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パズル「仲が良すぎる村」の解答。 まず問題は次のとおり。 五〇組の夫婦が暮らし、男全員がほかの奥方たちと不倫の真っ最中という仲の良すぎる村がありました。村の女は下世話な噂話が大好きなので、自分の夫以外の不倫には即座に気づきます。でも自分の夫の不倫にだけは気づけません。何せ気の毒で誰も教えてくれないからです。ところで、女権拡張という点で、はるかに先進的なこの村では、自分の夫の不倫に気づいた女は即日その夫を処刑します(婚前交渉を行った少女を焼き殺してしまう村が現実にあるくらいですから、これくらいどうってことはありません。当然の報いです)。この風習に疑念を感じている女はいませんし、不倫をした男は死んで当然と本気で信じています。さて、表面上は何事もなく、平和を謳歌していたこの村に、ある日、「細○数子」と名乗る美しい女霊媒が姿を現します。彼女は決して嘘をつかず、真実を見通す神通力を持つことで世界的に有名な女性で、ギネスブックにも名前が載っているくらいでした。その彼女が村に入るや、「汚らわしい。この村では少なくとも一人の夫が不倫をしています。地獄に落ちるわよ」とズバリ言いました。さあ、この村はどうなるのでしょう。
【注意】 解答を見る前に、自分で解いて見ましょう。 通常は絶対に使わない推論を利用するため、ノーヒントで解答できる人はほとんどいないはずです(かつて類問を解いたことのある人はもちろん別)。解けない場合はまず「泥のついた院生」(→http://blogs.yahoo.co.jp/syouronbun_taisaku/29258018.html)に取り組み、わからなければ、解答も見てしまいましょう。 というわけで、このパズルを解けても「頭の良さの証明にはなりません」。あくまで、友人に出題して「軽く優越感を味わうための道具」として使いましょう。 【解答】 この問題も「泥をつけた院生」と同じく、「全員不倫をしている」という初期条件を無視して、「一人を除いて誰も不倫をしていなかったら」と仮定するところからはじめる。もちろん自分の夫が不倫をしているかどうかは不明。誰も教えてくれないからだ。 ◎ケース1(不倫×1、貞節×49) 仮に花子の夫だけが不倫を働いていて、残り49人が貞節だった場合。 細○先生が「必ず一人はいるわよ」とズバリ言っている以上、不倫中の夫はいるはず。ところが、花子には心当たりがありません。自分の夫以外に不倫をしている夫がいるなら、必ずわかるはずなのに……。そこでふと気づく。「あ、私の夫が不倫をしているんだわ」と。もちろん即日、夫を処刑する。 ◎ケース2(不倫×2、貞節×48) 仮に花子の夫と美代の夫が不倫を働いていて、残り48人が貞節だった場合。 ケース1とは違って、花子には心当たりがある。「あら、美代ちゃんの夫のことだわ。細○先生もズバリ言い過ぎね。これで、あの人、死ぬことになっちゃうわ」なんて同情したりする。ところが、その日、美代は夫を処刑しません。習慣では即日処刑することになっているのに。「なぜかしら……」と不思議に思っている花子は、ふと気づく。「ああ、もう一人いるんだわ」と。もちろん、美代も同じように気づく。そしてその日、花子と美代は揃って夫を処刑する。 花子にとって夫はグレーだから、 不倫×1、貞節×48、不明(自分の夫)×1 となる。ここで二つのケースを仮定する。 ■仮定1:自分の夫は「貞節」= 不倫×1、貞節×49 →美代は即日、夫を処刑。 ■仮定2:自分の夫は「不倫」= 不倫×2、貞節×48 →美代は即日、夫を処刑しない。 仮定1は上述のケース1と同じだから、美代は即日夫を処刑する。仮定2では、花子も美代も、それぞれ「ああ、美代(花子)の夫、処刑されちゃうのね」と、少なくともその当日は、ひとごとのように考えている。しかしその日のうちは誰も夫を処刑しない。二人とも「不倫をしているのは美代(花子)の夫」と思い込んでいるからだ。そこで気づく。「ああ、不倫をしている人がもう一人いるから、美代(花子)は処刑しなかったのね。でも、ほかに不倫をしている人がいない以上、それは間違いなく私の夫!」。というわけで、二日目、二つの処刑が行われる。 まとめると、不貞×2、貞節×48 → 2日目に2つの処刑 となる。 ◎ケース3(不倫×3、貞節×47) 仮に花子の夫と美代の夫と珠子の夫が不倫を働いていて、残り47人が貞節だった場合。 花子も美代も珠子も、自分の夫は貞節だと信じているから、ひとごとのように「ああ、2日目に2人の夫が殺されちゃうのね」と考えている(「不貞×2、貞節×48 → 2日目に2つの処刑」を思い出して欲しい)。ところが、花子・美代・珠子が驚いたことに、二日目も無事過ぎる。そこで、3人は同時に気づく。「ああ、もう一人いるから、処刑はなかったのね。ほかに不倫をしている人がいない以上、それは私の夫に違いない!」と。というわけで、三日目、三つの処刑が行われる。 まとめると、不貞×3、貞節×47 → 3日目に3つの処刑 となる。 ◎ケース4(不倫×4、貞節×46) 仮に花子の夫と美代の夫と珠子の夫と民世の夫が不倫を働いていて、残り47人が貞節だった場合。 花子も美代も珠子も民世も、自分の夫は貞節だと信じているから、ひとごとのように「ああ、3日目に3人の夫が殺されちゃうのね」と考えている(「不貞×3、貞節×47 → 3日目に3つの処刑」を思い出して欲しい)。ところが、花子・美代・珠子・民世が驚いたことに、三日目も無事過ぎる。そこで、4人は同時に気づく。「ああ、もう一人いるから、処刑はなかったのね。ほかに不倫をしている人がいない以上、それは私の夫に違いない!」と。というわけで、四日目、四つの処刑が行われる。 まとめると、不貞×4、貞節×46 → 4日目に4つの処刑 となる。
◎ケース5(不倫×5、貞節×45)
◎ケース50(不倫×50、貞節×0)花子と美代と……って、しつこいですね。もう予想がつくと思いますが、妻の名前が一つ増えて、数字がそれぞれ変わるだけです。要するに、不貞×5、貞節×45 → 5日目に5つの処刑 ですね。 というわけで、だいぶ端折ります。ずらっと、ケース6、ケース7、……と続いて、とうとうケース50です。 仮に花子の夫と美代の夫と珠子の夫と民世の夫……が不倫を働いていて、誰も貞節ではなかった場合。 花子も美代も珠子も民世……も、自分の夫は貞節だと信じているから、ひとごとのように「ああ、49日目に49人の夫が殺されちゃうのね」と考えている(「不貞×49、貞節×1 → 49日目に49つの処刑」を思い出して欲しい)。ところが、花子・美代・珠子・民世……が驚いたことに、49日目も無事過ぎる。そこで、50人は同時に気づく。「ああ、もう一人いるから、処刑はなかったのね。ほかに不倫をしている人がいない以上、それは私の夫に違いない!」と。というわけで、50日目、50の処刑が行われる。 以上のように、答えは「何も起こらない。ただし49日間は」だ。「50日後に村の男子を殲滅する惨劇が起こる」が正しい答えとなる。 「泥のついた院生」とほぼ同じ推論過程です。ですから、「泥のついた院生」を理解できた人はこのパズルも解けたと思います。というわけで、さらにもう一問、チャレンジしてみましょう。→「不幸な囚人(http://blogs.yahoo.co.jp/syouronbun_taisaku/29261014.html)。ただし味付けがかなり「ブラック」なので、心臓の弱い人はチャレンジしないでください。 |
パズル
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これは講義で扱っていないもの。 ある残酷な刑務所長が囚人を受け入れるたび、幼女に性的暴行を加えた囚人には「カス」、そうでない囚人には「クズ」と額に刺青を入れました。監視カメラで個人的に「カス」を見ながら、「この糞野郎」と罵るためです。刑務所には額を見るような手段がまったくなく、囚人同士で額の文字を教えあうことも禁止しています。刑務所長は、毎日、点呼のために囚人を中庭に集めて、ちょっとした話をしますが(「おまえらは死んで当然の人間だ」とか「この世に生まれたこと自体が間違いだ」とか)、ある日、「額の文字が『カス』だとわかった人間は一歩前に出ろ。もし一歩前に出た人間が全員本当に『カス』だったら、即日全員を釈放する。もし一人でも間違えた人間がいたら、即日全員を死刑にする。話し合いは今日から一切禁止。仮に額の文字を教えあうような行為が認められた場合はやはり即日死刑にする。時間は何日かけてもいい。毎朝尋ねるから、わかった人間は一歩前に出ろ。もちろん『カス』は少なくとも一人いる」と突然言い出しました。もちろん全員処刑するつもりでした。いずれ痺れを切らした囚人が話し合いをすると考えていたのです。囚人たちはこんな刑務所から出たくて仕方ありません。あなたが囚人だとして、さあ、どうしますか?
W・パウンドストーン著『ビル・ゲイツの面接試験』(青土社)から作成。 まずは「泥をつけた院生http://blogs.yahoo.co.jp/syouronbun_taisaku/29258018.html」にチャレンジしてみましょう。もし解けたり、あるいは、ギブアップして解説を読んだりしたら、そのあとこの問題にチャレンジしてみてください。 ちなみに、全員「カス」でも、全員「クズ」でもありません。その点で「泥をつけた院生」や『仲の良すぎる村」よりも難しくなっています(たぶん)。がんばって。
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これも講義で扱ったもの。 五〇組の夫婦が暮らし、男全員がほかの奥方たちと不倫の真っ最中という仲の良すぎる村がありました。村の女は下世話な噂話が大好きなので、自分の夫以外の不倫には即座に気づきます。でも自分の夫の不倫にだけは気づけません。何せ気の毒で誰も教えてくれないからです。ところで、女権拡張という点で、はるかに先進的なこの村では、自分の夫の不倫に気づいた女は即日その夫を処刑します(婚前交渉を行った少女を焼き殺してしまう村が現実にあるくらいですから、これくらいどうってことはありません。当然の報いです)。この風習に疑念を感じている女はいませんし、不倫をした男は死んで当然と本気で信じています。さて、表面上は何事もなく、平和を謳歌していたこの村に、ある日、「細○数子」と名乗る美しい女霊媒が姿を現します。彼女は決して嘘をつかず、真実を見通す神通力を持つことで世界的に有名な女性で、ギネスブックにも名前が載っているくらいでした。その彼女が村に入るや、「汚らわしい。この村では少なくとも一人の夫が不倫をしています。地獄に落ちるわよ」とズバリ言いました。さあ、この村はどうなるのでしょう。
W・パウンドストーン著『ビル・ゲイツの面接試験』(青土社)、ジョン・A・パロウス『確率で言えば』(青土社)から作成。 まずは「泥をつけた院生http://blogs.yahoo.co.jp/syouronbun_taisaku/29258018.html」にチャレンジしてみましょう。もし解けたり、あるいは、ギブアップして解説を読んだりしたら、そのあとこの問題にチャレンジしてみてください。 解答は今夜か明日。それまで自分で考えて見ましょう。
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先日のトライアル・レクチャーで解説したパズルは下。 ある農学部の大学院での話。いつもの農作業を終えた大学教授と三人の大学院生が、しばしお茶を囲んで休憩することにした。ふと三人の院生全員の額に泥がついているのを見た教授は、少し悪戯っ気を出して、「少なくとも一人の額に泥がついてるぞ」と、わざわざわかりにくいヒントを出してみた。理系学部の院生である三人は、論理的に思考のできる人たちばかりだ。このあと、彼らはどうしただろうか。
ジョン・A・パロウス『確率で言えば』(青土社)より作成。これは有名なパズルで、初出はアロンゾ・チャーチ氏によって1930年代に作成されたものとのこと。 あくまでもパズルなので、「太郎『おまえ、泥ついてるぜ』、次郎『ははは。おまえもだよ』、三郎『二人ともバカだなあ。ま、自分の額は見えないから、仕方ないけどね』、太郎&次郎『そういうお前もついてるっつうの』、一同『はははは』と笑って席を立つ」なんて答えないように。恐らく一番多い答えは「何も起こらない」だと思うけど、もうちょっと考えて。三人とも理系大学院の生徒だから、非常に「論理的」だ。 ■答え このパズルを解く鍵は、まず「三人とも泥をつけている」という条件を無視し、「一人にだけ泥がついていたら」と仮定したうえで「どうなるか」と考えるところにある。ここが思考の死角だ。「三人とも泥をつけている」と明言しているのに、わざわざ「一人だけだったとしたら」と考えてみる。こんなめんどくさいことをする人はいないが、そう仮定することで問題解決にたどりつく。 さて、仮に、太郎にだけ泥がついていとする。太郎には、額に泥をつけていないまっさらな次郎と三郎の額が目に入るはず。教授は「少なくとも一人の額に泥がついているぞ」とおっしゃっている(教授が嘘をつくはずはない!)。かつ自分以外の二人には泥がついていない。とすれば、自分に泥がついているに違いない! 論理的な院生なら必ずそう結論する。そして彼はすぐさま立ち上がって額を洗いに行くだろう。 それでは次に、太郎と次郎とに泥がついているとする。太郎には、額に泥をつけている次郎とまっさらな三郎が目に入る。もちろん次郎には、額に泥をつけている太郎とまっさらな三郎が。付け加えると、三郎には、額に泥をつけた太郎と次郎が見えている。太郎にしてみれば、次郎はなぜ額の泥に気づかないんだろうと不思議に思う。太郎は自分の額には泥がついていないと思っているので、次郎にはまっさらな太郎と三郎の姿が見えているはずだ。少なくとも一人には泥がついているのだから、次郎はすぐさま立ち上がって額を洗いにいくはず……。そこで太郎は気づく。「次郎がすぐさま立ち上がらないってことは、俺にも泥がついてるんだ!」。論理的な次郎も、もちろん太郎と同じように考えつく。つまり太郎と次郎はしばらくしてから同時に立ち上がって額を洗いに行くことになる。 それでは、いよいよ、太郎と次郎と三郎全員に泥がついている場合を考える。もちろん額に泥をつけた残り二人の姿が全員に見えている。太郎は考えるだろう。「仮に自分の額に泥がついていないとすれば、次郎と三郎はしばらくしてから同時に立ち上がって額を洗いに行くことになるだろう」と。ところが、しばらくしても二人は額を洗いに行かない。「ああ」と気づく。「俺にも泥がついてるんだ」と。もちろん論理的な次郎も三郎も、太郎と同じように考えつく。そして太郎と次郎と三郎とはだいぶ経ってから同時に立ち上がって額を洗いにいくことになる。 以上のように、答えは「何も起こらない。ただししばらくは」だ。「だいぶ経ってから三人は同時に立ち上がって額を洗いに行く」が正しい答えとなる。 楽しんでいただけましたか? それでは、次のパズルにチャレンジしてみましょう。
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