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大藪春彦の処女小説の映画版。同小説は今までに何度も映画化されていますが、この作品はその記念すべき第一号です。 <物語>大学院生、伊達邦彦(仲代達矢)は、秀才、勤勉、誠実というのがもっぱらの評判である。しかし裏では、ボクシングで鍛えた強靭な体、巧みな射撃術、冷徹無比な頭脳などを駆使して完全犯罪への野望を着実に実行に移していた・・・。 感想は・・・傑作でした。松田優作主演版(1980年)よりも、こちらの方が映画としての完成度は高いのではないでしょうか。須川監督のスタイリッシュでシャープな演出といい、ニヒルな主人公を演じた仲代達矢の好演といい、ピカレスクものとしてはほとんどケチのつけようがありません。 本作は、原作版「野獣死すべし」に最も近い映画化作品だそうですが、確かに昔見た80年版とは相違点が多かったです。例えば、主人公の伊達をはじめやたらと饒舌な登場人物が多く、とにかく皆よくしゃべります(人によってはやや説明過多に感じてしまうかもしれません)。また本作における伊達の最終目的は、何とアメリカ留学。彼は貧乏なので、留学資金を合法的に調達することなど出来ないんです。このあたり、今ではちょっと考えにくい動機ですね。 あと、本作で特徴的なのが若い刑事(小泉博)の存在です。彼は、刑事の安月給や、恋人との結婚すらままならない自らの暮らしに強い不満を抱いており、先輩刑事(東野英治郎)が理解できない伊達の犯行に共感してしまいます。そして理解できるがゆえに伊達を真犯人と見抜き、逮捕しようと躍起になるんですね。犯罪によって欲しいものを全て手に入れ、アメリカへと旅立とうとする伊達を阻止しなければ、自らのうだつのあがらない生き方を肯定することができないからです。 伊達が犯罪に引き込む青年が学費を払えずに大学を退学処分になっていたりなど、そこかしこで人々の貧しさが強調されます。また、理由なき殺人を予言する伊達の犯罪理論とは裏腹に、彼の主たる犯行動機は(当時の庶民生活の貧しさを反映して)あくまでもお金です。もちろんその点は、日本が経済大国になってから製作されるバージョンでは変更されていくことになるわけですが・・・。 それにしても、花売りの老婆に意地悪をする仲代の顔はさすがに不気味すぎました(^^; 脚本はまだデビュー間もない頃の白坂依志夫、音楽は黛敏郎が担当しています。
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