首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

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ジ ム 「それから、又、一年がたちました。
    相変らず、デラの長い髪は美しかった。でも、相変らず暮しは貧しく、相変らず
    デラは売れない役者で、僕は更に売れない童話作家でした。
    そして、クリスマス……ボクはまた、彼女に新しいおとぎ話をプレゼントしまし
    た。
    名もない、金もない僕には、それしかプレゼントできるものがなかったんです」
女の声〔デラの声〕「……ジム、今年のクリスマスも七面鳥は無理みたいね……」   
ジ ム 「ああ……うん……でも、聞いてくれ、君に贈る僕のプレゼントを……昔々、ま
    だ、この国にインデアンしかいなかった頃、セントラル・パークのあたりに、妖
    精達の住む世界があったんだ。
    ところが、白人達が住みだし、レンガとコンクリートで、造られた街が広がり、
    人々の心が、煤まみれになりだすと、妖精達の世界は、だんだん小さくなってい
    った。そして、今はもう、ほんのわずかの、限られた人にしか、妖精の姿は、見
    えなくなってしまった」
女の声〔デラの声〕「そこで、ピーターパンのような男の子が…… 」
ジ ム 「いや、僕のは女の子さ」
女の声〔デラの声〕「(溜息)……どっちでもいいわ……ともかく、その子が、人々のす
    さんだ心をたちなおらせて、再び、妖精の国が、みんなと一緒に住んでいけるよ
    うにと、この大都会にやってきた……のよね」
ジ ム 「あん? なぜ知っているの?」
女の声〔デラの声〕「似た様なストーリー、テレビでやっているもの……ただし、テレビ
    は、もっと過激……その妖精の国の子は、魔法のマシンガンで、すさんだ心の連
    中をバリバリ、やっつけちゃう。
    名ずけて、〔妖精戦士ピーター・ポピンズ〕……
    これもアニメでね、私の友達が声の主役をやっているわ……私も出るはずだった
    の。ピーター・ポピンズの魔法を見て、ウッソー!って一言、言う役……でも、
    アフレコスタジオに行ったら、その台詞、カットされていて、あったま来ちゃっ
    たからスタジオのコーヒー、十三杯、タダ飲みして帰ってきたわ。
    でも、十三って数字がまずかったのよね。その日から次の金曜日まで、お腹が、
    ローラー・コースター……悲鳴も出やしなかったわ……
    あ、そうそう、その主役の女の子、実は同棲しているんだけどね、ほら、今、売
    れっ子の作家で、ピート・サイモンってペンネームの……」
ジ ム 「ピート・サイモン?……ピート・ハミルにニール・サイモン……そか……すい
    ませんね!……僕の名がジム・ヤングで……」
      大きく溜息………
                                        
         「時は流れて」
      かすかに かすかに 時は流れる
      変るものなど ないはずなのに
      なにかが 確かに 見えてくる
    ………スポットライトにジムの姿がぽつんと浮び上がって……        
ジ ム 「それから又、一年がたった。
    デラの長い髪は、変わらなかった。
    デラが売れない役者であることも、僕が売れない作家であることも、変わらなか
    った。
    しかし、僕らは、変わらないことの貧しさに、もう耐えられなかった。
    お互いに、自分の才能のなさに失望し、いらつき、口喧嘩が絶えなくなり……そ
    の喧嘩の中身ときたら、口で言い様も無いほど、そう、極限までおぞましく、た
    だでさえ、少ない食器や家具が、宙を飛び、砕け散った…… 
    そして、それにも疲れ果てて……」
      かすかに、クリスマス・ソングが聞こえてくる。
ジ ム 「又、クリスマスがやってきた……
    僕は、決心した。これ以上、お互いを縛りあうのは沢山だ。
    彼女には、彼女の……そして、僕には僕の行き方がある。
    もう、僕は彼女に、僕のおとぎ話は贈れない……」
      ジムは、すべてをふっきるように、ダッと駈け去る。
                                        
                                        
                                        
                     暗 転                
                                        
                  P A R T 2             
                                        
      クリスマス・ソングが、かすかに聞こえている。
      その曲を口づさみながら、コートの襟をたて、髪をスカーフで覆った女……
      デラが来る。
デ ラ 「クリスマス……クリスマス……メリー・クリスマス。
    子供達にとっては、クリスマスから新年にかけて、いちばん、お楽しみの時期で
    すね。でも、私は、はたちをすこしばっか通りすぎちゃって、年の暮れって、な
    んとなくヤバイなあって感じ……わしゃ、まだ、おばんじゃな〜い!……   
    (苦笑)……あ、申し遅れましたが、わたくし、デラ・マイルズ。
    ふる里は、カウボーイの国、テキサス。ヒャッホー!……でも、私は女の子。
    カウボーイは似合わない。なに?……けっこう、様になる? ノンノンノン……
    私はやっぱり、ブロードウェイのミュージカル!
    スポットライトを浴びて大スター。なりたい、なりたい一心で、親の勧める結婚
    を、とっと、さっさと蹴っとばし、家出して来てグリニッチ、やって来ましたビ
    レッヂへ……と、こうきちゃう。
    この街に来た時はもう、なんだか、足が震えちゃって、来た〜って感じ。やった
    〜って感じ!」                             
                                        
         「グローイング アップ ドリーミング」            
    (2)                                 
      さあ いま 幕があく
      広がる世界 マイステージ
      あの街角に 夢がころがり
      この横町で つかむサクセス
      グローイング アップ ドリーミング
      グローイング アップ ドリーミング
                                        
      スポットライトが照しだし
      フル オーケストレーションがかなでる 独り芝居
      私だけの舞台
      グローイング アップ ドリーミング
      グローイング アップ ドリーミング
                                        
デ ラ 「でも、女の子一人、こんな都会で生きていくのは楽じゃなかった。
    どうにかこうにか、小さな劇団にもぐり込んだけれど、ライバルはいっぱい。
    とっても、役なんて貰えそうになかったの。
    その内、貯金も使い果し、アパートも追い出され、いまさら、国にも帰れず、田
    舎者の私には、友達もいなくて、どうしたらいいのか分んなくって……そう、あ
    れは、三年前のクリスマスだったわ。
    私は、街のショーウインドーを見つめながら、フラフラ歩いてた……
    三日も、なにも食べていなくて、ウインドーの中のクリスマス・ケーキが羨まし
    くって、プレゼント用のオモチャも羨ましくって、なにもかも羨ましくって……
    マッチ、買って下さい。マッチ、買って下さい。まるで、マッチ売りの少女……
    でも、マッチ売りの少女の方がまだまし……だって、私には、買ってもらうマッ
    チもなかったもの……                          
    そして気が付いたら、この公園に来ていたの。
    もう、一歩も歩けなかった。私、倒れ込むように、そこのベンチに坐ったの。
    そして、いつの間にか、時間がたっていた。もしかしたら、お腹がすきすぎて、
    気を失っていたのかもしれないわ。
    そして…… 気が付いたら、後のベンチに、男がいたわ。それも、なんだか知ら
    ないけどブツブツ喋っているの。私、ゾーッとして、早く逃げなきゃって思った
    わ。でも……駄目……お腹が減ってて、足が動かないの。
    仕方ないから、じ〜っとしていた。どうせ、どうなったって、なくすものなんて
    もうなんにもないんだし、私、ようするに、いなおっちゃったのよね。
    そしたら、後のベンチの男が何を話しているのか分ったの……子供っぽい、いえ
    今の子供だっら、ダサイ! の一言で言いきられちゃいそうな、古いタイプのお
    とぎ話……それを、公園のハトに向って一生懸命、話しているの。
    退屈だったけど、お腹減ってて動けないし、仕方がないから聞いていたわ。
    一時間も二時間も、ず〜っと……そして、あたりが暗くなった頃」
男の声〔ジムの声〕「あの、あの、どうして、ず〜っと、ここに坐っているんですか?」
デ ラ 「来た、来た。しかと、しかと、知らんぷり。でも、よく考えてみれば、、他の
    ベンチには誰もいないし、わざわざここに何時間も坐っているなんて、変に思う
    のが当然よね。
    まさか、お腹、減ってて動けませんなんて、可愛い女の子の台詞じゃないし、だ
    いち、こんなスタイルのいい……ダメ! 反論は許しません……ともかく、そん
    な私が、三日も何も食べていないなんて言ったって、誰も信じてくれないでしょ
    ……だから、もう一度、あの人が……」
男の声〔ジムの声〕「どうして、ず〜っとここに坐っているんですか?」
デ ラ 「私、答えたの。ちょっと気取って、あの……あなたのお話しているおとぎ話、
    素敵で……聞いていたかったんです。そうしたら、彼、なんかやたら感激するの
    よね。単純と言うのか、かわいいとゆ〜か……」
男の声〔ジムの声〕「あの……今日、御予定は?」                 
デ ラ 「ある訳ないじゃん。(ハッとして、あわてて気取る)いいえ……うふっ……そ
    う言ったらあの人、私を、アパートに誘ったわ。
    危ない、危ない……相手の身元を確めなくっちゃ……あの、あなたは?……」
男の声〔ジムの声〕「あ、すいません。僕、ジム・ヤング。作家してます……」
        
                            (つづく)


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