HEAT WAVE!!

私立探偵と開業医師による音楽論議。時代設定に難あり。

Motown

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「まだまだ外は暑いねえ、ホームズ君。」


「やあワトスン君、ようやくご帰宅だね。随分遅かったじゃないか。」


「郵便局に行くだけの予定が、寄り道してしまってね。」


「ほう、それでHMVに寄ってスティービー・ワンダーのアルバムを買ってきたわけだね?」


「確かにそうだが・・・さすがに君の勘は鋭いね。」


「おっとワトスン君、勘だなんて言ってもらっては困るよ。

 これはあくまでも観察による推理なんだからね。」


「でも僕は君にまだ何にも見せてないし、話してもいないよ。」


「いいかい、まず君がHMVに寄ったことは、君の靴に付着している土の種類で分かる。

 あの辺りはロンドンの中でもかなり特殊な土壌だからね。

 次にスティービー・ワンダーだが、君が最近殊にモータウンにご執心である事は認めるね?

 そして、きみのズボンの膝の膨らみ具合が重要なんだ。

 あそこの店のスティービー・コーナーはとても低い位置にあり、床に膝をつけないとアルバムを選べな

 いんだ。おそらく君もアルバムを選んでいる時は床に膝が付きっぱなしだったんだろう。

 最後に決定的なのが、君の癖でもあるのだが、帰ってきてから無意識に左手でリズムを取っていただろ

 う?そのリズムこそ、まさに君が購入した『For Once In My Life』のイントロのリズム・ギターに一

 致するんだ。

 どうだい、これだけ材料があれば実に簡単に推理できるのだよ。」


「言われてみれば簡単だが・・見事だよ、ホームズ君。」


「それほどでもないがね。それにしてもワトスン君もなかなか趣味が良いじゃないか。

 この曲は傑作だよ、特に楽器のアレンジメントに関してはね。」


「ベースが弾んでいて、聴き応えがあるね。」


「うむ、これはジェームス・ジェマーソンの仕事さ。さすがに卓越した技術だね。

 まあ僕のような玄人からみれば、もう少しミックスの段階でベース音量を上げてもらえたら言うこと無

 いのだがねえ。

 それに先程言及したイントロのリズム・ギターだが、これがまた実に品が良い。目立ちすぎず、かとい

 って曲の中に沈みすぎず、非常に適切なプレイなんだ。

 まさしくモータウン・マナーに則った音色だよ。」


「あとは・・そうだな、ピアノかい?」


「そうだね。これも序盤において重要な位置を占めていると言って良い。流麗だね。

 曲に軽やかさを付けているよ。

 だがなんといっても聴き所は間奏におけるスティービーのハーモニカ・プレイさ。

 この音色を聴きたまえ。決して太い音色を響かせているわけではないが、楽しさと哀愁が同居したよう

 な音さ。それと同時に、僕には夏の終わり頃の季節感も想起させる。

 実に想像力に富んだプレイだよ   ―どうだいワトスン君。夏も終わりに近づいていることを感じる

 だろう?そんなときは美味いディナーを食べて、スコッティのヴァイオリンを聴きに行くに限るという

 ものだよ」

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「ホームズ君、朝からひどい異臭じゃないか。一体何事だい?」


「ああワトスン君、これはね、ヘモグロビンの沈殿技術に関わる試薬の実験だよ。

 これは僕がかねてから取り組んでいる実用的な法医学における最大の成果に成り得るものさ。

 現行の血球顕微鏡検出法なんて不確実なものにはもう用はない。

 このシャーロック・ホームズ法の成果によって、科学的犯罪捜査法は劇的な進化を遂げるのだ。

 さあ、邪魔をしないでくれたまえよ!」


「まあまあホームズ君、手を休めたまえ。昨晩は徹夜だったようじゃないか。

 こちらにかけてタバコでも一服しながら、音楽を聴いていつもの議論を交わそうじゃないか。

 徹夜の作業は非効率というものだよ。」


「ほう、今日のワトスン君はいやに冷静かつ挑戦的だね。珍しい楽曲でも発見したのかい?」


「いや、有名なものだがね。素晴らしいポップ・ミュージックさ。まずは聴きたまえ。」


「ほう、ジャクソン・ファイヴのデビュー・ヒットじゃないか。これは悪くないよ。

 実に賞賛すべきものだ。だが、今君が述べたポップ・ミュージックという説明のしかたには違和感を覚

 えるがね。僕のような研究者から言わせれば、この曲はソウルの文脈で語るべきものなんだ。

 まあ、ポップとソウルの規範について論じ合っていては時間がいくらあっても足りないのでこれは次の

 機会に譲るがね。」


「確かにそうかもしれないね。僕はモータウンという要素を見逃していたようだ。

 でも、それを無視してもこのメロディは素晴らしいよ。」


「そのとおりさ。メロディ、ボーカル、アレンジメント、どれをとっても完璧の一語に尽きる。

 1969年の10月、まさに音楽の魔法の瞬間が訪れたんだ。このようなことは、滅多に起こらない。

 歴史的な観点からすればジミ・ヘンドリクスの出現に匹敵する意義がある。

 こんなに完成度の高いデビュー・トラックはそう在るものじゃないよ。」


「マイケルのボーカルは堂に入ったものだね。」


「得てして少年のボーカルというものはときに青臭さを感じさせるものだが、ここでのマイケルにはそれ

 が無い。すでにスタイルが確立されているのさ。

 フェイクやシャウトのタイミングも、玄人すら頷く優れたものだ。

 歌詞の説得力、という要素は見逃すにしてもね。」


「アレンジも実に気持ちの良いものになっているね。」


「僕は常々モータウンにおいてのギター・アレンジに着目してきた。

 ここでのカッティング・ギターの効果は計り知れない。見事だ。尊大な態度がまるで無いのさ。

 このギターにピアノとベースが融合するイントロの数小節は、これだけでも聴くもの全てを惹きつける

 素晴らしいものさ―  おっといけない、ヘモグロビンからの沈殿物が生じたようだよ、ワトスン君。

 止めないでくれたまえ、この実験は人類の未来に一つの大きな役割を果たすものなのだからね」

悲しい噂(‘67)

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「おはよう、ホームズ君。今朝は随分寝坊じゃないか。」


「昨夜は18世紀中頃の犯罪記録を体系化するのに時間を費やしていたものでね。

 ワトスン君こそ昨日は夜遅くまでマーヴィン・ゲイの『悲しい噂』を聴き込んでいたようじゃない

 か。」


「確かにその通りだよ。でも何故わかったんだい?

 迷惑がかからないように出来るだけ音量を下げて聴いていたのだが・・」


「簡単な事さ。第一に、君は最近やけに60年代のモータウン・サウンドにご執心だ。

 第二に、先程から君は新聞を読みながらも、無意識的に左手で机を叩いてリズムを取っていた。

 そのリズムはかなり独特のものである事はすぐにわかる。

 30秒ほど観察させてもらったが、そのリズムこそ、『悲しい噂』でのキーボードが提示し続けるリフ

 のリズム・パターンなんだ。」


「なるほど、君の観察力には恐れ入るよ。」


「そんなこともないがね。

 それより、僕としては君の『悲しい噂』についての研究結果を御教授頂きたいものだ。

 話してみたまえ。」


「そうだね、僕個人としての意見では、当時のモータウンの雰囲気を捉えたリズム感が伝わっていると思

 うが、これが大衆に支持されるかどうかについては疑問を持たざるを得ないな。」


「ほう、ワトスン君も今朝はなかなかうまいものだね。

 時代性を論じるくだりなどは堂に入ったものだよ。

 確かに当時のモータウンのサウンドの進化については目を見張るものがあった。

 この楽曲などはその例の最も顕著なものであることに違いない。

 全体的に以前よりも楽器の鳴りが抑え目であるが、その分だけ洗練されているね。

 特にドラムス、ベース、キーボードが素晴らしいグルーヴを作り上げている。

 華やかなサウンドであり続けたモータウンが、この曲では違った一面を見せ始めたんだ。」


「でも、聴き手はそのサウンドの以前との差異に戸惑ったとは言えないかい?」


「それについては、君の意見は残念ながら的を外しているのだよ、ワトスン君。

 この楽曲については67年に全米2位という記録が残されているんだ。

 結局はこの洗練されたサウンドに大衆も魅了されたということさ。

 今、洗練という表現を使用したが、ここでのマーヴィンのボーカルもまさにそれに当てはまる。

 この、緊張感に包まれた彼の声はどうだい?我々の心の中をかき乱すような表現力だ。

 同時期に発表されている彼のデュエット・ナンバーで聴く事ができる穏やかなボーカルとを対比してみ

 るのも面白いと言えるよ  ―そろそろ朝食にしないか、ワトスン君。

 すまないがハドスン夫人を呼んでくれたまえ、気の利いた卵料理でも食べて、遅く起きた時間を取り戻

 さないといけないからね」

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