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メロドラマの巨匠ダグラス・サーク監督が、アメリカ映画としては珍しく、敗戦国であるドイツの立場から描いた作品です。 <物語>敗色濃厚な1944年早春のロシア戦線。独軍兵士エルンスト・グレーバー(ジョン・ギャビン)は、3週間の休暇を得て2年ぶりに帰郷することになる。しかし故郷ベルリンは既に廃墟と化しており、両親の行方も分からないまま、彼は辛うじて幼馴染みのエリザベート(リゼロッテ・プルファー)と再会する。そしていつしか愛を育んだ2人は結婚。無事だった両親とも連絡がとれ、ささやかな幸福に浸るグレーバーだったが、休暇が終わり彼は戦場に戻らねばならなくなる・・・ 感想は・・・これは傑作でした。ほんの数週間の休暇という、期間の限られたロマンスを中心に描いた作品です。メロドラマと銘打たれてはいるものの、過度に感傷に流されるようなことはなく、反戦ものとして見ても極めて質の高い映画だと思います。公開当時ゴダールに絶賛されただけあって、演出は非常に繊細かつ丁寧で、記憶に残るシーンも数多くありました。 出演者は、『サイコ』のジョン・ギャビンと、チョイ役のクラウス・キンスキーを除いて知らない人ばかりでしたが、皆好演していました。「西部戦線異常なし」で有名な原作者エリッヒ・マリア・レマルクも、大学教授役で出演しています。 タイトルにも端的に示されているように、本作の核心は、恋愛をはじめとした諸々の人間らしさと、冷徹な戦争の論理とのジレンマでしょう。 例えば映画の序盤、ドイツ兵たちが、上官の命令によりゲリラの疑いあるロシア農民たちを射殺する印象的な場面があります。大半の兵士たちは、不本意ながらもいわば戦争機械になりきって農民たちを殺害するのですが、その後ある一人の兵士が死に満ちた戦場経験に耐えきれなくなり、主人公の帰郷寸前に拳銃自殺をしてしまいます。主人公がヒロインと出会うよりも前に、人間らしい感情と戦争の論理のせめぎあいという、本作のテーマが早くも明示されているわけです。 監督のダグラス・サークはドイツ出身で、妻がユダヤ人だったためにナチの弾圧を逃れてアメリカに亡命した人物です。本作を見たことで彼の他作品にも興味が湧いてきました。 撮影は『黒い罠』などの名カメラマン、ラッセル・メティ。音楽は、これまた数々の名作で知られるミクロス・ローザです。 唯一の欠点は(ハリウッド映画なので)セリフのほとんどが英語であること。この映画をまともに見るためには、まず英語で会話するドイツ人たちに慣れる必要があります。もちろん、その点を差し引いても十二分に名作だとは思いますが・・・。 「私はこのチューリヒ生まれの女優(リゼロッテ・プルファー)が、画面にとらえられるたびに神経質に身震いするのを見ていたときほど、これはまさに、崩壊しつつある第三帝国に生きるドイツの若い女性だと感じたことはかつてなかったのである。さらに言えば、平和な時代に撮影されたこのアメリカ映画を見ていたときほど、これはまさに戦時下のドイツだと感じたことはかつてなかったのである」(ジャン=リュック・ゴダール) 「湖のそば、一本だけ立っている花の咲いた梅の木(だと思うのだが)の下でかわされる恋人たちの抱擁は、映画史上もっとも感動的なラヴシーンのひとつであろう」(吉村和明) 個人的には、今までに見てきた戦争映画の中でもベスト10に入るほどの名作でした。 |

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