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読書の参考にさせていただいている大三元さんの書評に誘われて、『経済成長は不可能なのか』(盛山和夫著、中公新書)を読みました。
盛山氏は、本書において、日本経済の問題構造を、デフレ不況、財政難、国の債務残高、少子化、という4つの問題(四重苦)が相互に矛盾対立している(1つを解決しようとすると他が悪化する)ために、脱出のための戦略が立てられないとの基本認識に立ち、その解決に向けてどうすべきかを説いています。 盛山氏の「結論」は、まず財政悪化を覚悟しながら日銀引受の国債発行を拡大して必要な財政支出を行い、一定の成長軌道の確立を図り、その上で成長の妨げにならないタイミング・範囲で増税し、成長と増税の効果で財政健全化を進める、というものです。この結論を導き出すに至る根拠や関連する論点についても、順を追って示されており、私のような経済素人の読者にもわかりやすい内容になっています。 以下、盛山氏の主な指摘を要約すると、
・単なる歳出削減、行政のスリム化では経済は活性化しない。 ・成長率が伸びないことを生産性の伸びで説明するのは、同義反復にすぎない。生産性の伸びには「価格」が影響する。 ・規制改革したからといって「価格タームの生産性」が向上するとは限らない。いかなる規制緩和が成長率にどれだけのプラス効果を生み、それによってどれだけの税収増が得られるかを明確にした議論はない。 ・民間資金需要が弱いのは、円高と少子化という2つの要因で、事業を展開しても儲かる見込みがたたないからである。 ・日銀が政府の国債を購入して、通貨供給量を拡大し、円高とデフレの両方を緩和ないし解消することは不可能ではない。 ・社会保障給付費を削減することはマクロ経済的にはかえってマイナスである。 ・政府は、教育や科学技術、社会保障など未来への投資に支出すべきであり、「ムダ削減論」こそが成長の可能性を潰してきた要因である。「お金がないからできない」と考えるのではなく、「未来にリターンが生まれることを確信して投資する」としなければならない。 個人的には、日銀引受で国債発行を拡大することには賛成できません。 日本の政治・行政の現状を考えれば、そのような「楽な話」が許されるとなれば、つらい話(財政をカットする、税金を上げる)はどんどんと先送りされるに決まっています。そして、いずれ日本経済をどん底に陥れるような破綻の時が訪れるのではないでしょうか。 盛山説は、確かに一案だとは思うのですが、残念ながら、政治家や官僚の「実態」を考慮していない点で机上の空論の域を出ていないのではないか、と思いました。 |
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ご紹介までいただきありがとうございました!
盛山和夫の議論は、おっしゃるような「そろそろ楽な話はやめて、厳しい現実を受け止めよう」という、非常に勤勉な日本人的性格に訴えた「ムダ削減論」の盲点を突いたものだと思います。残念ながら、ありうべきムダを全て削ったところで現在の財政状況からすると焼け石に水なのが事実。ただ、削るべきものは削るとして、別途他の政策を打たないとダメですよ、ということではないでしょうか。
いずれにせよ、そういう議論もないまま八ツ場ダムも復活しちゃうし、呆れちゃいますね。
トラバさせて下さいませ。
2011/12/28(水) 午後 6:55
レス遅くなりました。
コメント&トラバありがとうございます。
(トラックバックは、自分でもやろうと思ったのですが、やり方がよく分からなくて、すみません。)
財政とか景気とかに関しては、いろいろな人がいろいろなことを言っているわけで、多分、唯一の正解があるわけではないのだと理解しています。
現状打開のためにはとにかく「やれることはやる」べきなのではないでしょうか。
2011/12/31(土) 午前 3:25 [ だいちゃん ]