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キム・ギドク監督作品、初の鑑賞。



僕のブログ開始直後からの友人であるひろちゃんさんをはじめ、数多くの映画通の方々に人気の韓国人監督です。まず1本目には、物議を醸したことで知られる本作を選びました。


冒頭のキスシーンのインパクトからラストまで、確かに強烈な作品でした。


特に主人公のハンギが唯一声を出す例のシーンには、驚きました。観客はそこではじめて、ただでさえ不器用な彼が、あまりにも無口だった理由に気付かされることになります。上手い脚本です。このときのセリフにはジーンとしてしまいました。どう見ても悪い男なのに、なぜか中村錦之助の『関の彌太っぺ』を見たときのような気持ちになってしまったのです。


ハンギがライターの炎でミラーの奥の自分の姿を浮き上がらせ、それを見たヒロインのソナが鏡を叩き割るというシークエンスも好きです。2人の間の境界が取り払われる重要な場面だと思います。


ハンギが弟分に刺されて以降のファンタジックな展開などは、石井隆監督の映画を連想してしまいました。


他に印象に残ったのは、やはり売春婦やヤクザのような人々に対する監督の優しい眼差しでしょうか。このあたり、日本でいえば神代辰巳などに近いような資質を感じました。


捨てがたい数々の魅力を持つ作品でしたが、正直トータルで見ると、若干僕の好みとはズレていました。どこかしら微妙にノリきれないところがあるんですよね。ギドク監督の他作品も見てみたいと思わせるような、映画的な力を感じたことは確かなのですが・・・。



・・・とここまで書いて半日ほど放置していたのですが、なぜこの映画がイマイチ好きになれないのか自分でも良く分からなくて、しばらく考え込んだ末にあることに思い至りました。本作を見終えた後の感触が、最近見たある映画と酷似していたからです。その映画とは石井隆監督の『ヌードの夜』です。どちらも明らかに傑作でありながら、個人的にはあまり好きになれなかった作品です。そこで2作の共通点を抽出してみた結果、やっと自分の弱点が分かりました。


本作の主人公、最初のキスはいったいなんだったのかと思うぐらいその後はストイック(?)で、ヒロインとは一切寝ようともしません。彼の運命そのものが本質的にマゾヒスティックなもので、以後頭を石で殴られたり、刺されたり、叩かれたり・・・。意外に思われるかもしれませんが、表向きの残酷なストーリーとは裏腹に、ハンギの本質はマゾヒストだと思ったのは僕だけでしょうか。


これらの特徴は『ヌードの夜』にも共通しています。こちらの主人公も、惚れた女のために始終みじめな目にあわされ続けます。しかもその結果報われることはなく、両作品ともに終盤のファンタジー的世界(あるいは死後の世界)のなかでしか主人公に幸せが訪れることはありません。


要するに、僕は女性に対する一方的かつマゾヒスティックな愛情を描いた作品がちょっと苦手のようです(報われない純愛とか)。そのうえ主人公がひたすら酷い目に遭わされ続けるとなると、もう見てられません。もちろん、別に僕の性格が特に冷たいわけではありませんよ(笑)。これはもう、生理的なものとしかいいようがないと思います。

閉じる コメント(26)

キム・ギドク監督って高い評価を得ている人気の監督さんなのですよね。
私は『絶対の愛』を観たのですが、ダメでした。代表作から観た方がよさそうです。
女の私としては、女性に男性が一方的な愛を注ぐ映画というのは、案外好きかも(笑)

2008/11/14(金) 午前 4:40 pu-ko

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pu−koさん
う〜ん・・・僕は『絶対の愛』のほうは未見ですが、彼の他作品がお気に召さなかったのならば、正直あまりオススメする自信はありません。男性が一方的に愛を注ぐと言っても、普通の意味での愛とはかなり違うからです。その点だけはあらかじめ注意しておいてください^^

2008/11/14(金) 午前 9:44 [ user t ]

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あまり韓国映画は見ない自分ですが、このキム・ギドク監督の作品は興味アリアリです〜。
才能がある方のようですね。
お薦めされてる作品は何本かあるから、またそのうち観てみようかな。
この映画も含めて。(・ω・)bグッ

2008/11/14(金) 午後 7:06 Kaz.Log

ギドクの作品の中では、実は僕もこれは好きではありません。
生理的にもなんか受け付けなかったです。

2008/11/14(金) 午後 9:06 [ つっぱり太郎 ]

僕が観た限りではギドクが好む人物像は内省的なようです。
それでいて激しい感情を抱えていながら、ぶつけどころが分からずにモヤモヤして、場合によっては暴力に転じてしまう。
記事にあろ「マゾ」は当っていると思いますよ。ただ、それが意図的ではなく、純粋が故にそうなってしまう。
僕はそこが好きなんですけど(笑

恋愛でも親子でも感情が噛み合わずに完結しないまま放置されているのも特徴の一つだと思います。なので後味は良くないですよね。
これは、彼の映画が寓話性が強いと言われていることと関係していると思います。物語を完結する必要は無いということで。
思うままに書いたのでまとまりもありませんが、こんな感じです。

2008/11/14(金) 午後 9:18 [ - ]

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Kazさん
Kazさんもギドク見てませんでしたか。僕も初めてだったんですけど、前評判どおり好き嫌いがモロに分かれそうな映画でした。確かに魅力はあるんですけどね・・・残念ながら好きになるところまではいきませんでした(^^;

2008/11/14(金) 午後 10:08 [ user t ]

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つっぱり太郎さん
ということは、つっぱりさんが好むギドク作品も中にはあるということですよね。よろしければそのタイトルを教えていただきたいのですが。今後の参考にしたいので・・・。

2008/11/14(金) 午後 10:13 [ user t ]

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YAZさん
おっしゃるとおり、この作品の主人公には(ある意味で)極端なまでの純粋さが感じられます。その点は、この作品に関する紹介文などから受けていたイメージからすると、かなり意外でした。そこがこの作品の魅力でもあるわけですが。
寓話性の強さについても同感です。モロにリアルな側面がありながら、同時にリアルを超えていくようなところがありますよね。こうした手法は、ある種の優れた映画作家達に共通するものです。
あとは、純粋に生理的に好きになれるかどうかの問題でしょうね。

2008/11/14(金) 午後 10:51 [ user t ]

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この作品は気になりながらも未見なのですよね〜。
ん〜、生理的に受け付けなかったですか〜。 理不尽な感じの物語がダメなんでしょうか。
強烈さがちょっと怖いですが、^^; 今度観てみます〜。 ^^

2008/11/15(土) 午前 1:22 サムソン

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サムソンさん
いや、サムソンさんなら(?)怖いとかそういうことはあまりないと思います。要は、ラブストーリーとして好きになれるかどうかです。

2008/11/15(土) 午前 1:40 [ user t ]

ギドクは気になる監督で、全作品観ましたが、「悪い男」が一番印象的でした。最初に観たので、またもう一度観ると感想が違うかもしれないです。だから記事にはしてないんです。
そういえば、一時、石井隆監督作も気に入って観てました。精神的に泥まみれになりながらも純粋というのが気に入っていたのかもしれないです。

2008/11/17(月) 午前 1:27 かりおか

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かりおかさん
凄いですね〜、キム・ギドク作品って、けっこう数ありますよね。
でもかりおかさんは本作が一番でしたかぁ・・・もしかするとあまり僕の好みには合わない監督なのかも知れません(^^;
石井隆監督の映画はまだ数本しか鑑賞していませんが、今のところ、彼自身の監督作よりも脚本作で気に入っている作品が多いですね。

2008/11/17(月) 午前 2:00 [ user t ]

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コメント気軽にとおっしゃっていただいてから
この記事についてとてもコメントが書きたかったのですが、
とても長くなってしまい自分のブログに書きました。

もし気を悪くされましたら削除しますので遠慮なくおっしゃって下さい。

2008/11/25(火) 午前 1:34 [ 豆田 妙子 ]

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カラカラさん
いえいえ、とんでもありません。コメントは大歓迎です。
後ですぐに伺います^^

2008/11/25(火) 午前 8:54 [ user t ]

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大変失礼しました。
お気を悪くされていたら本当にごめんなさい。
こちらにもどってコメントさせていただきます。

もう一度見てみてソナの深層心理の件
user tさんのおっしゃていることにとても
納得できました。
そして、やはりもう一度見ることが必要だったようだと思いました。

なぜなら、私が「なんとなく」と言って歯切れが悪かった理由が

感覚としてわかっているけれど
それを論理的に言葉で説明してくださいと
user tさんに言いすぎていたためなのでした。

2008/12/6(土) 午後 11:42 [ 豆田 妙子 ]

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カラカラさん
いえいえ、全然オッケーです(笑)。
とうとう分かっていただけましたか!いやあ、説明した甲斐がありました。僕もこういうことは初めてだったので、色々と自分の考えを開陳することができて良かったです。特定の事柄について色々と議論し続けることができるのも、ブログの醍醐味だなと思いました。
これからもコメントよろしくお願いします^^

2008/12/7(日) 午前 0:36 [ user t ]

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こんにちは♪コメ&TBありがとうございました♪
キム・ギドク監督にしばらくハマりました〜。「悪い男」は忘れられない苦しい作品ですね〜嫌いじゃないんですけどね。へへ♪

あとは「魚と寝る女」だけなんですが、なかなか借りられません〜。

2008/12/30(火) 午後 4:32 sarami

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saramiさん
saramiさん、『悪い男』は苦手でもキム・ギドク監督自体はお好きなようですね。僕は本作しか見ていないので、まだちょっと分かりませんが・・・。

2008/12/30(火) 午後 7:47 [ user t ]

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たしかに、雰囲気的に好き嫌いが分かれるだろうな〜と思いながら観てました。
炎でミラーの奥の自分の姿を浮き上がらせるところ、よかったですよね。 好きなシーンです。
TB、お願いします。^^

2009/5/13(水) 午前 7:32 サムソン

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サムソンさん
ミラーのシーンは印象的でしたね。
あと「映画『悪い男』について」という記事をアップしたので、よかったら読んで見てください。本作に関するブログ友達とのやりとりをそのまま掲載したものです。簡単な感想などいただけると嬉しいです。

2009/5/13(水) 午後 11:37 [ user t ]

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