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「監督 野村芳太郎 脚本 橋本忍 山田洋次 原作 松本清張
配役 本浦千代吉 .....加藤嘉 和賀英良 ...... 加藤剛
本浦秀夫 ... 春日和秀 今西栄太郎 ... 丹波哲郎
三木謙一 ... 緒形拳 高木理恵子 ..... 島田陽子
独特の粘り強さと直感で捜査をひっぱていく今西刑事。
彼には何かが非常に強くひっかかる。
常人では気付かないであろうことが、直感的に増幅するのであろう。
思えば今西刑事がこの身元不明の殺人事件を
執拗に追ったことも嗅覚のなせるわざとも思える。
それは東北捜査旅行段階では単なる気分転換でもあったように思える。
しかし、被害者が元警官三木であると知った時、
事件は思わぬ運命に今西を導き始めたのかもしれない。
彼は警官であると同時に、どこか社会を見透かしているような一面を持ち合わせていた。
元刑事が殺された。そこにはきっと職務が絡んでいるのだ。
それは直感でもあり、必然でもあった。
聞き取りは執拗に続く。三木は真面目で信頼熱く恨まれることは一切ない。
そういう証言が集まれば集まるほど、今西には危うい人間像が浮かぶようでもあった。
勤務地が田舎であったこともあり、検挙者も少なく
唯一の刑務所送りは、更正させてくれた三木を神ともあがめている。
とにかく熱心それが答えであった。
そのうち、かつての同僚に出会った時、同僚は彼を褒め称えるが
ふと気がかりな事を話す。「彼は真面目すぎてトコトンまでやってしまうところがあった。」
言外に、同僚は批判を込めている。今西はそれを聞き逃さない。
何かがある。それは直感でもある。同僚は何かを具体的に暗示したわけではなかろう。
しかし、その一所懸命さがどうなるかを、感覚的に知っていたのではないか。
そして図らずも刑事である今西にも通じる何かがよぎったのではなかったか。
国家権力を背後に持つものが負う宿命とでもいおうか。
時に冷徹な職務をさせること、
それは全く疑問の余地もなく正しくとも、善ではない場合があること。
経験的にそれが今西にもわかっていた。
三木の行動はどこかおかしい。これは紛れもない事実であった。
それを伊勢の映画館で見つけ出す今西。その後も嗅覚は鋭く和賀の過去を暴いていった。
しかし、彼は最終局面である捜査会議で和賀の悲劇に涙を流す。
三木が和賀を訪ねてきた。和賀は単に過去を隠したくて身勝手な犯行に及んだのか。
そこで、三木という人間性を鋭く推測する。
執拗な三木であるから、首に縄を付けてでも和賀を亀嵩に連れて行こうとしたにちがいない。
それは誰からの証言でもない。今西にはそれがわかっているのである。
そして、千代吉との面会。和賀を秀夫と認めない父の心。
それに同情しながらも、今西は千代吉に念を押し続ける。
それこそ法の執行者たる冷徹さであっただろう。それに気付いている自らもいるのだ。
そして逮捕の時、「宿命」の演奏会場で、
今西は父の姿、辛い旅を背負っている男の音楽を聴く。
直感的に悟ったのである。和賀は音楽で父と会っているのであると。
それは和賀の音楽スタイルであると同時に、社会への怒りでもあったのだろう。
非常に素朴で淡々とした丹波演じる今西刑事。
丹波にこれほどの奥深さを感じないのだが、それこそ脚本力であった。
今西刑事は間違いなくキーマンであったのである。・・・・(完)
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ブラボー!とピアノ協奏曲「宿命」にちなんで叫びます。それは同時にいっきさんの記念碑的労作への賛辞です。お疲れ様でした!
2007/3/12(月) 午後 8:37
早くも今年一番の記事が書けた感じです(笑)。自分でも、映画の感動を噛みしめながら、この土日は過ごせました。感謝でした。
2007/3/12(月) 午後 10:10