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 またまた話が前後して申し訳ない。 
 
 すっかり中古ギターを買うのが当たり前になってしまった主人。 日夜ネットで中古情報を探っている。 これは2004年の春の事である。
 
 主人、とっつきはアコースティック・ギターであったにも拘らず、以外にもアコースティック・ギターそのものには大して執着が無い。 エレクトリックは何本あって良いが、アコースティックはそんなに欲しいと思わないらしいのである。 
従って、当時主人が持っていた純然たるアコースティック・ギターは初めて買ったあのギターのみであった。 その後はインチキくさいソリッドのエレアコをずっと使い続けていた。 これには理由がある。 音量の問題である。

20代の頃、アパートに一人暮らしであった主人にとって一番の問題はギターの音量であった。 夜ともなればテレビの音ですら気を使うというのに、なかなかギターを夜に弾くという事は出来なかった。
しかし、それがエレクトリックであればヘッド・フォンが使える訳なのでまだ良かった。 問題はアコースティックであった。 
当時はまだエレアコと言うものは少なく、有っても高額であった。 そんなところに安いエレアコが、しかもソリッドの物を見つけたのである。 これならば夜であっても十分弾く事が出来た。 従って、主人のアコースティック・ギター・プレイは、このインチキ・エレアコによって殆どなされていた。 従って、普通のアコースティックは買えなかったのである。
 
しかし環境が変わって、普通のものでも弾けるようになった。 夜中は無理でもかなり遅い時間まで大丈夫になった。 そして、インチキ・エレアコがご臨終となり、ヤマハのミニ・エレアコを使うようになったのだが、如何せんショート・スケールなので、弾きやすいとは言うものの音的に不満があった。 
 
主人には、ある憧れのアコースティック・ギターがあった。 オベーションである。
アル・ディメオラが好きなので、必然的にオベーションに憧れを持ったのである。
 
しかし、本物は高い。 べらぼうに高い。
中古品であっても高過ぎる。 とてもじゃないが買えるものではない。

オベーションの韓国製であるセレブリティと言うものもあるが、これでも結構な値段である。 普通に買ったら、主人の持つギターの中で一番高いギターになってしまう。
かと言ってこれの中古があるかと言うと、これが殆ど無いと言って良いほどである。 理由はわからぬが、中古市場に余り登場しない。
 
2003年の暮れのことだと思うが、久し振りにセレブリティから新作が出た。 時に、何故かセレブリティではいわゆるワンホール・タイプの物を製作しなくなってしまっていた。 主人が一番欲しいのはアル・ディメオラも使っているそのタイプであったのに。
従って新製品と言うのもエリート・タイプのものであった。 エボレットと呼ばれる複数の小さな穴が、ボディの肩の部分に数個開けられたタイプであった。

その中に、とてもよいカラーの物を発見した主人は、もう少しでそれを買うところだった。 値引きされてなんとか10万を切ってはいるものの、そんな金額のアコースティックを買うと言う事に、主人には大きな抵抗があった。 見分不相応と思ったようだ。

そんなこんなでイジイジとした年末年始を過ごした主人の目に、一気に血流が逆流するようなニュースが飛び込んできた。 セレブリティの廉価版が発売されたのである。
5万円を切るその値段は主人には大変魅力であった。 新品なので余り情報は無い。 持ち主によるレビューも全く無く、どのようなものなのか見当が付かなかった。
とにかく、現物を見に行くしかなかった。
 
そこで主人は会社の帰りにバイクを飛ばし、TDNと言う駅にあるSK楽器店に行った。 なぜ、いつも行っているIB楽器ではなかったのかと言うと、単に会社からのルートだと駅を挟んだ反対側になってしまうからであった。 近い方からと思った訳だ。
 
デパートの中にあるその店の売り場に行くと、かなり入口に近いところにそのギターが数本展示されていた。 店のイチオシと言う訳であろう。
主人が欲しいと思っているワン・ホールのものがあった。 しかし一見して、それは安っぽかった。 5万円と言えば、そんなに馬鹿馬鹿しく安いギターでもない筈なのだが、明らかに作りが安っぽいのだ。 
それでも主人はとにかく試奏を申し出た。 店員がギターを下ろし、チューニングをし、主人に手渡す。
そして主人は勧められた椅子に腰掛け、ギターを抱えてネックを持った。 その瞬間である。 主人の表情が硬くこわばった。 怪訝そうにギター全体を眺めている。
ははぁ、この顔は『これは駄目だ。』と、思ったのに違いない。 まだひとつも音を出していないにも拘らず、これは駄目だ、少なくとも

オベーションじゃない

と主人は感じたらしい。
 
勿論、本物とは何しろ価格が全然違うのだから同じな筈が無い。 同じであるのに価格だけが違うなど言う理不尽な事は有り得ない。 それは当然の事ながら主人の僅かな脳味噌でも理解していると言う事を、飼い猫として主人の為に弁護しておこう。 
しかるに許容範囲と言う物がある。 廉価版として認められる範囲と言う物が存在する。 このギターはその範囲内から、大きく逸脱しているらしいのだ。
それどころか、単純にギターとして見た場合でも良くなかった様だ。 とにかく弾きづらい。 音質云々をとやかく言う主人ではないのだが、弾き心地に関してはかなり細かい。 このギターでは普通に歌の伴奏くらいは出来るが、メオラるとなるとかなり無理な物が有ったらしい。 
 
主人、ガッカリを通り越して怒りすら顔に浮かべている。 期待が大きかった分、落胆も大きいと言う訳である。
ほんの数分で止めてしまった主人、肩を落として店を出た。
 
さて、どうしよう。 値段の問題ではないのだから、別の店に行っても仕方が無い。 しかし、その店にはエリート・タイプの方を置いてなかったので、一応そちらを見に行こうと駅の反対側のIB楽器へと向かった。 折角来たのに何の収穫も無く帰るのが嫌だったから、と言う気が我輩しないでもない。
 
IB楽器に入る。 アコースティックのコーナーは当時店の奥にあった。 適当に周りを眺めながらそこへと向かう。 アコースティック・ギターが色々並んでいる。 価格帯から言ってこの辺りだろうと思ってみたが無い。 もっと奥かと思ってもやはり無い。 こんなところには無いだろうと思ったらやっぱり無い。 なんと、この店ではセレブリティの廉価版のシリーズ自体を扱っていなかったのである。
笑いがこみ上げてくる主人。 オベーションの形をしたギターが弾けると喜んでいたのに。 夢と消えてしまった。
 
そんな主人が通路をくるりと曲がった時の事である。 明らかに臨時と思われる陳列台に、数本のオベーションが並んでいた。 中古であった。
全て本物のオベーションなので、中古であってもかなり高額だった。 ところがその中に一本だけ、他を大きく引き離して異型を放っているギターがあった。 その値札には
- 49,500円 =
と書かれていたのである。 

以前のテレキャスターの時のように、一瞬主人は見間違えたと思った。 頭の1が抜けていると思った。
ところがしかしそれは間違いなくヨンキュッパだったのである。 

それはオベーションにしては珍しいピンクのシー・スルーのエリート・タイプのギターだった。 しかも葉っぱの部分が黒のグラデーションになっていて、気色悪いことおびただしい。 全体的に不気味なカラーリングである。 
当然の事ながら、それは本物ではなくセレブリティであった。 主人が年末に欲しいと思った奴と同じシリーズではあったが、何しろ色が物凄い。 こんなギター使う奴が居るのかと我輩疑いたくなった。
 
しかしこの価格は魅力であった。 と言うより、このギターを主人に見せる為に今まで色々と悪い事を重ねて来たのだと言われれば、素直にそう信じてしまいそうなほどの衝撃であった。
なにしろ、

セレブリティが半額以下

なのである。
 
主人、早速試奏させてもらう。 抱えた瞬間、先程のものとは雲泥の差が有る事に気が付く主人。
もう少し弦高が低い方が良いのだが、それはブリッジ下のスペイサーを抜けば何とかなるだろう。 
スーパー・シャローなので、生の音は大した事無い。 しかし、このギターの場合、問題は生音ではない。 単音で細かい音符を引き続ける、すなわちメオラった場合の弾きやすさである。

初めてセレブリティが日本で発売された時、主人はそれを弾いている。 そしてその弾きやすさに感動した覚えがある。 それが今まさに蘇って来た感じである。

主人、ディメオラのアコースティックの曲の一部を幾つか弾いている。 問題ないどころか、例のインチキ・エレアコと比較にならないほどの弾き易さであった。
 
さてでは即決するのかと思いきや、今度はあちこち眺め回している。 縦にして見たり横にしてみたりぐるりとひっくり返してみたり。 どうやら主人、このギターが何故こんなに安いのか疑っているらしい。 どこかに重大なる欠陥が有るのではなかろうかと思っている訳だ。 
ところがどこにもその様な箇所はなかった。 どうやらその色に最大の問題があるようだ。 確かに我輩の眼から見ても、どんな種類の人間がこれを好むと言うのか判断が出来ないような色であった。 それが仇となっているようだ。
 
暫く考えている主人。 主人にとってもこの色は決断を鈍らせるに十分であった。 しかし、やはり価格の低さを考慮したようだ。 この値段で買える事はそうあるまいと。
 
その月はたまたま特別サービス月間とかで更に5パーセントの値引きがなされ、

専用ハードケース付きで税込みでも5万円

を切ってしまった。 
主人、笑いを堪えるのに必死である。
 
 
かくしてとうとう主人の部屋にオベーションがやって来た。 
予想もしない展開で予想もしない事態となった。

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わかる

2018/12/1(土) 午後 6:45 [ doi*o*kat*uki ]


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