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しばらくぶりの日記です。 |
音楽02:クラシック
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左図:ハッカー『シランクス』 右上図:ベックリン『牧神の音』 下図:『シランクス』収録推薦CD:文末で紹介♪ 春になってきましたね。今年の春のファサードは、このブログのニックネーム「シランクス」を巡って。 ★シランクスという名は、ギリシア神話にいる綺麗なニンフ(Nymph:精霊)の名前です。 エッチな牧神パンに迫られて、葦の茂る川辺で葦に変身しちゃうんです。 牧神はその葦を持ち帰って笛にして、フられてしまった失意の曲を吹いたのだそうな。 エロいけれど、けっこう器用でアートセンスも持ち合わせたパンくんですね。 その牧神パンの夢想を、19世紀末の詩人マラルメが『牧神の午後』という詩に結晶させました。 シランクスちゃんを追う話ではないのだけれど、アルカディアの森の木漏れ日の挿す昼下がり、 牧神が官能的な夢を見る。つまりエッチな幻想なんだけれど、緻密で前衛的で超ハイブローな詩です。 ★その詩にインスピレーションをえて、マラルメの友人だったドビュッシーが作った 『牧神の午後への前奏曲』という音楽、聴けば誰でもどこかで聴いたおぼえがあるでしょう。 ・フルートの妖しく神秘的なメロディーに、木漏れ日のようなハープのアルペジオが絡むと、 一瞬に神話的世界が広がる。 ホルンが角笛の音を遠く響かせ、弦が葉群れを渡る風をそよがせ、 牧神の笛が幻想を深めていくと、それはギリシア神話そのもの響き、と思えるのに、 しかしもちろん、そんな音楽が古代ギリシアにあったわけはない。 それは全宇宙で誰も聴いたことのない、前代未聞の、開闢の音楽でした。 ・というわけで、シランクスと牧神の物語の周辺から、文学と音楽のモダンアートは誕生した、とも言えるのですね。 しかし、実はその二つこそがモダンアートの最高峰だった、とも言えそうなのだけど、その話はまた別の時に…。 ・ドビュッシーは後に、『シランクス』というこれも神秘的な、前代未聞、風前絶後のフルート独奏曲を作ります。 当初『パンの笛』と題したのだけど、同名の歌曲も作っていたので『シランクス』と名を変えた、小さな傑作。 一本の笛だけで、一瞬にして幻想的で異様に妖しい世界が出現するんだよね。 この雰囲気では死の間際にもう1曲、『フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ』、 室内楽の超傑作を遺してくれました。ドビュッシーの美学が結晶した曲です。 (※この3曲を含んだ推薦CD、本文の末尾で簡単に紹介します) ★画家たちにも、このシランクスの物語はしばしば取り上げられています。 ・左の絵は、シランクスの絵の中でもっともチャーミングなもの。 1892年、ちょうどドビュッシーが『牧神の午後への前奏曲』を構想していた頃描かれました。 アーサー・ハッカー(Arthur Hacker,1858-1919) は、あまり知られていないけれど、 ロマン主義から耽美主義、象徴主義へ続くイギリスのラファエル前派の流れにある画家。 ・右上は、象徴主義絵画の巨匠のひとり、ベックリン(Arnold Boeklin,1827-1901)の『牧神の音』。 景色が葦の生える水辺ではないので、「牧神とプシュケー」の物語かもしれないけれど、 右上の岩陰で笛を吹く牧神が消えてしまったシランクスを幻想してる、というイメージも重なっているかも。 ・この二つの絵はどちらも、形式上は、マラルメの詩やドビュッシーの音楽のような先鋭的なものではないけど(だから、今や古臭い旧来の近代美術史ではマイナー扱いだったけれど)、 内容的には、マラルメやドビュッシー同様、19世紀末〜20世紀初頭の象徴主義的な美意識を反映しています。 ・とはいえ、この2枚、ぜんぜん春っぽくないですねえ(^^; どちらの絵も“薄着"なのに…♪ ベックリンはドビュッシーというより、ワグナーやらの後期ロマン主義音楽っぽいテイストだし…。 ・ところで、なんでシランクスちゃんハダカなんだろ? 神々の森アルカディアったって美少女がハダカで歩いてたらヤバですよねぇ、って、 神話世界って、おねえさんもおにいさんも、だいたいハダカ・・・・・さすが神々!(ま、理由はあるんですけど) ・シランクス物語の絵は、むろん他の時代にも描かれていて、バロック巨匠の絵などもあるのだけど、 そうしたものとの比較は、別の日記でちょっと小難しく論じてみちゃう予定です。 ★『シランクス』『牧神の午後への前奏曲』(フルート&ピアノ版)を含む、お薦めCD2枚。
・中下図は、天才フルーティスト、ゴールウェイのアンソロジー中の「近代フランス曲集」で、 上記3曲(牧神はフルート&ピアノ二重奏版)の他、フォーレのソナタなどが入った2枚組みの超お買い得盤。 ・右下図、瀬尾和紀くんのアルバム『シランクス』には、『牧神…』(これも二重奏版)と『シランクス』の他、 これもファンタジックなピエルネのソナタなどが入った幻想的なフランス曲集。 ゴールウェイは最高の技術と磨き上げられた響きで超ゴージャス。でもドビュッシーにはちょっと華麗すぎ。瀬尾くんの端整な演奏の方が、天使的な美しさがある。Amazonのレビューやリストマニアでもう少し詳しく書きました。お気に召されたらポチってしてやってください。*^o^* 『牧神…』は高木綾子さんの官能的な演奏も素敵です。 |

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別のブログ村でのこと。トマくんが、楽曲演奏(=上演・再現)において、楽譜の解釈の妥当性がどのように評価されるべきか、といった問題を、オイラが以前に書いた音楽美学や記号論を参照して考察していた。しかしその考察は錯綜し、あげくデリダのエクリチュール問題にまで思いに至り、考察は迷宮に入り込んでいた。 |

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メニューインの「天才崩壊神話」って、どう考えるのがよいのだろう? |
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