玄齋詩歌日誌

アメーバブログを退会しました。ヤフーブログだけ続けます。よろしくお願いいたします。

源氏物語・帚木

[ リスト | 詳細 ]

源氏物語の「帚木」の巻です。
原文を現代語訳して、作中の漢詩や短歌を解説しています。
記事検索
検索

全2ページ

[1] [2]

[ 前のページ ]

「雨夜の品定め」の続きです。左馬頭(さまのかみ)の話が続きます。


ここからが本文です。



左馬頭はさらに話を続けました。

「本来の階級と、世間の信望がうまく釣り合っている、高貴な方々の家に生まれた
 娘でありながら、立ち居振る舞いや雰囲気が劣ってしまっているならば、
 それは改めて言うまでもなく、

 『どうしてこのように成長してしまったのか』

 と、情けないことに思われますね。その家の家柄に釣り合って優れている娘がいても、
 それは当然なことで、

 『このような女性こそ、この家にふさわしい方だ』

 と思われて、

 『滅多にない、素晴らしいことだ』

 と、世間の人が驚くことはないでしょう。私のような者の手の届くところでは
 ありませんので、上の階級の中のさらに上の方々の話は、脇へ置いておきましょう。


 一方で、

 『ある所にこれこれの家がある』

 と、世間に知られることもなく、ひっそりと荒れ果てた葎(むぐら)の蔓草が
 生い茂る家の一族に、思いもかけずいかにも可憐な娘が生まれている、
 そんな話こそが、世間の人にはこの上なく珍しいことと思われることでしょうね。

 『それにしても、どんな事情で、このような女性がいるのだろうか』

 と、その女性を見て、想像と食い違っていることで、不思議に思って
 世間で後々まで印象に残る出来事になるのです。


 その家の父親が年老いて、薄気味悪く太りすぎて、兄は顔立ちが醜く、
 世間の評判も格別に素晴らしいとは思われない家の奥に、
 とても美しく気位の高い娘がいて、ほんのちょっとした仕草や芸事も、
 趣がありそうに見える様子は、例えその芸がわずかな取り柄であったとしても、
 どうしたことか、案外に興味が惹かれるものです。

 そのような女性は、ひときわ優れていてわずかな欠点もないという女性には
 選ばれないものの、大した家の生まれではないからと捨てておけるものでもないですね 」


と言って、式部丞の方を見ると、

「左馬頭殿は、私の妹たちがまずまずの評判であることを思って、
 このようにおっしゃったのだろうか 」

と、式部丞は思ったのでしょうか、何も口に出しては言いませんでした。


「さてさて、上の階級と思われる女性でさえも、そのような方に出会うのは
 難しい世の中であるのに (それより下の階級で、そのようなことがあるのだろうか) 」

と、源氏は思っているようでした。

源氏は白く柔らかい着物を重ねて着ている上に、直衣(のうし: 貴人の普段着)だけを
くつろいだ様子で着ていて、結ぶ紐なども投げ出して、肘掛けに寄りかかって
寝転んでいる姿が灯火に照らされた様子は、とても見事なもので、
源氏を女性と見ても良さそうに思われました。

この源氏の君の相手には、上の階級の中でもさらに上の女性を選び出しても、
やはり満足させることは出来ないように思われました。



ここまでが本文です。


身分の低い家から、気品と美しさを持つ娘が生まれてくる、
そんな話が上の身分の男たちの噂話に出てくるというところに、
紫式部の希望のようなものも感じました。

当初の家の身分が低いという悪い情報から、後に美人の娘がいるという
良い情報が手にはいると、格別によい印象を与えるということになるのだろうと思いました。



訂正(2008/11/1):

 「雨夜の品定め」が「雨後の品定め」となっていたので訂正します。

 僕は長い間勘違いをして使っていました。すみません。

源氏と頭中将が話している中に、左馬頭と藤式部丞の二人がやってきて、
有名な「雨夜の品定め」が始まる場面です。


ここからが本文です。



源氏は微笑みながら、

「そのような、僅かな取り柄もないような女性は、いるのでしょうか」

と言ったので、頭中将は、

「本当に、その程度であるようなところには、誰がだまされて近づきましょうか。

 『長所として取り上げる所が無く、残念な身分の者』

 と、

 『すぐれて美しいと思われる程に秀でている方』

 とは、同じ数ほどいるでしょう。女性が高い階級の家柄に生まれたならば、
 大事にお世話をされて、欠点も隠れたままで目立たないことが多いですから、
 自然とその女性の様子は、各段にすぐれたものになっているはずです。
 中流の家柄でこそ、女性たちの考え方や、各自それぞれが表に出した風情も見えてきて、
 判別できることがあれこれと多くなるのです。下の階級の身分に至っては、
 格別聞いて心に留まることはありませんね」


と言って、頭中将がとてもこのような事情に通じているような態度でいるので、
源氏はさらに話を聞きたくなりました。


「その階級は、どのように区別をつけるのですか。どのような方を上・中・下の
 階級に置いて区別をつければよいのですか。元々は高い身分に生まれながら、
 落ちぶれた身の上になって、身分が低くなって人並みの階級でなくなった者と、
 直人(なおびと: 五位以下の官位の人)であった者が、
 上達部(かんだちめ: 三位以上の官位の人)にまで立身出世していって、
 我が物顔で自分の邸の中を飾って、『立派な人にも劣るまい』と思っている者と、
 その境目をどのように区別すればよいのでしょう」


と、源氏が頭中将に尋ねている時に、左馬頭や、藤式部丞といった人たちが、

「帝の御物忌みに、一緒に籠もることにしましょう」

と言って、こちらへやって来ました。

色好みの風流男で、弁舌の巧みな者たちなので、頭中将は彼らを待ち迎えて、
この階級についての話を、判断し評定しようと議論をしました。
その内容は、とても聞き苦しいものでした。まず左馬頭が、


「立身出世していったとしても、元々はしかるべき階級の家系ではなかった
 わけですから、本人たちが思うことと、世間の人々が思うこととは
 やはり異なるものになりますね。また、元々は階級の高い家系に生まれていたとしても、
 世の中を渡っていく手がかりが少なく、時世に流されていって、名声も落ちぶれてきますと、
 気位の高い気持ちは持っていても身の回りを満足のいくようにすることはできず、
 体裁の悪いことまでも他人に見せるようになってしまいますので、
 判断しますにそれはどちらも中の階級に置くのがよいでしょう。

 受領(ずりょう:国司(こくし: 地方行政の長官)の別名です)といって、
 地方の国々の政治に従事するだけで、階級の定まった中にも又いろいろな段階が
 ありまして、中の階級と言ってもさほど不自然のない者を、選び出すことも
 できるのが今の時代ですね。

 中途半端な上達部(かんだちめ: 三位以上の上流貴族)よりも、
 非参議(ひさんぎ: 官位のない四位以下の者)の四位の階級の者の、
 世間の評判が残念なものではなく、元々の生まれが高い身分のものが、
 落ち着いた振る舞いで暮らしている様子は、とてもさっぱりしたものですよ。

 日々の生活で不足のあることなどは、それはそれで、ないままに任せて、
 一方で、娘のためには倹約することもなく、眩しいほどに大切に世話をして、
 見下すことも難しい環境に生まれ出てきた女性も、数多くいることでしょう。
 ある女性が宮仕えに出されることになって、思いもかけない幸運が起こる例なども、
 多いことでしょうね」


などと言うと、

「大抵、富み栄えている家の女性に近づけば良いようだね」

と源氏は言って笑っていると、

「他の方が言っているように、源氏の君らしくないおっしゃり方ですね」

と頭中将は言って、少々嫌がる様子でした。



ここまでが本文です。


生活が苦しくなると見苦しい部分までを他人に見せることになってしまう、
それはもはや上の階級ではない、という所は、厳しい家の批評ですね。

四位以下の者にも、良い者たちがいるという話の中に出てくる娘の話は、
明石の姫君が出てくる伏線に思いました。

「若紫」の巻にも、明石の姫君の話がちらっと出て来ますね。

久しぶりに源氏物語を更新します。

帚木(ははきぎ)の巻の始まりです。源氏が十七歳の梅雨のころの話です。


ここから本文です。




光源氏、名前だけが大げさで(ものものしく)、人に非難される出来事が多いことに、

「ますます、このような色好み話が、後の世にも伝わって、軽薄な浮き名を流すのだろうか」

と思いながら、源氏が隠していた隠し事さえも、語り伝えてきたというのは、
世の中の人々の何とおしゃべりで口の悪いことでしょう。とは言うものの、
源氏はとても甚だしく世の中に遠慮して、まじめにしていた所には、
上品で風流な所はなくて、古い物語で好色家として有名であった
交野(かたの)の少将には笑われていたことでしょうね。


まだ源氏が中将であった頃は、宮中に伺候するばかりで、夫人のいる左大臣家へは
途切れ途切れに訪問していました。

「忍ぶの乱れや(人目を忍ぶ恋の心惑いだろうか)」

と、舅の左大臣は噂話に疑うこともありましたが、源氏はそれほどには、
浮気っぽく振る舞うような、ありふれた露骨な好色などは、好ましいとは思わない
性格でありましたので、ごくたまには、いろいろな事情で予想と異なり、
あれこれと気をもむ事の多い恋を、心の中で思い詰める癖が甚だしくて、
源氏という方にふさわしくない振る舞いも、中には入り交じっておりました。



梅雨の長雨が続いて、晴れる間もない頃に、帝の物忌みの時期が続いて、
源氏は宮中にとても長く伺候していた時、左大臣は、

「待ち遠しくてとても残念だ」

と思いましたが、源氏のすべての装束などを、あれやこれやと、
今までに例がないほどにこしらえさせながら、左大臣の息子の貴公子たちは、
ひたすらにこの源氏の宿直所での宮仕えを勤めておりました。

中でも宮様と左大臣との間にできた息子の中将(頭中将)は、
中でも特に源氏と馴れ親しんでいて、遊びや戯れなどの際も、
他の人よりは源氏に気安く馴れ馴れしく振る舞っておりました。

彼の舅の右大臣が、大事に世話をしてくれる妻の家には、この中将も、
とても億劫に思っていて、いかにも好色らしい浮気者でありました。

実家の左大臣家の方にも、自分の部屋の装飾を眩しいほどに素晴らしくして、
源氏が出入りする所には共についていって、夜も昼も、学問も遊びも、
源氏と一緒にして、源氏に少しも引けを取らない様子でした。
源氏とどこでも親しくしているうちに、中将は自然と、恐縮する様子もなく、
心の中に思うことさえも隠し通すことができないほどに、親しみなついておりました。


しみじみと一日じゅう降り通して、ひっそりと静かな宵の雨によって、
殿上の役人の詰め所にもほとんど人がいなくなったとき、源氏の宿直の部屋も、
普段よりは静かな雰囲気がしておりました。

源氏は大殿油(おおとのあぶら: 宮中や御殿の油を用いた灯火)の近くで、
文書などを見ているついでに、頭中将が近くの厨子(ずし: 文書等を入れる両開きの戸棚)から
様々な紙の手紙等を引っ張り出して、ひどく見たがる様子なので、

「差支えないものを少しは見せましょう。中にはみっともないものもありますから」

と、源氏は許可しなかったので、

「その、気を許して、『きまりが悪い』と貴方が思うようなものこそ、
 私は見てみたいのですよ。人並みの普通のものは、取るに足りない私のようなものでも、
 身分相応に合わせて、何度も手紙をやりとりして見ていますよ。
 各自それぞれに、恨めしいその時々の、いかにも待っている顔でいる
 夕暮れ時の文章などは、見どころのあるものでしょう」

などと頭中将は恨み言を言いましたけれども、高貴な、源氏が必死で隠さなければならない方
からの手紙などは、このように、大雑把に厨子などにちょっと置いて散らかすようなことは
あるはずもなく、奥深い所にしまっておくに違いないと改めて思って、
これは二の町(にのまち: 二流。一流の町の区画を外れた、という意味です)の、
気安いものであろう、などと思いながら、頭中将は片端から少しずつ見ていきました。


「よくもまあ、いろいろな手紙があるものですね」

と頭中将は言って、当て推量に、

「これはあの人からの手紙だろうか。あれはこの人かな」

などと頭中将が尋ねる中には、言い当てられたものもありました。
一方で正解とかけ離れたことを思い比べて疑う様子には、

「面白いものだ」

と源氏は思いながらも、言葉少なに、何やかやと紛らわしながら、
手紙を取り上げて隠してしまいました。


「貴方こそ、手紙をたくさん持っているでしょう。少し見せてほしいですね。
 そうしてこそ、この厨子も気持ちよく開けられるというものです」

と源氏が言うと、頭中将が、

「貴方が御覧になるような価値のあるものこそ、滅多にないものでしょう」

などと言うついでに、

「 『女性の、これならば良いと、非難する所のない者は、滅多にいないものだ』

 と、私はやっと理解したところです。

 『単に表面上だけの感情で、手紙をすらすらと書き、その場その場の適切な返答を心得て、
  ちょっと返答するというような女性は、身分相応に悪くないものも多い』

 と私は思いますけれども、それさえも、本当にその分野で優れた者を選び出そうとする際に、
 決して選に漏れることのない者というのは、本当に滅多にいないものです。

 女は自分の心得のあることの程度のもので、各自それぞれ得意になってしまって、
 人を貶めることなどをして、みっともないことをする者が多いのです。
 親などが付き添っていて、娘をとても大切に育てて、将来のある深窓の女性である間は、
 男は単にその女性の僅かな取り柄を評判で聞いて、心を動かすこともあるようです。
 娘の顔が美しく、気持ちはおおらかで若々しく、家の生活に追い回されることのないうちは、
 何ということのない芸事でも、人を真似るのに一所懸命になることもあるので、自然と、
 一つの芸を上手に出来ることもあります。その娘の世話をする人は、娘の欠点を隠して、
 他人に言っても何とかなる(長所の)方の表面を取り繕って、それらしく話して、

 『それは、そうではない』

 などと、いいかげんに、女性をどうして推し量り、けなすようなことが出来ましょうか。

 『本当か』

 と女性を見てつきあっている間に、見劣りしないでいられるというのは、きっとないことでしょう 」


と言って頭中将がため息をつく様子も、恥ずかしそうな様子なので、
源氏も、頭中将の話のすべてではないけれども、源氏自身も思い当たることが
あったのでしょうか。少し微笑んでいました。


  (注)「おひさき籠れる、窓のうちなる程(将来のある深窓の女性である間) 」は、
   以下の長恨歌の一節の引用です。
   (長恨歌の始めの方の、楊貴妃が後宮に上がる場面の一節です)

   楊 家 有 女 初 長 成  楊家 女(むすめ)有り 初めて長成す
   養 在 深 閨 人 未 識  養われて深閨に在り 人未だ識らず

   (訳)楊家に娘がいて、たった今、成長した。
    奥深い婦人の部屋内で育てられたので、人々はその存在を知らなかった。


   昔の資料では、「深閨」が「深窓」となっていましたので、
   源氏物語の中では「窓のうち(深窓の女性) 」となっているそうです。
   



ここまでが本文です。

これから他の人物が加わって、女性談義を始めることになります。
昔の価値観が反映されていますが、その中でも紫式部の目には、
同性が厳しく映っているように思います。

全2ページ

[1] [2]

[ 前のページ ]


.

ブログバナー

白川 玄齋
白川 玄齋
男性 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
検索 検索

詩歌関連

写真・画像関連

文学・語学・その他

殿堂入り

自由律俳句

登録されていません

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫
数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事