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「ワトスン君、先日君の発表した日記を読ませてもらったよ。 そう、ペット・サウンズに関した記述のある例のあれだ。 全く君ときたら、僕の名前を使ってしまうんだからねえ。」 「勝手にホームズ君の名前を出した事に関してはすまないと思っているよ。 だが、それによって君の権威を落とすような記述は見当たらなかっただろう?」 「まあ確かにそうだが、君の記述はいささか感傷的に過ぎるきらいがあるようだね。 引用も不適当と言わざるを得ない。 優れた論考に過度の感傷は不要である、とは偉大なる哲学者ギュスターヴ・フローベールの言葉だよ。 君がペット・サウンズを偏愛する心境だけは理解できるがね。」 「そうだろう?実は今朝も朝食の前に2度鑑賞したんだよ。」 「僕なんか3度鑑賞したがね。まあ回数はどうでもいい。 ところで君は、この偉大なる作品の中で、ハイライトとなる一曲を挙げるとしたら、どれになると思 う?」 「それは極めて難しいね。その全てがハイライトといっていいのだが、一般論としては『神のみぞ知る』 あたりじゃないかい?」 「ワトスン君はいつも一般論に傾くね。今は一般論ではなく、君の私見を尋ねているのだよ。 純粋な、個人的な意見さ。僕としては、オープニング・ナンバーの『素敵じゃないか』こそがこの作品 集のハイライトと信じているよ。」 「確かに名曲だね。 でも、アルバムの一曲目が中核だなんて、バランスが危うくなるんじゃないのかい?」 「ワトスン君もなかなか鋭いじゃないか。 確かにオープニングにピークを持ってきて失敗している例は少なくない。 でもね、今はあくまでも高いレベルの話なんだ。 君が先程指摘したように、このペット・サウンズという作品はそのすべてがハイライトであるという意 見には賛同するよ。 それゆえに、何曲目に作品のピークを持ってこようとも、作品の質は揺るぎないものなんだ。 『素敵じゃないか』でいきなりピークを迎えても、その後に『神のみぞ知る』や『駄目な僕』といっ た、ハイライトに近い楽曲が待っているのだからね。 どうやら僕の最初の質問が間違っていたようだな。 この作品の中で君が最も好む楽曲を尋ねるべきだったんだ。」 「それもやはり難しいね。でも、君の言う、『素敵じゃないか』は本当に素晴らしいと思うよ。」 「この曲は偉大だよ。優れたポップ・ソングが持つ要素をほとんど兼ね備えている。 魅力的なイントロ、弾むようなメロディ、普遍的な歌詞、ミドルにおける意外性に富んだ展開、テンポ の変化、終盤での感動的なファルセットとコーラスなど、挙げたらきりが無い。」 「この時期のビートルズやディラン、ストーンズの持っていた社会的要素とは真逆に立っているね。 その佇まいも独特とは言えないかい?」 「まさにそのとおりさ。どうしたんだい?今朝のワトスン君は冴え渡っているじゃないか。 このことはペット・サウンズ全篇を通して言えることなんだが、この時期ブライアン・ウィルソンはひ たすらに自己の奥底に深く潜り込んで行ったんだ。そのことをこのオープニング・ナンバーで強く宣言 したのさ。 一見して幸福に満ち溢れた歌詞も、彼の、こうありたい、という自己の奥底からの願望なんだ。 先に僕が述べたハイライトというのは、そういう意味合いを持つからなんだよ。 感動無しには聴けない楽曲さ ―おっと、どうやら僕もかなり感傷的な論述をしているようだ。 でもねワトスン君、これはあくまでも親友同士の音楽談義、と解釈してくれたまえよ、公の場に晒すに はやや子供じみているからね」
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素敵じゃないか!ポップスの真髄は、ホント、こういうコトなんですよね。同時代の社会や時代の流れは、それとして、個人的、衝動的な思いをとにかくぶつけるというのが、結果時代を超えたメッセージとして、後々までにも伝わりますからね。この曲、ボーカル・オンリーでも、カッコ良いですらねぇ(涙)いいぞ、ホームズ♥
2005/7/30(土) 午後 11:39
アルトさんおはようございます。おっしゃるとおりで、このアルバムには、普遍的な要素が詰まりに詰まっている、ゆえに今聴いても全く色あせる事がないなあと、感じています。個人的に『素敵じゃないか』が、好きなんですよねー。ああそう、ちなみに『ビーチボーイズ・ダイアリー』買っちまった・・・読みきれない(笑)
2005/7/31(日) 午前 9:09 [ t13*56*61 ]
いやぁ、t13756361さんの記事にはいつも感服させられます。「素敵じゃないか」で思い出すのは「エス」という映画です。不当な使われ方をされていましたが、不気味さというか恐怖を増大させる演出でした。機会があれば見てみてください。
2005/8/1(月) 午後 0:52 [ アサタカ ]
tchnr862さん、いつもありがとうございます。いやいや、若造の戯言と思って御笑読いただければ・・・。映画「エス」、知りませんでした。ほう、不当な使われ方とは興味深いですな。探してみます!最近ではこの曲、『めざましテレビ』の1コーナーで使われてます。まあほんのさわりですが。これって不当なんだろうか??
2005/8/1(月) 午後 9:40 [ t13*56*61 ]