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さて、話は第二の問題へと移っていった。 原告が主人の所為で隣が引っ越してしまった分の家賃を支払えという損害賠償請求である。
ここでは証拠に関して裁判官が質問しているだけなので、主人は原告と被告の意見をあまり聞いたりしないのだと思っていた。 なぜならこの後、個別に話を聞くはずだったからである。 
 
隣の住人が主人の所為で出て行ったから、部屋が空いてしまった間の家賃と広告料を負担しろと言う請求なのだたが、ここでも新事実が発覚した。
告は3回通知したと言うのた。 内、2回は社長が事務員から渡された封筒を中身を見ずに主人の部屋のポストに入れたと言うのだ。 
隣がその所為で引っ越したと言う事は後から聞いて知ったと言う。 

 
なんなのだ、それは。 しかも3回目と言うのは、その人が出て行った後の事だ。
主人が引っ越す事を決意したきっかけになった通知の事だ。
 
あわてて横から口を挟む主人。 社長が自分で入れたと言う通知は、その人が引っ越した後の事である事。 そして断固としてそれ以外の通知は受け取ってないと言う事。
裁判官はどう判断したのか。 別に何も言わなかった。 
 
主人は念の為にVドラムがどんなものであるか実演しようと思って、ドラム・パッドとシンバルを持って行ったのだが、裁判官は全然見ようともしない。 
一応、口頭で構造など説明はしたが、「それでも音は出るんでしょ?」と裁判官が言うので、テレビの音よりは全然小さいと主人は主張した。 
そして、深夜にいたるまでと言っているが、10時には止めるように心がけていたとも言った。 
主人の生活パターンで言うと、そんな深夜にドラムを叩いたりはしないし、毎日叩くほどの体力も根性もない。
それらの事は、主人、個別の面談のときに説明するつもりの様だ。 
 
大体こんなところで証拠の確認が終わり、いったん双方ともに部屋の外で待機させられた。 
ほとんどしゃべっていないのに喉かカラカラになった主人は、自動販売機を探して一回に降りていく。 原告たちはベンチでぼそぼそしゃべっている。
ここで双方が殴り合いにでもなったらどうなるのか我輩心配だったのだが、その様な血生臭い事にはならず、いたって静かなものであった。
 
 
自販機のお茶を飲んでいた主人が先に呼ばれた。 さぁ、いよいよ自分の主張を展開できる。 この一ヵ月半、何度も頭の中で繰り返し繰り返しやってきた大演説が出来ると思っていた主人だったのだが、主人の超自然的能力と言うか、運の無さと言うのか、ともかく、心配していた事はほとんど杞憂で、思いもよらない出来事に遭遇してあたふたするのが主人の業の様だ。
 
 
裁判官は別室に引きこもり、相談員だけが待っていた。 そしていきなり主人は、
和解を勧められてしまった。
これは主人にとって、全くの予想外であった。 
『もう終わりなのかいっ。』と主人の顔に書いてある。
しかも相談員が言うには、全体でいくらと言う和解であり、ひとつひとつの事案について裁判所が判断しないのだそうだ。
我輩にはどうも、『めんどくさいから、適当なことでどうよ。』と言っているようにしか思われない。 
なんだ、裁判と言うのは、そんなものだったのか。 「異議ありっ!」と言うのは何処で使うのだろう。
 
 
最初、一番最初の請求である12万でどうかと聞かれた主人。 
そんなもの、受け入れられるわけが無い。 だったら最初から支払えばこんな面倒な事にならずに済んだのである。  
これはきっぱりと拒否した主人。 
だったら、いくらぐらいなら良いのかと聞かれた主人は、心情的には完全拒否だが、最低限、最初に言っていた様に敷金の返済無しと言う事だと言うと、相手はかなりの難色を示した。 
明らかにそれは無理だと言わんばかりだった。 
 
そこで、しばらく話し合い、プラス3万と言う事でいったん部屋を出された。 次は原告側が部屋に入る。 
しばらく待たされた後、再び部屋に通される主人。 すると、相談員が開口一番、
 
「原告は相当に感情的になって随分あなたの事を悪く言っていましたが、そう言う事 は考慮しませんので。」と言った。 
ははは、あのクソジジィ、全く馬鹿だと薄ら笑いをする主人。 我輩、こっそり出て行って、奴の顔面を引っかいてやろうかと思った。 
 
相手は当然だが、プラス3万などと言う金額では了承しない。 それはそうだろう。 
なにしろ60万の要求をしているのだから。 
 
そこで相談員から10万円と言う金額を出された。 しかし敷金は帰ってこないと言うことなので、15万5千円と言うことである。 
 
主人は悩んだ。 悩みに悩んだ。 
ここで拒否すると裁判官の判断と言う事になるのだそうだ。 そうすれば何がどうだという事が判明する。 主人の出した主張のうち何処が認められて、何処が認められないのかがはっきりする。 が、支払う金額がもっと多くなる可能性もあると相談員は主人に言う。 なにか相談員の口ぶりからして、我輩、高くなりそうな感じがする。 10万で手を打った方が良いよと言っているような感じが我輩にはした。 
 
また驚いた事に、主人は原因がどうあれ、月払いのアパートで『得るべかりし賃金』などというものが有る筈はないだろうと思っていたのだが、
期待収益と言うものは認められるのだそうだ。
( この事について、後から主人は色々と調べた。 すると、期待収益と言う言い方は 少々おかしいが、損害賠償の対象にはなり得ると言う事がわかった。 ただし、そ れが損害であると認められるかどうかは別であるが。 ) 
と、言う事はそっちの問題もゼロにはならないらしい。 
 
『ほんとかよ。 あんな請求、ほとんど棄却だろうと思っていたのに。』と心の中でぶつくさ言う主人。 
苦情を受けた事も無く、隣が引っ越したという事すら知らなかったと言うのに、そんなものを支払わされたのではたまらない。
大家が管理会社に文句を言うのは当たり前だろうが、管理会社がしっかり管理してないからこう言う事になったのだろう。
この場合、管理会社と大家は同一なのだから、主人に文句を言うのは筋違いである我輩は思うのだが、世間ではどうやらそうでもないらしい。
人間のやることは我輩には理解しがたい。
 
 
そんな事も有って、大分しぶしぶでは有ったのだが、主人はそれで了承した。 
いや、してしまった。 
相手もそれを承諾したので10万円支払うという事で丼勘定の和解が成 立した。 
 
これは何がいくらと言う事ではなく、この事件全体に対しての解決案なのだそうだ。 だから裁判所としては何一つ判断してないと言う事なのである。 
やはり、めんどくさいからこのくらいで手を打ちなさいよと言っているとしか我輩には思えない。 

少々司法に対してがっかりした。 いや、かなり失望した。 主人も我輩も。 
散々少額裁判の体験記の様なものを読んできた主人であったが、こう言う展開のものは無かった様だ。 
まさに、『担当した人間によりけり』の世界だと言って良いだろうと我輩思った。 
 
何しろこれはこうと言う絶対的なものが無いのだ。 担当した裁判官、相談員の考え方ひとつなのである。
 
 
支払いは来年1月いっぱいまでと言う事になり、この件に関して今後一切争わないと言う事で双方が合意した事になった。 
 
3時間が経過していた。
 
 
 
主人も我輩も、とてもくたびれた。
 

 

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