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「絵画レンタル詐欺で計約4億円、暴力団幹部ら逮捕」
という事件について、友人の美術家ムラーリさんがブログに書いていた。
興味深かったのは、この詐欺事件そのものより、その詐欺の「詐欺」たるゆえん、で、
文末に添付した記事は次のように言っている。
>藤容疑者らは、絵画を「版画シート(リトグラフ)」と称し、20枚1セットを100万円で販売、
>同課が鑑定した結果、、
この「同課の鑑定」が興味深い。
この文章、まず、さらに二つの問題が分節できる。
1:単なる印刷物
リトやシルクや木版、エッチングその他は、単なる印刷物ではない。
しかし、それらもかつては、単なる印刷物であった。
だからこそ、ルネサンス期の複製印刷革命は革命だった。
2:美術的価値が全くなく、
「単なる複製」はしかし、テクスチュアと精度以外の多くのパラメーターに関しては、オリジナルの特性を留めているはず。
それどころか、印刷プロセスの手腕次第では、オリジナルでは経験できない「美術的価値」を生む可能性もある。
詐欺であるか否かは、売買相互の基準の共有如何にかかわり、その基準に対する責任を通常、自らの主体的責任で引き受けられないとき、標準的な基準すなわち一般常識に判断基準を委譲する。
正当な商売とは、単にそこでの違和を呈さないというだけのこと。
しかし、一枚のキャンヴァスに何億もの対価が充てられるということが、正当な商売として通ってしまうマトモな日常を、マトモと思えてしまう社会は、やはりマトモじゃないでしょうね。
もっとも、マトモな社会など、存在したことないのでしょうけど。
p.s.:上の文は、当の事件の「暴力性」を擁護するものでは全くありません。当の事件が悪辣なのは、それが詐欺という手段を用いた「暴力」だからですね。
で、しかし、それに対する日常常識が、当の常識自体が孕む別の暴力性(正当な商売が孕む暴力性)、市場における芸術商品にまつわる幻想や欺瞞を、はからずも暗示してしまっている点が興味深い。
※
以下、記事本文(2007年1月10日14時30分 読売新聞)
指定暴力団山口組後藤組系の幹部らによる総額約4億円に上る絵画投資詐欺事件で、警視庁組織犯罪対策4課は10日、東京都新宿区の絵画販売会社「アートクラシックス」の実質経営者で、後藤組系幹部の佐藤幸雄容疑者(50)(新宿区市谷山伏町)ら7人を詐欺と組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)の疑いで逮捕した。
被害者約460人の大半は、過去に高額の化粧品を購入させられるなどキャッチセールスの被害に遭った主に20歳代の若い女性で、同課はキャッチセールスの顧客名簿などが流出し、組織的な勧誘に悪用されたとみて調べている。 (中略)
佐藤容疑者らは2005年6月、埼玉県桶川市内の美容師の女性(25)ら4人に「ホテルに絵画を貸し出せば、レンタル収入が得られる。キャッチセールスで損した分を取り戻せる」と架空のもうけ話を持ち掛け、絵画の購入名目で信販会社とローン契約を結ばせて、計470万円をだまし取った疑い。
佐藤容疑者らは、絵画を「版画シート(リトグラフ)」と称し、20枚1セットを100万円で販売、バラ売りもしていたが、同課が鑑定した結果、単なる印刷物で美術的価値が全くなく、ホテルとのレンタル契約もしていなかった。また、アートクラシックスが信販会社と加盟店契約を結んでいなかったため、信販会社と契約していた渋谷区内のブライダル会社に依頼し、このブライダル会社が客に絵画を販売したように装ってローン契約を結ばせていた。このブライダル会社は名義貸し料として販売代金の約5%を受け取っており、同課は、同社社長(43)らも共犯として書類送検する方針。
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