レイラ!

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あとがき&はじめに

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あとがき&はじめに 

【あとがき】

 ブログの立ち上げが2006年、5月なかばの事ですから、約一年間に渡り更新を続けて来た

「才蹴探偵社」が、遂に完結いたしました。

途中中断が何度となく有り、自身の中でも完結を見る事無く放置ブログの仲間入りを果たすかも・・・

と正直、思いつつ、更新していました。

もう一つ、正直に申しますと後半は実に苦戦の連続でした。(理由は後述します)

どう書きゃいいのだろう?・・・ま、いつ無くなっても、いいようなブログだし・・・。

好きで始めた事なのに、何言っちゃってんの?辞めりゃいいじゃん。等々、まあ、ウジウジ。

 お恥ずかしい告白はここまでとしまして、そんなオイラが、どうにか、最終回までこぎつける事が

できましたのは、日々のご訪問、楽しく、温かいコメントを下さった、皆様のお陰です。

通り一辺のご挨拶で、これまた恥ずかしいのですが、本当にありがとうございました。  taba

【はじめに】

お越しいただいた皆様、ありがとうございます。

書庫「レイラ!」には完結いたしました小説が一つ入ってます。

以下、作品の内容に触れる話も致しますが、オイラなど本を読む場合、だいたい「解説」から読む方

だったりしますし・・・ネタバレしても困る程の内容でも有りませんから、ここを見て興味を持って

いただけたら嬉しく思います。どうぞよろしく。  taba

【作品について】

 「才蹴探偵社−レイラ!−」すいません、実は焼直し作品です。元のホンのタイトルは

「サイキック探偵社」映画用のシナリオでした。(世には出てません)

 書かれた時期は17年程前、○○賞とかの公募の為に書いたらしいです。完全に忘れてました。

(もちろんPCではなくワープロでした・・・「書院」!!)

しかし、まぁ一次予選も通過せず、だったかなぁ。たははは・・・。

昨年、GWの代休期間に部屋の片付けをしていた際に発掘されたのです。

 内容と言えば、単純明快にさらわれたお姫様をただただ救う、だけの分かりやすさ炸裂なお話。

才蔵はよりハチャメチャ、かえではお色気ビーム全開、蹴一はもっとヒーローらしく最後まで戦う。

ラストシーンはお決まりの『ローマの休日』で(帰国会見のレイラの発言が、過激で笑えた)

ミノウタスはどこまでもいい国、反乱軍は悪い奴。叩きのめして、めでたしめでたし。

 光回線を導入したばかりだったので、PCで何かやりたいと思っていた矢先だったので、

コレなら!と思いました。他にも何作か発見しましたが、読み返してみて、一番考えないで書そう

なのが「サイキック」でした。(仕事の合間の事なので、簡単にしたかった訳です)

 タイトルは少々、と言うか大分、陳腐に思えたので漢字に置き換えました。

最初の頃は予想通り、簡単快適(元ホンを見ながら書いてますから)順調だったのですが・・・当初は

毎日更新!してたんですよぉ。フフフ〜ン、と、鼻歌混じりで。マイナーチェンジはしてますけどね。

 事務所のシーン。才蔵とかえでは蹴一がいるのに『プライヴェート』と書かれた衝立一枚を隔てて

エッチしてるとか・・・おいおい。

突然、訪問の桜田警部の台詞「今日はかえでちゃんのセミヌード、見られなかったな・・・残念」

     あ、有り得ねぇ・・・。(こんなん、応募したんか?!昔のtabasira君!!!!)

 そんな、こんなで変更は加えながらも順調に進めていたのですが、はたと立ち止まらずには

いられないシーンに出くわしました。

 青山の銃撃戦の後、場面変わって、蹴一とレイラが海辺の小屋にいるではありませんか!

・・・何で?何で海?落丁かと思ったけど、シーンナンバーは合ってるし・・・この脈絡の無さは

いったい?!馬鹿にするにも程がある!責任者出て来い!!(はい)・・・頭を抱えました。

 先を読んで、ああ、「潮騒」(しかも堀ちえみ主演の)ゴッコ、これがやりたかっただけなんだ。

と思い至りました。実を言いますと、オイラ、超端役ながら、この映画にエキストラで出ていて、

生意気にも一言二言セリフまで戴いております。

瀬戸内の島でのロケにも二週間程連れてって貰いまして^^生ちえみ拝顔いたしたしだい(古い男)

 しかし、その二週間の間にトンでも無いドタバタに巻き込まれ、あわや!危機一髪!!!

・・・何のこったか分からないでしょうが、今思えば面白おかしいけど、当時は死ぬ思いの、

短篇小説一つ分位の経験をさせていただいたのです。(仲間内では『裏・潮騒』と言われてました)

 脱線が過ぎましたが、だから海かよ?!強引過ぎる!!馬鹿だ、オイラ!普通、書くか?

・・・で、困った事に、海辺でのレイラの幻覚シーンも捨てがたく、どーにかこーにか理由を付けて

青山から海に行かす事にしました。そこで登場した新キャラが陽子おばさんです。

元ホンには無い方です。(それでも強引なんですけど・・・実は)

 当然、才蔵と蹴一の少年時代も元ホンには有りません。ま、過去に海で何かあった事にして、

先に進もう。・・・そんな感じで出て来た陽子は、本作のトーンとテンポを落とす(?)までの方に

成長を遂げられ、オイラは大いに困惑させられました。

 ラスト近く、敵の城へ乗り込む辺りは元ホンだと蹴一の超人的な『かめはめ波』で正面突破!

と言うモノで、これも・・・如何な物かと、大分ややこしくしてしまいました。

(ちなみにラーディン将軍にトドメを刺したのは鬼神組の組長さんでした)

 つまりは、考えないで書くつもりで始めた筈が、そうもいかなくなり、冒頭で述べました様に

苦戦の連続で、散漫と遅筆を招く事になってしまった訳です。

本気で、どうなるんだろ?助かるのか?コイツら・・・と思い悩みながら書いてました。

・・・レイラが出て来た時はホッとしました。

 楽しかったですけど、次に作品を創るのなら、こんなやり方はするべきじゃないなぁ・・・

とつくづく思ってます^^;

 次・・・どうするかは、まだ考えてませんが、何らかの形でブログは続けていきますので、

これからもよろしくお願いいたします、皆様。            taba

P.S 

さて・・・元ホンの裏にシャーペンでの走り書きが有りました。

              サイキック探偵社 1 レイラ! 
                       2 かえで!
                       3 VSサイキック暗殺者 

 十七年前のtabasira君、いったいどんな話を考えてたんだろう・・・。


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エピローグ3 後編

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 次の瞬間、俺は、あの、海にいた。陽子おばさんがいた海、レイラと一夜を過ごした(本当さ!)海。

ここがいい気がするよ。最期の場所は。

暖かな日差しを受けて照り返す穏やかな波。どこまでも延びている海岸線。

遠くミノウタスまで続いている筈の太平洋、水平線・・・。

海で、水で死ぬのは苦しいんだろうな・・・。

 俺は煙草をくわえ、火を、火を・・・潮風が、100円ライターのしょぼくれた炎など

消しさってしまう。

背を丸め、手をかざし、それでも、気紛れに風向きを変えてみせる春の浜風は容赦無い。

 最期の一服くらいさせろっての!

俺はライターを握る右手の掌に視線を移す。レイラの傷口を焼き、出血を止めた金コテ代わりの手

・・・今も醜い火傷の跡が残っている。

 カチン、ボッ。

オイルライターの点く音。そして紫煙の薫りと共に煙が流れて来る。

振り返る、誰もいないと勝手に思い込んでいた。
 
・・・幻覚?!・・・風になびく金色の長い髪、知性と強い意志を感じさせる深い緑色の瞳・・・

艶やかな唇から吐き出される不似合いな煙草の煙・・・。

「レイラ?・・・どうして?!」

レイラは吸っていた煙草を俺に差出しながら笑った。

「私が、先に、ここにいたんだよ。驚いたのは私の方」

「そそそ、そうなのか?」まるで気付かなかった。気持ちが死に向かう事で、感覚が鈍っていたのか?

「久しぶりだね・・・シュウ」

「そうだね・・・」

力を、限界を超えて使い果たしたらしい俺が病院のベッドで意識を取り戻した時、既に彼女は日本には

いなかった。あの夢を見なくなっていた俺は病院を破壊せずに済んだ、それだけは朗報と言えた。

「レイラ・・・だけど、どうして・・・」こんな所に?何故日本に・・・。

「父が死に、母は病気で倒れ、その上、国は存亡の危機じゃない?」

何でもない世間話をする様に語るレイラ。しかし、それがどれだけ大変な事なのかは容易に想像がつた。

統治権を剥奪された王室は現在、日本の皇室を模した国家の象徴として、存続を認められていた。

「シュウ、信じられる?この私が平和の象徴で親善大使だなんて!」

信じるも何も、ネットでもテレビでも新聞紙上でも各国を訪問して飛び回る彼女の姿は常に大きく

取り上げられていた。破壊神と呼ばれた独裁者を父に持つ亡国の姫君、その巡礼の旅。

 以前の公式来日の際、直接被害にあっているにもかかわらず、この国のマスコミは彼女に対し好意的

であった。真摯な姿勢が人々の心をつかんだ事は確かであるが、何よりもその若さと美貌に魅せられて

の事である。

どのシーン、どの写真を見てもレイラは笑顔だった。執拗に局部のアップを狙うカメラに対してさえ。

・・・俺は痛々しくて、見ていられず、終には彼女に関するニュースはシャットアウトしてしまった。

 「日本に来てるとは、知らなかった」

改めて彼女を見る。かなり痩せた・・・と言うか、大人びたと言うか・・・どこがどうとは言えないが、

たった一年で、纏う雰囲気は別人の様に見えた。これもまた痛々しい、と思った。

「前と一緒、内緒で来てるの。今回は一人でだけど」

「一人?」そう言えば・・・誰もいない!辺りには人っ子一人!!

「今日、明日はオフなの、あんな事になってから初めての完全休養!取り敢えず!来ちゃった!」

「来ちゃったってレイラ・・・」マズイだろ?

「シュウの事務所、行きたかったんだけど、場所とか地名とか覚えてなくて。それで、あの時の海が見た

くなったから。クジュウクリハマは覚えてたし」

何て無茶な・・・、この人は・・・。

「ねぇ、シュウ、聞いてよ!国連の理事の親爺が誰も見てないとやたらとお尻とか触って来るのよ!

今は我慢の時だけど、国の独立を果たしたら、あの親爺、ただじゃ済まさないよ!

必ずぶん殴ってやる!!アバラ、ヘシ折ってやる!!」

・・・中身は変わってない・・・少し、嬉しくなった。

「はぁ!スッキリした!こんな話、誰にもできないから・・・」レイラは言うと、俺の胸に頭を寄せた。

「会いたかった・・・シュウ」

俺は黙って彼女の背に腕を回した。

「もっとギューってするの!」

いきなり命令ですか?姫君・・・俺は仰せの通りにキツくキツく彼女を抱き締めた。
 
「必ず現れてくれるね、シュウ。私がここにいるの分かってた?」

「いや・・・」

「じゃ、どうしてここに来たの?」

・・・死にに来たとは言えない。

「生きていてね。シュウ・・・」

「え?」何で?!

「ずっとずっと生き続けてね」
 
俺の聞きたかった一言・・・誰も言ってくれない一言・・・。

「私、頑張るから、頑張る私を、ずっとずっと見ていてね・・・シュウ」

「レイラ・・・」

「ジジいになって皺だらけになっても、ずっとだよ」

「そんな風になっても、生きてていいのかい?」

・・・生きていてもいいですか?


「いいよ、シュウ!」


 ・・・俺は、彼女を更に強く抱き締めた。

「シュウ、近くにあるよ・・・」

「え?」

「あの時の小屋・・・」

「小屋?」

レイラは俺の耳に唇を寄せる。

「今度は、本気で・・・ミシマの『潮騒』ゴッコしましょう」

頬を染め、はにかんだ様な笑顔を見せるレイラ。

俺は、この笑顔を一生涯、忘れない!

・・・罪は消えないよ。でも・・・この笑顔を守ったんだ・・・俺の力は・・・。

この笑顔を見る為なら皺々のジジいになるまで生き続ける!

・・・少しだけ、ほんの少しだけなら・・・いいよね?誇りに、思っても・・・。

 アハハハハハ!俺は笑った。心の底から。

「何で笑う?シュウ!」

そんな事言われても!俺は砂浜を転げ、体をくの字にして笑い続けた。

「シュウ!やっぱり、アナタ、殺すよ!!」

あははははは!もう喋るな!レイラ!腹、痛ぇ!

俺は、暖かな春の日差しと、穏やかな波の照り返しを浴びつつ、いつまでも笑い続けた。

                      (才蹴探偵社 レイラ! エピローグ 完)


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エピローグ3 前編

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 ひょおおおぅ。

風が吹き抜けた。そして片目の視力が突然奪われた・・・と言うのは大袈裟。俺は眼鏡に付いた

薄桃色の花びらを摘んで取る。桜か・・・ああ、もう春なんだな・・・この半年ばかりは仕事仕事で、

景色なんてまともに見た事無かった。盛大に散り始めてるトコ見ると、もう桜も終わり頃なんだろな。

 来た!俺はさり気なく煙草をくわえ、若い男と中年女の後を尾行ける。決定的瞬間をデジカメに

納めれば、この仕事は終了である。才蔵不在でも仕事の依頼は後を断たなかった。俺は俺達の

『才蹴探偵社』を守りたかったから、実に有り難かった。(依頼人との会話にはうんざりしたし、

帳簿には頭を抱えたが)何より、仕事に没頭していれば、全てを忘れていられると考えていた。

・・・そうでも無かったが。

中年女は男の手を引いて「上野動物園」に入って行った。

女が男の時間を買っている。2時間、3時間、半日、まる一日・・・コースは色々らしい。

動物園か・・・長い戦いになりそうだ。こっちが早めに片付いたら別件で新潟に飛ぶ(文字通り!)

つもりだったが、どうやら無理の様だ。こんな時やはり、一人はキツいと思わざるおえない。

どうにか、こうにか、ここまでやって来れたのは俺が普通じゃないおかげだ。力が無ければ、

複数の物件をこなすのはとても無理だった。愛すべき力なのか?それとも憎むべき力?

・・・に、しても、よりにも選って『動物園』とは!最近の印象としてはとても居心地のいい場所

では無い。最近と言っても、もう一年近くなるのか・・・あれから・・・。

 レイラ?!・・・息が止まりそうになった。サングラスに金髪、観光らしき外国人女性が通りかかった

と言うだけの事だった。やれやれ・・・我ながら情け無さを感じずにはいられない。これでは十代のガキ

と変わらないじゃないか。・・・十代のガキよりも経験が薄いのも確かなのだが。

 言葉と裏腹な感情が見える、見えてしまうのだ。男女問わず、他人との付き合いから逃げ回りつつ

年齢を重ねてしまった。金色の髪が風になびき、微かな芳香を残して通り過ぎて行く。

レイラ・・・誰もが彼女の様に言葉と感情がダイレクトに連動していてくれたら!有り得ないが。

彼女にしても、少女時代特有の刺々しさが無くなれば・・・現に今の彼女は、痛々しい程に・・・。

 危うく対象を見失う所だった。中年女が入場券を買い男に渡している。世間では春休みに入っている

筈だが、平日の午後とあって並ぶ事無く買えた様だ。俺も・・・タダで入るのは容易いのだが、少し

間をおいて、券を買った。つまらぬ所で力を使いたくなかった。

 ・・・猿山だよ・・・コイツら、どこ行けば俺が嫌がるか知ってんじゃないか?!

猿・・・あ!思わず声が出た。若い男が振り返る前に俺は姿を消した。・・・そうだった!

今日、才蔵とかえでさんの退院だった!!俺は物影で時計を見た。

あの事務所の惨状を見られたら何言われるか分かったものじゃない、何より奇麗に片付いた状態で

迎えてやりたかったが、多分、もう遅い・・・くそ!猿なんか見てないで、とっととホテル入れよ!

・・・俺の都合には合わせちゃくれないか・・・そりゃそうだ。誰も俺の都合なんて聞く必要ない。

不倫はしていても、あの人達は恐らく人は殺していないだろう。まともな人間が異常者の事情に

いちいち付き合付き合っていたら世の中のルール全ては破綻するしかなくなる。

 眠ると夢にうなされていた。廃屋の中で俺は何かに怯え、怖くて恐ろしくて、叫び続ける。

顔を半分潰された陽子おばさん。その姿に恐怖しているのだとばかり思っていた。あの瞬間の記憶が

俺に夢を見せ続けているのだと・・・。

・・・違った。俺は自らの力に恐怖していたのだ。俺の生存本能とやらが、俺の記憶をネジ曲げ、

意識の下に叩き伏せていたのかもしれない。一瞬で六人の人間の命を消し去ったのだ・・・才蔵が何と

言おうが、あの頃の俺には到底、耐えられなかっただろう・・・それは、今だって同じ事だが。

 「お前は陽子おばさんに生かされている」才蔵は言った。

「だから、勝手に死ぬ権利は無いし、生きるのは、お前の義務だ」

 でも・・・もう、いいんじゃないかな?もう、三十年だぜ、責任は果たしたんじゃないかな?

なぁ才蔵・・・ねぇ、陽子おばさん・・・。俺、最近、あの夢も見なくなったんだよ・・・。

 『エサを与えないでください』そう書かれた看板の前でさかんに果物やクッキーを投げ、

笑っている若い男と中年女。俺はあんな真似はしない。・・・でも、人殺しなんだ。

 才蔵、俺が失恋して凹んでると言った事、信じてくれてるみたいだったけど・・・知ってるか?

俺は、ふふ・・・『寅さん』並みに失恋を重ねて、これまで生きて来たんだぜ。

今更・・・そんな事じゃ・・・不惑だし・・・ふふふ。

 信じられないよなぁ・・・四十なんて年になるなんて・・・あの頃、信じられたかい?

初めて、お前が話しかけてくれた切っ掛け、覚えてるか?クラスの偉そうにしてた奴の時計が盗まれて、

お前が疑われたんだよな。俺には分かってたよ、お前じゃないってさ。

本当に分かってたのはそれだけで、誰がやったかなんて知らなかったんだけど・・・。

 才蔵、楽しかったな、毎日、小学校の帰り道・・・少しずつ、お前が自分の事、話してくれる事が、

いつも一人だった俺にとって、どれだけ嬉しかったか?分かるかい?

 ・・・あの海の煌めき、太陽の眩しさ、陽子おばさんの輝き、忘れられないよな・・・

あんな事さえなければ、俺達・・・50を過ぎた陽子おばさんと、旦那さんと子供達と、かえでさんと、

また、あの海に行ったりして・・・な。

 「あ゛っ!」俺はまた、声を上げてしまった。幼い娘を連れた若い母親が、不審者を見る様な

怯えた目を向ける。はいはい・・・不審者ですよ、どうせ俺は。

・・・対象が猿山の前から消えていた。走れば!まだ、そこいらに!・・・どうでもいい気がした。

俺は俺達の探偵社を守りたい一心で、それなりに頑張って来たけど・・・お前、今日、退院だもんな。

その世界最強の悪運があれば、後はかえでさんと二人、やってけるよな?もう、いいよな?・・・俺。

 才蔵・・・生かされてるなんて、辛過ぎるんだよ。

俺が聞きたいのは・・・言って欲しい一言は・・・。

                       *

 俺は夢中でレイラの唇を吸い、筋肉の張り詰めた若々しい身体を抱き締めた。

レイラ!・・・彼女の背に回した俺の手はベットリと濡れ、唇からは鉄の味が流れ込んで来る。

死なせてはいけない!この愛しき人を!!・・・何考えてたんだ!俺!あきらめかけていたなんて?!

 ・・・銃声は、確か2発。一発は俺、OK!俺はまだ考えられる!レイラは話ができた!

心臓は抜かれていない!しかし肺か?!血の味!レイラは血を吐いている、肺に穴が開いた?!

呼吸困難が先に来るかもしれない!ならば!俺は、持てる全ての意識を取り纏め、彼女の血流を止めた。

そして、残留していた弾丸を俺の手に引き寄せる。同時に肺から流れ出て溜まっていた血を口で吸い、

逆に空気を送り込む。ジワジワと背中の筋肉からせり出して来た銃弾をつまんで捨てると、俺は・・・。

「やった事ないんだ・・・レイラ!ゴメン!!」傷口に当てた掌に更に神経を集中させ、患部を焼いた!

肉の焦げる臭い、しかし、これで血は止まる筈!

「うぎゃ〜!!」レイラが悲鳴を上げた!生きてる!まだ生きてる!俺の手も焼けただれている様だが、

痛みはなかった。そちらへ回せる神経は残っていない。

せき止めていたレイラの血液を再び流す。長く続ければ細胞が壊死してしまう。

届け!残り少ない血液!全ての毛細血管にまで、届け!届いてくれ!!

 ほっ・・・レイラが一つ、息をついた様な気がした。「レイラ?」生きろ!生きてくれ!!

・・・シュウ。確かに、レイラの声を聞いた様な気がした。シュウ・・・シュウ・・・。

レイラは目を閉じたままであった。しかし、唇の両端がクイッと持ち上がって見えた。

微かにだが微笑んでいる?

シュウ・・・ちゃんと使える?私、まだ・・・。

うん?

まだ、処・・・しょじぃよん、だ・・・よ。このまま、死にたくないよ・・・。

はぁ?しょじぃよん?

優しくして・・・。

!!・・・バカタレが!・・・俺はまた、レイラを抱き締めた、できるだけ優しく・・・。

 何者かの手が、レイラを俺から引き離した。カダムリやシュジュアの姿が見えた。

何だ?こいつら?!!・・・レイラ!

動けないレイラをローターの回転するヘリに運び込もうとしている男達!

・・・俺の・・・俺の女に、触るな!!てめぇら!!触るなぁあああああああああああああああぁ!!!

                       *

 あの時の記憶は、ここで途切れてしまってる。

俺はまた、無意識の内に何かやらかした・・・らしい。桜田さんが俺達を見つけた時、

カダムリやシュジュアは半狂乱だったと言うから・・・よほどの事したんだろうな・・・ふふふ。

 才蔵、この時だよ、俺は思い出したんだ。鮮明に、極彩色でさ、ガキの頃、あの廃屋での一部始終。

最初の男の頭を吹っ飛ばして、俺自身が血塗れになっていく様から、全てを・・・。

 俺は、異常者だ・・・生きていてはいけない人間なんだ・・・死ぬしかないよ。

誰も言ってくれないから・・・。

                          (エピローグ3 後編へ続く)


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エピローグ-2

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 ♪サイキック、サイキック冒険、ぼ〜けん♪

「何その歌?」かえでが笑う。

久々に中野区の我が探偵事務所が入っている雑居ビルの前に立った俺とかえでは上機嫌、とまでは

行かないまでも、多少ハイな気分になっていた。

「入院中、あんまり暇だったから作詞してみた」

「変な歌!それにもう冒険は沢山・・・」

 俺にも勿論異論は無い。狭い階段を上り、事務所のドアの前に立つ・・・って、何だ?コリャ?!

「あ!」かえでが叫んだ。「できてる!」

「何?コレ?」

「すご〜い!カッコいー!」

「だから何だ、コレ?」

「さすがヨッちゃん!仕事早いわ!ね、才蔵、いいでしょう?」かえでは満面の笑みを浮かべている。

「ヨッちゃんて誰?そしてコレは何?」人の話、聞け!

「ヨッちゃんは友達のデザイナー、才蔵、知らなかった?」

「知らん、で、この怪し気なのは?」

「怪し気って失礼ね!ウチのイメージキャラクター『さいキッ君』よ」

「さいきっくん?」

 奇妙なタキシードを着た生き物が片足を大きく上げた図柄、平面キャラクター『さいキッ君』は

俺達の事務所のドアのド真ん中に貼られていた。これでは、マイナーサッカーチームのファンクラブ

にしか見えない。

「ノベルティグッズも作らない?売れたら、このビル買い取ってさ!」嬉々として構想を語るかえで。

やっぱ、こいつ、エボラに脳をやられてないか?!

「・・・誰が買うんだ?そのグッズ」「・・・それで、テレビアニメとかになったりして!!」

「旦那の浮気やら、結婚相手の素行調査で来た人間が、ウチのノベルティグッズを買って帰るのか?!」

 「・・・そうか」夢をブチ壊された子供の様な顔してやがる。

「だいたい何でコレがウチのマスコットなんだ?意味が分からん」

「だから、サイがハイキックしてるでしょ?そ・れ・で」

何が、そ・れ・で・・・だ!それ以前に・・・。

「サイ?動物のサイ?どこ、どー見たらコレがサイになるんだ?!」「角がサイじゃない!」

ああ・・・なるほど・・・見えない事も無いが、分かりにくい。第一、意味が無い!

「かえで・・・ひとまずコレは剥がすからな」俺が『さいキッ君』に手を伸ばすと、かえでは

悲鳴を上げた。

「やめてー!」なんて声出すんだ!隣近所に誤解されるだろ!

「入院中に一生懸命、考えたのよ!」

俺は伸ばしかけた手を止めた。

「お前が・・・考えたのか?」「アンタの歌よか、大分マシでしょ?」

「ヨッちゃんてのは?」「ヨッちゃんはあたしのスケッチをリファインしてシールにしてくれただけよ」

そうか・・・サイに見えないサイ・・・確かにまともな人間のデザインじゃねぇ・・・か。

「ねぇ〜、才蔵〜」かえでは甘える様に腕にもたれて来る。ゴロニャ〜ンとか言いながら。

こいつも・・・約一年間、隔離されてたんだ・・・検査検査で痛い思いして、見せたくも無い人間に肌、

晒して。こいつのこったから無菌室の中じゃ退屈で死にそうだったろう。・・・俺と同じで。

「ねぇ、ねぇ〜」俺のせいだってのに、恨み言一つ言わねぇ・・・まったく・・・。

「才蔵、貼っとこうよ〜。いいでしょ?!」

「コレ、シールになってるのか?」かえでが頷く。「・・・じゃ、剥がせないな」

 俺が笑うと、かえでは小動物の様に飛び付いて来た。

「やったー!」やれやれ、俺もヤキが回ったもんだ。

「ね、今度作る名刺には、このロゴ入れようね!」

「・・・図に乗るんじゃねぇ! 」



 事務所内に入った俺は唖然とした。かえでも開いた口が塞がらない様だ。

簡単に言うと・・・俺達の事務所とは思えない程に荒れ果てていた。

ゴミ屋敷、一歩手前とでも言うか・・・。窓辺の花は枯れ、整理の行き届いていた書類は乱雑に

積み重ねられ、あるいは床に投げ出され、そして、菓子パンの包装屑が、やたらと散乱していた。

生ゴミのたぐいが無かった事がせめてもの救いと言った所か・・・。

「危機的状況ね・・・」かえでは、腕まくりをすると、せっせと片付けを始めた。誰がこうしたのかは

分かっている、とは言え、動じずに次の作業に移れるかえでには感心してしまう、恐るべき天然パワー

だ。それにしても蹴一・・・事務所の荒れ具合から、奴の心情が読み取れる気がした。どちらかと

言えばキレイ好きな方だった筈なのに。

 「凄ーい!ダイレクトメールって捨てないとこんなに貯まるんだ!!」

確かに大した物量だ。ざっと内容を確認する。どうやら経営や仕事に関する郵便物は混じっていない

様だ。必要なモノにだけは目を通してくれているらしい。ホッとしながらも胸がチクリと痛む。

自暴自棄になっている様で、なり切れない・・・哀しい奴。仕方ないか、不惑だもんな、もう俺達。

「駄目だぁ!ゴミ袋足りない!ちょっと買って来るね」出て行こうとしたかえでの腕を俺はつかんだ。

「シール剥がし液も買って来いよ」

「え゛ぇ〜!!」

「嘘だよ、片付けは明日にしよう」

「・・・でも」気になるらしい・・・そういや、この事務所がいつも明るい雰囲気で客を迎えられる

様になったのはコイツが来てからだったな。かえでの選ぶカーテンやクッションを俺も蹴一も

違和感無く受け入れ、安心して客に椅子を勧め、コーヒーを勧め・・・。

 いつになったらあたしを一人前と認めてくれるのよ?!

いつだったか、かえでに聞かれたっけな・・・。

 お前、もう俺達にゃ、無くてはならない仲間になってるよ、とっくにさ。

「俺ら、盆も正月も無かったんだぜ」

「うん、・・・だね。クリスマスもバレンタインもホワイトデーも・・・」

 今年の正月の思い出は田舎から出て来たかえでの両親に、ボロカスに言われた事くらいだ。

「もう、余り残って無いだろーけど、桜、見に行こうぜ、せめて季節を感じようや」

 ・・・かえではモノも言わずに抱きついて来た。



 俺達はJR中野駅から中央線に乗り、電車に揺られる事、約15分、JR吉祥寺駅で降り、

南口の改札を抜けてブラブラと歩き出す。昔たまに見てたドラマのロケによく使われていた公園までは

徒歩約5分。いい天気だ。散歩にはもって来いの平日の午後であった。

 「何か汚らしいな・・・」

もはや葉桜に近いってのに、ごった返す花見客の群れが溢れ返り、ゴミ籠の周りには入り切らない

弁当ガラやらペットボトル、空き缶が散乱していた。繰り返し言うが、俺は酒が嫌いだ。

漂う臭気には悪意すら感じた。そしてうるさい。

約一年も閑静な場所に隔離されていたのだ、鈍りきっていた神経がキリキリと悲鳴を上げ始めた。

同じゴミん中なら騒音と悪臭の無い事務所にいた方がマシだった。

 ♪上を向いて歩こう〜♪

「何歌ってんだ?」俺が聞くと、かえでは顎をしゃくって上を見上げた。

「?」

 蒼く澄んだ空があり、黒いシルエットに見える枝葉があり、枝葉を揺らす春風は薄桃色の花びらを

いつ果てるともなく散らし、時に舞上げ、時に運び、時に手放す。風が手放した花びらは、舞台劇の

クライマックスさながらの大盤振る舞いで大地へ降り注いでいる。

「才蔵、上だけ見てれば、十分、季節を感じられるよ」

「・・・」桜色のカーディガンを羽織ったかえでがフイと花びらの中に消えて行きそうな気がして

俺は彼女の手を握った。

「そーだな」俺が言うと、かえでは嬉しそうに微笑む。

薄化粧のかえでを美しい、と、初めて思っ・・・てしまった。不覚にも。

俺達は手をつないだまま、いつまでも空とその前に広がる世界の中に立ち尽くしていた。

 陽子おば・・・聞こえてるかい?強くて、優しくて・・・アンタの願ったイイ男になれたとは

まだ思えねぇけどよ、ま、色々あって、俺は俺の女、やっと見つけたよ。かえで、って言うんだぜ。

かなり脳天気でトンチンカンな女なんだけどさ・・・陽子おば、聞けよ、あの日・・・俺は後二日、

お前は三日で、死ぬ。そう言った時、コイツ、何て言ったと思う?

 ・・・やったじゃん、あたし、アンタの後を追えるんだ!

・・・だぜ。で、笑いやがったんだ!馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけどよ・・・参ったよ、実際・・・

参ったよ。

出会った時は化粧なんて似合わないションベン臭いガキだと思ってたのに、今回、一人の女として、

堂々と俺を魅了しやがった、生意気にもよ。もっとも、後で、びーびー大泣きしてたけどさ・・・。

ハハ・・・。俺達は散々ぱら話合って決めたんだよ、隔離されようってさ。昔やってた仕事のつて

頼って、何とか世間様と隔離して貰ったのはいいんだけど・・・三日たっても、四日たっても、

死なないんだ、コレが・・・立場ねぇっての!!

 大分、後になって分かった事だけどさ、俺を咬んだエテ公、たまたま、エボラウィルスの抗体を

持ってたんだと。感染してなかったんだと。あの地下の動物園の中で一匹だけ生き残ってたんだ  

と・・・。

 蹴一じゃねぇけど、まさに悪運だけは世界最強だぜ!

 ・・・陽子おば、それで思い出したけどよ、蹴一がさ、あの蹴一がさ、いっちょまえに大失恋しや

がってよ。今は凹んでるけど・・・なーに、そのうち元気になるって!心配ないぜ!

アンタがくれた命、大切に生きていくさ。大切に・・・。

 なぁ陽子おば、俺達はいつの間にかアンタより年喰っちまったよ・・・。

 「才蔵」

「うん?」

「花見、どうして、この公園にしたの?飛鳥山でも千鳥が淵でも良かったのに」

「・・・中野から近いからな」

かえでは不満そうに口を尖らせた。はいはい。

「・・・お前と初めて言葉を交わした場所だからだよ」・・・家出娘。

「憶えてたんだ?!」

「お前が、話題にしたくないかと思ってよ」かえでは、かつて援交まがいの真似をしていた事がある。

「普通なら・・・そうだね」

「普通じゃないのか?」俺達。

「普通な訳ないじゃん!!・・・今時どの世界に一緒に死ぬ覚悟決めたカップルがいるのよ?」

・・・そりゃそうだ。

「才蔵と逢った時、あたしは16だったんだよねぇ・・・あたしはねぇ、あの時ねぇ・・・

死ぬ程、恐かったんだよ・・・才蔵・・・本当だよ・・・才蔵・・・」



      ↓                           
(“プロローグ1”に続く)                      
http://blogs.yahoo.co.jp/tabasira_shukei/5045259.html          
振り出しに戻る。初めから読み直して下さい。                
                                      ↓
                               (エピローグ−3に続く)
                                   次回こそ完結!!!

エピローグ−1

イメージ 1

 国連加盟国であるミノウタス王国が、高度経済成長期頃から現在に至るまで、日本で行っていた

様々な犯罪行為が少しづつ明るみに出るに連れ、その衝撃は世界各国に広がっていった(中には喝采を

叫ぶ国もあったが)国連の調査団が試算したウィルスサンプル及び実験動物の焼却、施設解体の金額は

安全面までを考慮すると、7千億円を超えると発表された。

 最も危険とされるレベル4ウィルスの回収、焼却処分までは速やかに行われたものの、

その後の資金調達に関しては各国の支援団体等に細々と頼るしかなく、現状では完全密封の上とは言え、

事実上、放置状態が続いている。(エイズウィルスですらレベル3である)

 この事実を受けての日本におけるメディアの加熱ぶりは凄まじく、政府の懸命の努力にも係わらず、

風説、憶測が乱れ飛び、ネット上に書き込まれる流言蜚語は後を断たない所か、数を増す一方であった。

 特に病原体の温床とされた長野県と県民への影響は測り知れず、農林、畜産、観光等の経済的被害は

勿論、心的被害に至っては金額には換算しようも無い。

 “エボラ”が裏流行語大賞だ、等と囁かれている様に、それまでそれほど知られていなかった

ウィルスの知名度は一気に高まり、出身地における職場、学校での差別、いじめ等の報告事例は

確認されただけでも1500件を超えたと言われている。レベル4ウィルス“エボラ”の回収処理は

既に終了しているにもかかわらず、である。根本的な解決を見ない限り、この醜く不名誉な事例報告は

右肩上がりに上昇し続ける事だろう。政府の対応の遅れには非難が集中している。


 地元の消防団、消防署、自衛隊の懸命な努力の結果、大事には至らなかったものの、大規模な

山火事を引き起こす原因となった戦闘ヘリコプターの行方は、目撃情報が多々あるにも拘らず

杳として知れなかった。当局は火災の中心地において発見された暴力団「鬼神組」組長と組員等の

遺体、そして、その事に因り壊滅した「鬼神組」のかつての縄張りを、最近になって中国系マフィアが

席捲し始めた事に何か関連があると見て捜査続行中である。


 クーデターに因る都市機能の麻痺状態に加え、国家の統治権を剥奪されたミノウタス国王と政府高官

数名は、王宮の一室にて自決して果てた。(暗殺との噂もある)

潔しとの声も聞かれたが、国民を見捨てた独裁者の最期として好意的な見方を為される事は概ね

無かった。現在、ミノウタス王国は全ての武装を解除し一時的な統治運営を国連に委ねた。

実質的擁護国、大国アメリカの保護の元、国民の生活は安定しつつある。しかし、その後の調査に

おける兵器武器に関するその技術力の精緻さには驚愕すべき点が多々あるとし、今後、利権争いに

発展しかねないとの見方もある。人の欲望は果てしない・・・。

                      *

 一連の騒動に深く係わりのあった『ミノウタス王国皇女特別捜索本部』本部長であった

桜田紋治郎元警部は定年を迎えた現在でも、週に三回程は警視庁に通い続けている。

老け込むには早過ぎると、密かに退職を恐れていた桜田にとって、嘱託、顧問として庁内に残って

欲しいと言う警察の申し入れは正に渡りに船であった。ただし、残される理由も分かっていたので、

彼は一つだけ条件を出した。わずかな期間ではあったが共に戦った200名の部下達、彼らに対しても

また、不当な査察、処分を決して行わない事、と。

 「その条件さえ守って戴ければ、私、桜田は生涯、一警察官として人生を全う致します!」

彼は、そう宣言した。彼と彼の部下達は警察官としての職務規定を激しく逸脱したとして警察庁の

査察、審問を受けていたのである。・・・警察庁は桜田の条件をのんだ。

 桜田の定年を手ぐすね引いて待ち構え『マスコミの寵児』に仕立て上げようとしていた各メディアは

大いに嘆き、落胆し、仕舞いには彼自身を罵倒する記事さえも書かれる始末だった。

警察が彼を残したがった理由は実はそこにあった。ミノウタス皇女とその周辺に関する情報は非常に

高度な政治的レベルの問題に発展しかねない。自殺したと言われる国王とも通じ、政府や警察官僚

以上の情報を持つ男を野に放つ訳にはいかなかったのである。

                      *

 「もう、桜の季節も終わりだなぁ・・・」

ある晴れた日の午後、桜田はハラハラと舞う薄桃色の花びらの中を一人、歩き続けていた。

この桜並木を抜けて行くと、その先にあるのは、そろそろ建て直しを考えた方がいいと思われる

大学病院の煉瓦塀、右に折れて少し歩くとアールデコ調と言うのか、古めかしい洋館を思わせる

石造りの門があり・・・もう一年近く通い続けているのだ。目を閉じていても病室まで辿り着ける。

 「あれから・・・もうすぐ一年か」

ふと、淋しさがこみあげた桜田は誤魔化す様に口に出して言ってみる。勿論、答えは返って来ない。

・・・ますます寂しさが増しただけだった。


 「来年は定年だろ?ジジィはジジィらしく・・・そうだ!来年はみんなで花見やろうぜ!」

「わ!どこで?あたし、沢山おにぎり作るから!」

「桜か・・・警部の門出に相応しい花だね」

「ありゃ!お前、たまには気の利いた事言うじゃねぇーか?!」


 あれから、もうすぐ一年・・・あんなに優しい時間は二度と再び訪れる事は無いのか・・・。

一つ、鼻をすすった桜田。無理矢理にでも気持ちの切り替えをしなければ!年のせいか涙腺が

ゆるみやすくてイカン!と、この一年、ずっと気になり続けていた“怪物”に思いを巡らせる。

 ・・・あの日、あの夏の日の明け方、レイラ救出の為、乗り込んだ城内の一室。彼女の姿は無く、

別荘全体が炎に包まれ始めた事もあって、我々は撤退を余儀なくされた。中庭に退避した我々は

ミノウタス衛兵の生き残り数人と出くわしたが、彼らはもはや戦闘意欲を失っていたらしく、

ただただ茫然と燃え落ちようとしている城を見上げていた。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・。

辺りを揺るがす地響きがあり、敵も味方も身構えた、その時!水の張られていない、来賓用と思われる

巨大なプールの底が二つに裂け始めた!

 倅がガキの時分、夢中になっていたロボットまんがを思い出した。何て言ったっけ?あのロボット。

無論、ロボットがせり上がって来る筈も無く、近くに寄って中を覗きこんでも何も見えない。

 中はかなり深い様・・・地下だ!!・・・何かが起きてる!レイラもそこか?!!

俺が駆け出すと、部下達が何も言わずについて来る。来なくていい!この城は直に崩れるんだ!!

いくら言ってもヘラヘラと笑ってついて来やがる・・・まったく!コイツらは!!


 地上で燃え盛っていた炎も地下3階までは、達していなかった。

我々が辿り着いた時、まず初めに気付いたのは、折れ重なる様に積まれて死んでいる日本人の死体!

「これ・・・鬼神組の組長じゃ・・・」誰かが言った。

 薄明かりが一筋、差し込んでいた。天井の狭い隙間から。これは・・・つまり、ここがプールの

真下と言う事になるのだろうが、それにしては・・・真っ二つに大口を開けていた筈なのに・・・

殆ど閉じかかっていた。しかも、天井のシャッターの一部は熱した飴の様にひん曲がっている・・・。

 3機のヘリコプターが横転していた。しかし、どの機も共通してプロペラが・・・無い!!

プロペラは・・・バラバラに砕けて、土間に散在していた。そして、その破片の中にゾンビ(不死者)

の様に蠢く影が・・・。我々は銃を抜き、声を掛け合いながら影に近付く・・・。

 「おっ!!」足元の死体に躓き、コケそうになる・・・ラーディン!!・・・仲間割れか??

「皆、生きてはいます!生きてはいますが・・・」誰かが声を上げる。

生きてはいたが・・・皆、一言で言えば・・・キチガ・・・精神錯乱に陥っている様だった。

「××▽◆▽▲◎●●!!!」

我々の姿を見て、それこそ狂った犬のごとく吼えまくる男が一人、なんと・・・カダムリだ!!

「通訳!!」

「・・・寄るな、日本人・・・怪物だ!怪物だ!・・・怪物だの化け物だのと繰り返しています」

「どう言う意味だ?」

「・・・さあ」



 その後、取調べが進み、様々な真相が明らかになっていった。

ミノウタスにおけるクーデターの首謀者がカダムリであった事。クーデターを起こす切っ掛けが

実に下らない・・・と言ってもいいモノなのか・・・カダムリの悲恋(?)にあった事などである。

 「レイラを好きだった!私が一番最初に好きになったんだ!・・・なのに兄妹だったなんて!!」

元々、奥手で女性との対話を苦手としていた彼が、軍隊の中で頭角を現し始めた頃、視察に訪れた

国王一家の御前で殺人術の模範試合を披露する事となった。勝利したカダムリの手を握り、

まだ年端の行かぬ少女であったレイラが言ったのだそうだ。

「私、強い人、大好き!この人のお嫁さんになる!」

カダムリ、21歳の時の出来事である。如何ともし難い想いを抱く年齢でも無かった筈なのだが・・・。

そして、その2年後、かつて国王の愛人であったと言う(それだけでも衝撃だった!)

母親の死の直前に知らされた真実はカダムリを完全に打ちのめした。

この時、カダムリは国王への復讐を誓った・・・らしい。

 ・・・何たる事だ・・・。

カダムリは、現在もアメリカの病院で治療を受けているらしいが、もはや廃人同様であると聞く。

 しかし、分からない事が一つ・・・カダムリ、そして、20名の衛兵が見たと言う“怪物”とは?

彼等を錯乱に追い込んだ 日本人 化け物 とは、いったい・・・。


 
 「退院?退院ですか??いつ?」

“怪物”について思いを巡らせている間に、病院の受付に辿り着いていた桜田は、いつもの様に、

無菌室の面会願いを書いて提出したのだが・・・。

「今日・・・ついさっきですよ」

看護師は笑顔で答えて、去って行った。

 あのヤロウ・・・何で、俺に一言!!・・・許さん!!!

桜田は、眉間にしわを何本も寄せながら・・・やはり涙腺の緩みを感じずにはいられなかった。

                             (エピローグ−2へ続く)


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