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ニコラス・レイの監督デビュー作にして、いわゆる「ボニー&クライド」ものを代表する古典的名作です。ヌーヴェル・ヴァーグ系の監督たちに大きな影響を与えた映画としてもよく知られています。 もともと本作は、映画会社RKOの新しい製作主任にリベラルで進歩的な映画人、ドーリ・シャリーが就任したことから企画が実現したものでした。しかし1947年9月に映画が完成した後、RKOは(反共愛国主義者でもある)大富豪ハワード・ヒューズによって買収され、シャリーは退社、その余波で本作は長い間オクラ入りにされてしまいます。ようやく公開にこぎつけたのは、既にレイ監督が4作目『孤独な場所で』の撮影にとりかかっていた1949年11月のことです。 <物語>不況の嵐がアメリカ全土に吹き荒れていた1930年代の南部、ミシシッピー。チンピラのボウイ(ファーリー・グレンジャー)は仲間と脱獄し、彼らの用意した隠れ家でキーチ(キャシー・オドネル)という娘と出会う。ボウイは仲間と銀行強盗を働いて大金を手に入れるが、その後キーチと恋に落ち、2人で隠れ家に身を潜めることになる・・・。 感想は・・・やはり傑作でしたね。実はこれで2度目の鑑賞(ほぼ10年ぶり)になるのですが、全く色褪せていませんでした。まさにニコラス・レイの才気が充溢した作品だと思います。 同系統の作品としては、当ブログでも既に紹介した『拳銃魔』や、本作のリメイクでもある『俺たちに明日はない』などが特に有名ですが、テイストはそれぞれかなり異なっています。 『拳銃魔』も傑作でしたが、こちらはヒロインが主人公を悪の道に引き込む典型的なファム・ファタールである上に、拳銃に対するフェティシズムが強調され、臨場感を重視した強盗シーンが繰り返し描かれたりなど、どちらかといえばクールな印象の作品でした。それに対して、本作『夜の人々』は極めて繊細かつロマンティックなメロドラマ。悪いのはヒロインやヒーローではなく、むしろ彼らを誤解し翻弄する周囲や社会の方なのです。このあたりは一長一短で、人によって好みの分かれるポイントかもしれません。 出演陣もとても良かったです。特に主役カップルを演じたファーリー・グレンジャー(『夏の嵐』、『見知らぬ乗客』など)とキャシー・オドネル(『ララミーから来た男』など)の好演は特筆すべきもので、ほぼ間違いなく彼らのベスト・アクトだと思います。グレンジャーの強盗仲間に扮したハワード・ダ・シルヴァやジェイ・C・フリッペンをはじめ、脇を固める面々の演技にもケチのつけようがありません。 「フィルム・ノワールの作品群にあって、おそらくこの作品ほどロマンティックな魅力と人間的ぬくもりに満ちた感動的な映画もまずないだろう」(桑野仁) 「映画史上、最も美しいエモーショナルなシーンに満ちたレイの傑作」(水原文人) 「これが処女作とは信じられないニック・レイの天才ぶりが遺憾なく発揮され、高貴な愛の悲劇に仕上がった」(中条省平) 「レイの青春映画なら、有名な『理由なき反抗』よりもこの監督デビュー作のほうが数段すばらしいフィルムだ」(鈴木布美子) 残念ながら日本版DVDは未発売ですが、名作中の名作なので時間の問題かと。
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