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「昨晩はひどい嵐だったねえ、ホームズ君。」 「そうだね。ベイカー・ストリートごとスペインまで飛んでいくかと思ったほどさ。 でもワトスン君、君は随分遅くまで書き物をしていたようじゃないか。論文の執筆かい?」 「確かに昨日は遅くまで新型の腹部感染症に関する論文を書いていたが、何故君は僕が書き物をしていた なんて判るんだい?」 「いつものやり方だよ。君は僕のやり方を知っているだろう? 簡単に手の内を明かすのもつまらないからね。自分で考えてみたまえ。」 「ちっともわからないな。」 「簡単な事だよ。君の右手の外側の黒い染みを見て、書き物をしていたと判らなければ、それこそどうか しているというものさ。 まあそんなことはいいのだが、実は昨日書庫から面白いものが見つかったんだ。 ワトスン君はフィフス・ディメンションというグループは知っているね?」 「聞いた事がないな。イギリスのブルース・バンドかい?」 「うむ、博識なるワトスン博士が知らないとはねえ。まだまだ世界は君の知的好奇心を満たす事が可能な のだな。フィフス・ディメンションはね、アメリカの五人組のポップ・ソウル・グループなんだ。 昨晩彼らのレコードを見つけたものでね、ちょっと聴いてみよう。」 「男女混合のグループなんだね。発表はいつだったんだい?」 「この曲は1969年だよ。全米でも1位になったほどの名曲さ。 それほど知られていないかもしれないが、彼らのヒット曲は結構多い。 僕のような玄人からすれば、この曲よりも『ウェディングベル・ブルース』あたりを紹介したいものだ が、このグループの最大のヒット曲はこの『アクエリアス(輝く星座)』だからね。 とてもゴージャスなアレンジメントが印象的に残る。」 「それにしても、不思議な雰囲気を感じるね。何というか、混合というか・・」 「さすがはワトスン君。そこなんだ。この曲の最大の特徴さ。 途中で曲想ががらりと変わるのさ。 ソウルフルなボーカルに変わりはないが、テンポが変わることによって、聴き手を新鮮な気持ちにさせ る事に成功している。これはとても面白いアイデアだね。 よりドラマティックな曲に仕上がったんだよ― どうだいワトスン君、世界は広い事に気付かされる だろう?研究だよ。常にその姿勢を持ち続ける事が必要なんだ。 まあ、その前には偉大なるランチ・タイムを有益に過ごす必要があることは言うまでも無いがね」
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