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「よう、久しぶりだな。臼田の葬式以来か?すぐにおまえだと判ったよ」
ロマンスグレーの男が、純に近づいて来た。水塚である。水塚は、グレーのスラックスに薄いブルーのシャツで、ピンクのダンガリーシャツにジーンズの純とはどこか対照的だった。
「まぁ、何かをしたいと思っていたからちょうど良かったよ。あ、そうだ、10月に同窓会やるんだけど、俺たちで演奏しないか?」
「同窓会?」
純は、驚いた表情で水塚を見た。
「俺、成り行きで幹事をやっていてさ、何か出し物をやることになってさ。ちょうどいいや、俺たちで演奏しよう」
水塚は、勝手に盛り上がってしまった。だいたいバンドは、まだ1度も演奏をしていないのに10月に、それも同窓会で演奏しようとしているのだから、見切り発車もいいところである。
「で、綾ちゃんは、まだ?」
向かいのお菓子屋の前に立てかけてあった七夕飾りの薄紫色の吹き流しがとても上品な感じがした。暫くして、ショートカットで紺のポロシャツに白いガウチョパンツの女性が手を振って近づいて来た。笹倉綾である。あの頃のイメージのまま年を重ねてきた感じである。純も水塚も綾だとすぐに判った。綾も純と水塚をすぐに判ったようである。
「突然、変なお願いをしてごめんね。」
綾が、神妙な表情で純と水塚に頭を下げた。
「いいんだよ。同窓会で、何か出し物を探していたんだから」
水塚が、全く昔と変わらず調子のいいことを言った。
「同窓会?」
綾が、怪訝そうな表情で水塚を見た。綾は20歳の時の同窓会に出席していないから初めての同窓会になるのだ。それに過去を否定して生きてきたので,同窓会という言葉に過敏に反応したのかもしれない。
「そうなんだ、今度案内状が届くと思うんだけど。成人式以来だからなぁ。」
「私、成人式の時の同窓会に出ていないから初めてかなぁ。なんか緊張するなぁ」
綾が、笑いながら言ったが、瞳には微かな不安があった。
「綾ちゃん、臼田が生きていたら率先して同窓会に出たと思うぜ。あいつなんだかんだいって中学時代が好きだったから。20歳の時綾ちゃんのことずっと待っていたんだよ。俺もさ、過去を否定することがかっこいいと思っていたけれど、結局過去に支えられているのかも」
ずっと綾と水塚の会話には入れなかった純が口を挟んだ。
「そうだよ。みんな綾ちゃんがどうしているか話題になっていたぜ。坂本なんか、リストラされて離婚したってことになっているし」
「本当に、そんな話になっているのか?」
純が、驚いた表情で水塚を見た。
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