●原文:
十六字令「詩」 玄齋 (上平聲四支韻)
詩。
欲 喩 花 王 獨 立 姿。
唯 一 字、
愛 是 爲 君 辭。
●書き下し文:
題: 「十六字令(じゅうろくじれい)『詩』」
詩。
花王(かおう)の独(ひと)り立つ姿に喩(たと)えんと欲(ほっ)す。
唯(た)だ一字(いちじ)、
愛は是(こ)れ君(きみ)が為(ため)の辞(ことば)なり。
●現代語訳:
題「宮廷歌謡の替え歌の形式の填詞(てんし)の一つ、
十六字令(じゅうろくじれい)を『詩』という題で詠みます」
詩。
多くの花の王である牡丹(ぼたん)の花が、他の花々より
独りだけすぐれている姿にたとえようとしているのは、
ただ一つの文字なのです。
それは、「愛」です。「愛」はあなたのためだけの言葉なのです。
●語注:
※花王(かおう): 「百花の王(ひゃっかのおう)」、つまり、
牡丹(ぼたん)の花を、他の花より独りだけすぐれているのを
王にたとえた表現です。
※独立(どくりつ、ひとりたつ): 他を圧倒して独りだけすぐれている
ということを示す言葉です。
●解説:
私の当時のお相手の方への想いを「詩」という題で
十六文字で詠んでみました。
昨年の夏からは、お相手の方のために漢詩を作ることも
多くなってきました。
多くの花の中でひときわ美しい牡丹に喩えているのは、
「愛」という一文字だと、そういう気持ちを詠んでいます。
これは中国の宋の時代に流行った填詞(てんし)という
宮廷歌謡の替え歌の一つで、「十六字令(じゅうろくじれい)」と言います。
簡単に説明しますと一文字の一句目がこの詩の主題を表していて、
残りの三句でそれを説明します。その際に二句目と四句目で、
一句目と同じ韻目(韻のグループ)の字で韻を踏むものです。
興味のある方は、詳しくは下の付録をご覧下さい。
ヤフーブログでは最近規制が強くなりまして、
女性のブログには、そのブログに来たコメントの中に
特定の禁止ワードがあると、
コメントチェッカーで注意を促すメールがそのブログをしている
女性の方に、届くようになっているそうです。
その禁止ワードの一つが「愛」です。
この言葉が女性のブログにコメントする際は使ってはいけないそうです。
プログラミングもしている者として思うのですが、
そういうシステムは文脈に関係なくキーワードがあれば
警告をしてしまいますので、無粋なものだと思います。
そのために、他の方にブログにコメントをする際には
他の引っかかるキーワードを使わないように細心の注意を
するようにしております。
漢詩の中でも填詞(てんし)という宮廷歌謡の替え歌は、
宮廷の恋などの恋愛を詠むことが多いですので、
七言絶句で恋の漢詩を詠むよりはずっと作りやすくなります。
漢詩で愛を語るというのは、あまり例がないのです。
漢詩は風流な物事を詠むだけだと、そう思っている人も居ますので、
こういう種類の漢詩があることを知らない人からは、
「これはたとえ話ですか?」と言われることもあります。
漢詩にはこういうジャンルがあることも、知っていて損はないと思います。
「愛」という言葉は、安易に言葉にしてしまいかねないものだと思います。
だからこそ、漢詩などの厳しい形式の中で詠むことに意味があると
思っています。
形式を満たすために十分に言葉を選び、深く考えていく中で、
私自身の気持ちをしっかりと見据えることが出来る、
そういう利点があると思っています。
これからもこういう言葉をしっかりと考えながら漢詩にして、
私自身の想いも、しっかりと養っていこうと思います。
今の私に、お相手の方に対して何が出来るのか、
この点をしっかりと考えて、日々を過ごしていこうという、
当時の気持ちを詠んでいます。
●付録:
十六字令(じゅうろくじれい)の詳しい説明は、 Wikipedia の
以下のページにあります。
(日本語で説明をしている某サイトもありましたが、かみ砕いて
説明するためにかなり脱線した解説になっていて
正確さを欠いていました)
中国語のサイトですので中身を説明しますと、
「十六字令(じゅうろくじれい)」は詞牌(しはい: 填詞の歌曲の節回し)
の一つで、元の時代の詩人の周玉晨(しゅうぎょくしん)の
同じ詞のタイトルから取ったものです。
別名に「蒼梧謡(そうごよう)」、「帰字謡(きじよう)」などがあります。
基本的には一句目の一文字にこの詞の主題となる文字にして、
それを後ろの三句で説明するものです。
その上で平仄のパターンが決まっています。
この十六字令の平仄(ひょうそく: 古代中国の発音のルール)の
パターンは次のようになります。
一句目: ◎
二句目: ▲ ● ○ ○ ▲ ● ◎
三句目: ○ ○ ●
四句目: △ ● ● ○ ◎
◎: 平声で韻を踏むところです。
○: 平声
●: 仄声
△: 基本は平声ですが、仄声でも許されます。
▲: 基本は仄声ですが、平声でも許されます。
十六文字で何かを言うというのは大変な制約ですが、
何とか詠むことができればほっとします。
この Wikipedia のページに載っている毛沢東の十六字令の「山」などは、
雄壮な感じのする作品だなと思いました。
いろんな詠み方がありそうだと思いました。