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215、津波に負けない頑固爺さん
映画:先祖になる
311ドキュメンタリー映画の一つ。
池谷薫監督作品『先祖になる』を観た 東日本大震災の日。
南相馬を襲った津波によって自宅が被害にあった。 倒壊は免れたが、長男を失った77歳の佐藤直志さん。 彼は自分のチカラで家を立て直す決意をする。 役所が危険という理由で建築認可を出さなかったり、妻が反対する中、彼は立ち上がる。 キコリという立場を活かして、自ら材料となる木を切りだし、田んぼにコメを植え付け、その地に生き続けていく。 町の夏祭りにも積極参加。若い町民の復興のエネルギーを感じつつ、日本の伝統儀式である地鎮祭、上棟式、もちまき、銭まき等を経て新しい家を建てていく。 ラスト新築の自宅から眺める被災地の姿。佐藤さんは茶をすすりながら、復興の息吹を感じていく。 見事なドキュメンタリー映画である。
悲惨な状況から立ち上がる気力あふれる老人の姿を、希望を込めた人間賛歌として謳いあげる。 震災から2年。こういう映画ができてくるときがやってきた。 ただ悲惨な状況を映し出すのではなく、復興する力を描き出し、心温まる映画に拍手を送りたい。 日本の文化や地域の特色もつかみとる映像でした。 『 先祖になる 』
池谷薫監督作品 2012年 日本 カラー アメリカンビスタ(1:1.85) 上映時間:118分 |

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214、結局ドラマなのです
演劇:長い墓標の列
昨年と比較すると演劇と少し距離をおきはじめた
それでも新国立劇場での上演作品は必ずチェックしている。 今月は福田善之作『長い墓標の列』である。 初演は1957年で早大・大隈講堂での上演で、5時間半の長き作品であったそうだ。 今回はその一年後に大きく改訂されたもので休憩を含めて3時間10分。 それでも会話の洪水だけで攻めまくるこの戯曲の5時間バージョンはかなりの苦痛であったと想像できる。 物語は東京大学・河合栄次郎事件がモデルとなっている。
この事件、わたしは全く頭になかったので、念のためネットで調べて観劇してみた。 事件についての詳細な説明は会話の中で語られていくが、大筋は戦前から戦中にかけて大学を追放され、国家権力に言動を封印された主人公の苦悩と終焉が描かれる 主人公の大学教授を演じたのが村田雄浩。 この男優さん、ある時はおなべの役だったり、映画ではモスラと格闘したりと幅広い演技で何でもこなすという感じ。 今回もこの悲劇の大学教授を見事に演じ切っていた。 さて、この3時間のドラマ。 台詞にはマルクス主義やなんたら主義とか難しい言葉が羅列されるが、ドラマ的には娘の恋愛だったり、弟子の裏切りとか、妻の献身的な姿や結構日常的な面白さで覆い尽くされている。 大島渚の映画『日本の夜と霧』を思い出したくらいだ。あれも学生運動だけの映画ではなくかなりドラマチックなものだった。 難しい言葉や聞きなれない言葉を耳にすると、それだけで嫌になってくるときもあるが、この演劇はその欠点はあまり感じなかった。 結局ドラマなのです。 福田作品は初めて観たが、遠い昔NHKの大河ドラマ『風と雲と虹と』のシナリオを手掛けている
あのドラマは好きだった。加藤剛演じる平将門の一生であった。結構ヒューマニズム性の高い作品だった覚えがある。 舞台美術で奥に大きなスロープがあり、上手から下手へ作られていた
これが大学教授宅に通じる道を表しており、なぜか遠近を感じる見事なセットだったと思う。 ステージの一番高いところまである巨大な本棚が4本で構成されたセットも印象深いものだった 『 長い墓標の列 』
作:福田善之 演出:宮田慶子 出演;村田雄浩 新国立劇場・小劇場 2013年3月15日金曜日 18:30開演 1幕:65分 休憩:15分 2幕:110分 |
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212、アルコール墜落
映画:フライト
デンゼル・ワシントンがアカデミー賞最優秀主演男優賞にノミネーションされた作品。
監督は『バック・トゥ・ザ・フュチャー』『フォレスト・ガンプ』のロバート・ゼメキス 予告編では旅客機が逆さまになって墜落する場面ばかりのデザスター映画を思わせるが、中身はアルコール依存症に悩まされるパイロットのお話。 おそらくパニック娯楽映画を期待して劇場に足を運んだ人々が結構な数いる様子で劇場の椅子を温めていた。 映画はいきなり女性のバストトップがぼやけて映る演出で、男性客をハッとさせる。
カメラが引いていくと、女性のアンダーヘアも丸写し・・・・いやいや、日本の規制もゆるくなっていくな〜 そんな彼女の横にはベットでうっぷしているワシントン。 電話がかかってきても、二日酔い状態でだらしない生活が浮き彫りにされる。 女性の裸といい、ワシントンのだらしなさといい、これらがすべての伏線になっていくから映画は面白い。 導入部はこのだらしないワシントンが薬物のチカラでこの二日酔い状態を脱し、パイロットとなって旅客機の機長という仕事をこなしていくのだが、操縦中もも隠れてウォッカをばか飲み。
そんな状態の中で予告編通りの大事故へとつながっていくのだが、彼の機転により死者が6人という極めてまれな不時着をこなしてみせる。 ワシントンはあっという間にヒーローへと転身していくのだが、ここからやっとこの映画がはじまっていくわけだ。 事故の直接原因は飛行機のハードとしての問題だったが、ワシントンがアルコール依存症であったことが発覚すると、彼自身が隠ぺい工作を行いだす。
人間のドラマとして面白い。 ヒーローの隠れた顔は実はアルコール中毒ということなんて、ワイドショーだったらどれだけ時間を割いてもおかしくはない。 だから映画になっても、ワイドショー的に楽しめる。 どんちゃん騒ぎは映画の冒頭部ですべて終わるのだが、人間ドラマとしてのチャランポラン劇は案外楽しめるものだ。 最後の最後までアルコール依存症を隠せるわけでもない結果のわかったドラマであるが、そのふがいなさに観客は『自分自身はそうならない』という安心感を持って映画に没頭していくのであろう。
それにしてもアメリカ社会のアルコールと薬物というのは、どこまで国民の間で蔓延しているのだろう。 白い粉を鼻につけて注意される場面はあちこちの映画で散見されるし、普通に缶ビール片手にでっかい外車をブッ飛ばすなんて日常茶飯事のことだ。 確かにそれが国内線のパイロットであれば同様なことも起こりそうな気がする。 一年ほど前には暴走貨物列車を派手にストップさせたり、今回のように墜落事故を綱渡りで鉾に収めたりと、なかなか忙しいデイゼル・ワシントン。
次はどんなパニック場面に登場するかも楽しみだ 映画の中に、薬物を入手しワシントンに渡すジョン・グッドマンが登場。 この役柄、中毒患者にとっては最高のヒーローとして登場する。最近わたしがお気に入りの男優の一人である。 『 フライト 』
原題:FLIGHT ロバート・ゼメキス監督作品 出演:デンゼル・ワシントン 2012年 アメリカ映画 カラー/シネスコ PG-12 上映時間:138分 |

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211、この感覚での直木賞は意外な結果
読書:何者
映画『桐島、部活やめるってよ』の原作者・朝井リョウが執筆した『何者』を読了。
直木賞受賞作品である。 大学生の就職活動を中心に彼らの青春群像が描かれている。 読了して最初に感じたことは 『 これで直木賞とれるんだ・・・・ 』 という感覚。決して直木賞のイメージが私の中で確立されているものではないけれど、意外な受賞作品というイメージだ。 登場人物が若いということもあって、ジェネレーションギャップのようなものが存在するのは否めないが、これから先はこういうものが増えていくのかという感じもした。 ネット環境だったり、デジタル環境だったり、人と人をつなぐなにかが変わっていったこの世の中。 そんな新しい関係性を小説の中で表現する面白さとして評価されたのだろうか。 確かに結末は『桐島・・・』と同じで爽快感に満ちたものではないし、暗い未来を象徴しているわけでもない。 登場人物はネット環境の中でモガキつづけ、新しい人格を形成していく結末ではあるのだ。 それにしても今の就職活動って、こんなに大変なのかと思わせることばかり。
過去の22歳の私ならば就活なんて全戦全敗だったであろう。 それでもこの小説の中でも、やっぱり何にも気にしていないやつが簡単に内定をもらったりなんていうくだりは、今も昔も変わらない。 派手な物語やストーリー展開はまったく皆無だが、TwitterやFACEBOOKも知らない読者だと、チンプンカンプンだろうなとも思いつつ、また新しい何かを求めて次の書を開くのでありました
『 何者 』
著者:朝井リョウ 株式会社新潮社発行 2012年11月30日発行 5刷 2013年2月5日 ISBN978-4-10-333061-5 1500円+税 |








