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またまたアンソニー・マン×ジェームズ・スチュアートの西部劇をとりあげます。
<物語>賞金首ベン(ロバート・ライアン)を追うケンプ(ジェームズ・スチュアート)は、途中で雇った金鉱探しの老人ジェシー(ミラード・ミッチェル)、賞金の分け前目当てに加わった騎兵隊くずれの若者ロイ(ラルフ・ミーカー)らと協力し、ベンを捕らえることに成功する。ベンと一緒にいた女(ジャネット・リー)もろとも護送をすることになるが・・・。
感想は・・・これはかなり見応えのある作品でした。アンソニー・マンならではの骨太な演出力もさることながら、5人それぞれの思惑が入り乱れた心理戦の描写が秀逸です。ある意味、最もサスペンスに近づいた西部劇とも言えるかもしれません。
主人公ケンプに扮したスチュアートは、おそらく彼のキャリアの中で最も心理的に屈折したキャラクターを熱演しています。彼は、南北戦争に従軍する前に牧場を妻の名義にしておいたのですが、留守中それを彼女に勝手に売り払われたあげく他の男と駆け落ちされてしまうという、非常に暗い過去を背負った人物です。彼が異常なほど賞金に執着するのは、理不尽にも奪われてしまった牧場を買い戻すためです。スチュアートは旅の間中、わずかな瞬間を除いて常に切迫した雰囲気を漂わせ、過去の悪夢にうなされたりもします。前にも書いたように、マン監督の映画の主人公にはどこかしら影のある人物が多いのですが、本作におけるスチュアートなどはその最たるものかもしれません。このあたりはちょっと好き嫌いの分かれそうなところではあります。
ともあれ、あの手この手で護送からの逃亡を企てるならず者を演じたロバート・ライアンの怪演をはじめ、主要キャストたちの演技合戦はなかなかのものでした。序盤と終盤で戦いの舞台となる岩山など印象的な場面も数多く、見る者を全く飽きさせません。ヒロインは『サイコ』のシャワー・シーンであまりにも有名なジャネット・リーで、マン監督にしては(?)そこそこの魅力があったと思います(笑)。
「この映画を並はずれたものにしている要素の第一に挙げられるのは、緊張感のある脚本のもと、俳優たちが人物相互の張り詰めた関係を探求し、名演をしているという点だ」(エドワード・バスコンブ)
「彼(アンソニー・マン)の西部劇にアカデミー賞を与えなかったことは、アメリカ映画史最大の汚点である。これには、合衆国よ、恥を知れとつい声を荒立てたくもなる。・・・ヴェンダースは、『裸の拍車』を見直してから『ベルリン・天使の詩』を撮るべきであった。天使の視点を撮れる監督など、映画史にはアンソニー・マンぐらいしか存在しまい」(蓮實重彦)
西部劇としてはちょっと異色な作品ですが、これは一見の価値ありですよ。
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