怪談ブログ

鳴るたびに惨の予感を伝えつつ我を狂わす電話一台

幽霊譚

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癌で死んだ小川君

 人間が子供から大人へ成長する時期には、様々な精神の混乱が見られるものだ。
 この物語をわたしの20歳前後の気の迷いと捉えるのも自由だ。

 しかしわたしは青年期の出発点で遭遇したこの不可解な出来事には単に恐ろしい以上のなにかを感じる。
 
 それはあたかも大人になるための通過儀礼として体験した、ある特殊な出来事であったかのように。




 その当時、わたしは大学一年生で某私立大学の教育学科に在籍していた。無論、僻地のアパート暮らしである。そんなわたしと不思議と気の合った人物が英文科在籍の小川君(仮名)である。
 小川君は仙台出身ということで、秋田出身のわたしと不思議と気が合った。

 小川君は「尾崎豊」の大ファンであったり、久保書店から出ていた官能劇画を沢山持っていたりと、ちょっとした趣味人であった。
 小川君から尾崎豊の「シェリー」という歌の素晴らしさや、久保書店から出ていた「雨宮じゅん」の漫画の面白さを教えてもらったわたしはますます小川君と親密になっていった。

 そんなある日のこと。

 深夜、わたしは小川君とだべるため彼の自宅へ電話をかけた。しかし誰も出ない。わたしはどこかへ遊びに行ったのだろうと思い落胆してその日は早く寝た。
 思えばこの日が怪異の始まりであったのだ・・・

 次の日、さらにその次の日もわたしは小川君に電話をかけた。やはり誰も出ない。

 意を決したわたしは小川君の自宅へ歩いて行ってみた。ある初夏の日の深夜のことであった。
 自宅からてくてく歩いて小川君のアパートに到着した。
 小川君の部屋には電気がついていない。
 それでもわたしは小川君の部屋の前まで行き、ガチャリ!とドアの取っ手を回した。
 ・・・やはり鍵がかかっている。

 わたしは小川君はなんらかの事情で仙台に帰郷しているのだろうと思った。そしてしばらく小川君のことを忘れることにした。



 やがて夏休みが来る。
 わたしは秋田へ帰郷してほとんど小川君のことを忘れてしまった。

 しかし大学の長い夏休みが終わった後、再び大学の校舎に舞い戻ったわたしの耳に妙なウワサが聞こえてきた。

 「文学部の学生の中に胃癌で死んだ男子生徒がいる。。。」

 わたしはとっさに小川君のことを思い出した。しかしまさかあの明朗活発な小川君が死ぬなんて・・・わたしは混乱した。

 このウワサは文学部の生徒の間で一時期ささやかれた後、まるで潮を引くように消え去った。

 わたしは学生課に行って学生名簿を見せてもらいに行った。しかし「プライパシーの問題」で名簿は見せてもらえなかった。

 そして秋も深まった10月頃から妙なことがわたしの周りで起こりだした。大学からでてゆくマイクロバスの中に小川君らしき人影を見たのだ。そしてまたしばらくすると学食の中に入ってゆく小川君を見た。

 小川君はまるでわたしを弄ぶかのように、時々チラリと姿を見せた。しかし彼は絶対に捉まらないのだ。接近するとまるで魔法のように消えうせる。

 わたしの精神状態も尋常ではなくなってきた。
 小川君は生きているのだろうか。
 それとも癌で死んだのだろうか。

 わたしは小川君の幻影に巻き込まれるように、精神を病み始めた。
 
 晩秋の夜長、窓から小川君が覗いている気がする。・・・
 どこに行っても小川君につけられている気がする。・・・

 やがて冬が来た。
 偶然、かっての小川君のアパートの前を歩いていたわたしはギクッ!とした。小川君の部屋の明かりがついているのだ。

 わたしは決意した。
 このままでは一生、小川君に脅かされて生きるしかなくなる!ここで決着をつけなくては。
 わたしはアパートの二階へつづく金属製の階段をカンカン登っていった。そして小川君の部屋の前へ来た。

 わたしは一気にいきなりドアを開けた!

 そこには・・・



 誰も居なかった。
 ただ暗闇が部屋に充満していた。
 わたしはとっさに理解した。
 小川君はもう一度だけ自分の部屋にわたしを招きたかったのであると。
 わたしは安心した。
 そして彼もこれで安心したことであろう。

 わたしは合掌した。
 そして静かに頭を下げると小川君のアパートを後にした。

 それから小川君の影はわたしの前から姿を消した。
 小川君の記憶が薄れてゆく中でわたしは大学2年に進級して成人を迎えた。

 この少年期から青年期へ至る一時期の物語はいまでもふいに甦る。単なる単純な怪談としてではない。
 恐ろしさの中にも、なにかほろ苦い若き日のあまやかさを含めるがごとく。

 さらば、小川君。
 かけがえのないわたしの友よ。

白金トンネル

 もうかなり昔の話である。

 わたしの友人に画家の「ギーガー」の非常に熱心なマニアがいた。
 仮にその友人を「友人A」と呼ぶ。
 「友人A」はトレヴィルから出た「ギーガー画集」をすべて持っていたり、映画『エイリアン』を何度も繰り返し観ては感動しているといったちょっとした変わり者であった。

 その友人Aがある日ぼつりと言った。

 「『ギーガーズ・バー』に行きたい。」

 その当時、ギーガー自身がデザインしたという「ギーガーズ・バー」なるものが目黒駅から少し歩いた場所にあったのである。
 友人Aはひとりでは怖いし寂しいから一緒に来 いという。
 わたしも「ギーガーズ・バー」なる物件を観たかったので早速OKして場所を調べた。

 すると「ギーガーズ・バー」は目黒駅から降りて麻布方面に歩き、「白金トンネル」を抜けた場所に存在していることがわかった。
 その瞬間、わたしはなにか嫌なかんじがした。
 「白金トンネル」といえば東京でも有数の「心霊スポット」ではないか。
 しかし今更いかないとも言えない。
 しぶしぶわたしは行く日と時間を約束した。

 その日はどんよりした薄曇りの日であった。
 わたしと友人Aは夕日が沈むのを見ながら、目黒駅から歩きだした。
 すると以外と早く「白金トンネル」に到着した。
 しかし別に怪しい雰囲気はない。
 ふたりはとぼとぼトンネルに入っていった。
 ヤケに長いな・・・と思った瞬間、トンネルを抜けていた。
 別になにもないではないか?と思いわたしたちは「ギーガーズ・バー」に入っていった。

 「ギーガーズ・バー」は予想した程のおどろおどろしい物件ではなかった。
 壁にギーガーのデザインしたレリーフが貼ってある程度のものであった。・・・ふと気がつくとな
んと10時を回っている。
 わたしは友人Aをせかしてバーから出た。

 するとまた「白金トンネル」である。わたしは嫌な予感がした。
 「行きはヨイヨイ、帰りはコワイ」。
 しかしこのトンネルをくぐって帰るしかない。

 深夜のトンネルは夕方よりずっと長く感じられた。
 歩いても歩いても出口が見えない。
 友人Aも無言であった。
 トンネル内の灯りがどくどくしく紅い。
 ・・・嫌な雰囲気になってきたな・・と思った瞬間に出口が見えた。

 その時、あることが起こった。

 友人A「・・・うッ!!」
 わたし「ど、どうした!?」
 友人A「う、、、う、、う」
 わたし「だから!どうしたんだ!?」
 友人A「うんこ踏んだ〜」

 とこれだけなら落語のオチにもならない、陳腐な話である。
 しかしなにか妙なのである。普通、トンネルにうんこが落ちているなどということはまずないのだ。
 犬のうんこならある可能性はある。
 しかしトンネルに深夜犬を連れて散歩に来る人間がいるであろうか?さらにそもそも行く時はそん
なものはなかった。

 人間には知ってはならないことがある。
 その知ってはならない世界の入口までわたしと友人Aは踏み込んだのかもしれぬ。
 ポッカリと不気味に開いた「白金トンネル」の入口に吸い込まれるように。

 「怪を語れば怪きたる」

 わたしもパソコンの画面から転じて背中の方を振り返りたくなってきたので今夜の話は終わりである。

 もう一度念のため言っておこう。

 「人間には知ってはならないことがある。」

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