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再びセミ・ドキュメンタリーをとりあげます。セミ・ドキュメンタリーとは、主として1940年代後半、それまで自社スタジオでの撮影が専らだったハリウッド映画に対し、現地ロケーションなどのリアリズムを導入することによって新風を吹き込んだ犯罪映画のことです。中でも本作は、黒澤明をはじめ多くの映画人に影響を与えた代表的傑作としてよく知られています。



<物語>ニューヨークのアパートで若いファッション・モデルが殺された。マルドゥーン警部補(バリー・フィッツジェラルド)は彼女の友人の婚約者を犯人と睨んで追うのだが・・・


感想は・・・出演者は主演のフィッツジェラルドを除けば無名人ばかりですし、地道な犯人探しが中心のストーリーも今見るとさほど印象的なものではありません。しかし、本作の真の主役は背景となるニューヨークの街そのものであるため、事件のあらましやキャストの存在感などはそもそも副次的な要素にすぎないとも言えます。


やはり圧巻はクライマックスです。警察に追われた殺人犯が走り回り、橋の上に逃げ延びていくあたりの緊迫感が凄かったですね。オールロケでニューヨークの街を鮮やかに活写したのは、サイレント時代からの名カメラマン、ウィリアム・ダニエルズ。彼は本作でアカデミー撮影賞を獲得しました。


また、犯人が負傷して塔の上に追い詰められたとき、遥か下方でテニスを楽しんでいる人々を見下ろす有名なシーンがあります。日常と非日常を対比させた、著名な評論家たち(淀川長治氏、双葉十三郎氏、川本三郎氏・・・etc)も絶賛する名場面ですが、実際に見てみるとほんの一瞬チラッと映るだけなので、よく見ていないとあっさり見過ごしてしまいそうです。正直、ここだけはちょっと肩透かしに感じてしまいました(^^;


のちの『野良犬』で、三船敏郎が犯人を追い詰めたときにピアノの音が聴こえてくるシーンや、『大幹部・無頼』で、死闘を演じる渡哲也とバレーボールに興じる女学生たちが対比されるシーン、『太陽を盗んだ男』で、原爆を抱えた沢田研二がありふれた街なかを歩いていくラストなど、日常と非日常を巧みに対比させた名場面の数々を先に見ていたせいもあるかもしれません。


本作のプロデューサーであり、著名なジャーナリストでもあるマーク・へリンジャー自身によるナレーションも印象的でした。街の俯瞰映像をバックにニューヨークを紹介する冒頭から、事件が大都会で日々起こる無数の出来事のひとつとして処理されていくラストに至るまで、随所に解説が入るんです。例えば、刑事が犯人を捜して歩き回っている場面では「見失ったな」とか、逆に犯人が逃げている場面では「早く逃げろ!」「冷静になれ!」とか、野次馬のようなセリフが挿入されたりもします(笑)。


他にも、自己顕示欲からか、犯人のふりをして自首してくる変な男が登場したりなど、当時のニューヨークのカオスぶりを感じさせるような描写も数多く見られました。



リアルな犯罪、刑事ものの元祖的名作として、一見の価値はあると思います。

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