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名匠ロバート・ワイズ監督の傑作ボクシング映画です。 <物語>ストーカー・トンプソン(ロバート・ライアン)は、すでに盛りを過ぎた35歳のボクサーである。今宵の相手は目下売り出し中のタイガー・ネルソン。勝ち目のない試合と踏んだストーカーのマネージャーは、本人に無断でギャングの八百長の誘いに応じ、金を受け取ってしまう。何も知らないストーカーは、妻ジュリー(オードリー・トッター)との新たな生活を夢見てリングに上がるが・・・ 感想は・・・これは本当に渋い映画でした。構成にムダがなく、かつシーン毎の質も高いんですよね。 一般的には、映画の進行時間と物語の進行時間を一致させた作品としてよく知られています。前年の『ロープ』や、数年後の『真昼の決闘』などでも用いられた、あの手法です。 しかし個人的には、そうした演出上の優れた技巧もさることながら、むしろ人間ドラマとしての側面が記憶に残る作品でした。ロバート・ライアン演じる主人公ストーカーの哀愁漂うキャラクター、控え室で出番を待つ選手たちの滋味溢れる会話、アクの強い観衆たちが試合中に見せる種々雑多な反応・・・。そして、ストーカーのことを心配しつつも試合を見る勇気がなく、夜の街を彷徨う妻ジュリー。わずか70分少々の上映時間の中に、印象的な人間群像が詰まっています。 試合シーンの迫力も、当時の映画としてはかなりのものなのではないでしょうか。主演のライアン自身、元ボクシングの学生チャンピオンだった人だけに、リアリティの点でも特に違和感は感じませんでした。 終盤、八百長が仕掛けられていたことに気付きながらも、執念で戦い続け、とうとう相手をKOしてしまうストーカー。その結果、大損したギャングたちの怒りを買い、追い詰められてしまうシーンの怖さも忘れられません。 「実に工夫しており、自分のものを生み出そうと努力を集中していることがよくわかる。荒っぽい場面に満ちていながら、情感あふるるばかり、瑞々しい光沢を持ったこの作品を、ぼくは非常に愛している」(双葉十三郎) 「ボクシング映画では、『罠』というのがとても好きですね、ロバート・ライアンの。渋い渋い映画でね」(和田誠) 『レイジング・ブル』や『ロッキー』のような派手さとは、また少し違った魅力のある作品だと思います。オススメです。
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