、
タライの中にいろんな薬草を調合したお湯を入れ、
そのお湯に自分がへその下まで浸かっている様子をイメージします。
この際に、香りやお湯のよい感触を思い浮かべ続けます。
仙人の白幽によると、この療法によって、病気の大半は消えて、
冬の厳しい寒さにも、長期間の飢えにも耐えられて長生きが出来ると言っており、
そしてこれを学んで実践した白隠は、禅病が治っただけでなく、
今まで手のでなかった多くの公案が解けたそうです。
お話としてはとても面白いのですが、
この白隠禅師という徳の高い僧侶はどういう意図でこの本を書いたのかと
不思議な気持ちになりました。
身体を養うことが、奥深い境地をきわめるために必要なのだろうと思い、
僕なりにも身体を大切に養いながらいろいろ学んでいこうと思いました。
世の中にはいろんな知識があるものだと、改めて思います。
こういう漢詩はかなり難解で分かりづらくなってしまうものだということを
承知しながらも、時々こういう漢詩を作りたくなってきます。
もっと自然の景色などを使ってわかりやすいものを中心にしようと
改めて思いました。
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