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クロード・シャブロル脚本・監督作品。
<物語>フランス南西部のトレモラで小学校の校長を務める女性エレーヌ(ステファーヌ・オードラン)は、同僚教師の結婚式の宴席でポポール(ジャン・ヤンヌ)という男と偶然隣り合い、以後急速に親しくなる。ポポールは兵役を終え、亡くなった父親が経営していた肉屋を継ぐために、故郷の村へと帰って来たばかりだった。一方、村の近辺では残忍な殺人事件が起き始める。そんなある日のこと、学校の生徒たちを連れてピクニックへと出かけたエレーヌは、先日の結婚式で花嫁だった娘の惨殺死体を発見する。死体の傍らに落ちていたライターは、エレーヌがポポールにプレゼントした品とそっくり同じものだった・・・。
以前、fpdさんのブログでもちょっとだけ話題になっていた『肉屋』、見てみました。感想は・・・これは、いわゆる普通のスリラーとは少し違った異色作ですね。好き嫌いはかなり分かれるでしょうが、間違いなく非凡な作品だと思います。ただ、ストレートなサスペンス的盛り上がりを期待してしまうと、やや肩透かしを食らうかもしれません。
観ていてまず気付いたのは、やはりヒッチコックの強い影響でしょうか。シャブロルはもともと映画批評家出身であり、ヒッチコックが好きだったようなので、これは頷けます。個人的には(シャブロル自身もその一角を占めていた)ヌーヴェル・ヴァーグ時代の諸作品、特にアニエス・ヴァルダの『幸福』などと近い雰囲気も感じました。ブニュエルの一部の作品との近親性も感じます。もちろん、それらの映画ともまただいぶ異なった側面もあるのですが。
また解説リーフレットにも書かれているように、ロケーションには結構こだわったらしく、村の風景、鍾乳洞のような洞窟のシーンなどは印象に残りました。
主演のオードランの、当時30代後半とは思えない美しさも魅力的です。彼女が、ジャン・ルイ・トランティニャンの元妻だったことも初めて知りました。
ストーリーそのものに関しては、あまりネタばらししてしまうのもアレなので詳述は避けますが、ほとんど類例のないタイプのものでした。僕が見てきた中では、せいぜい『血を吸うカメラ』に少し似ているかな、といった程度(リーフレットによれば、シャブロル自身は『マーティ』と『雨の訪問者』の名を出していますが)。特に終盤は、ほとんど誰が見ても意外なシーンの連続だと思います。
直接的な残酷描写がほとんどないのも、本作の特徴かもしれません。シャブロルの映画を見るのはこれで5本目なんですが、個人的には『いとこ同志』の次くらいに良かったですかね。
いずれにしても、上に挙げたような名前(ヒッチコック、ブニュエル、ヴァルダ、そしてシャブロル)に惹かれるような方であれば、一度は見ておいて損はない作品だと思います。ちなみに、本国フランスでの観客動員数は約22万人で、この手の作品としてはかなりの興行的成功を収めたようです。
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