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第2話③

この総督こそ皇帝アウグストゥスの妻の連れ子のティベリウス・クラウディウス・ネロである。パルティアとの講和準備の為にシリア総督を兼任しているのである。こちらも同名なのでティベリウスのサフィラス家がエトルリア系だから彼をエトルスクと呼んでいるのだ。
『実は私の友人らが是非とも閣下にお目にかかりたいと申しますので私が無理に彼らを連れてきたのであって、彼らに罪はありません』
ティベリウスが二人を庇う。すると端にいたマリウス
『常日頃から閣下のお気に入りなのを良い事に傍若無人なふるまい、とても許されるものではないぞ』
と居丈高になる。それを総督ティベリウス
『そのような些細な事はどうでもよいではないか。エトルスクの友人なら、私にとっても友人同然。すでに今日の私の公用は済ませてきた。今からは私事の時間だ。皆もそう堅苦しい事を言うものではない』
と庇う。
(アイツは閣下の贔屓がある以上、はたがとやかく言ったところでどうにもならぬさ)
他の見習い達はそのように思いマリウスを宥める。
それから総督ティベリウスは自分の部屋にティベリウス、シリウス、ローリアを招いて人払いして彼らに話しやすいようにと気を配る。シリウス
『閣下にはここまでの配慮をして頂き、感謝の言葉もありません』
『何の。貴君の御実家からは常日頃からパルティアに関する貴重な情報を提供して貰ってとても助かっている。こちらこそ、義父に代わって礼を言うぞ』
さすがのシリウスも総督を前に緊張しきっている様子。
『30年昔、クラッススの敗戦によりパルティアの捕虜になった同胞の行方について、貴君は何か情報を持っていればとても有りがたいが、どうであろう』
総督ティベリウスが一番知りたいのはそこである。カッレーの敗残兵が生きていてローマに連れて帰れたとすれば、義父の大きな功績となろう。
『その件は私や父も必死に情報を集めてはいますが、メルブに送られた捕虜の方々は脱走に成功した人々を除けば生存されている方はおられない模様です。脱走された方については、今は必死で情報を集めている段階ですが、メルブから北東方面に脱走されたという以外はこれといった手掛かりすらほとんど無い状態です…』
おおかた予想はついていたとはいえ、総督ティベリウスもこれを直に聞くと悲痛な面持ちになる。しばらく部屋中に重苦しい空気が流れる。場を和ませようと、ローリアに話しかける。
『そちらのお嬢さんはお初にお目にかかりますが、どちらから参られてわがローマにどのような御用がおありなのでしょうか』
『まずはこちらの指環を御覧下さいませ。お話はそれからさせて頂きます』
ローリアは銀の指環を総督ティベリウスの前に置く。指環には【ローマ市民某】と刻まれている。

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