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土饅頭がいくつも見える乾いた砂漠で砂塵が舞う。 その盛られた土の下には、痩せきった人々の死体が眠っている。 ある者はは衣服を剥がされ裸の状態。 更に、尻や太ももの肉をえぐられた者もある。 中国ドキュメンタリー映画の旗手・王兵(ワン・ビン)監督が 初の長編映画を輩出した。 王兵監督といえば上映時間9時間というドキュメンタリー映画「鉄西区」が、 小生の記憶に新しい。中国の現状をロングショットで 見事に表現していた。時間だけでなく、中国の姿に驚かされた。 今回、映画「無言歌」が描くものは半世紀前の中国。 反右派闘争で強制労働収容所に送られた人々の悲劇的ドラマだ。 反右派闘争は中国国内で文化大革命前におこる政治闘争である。 中国共産党は「百花斉放・百家争鳴」であらゆる意見を自由に 表現させたあとに、共産党を批判した人々を「右派分子」として 粛清に乗り出し、厳しい処分として収容所送りに科した。 好きに言わせるだけ言わせて、好意的でないものを全て弾圧する とても、現代日本の思想では考えられないことだ。 映画は収容所に掘られた壕と呼ばれる寝床に、連行されてきた人々が 振り分けられるところからはじまる。 ゴビ砂漠の真っ只中、ただ穴を掘って、バラックの屋根を被せただけで まるでホラ穴状態の場所だ。大きく窓のように孔があいているところから 光が差し込むが、外は雪まじりの強風が絶えず吹き荒れ、その穴さえも 人が生きることを拒んでいる状態だ。 更に、飢えが彼らを襲う。一分粥以下のスープのようなものが 少量だけ配される食事は、とても労働力を補うことも、生きることの チカラも与えてはいない状態だ。 そんな状況の中、ネズミを捕獲し食したり、人の吐瀉物を口にし 彼らは生きようとする。しかし、この極限状態で生き延びるものは少ない。 次々と壕の仲間が息絶える。狂しみを訴える力さえもなくし 眠るように死んでいく。 ついには、その死体の肉で飢えをしのぐものも出てくる。 逃げ出すものもでてくる。しかし、偏狭の地と人間の生命力を拒む 気候が、その脱走を許容するものではない。 死んでいく前に、妻宛ての手紙を壕の仲間に託し埋められたもの。 死んだ後に、妻がその死体を捜す場面は悲しい。 これはドキュメンタリーではないが事実のドラマだ。 王兵監督は、長編映画でもドキュメンタリータッチでこの悲劇を演出。 中国の歴史を世の中に知らしめるために、ゴビ砂漠において秘密裡に製作 してきたと、パンフレット等に記載されている。 前々から思っていたのだが、なぜこのような中国の体制を反対する ような映画が中国国内で製作できるのか不思議で仕方がなかった。 過日、中国インディペンデント映画祭で若きドキュメンタリストの 張賛波(チャン・ザンボー) 監督に聞いてみた。 「 これは検閲を受けたのでしょうか? 」 彼はニコリと笑って答えてくれた 「 中国に検閲はありますが、そんなところを通してはこのような映画は 公開できません。こっそり上映会やるしかないですよ・・・ 」 中国映画は自国の検閲システムをもっているようだが、それを通さず 体制を告発する流れはあるようだ。 本題に戻るが、映画「無言歌」は前述したように当局の許可も得ず、 極秘に撮影され世界中で公開されたという。 ある意味で、模造品があれだけ流通する国の事情を考えると、 国体を批判するする映画の流通も、普通に存在しているの かもしれないと考えた。 この映画のように「右派分子」とされたものは55万人であったらしい。 時がたち、文化大革命後に彼等の名誉は回復されたが、 この世にある者は僅か十数万人であったとあるから、その数字の差だけ、 多くの血と涙が蒼茫の大地に吸い込まれたことになる 無言歌
原題:夾辺溝 英語題:THE DITCH 王兵(ワン・ビン)監督作品 2010年 香港・フランス・ベルギー合作 上映時間:109分 公式HP:http://mugonka.com/ 2011年キネマ旬報・外国映画ベストテン第4位 及び 外国映画監督賞 |

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物凄い事実を描いた映画ですね・・・私は恐ろしくてとても見られません。
中国はそんなに遠くないうちに日本を知らない間に占領してしまう、という人が居ますが、今の日本人達なら簡単に中国の手にかかってしまいそうな気がします。
こういう映画を世界中に見せて、中国人の正体を世界中に知らせる必要がありますね。
2012/1/23(月) 午後 8:30 [ afuro_tomato ]
afuro tomatoさま
いつもコメントありがとうございます。人肉を食べたりする場面はありませんので、お間違いのないように。しかしながら、とても哀しくなる映画です。50年前のことといえども、事実を伝えることで、映画の価値が大きく上がり、それが大事なことだと思います。
小生もまたひとつ中国の歴史を勉強できたことが収穫でした。
2012/1/24(火) 午後 6:10