|
他の自治体病院に比べて「都立は待迎が悪い」
医師にとって都立病院に魅力がなくなっているのは待遇面だ。民間病院に勤めるのに比べて、 年収で300万円くらい違うとささやかれる。しかし、現状をよく知る豊島病院の吉開課長補佐は、 「そんなものではない。実は倍以上違うこともある。また、都立病院の医師は都職員であり、 兼業が禁止されているのも大きい」と話す。 国立大学病院の医師などは給科よりバイト料が高くなることもあるほどだが、 それができないという。 東京都によれば、都立病院の医師の報酬は金国で下から二番目だという。 今回、墨東病院が欠員のために出した募集を見ると、待遇は医肺免許取得五年目で51万9300円、 10年で59万8500円である。ポーナスは4.5カ月分だ。10年目の医師でざっと1000万円の年収になる。 これが高いか低いかは人によって受け止め方は違うだろうが、少なくとも医師の世界では 相当の低さであることは間違いない。おそるべき激務にも残業手当はほとんどつかず、 豊島病院でも「オン・コール」で呼び出されても、手当は5000円だ。 「このあいだ同窓会で級友たちと語していたら、私の所得が一番低かったなあ」と笑うのは、 前述の墨東病院の田中副院長だ。最近、20年以上勤務した古巣の同病院に戻ったぱかりだ。 「私も36時間ぷっ通しで働いたこともある。給料に関しては相当安い。 当直は実働時間当たりにして700円くらいかな。勤務時間が比較的守られている看護師より 安いことも少なくない。これではやっていられないと、勤務医は開業医に転身するんですよ。 都立病院に魅力がないから、医師が不足するということは分かってはいます。 しかし、民間病院に勝つ術など思いつきません」と言う。 産婦人科医師の争奪戦となる今、条件の悪い都立病院に医師を引き止める力はない。 しかし、そんな医師らの選択は、低所得者層を直撃する。 消えた都立産院 ここで、都立病院の変遷を見てみたい。都内にはかつて、計19の都立病院があった。 都は前知事の時代から都立病院の統廃合を進めてる。なかでも、少子化の影響などにより、 産院に特化した病院を次々に廃止してきた経緯がある。 昭和62年には、墨田産院を廃止したのを皮切りに、平成11年には、荒川産院を廃止している。 同年、この地域の産科の拠点だった築地産院は、前述した墨東病院に「統合」したという位置づけだ。 平成14年には母子保健院も廃止したほか、16年には台東産院か吸収したはずの台東病院まで 廃止しているのだ。 都立の産院は、子供が増加したことなどを背景に戦前に建設されたものが多い。 少子化が社会問題となる今、需要が減少したのは間違いがない。 しかし、現在の産婦人科医師不足の影響によって一般分娩を相次いで休止したり、 件数を縮小する病院が出るところまでくれば、出産費用の安価な都立病院を頼りたい 低所得者層への影讐は計り知れないだろう。 墨東病院のペテラン看護師・木村初枝さんは「都は、簗地産院、荒川産院、台東産院の 三病院も立て続けに廃止してしまいましたが、このあたりは、近くに産婦人科を持つ 大きな病院があまりないのです。もともと、築地産院は、墨東病院が総合周産期センターに なることにより、吸収合併したのです。けれど、今では、墨東病院は一般分娩に 手がまわらなくなってしまっている。妊婦さんたちは身近なお産場所がなくなって 本当に困っています。都は少子化で役割は終わった、なんて説明していたのですが、 こんな事態は予測していなかったはずです」と指摘する。 木村さんは「このあたりは庶民的なところだし、外国人労働者なども多い。 私立病院などは、治療費の踏み倒しを警戒して、事前にパスポートチェックなども 厳レくしていると聞きます。けれど、外国人は放っておいていいのでしょうか。 弱い立場の人を救うのが都立や国立ではなく、民医連、(民主医療機関連合会)とか生協とか、 そういったところになっている。都立病院が公立病院の役割を果たせなくなっている」とも話す。 地域が支えるべきお産 「お産というのは地域が支えていくべきものです」と熱く語るのは、 産婦人科問題で東奔西走している、大阪府の市立泉佐野総合病院産偏人科部長で 大阪大学医学部准教授の光田信明氏だ。 関西では昨年、前述した奈良県で周産期に容熊が急変した妊婦が病院をたらいまわしにされた末に、 死亡する悲劇が起きた。最初に受け入れた町立病院は、この事故で産婦人科を閉鎖してしまった。 その結果、奈良県では南半分で子供を産む場所がなくなっている。 兵庫県宝塚市立病院も産婦人科医がいなくなってしまい、近く、産婦人科を閉鎖するという。 関西ても過疎地だけではなく大都会の公立病院まで危機に陥っている。 光田部長は「私の病院は五人体制です。二四時間受け入れようとすれぱ、最低限度必要な人数です。 ここから一人でも欠けれぱ二四時間体制の維持は難しい。この世界では5マイナス1はゼロなんです。 自宅と病院が遠いのでホテルに自腹で泊まって、オン・コールに備えているような医師まで いるんですよ」と話す。 光田氏は「大阪は、まだ地域の連携が強い。しかし医大がひしめく東京は長い間、 大学の意向や学閥などが強く反映し、系列の病院以外のことは知ったこっちゃない、という空気で、 地域を考えるという概点が薄かった。大阪では古くから大学を超えた地域連携が非常に進んでいた んです。五つ子で有名な鹿児島市立病院のある鹿児島と大阪が、一番進んでいた。 一方、東京は大学に縛られて地域の連携は弱かったと思いますね」と指摘する。 光田氏は現在、市立泉佐野病院と市立貝塚病院が連携して、「安心して産める場」 を確保する方法を模索している。「地域在住の人には、安い費用で出産できるようにする という方法も考えられる。住民票がなくて里帰リお産の人には、悪いけど少し高く取る、 とかですね。異論はあるかもしれませんが、地域に赤ちゃんが生まれることの喜びを共有したい。 産婦人科というのは、喜んでもらえる、本当はやりがいのある仕事のはずですから」と情熱的に語った。 過疎地とは違うはずなのに 東京都も手をこまねいてばかりいるわけではない。 都病院経営本部の大野あゆみ副参事は、「医師が医局から引き上げてしまうことは、 産婦人科医だけではなく、チームの一員となる麻酔医でも同様なんです。待遇の差が大きい。 民間だと一件10万円にもなる麻酔医の手当だが、都立ではとてもそんなに払えない。 麻酔医でも年収で200〜300万円は違うでしょう」と語す。 「大学の医局に積極的に派遣要請をしたり、ホームベージを利用した公募をしたりしています。 宿日直手当の大幅な改善に着手したのをはじめ、さらなる処遇改善を図るよう検討しているところです。 けれど、医師にとっては、都立病院の優先順位が低いのが現実です。 また、産婦人科医には比較的女性が多いことも、離職率が高い一因になっています。 看護師は都立の場合は福利などがまだしっかりしていて、そんなに辞めないのですが、 やはり、仕事がきついせいか、女医さんは出産を機会に辞めてしまう人が多いのです。 産婦人科医になった女医で10年後に仕事を続けている人は10パーセントを切るのです」と説明する。 取材の過程で、都病院経営本部の職員のひとりは「女性医師をひきとめる、何か秘策はありませんか」 と筆者の顔をまじまじと覗き込んだ。事態の深刻さを物語る。 都は現在、「東京医師アカデミー」と銘打って、若手の医師が腕を磨く教育システムの実施に向け、 都立病院や公杜などで準備を進めている。実は、これは、医師の人材確保という目的もあるのである。 具体的には、来年度三月に、医師臨床研修を修了するか、同等の臨床経験のある医師を合計100名募集。 口答試験、面接試験などで選抜した上、職員として採用してゆく制度なのだ。 すでにシニアレジデントとよぱれる医師が非常勤で各病院に来ている。 ただ、墨東病院や豊島病院などの産婦人科では教えるどころではない。 このため、シピアな見方もある。前述の豊島病院の大鷹美子部長は 「都庁は医師アカデミーなどと盛んに言ってますが、 教える医師も枯滑している有様でどうするんでしょうか」と、 ため息交じりに語す。「東京都なんて、ちょっとした国よりも大きな予算を持っているんですよ。 過疎地とはまったく違います。やれないはずはないと思います」と話している。 少子化対策を掲げる安倍内閣は、「安心して子供が産める杜会」を強調するが、 出発点の出産が首都でもこんな状態なのだ。範となるべき役割はあまりにも大きいはずの首都東京。 現在、学識経験者などからなる都立病院経営委員会(9名 座長・大道久日本大学医学部教授)を設け、 十月にも答申が出るという。 住民サービスの柱である医療について有効な対策が取れないまま、「五輪だ、五輪だ」と 浮かれている石原慎太郎東京都知事に違和感を感じるのは筆者だけではないだろう。 「医者は死ななきゃ治らない」 墨東病院の田中副院長は、少し前、ある雑誌の対談で石原知事がこう言っているのを読んだという。 「驚きました。都立病院の若い医師は都職員としての意識が低いことも事実です。 しかし、私たちベテランは都職員としての自覚も誇りもあるのです。そのトップに立つ人の 発言がこれでは……。身を粉にしている医師も報われません。本当に残念です」と語していた。 |
全体表示
[ リスト ]





都立が安すぎは
常識ですよね
友達は
ぼやいてました
すしどころもそうですね
2007/9/18(火) 午後 10:29 [ ker*y_a*l*n_jr ]
私は東京では働いたことはないので、
都立病院の給与事情には疎いですが、
国立系の病院の給与は酷いですよね。
国立循環器病センターのICU集団退職事件が、
遠い昔のような気がします。
2007/9/19(水) 午前 2:30
…例の「東京陥落」よりずっと前から、墨東病院はSOSを出してたんですよね…。
マスコミ、役人、その他、香ばしい牟田口症候群の人間が、そのSOSを聞かなかったために「東京陥落」が起きた。
そして今でもなお「医者のモラルの問題」とか「全国各地で救急搬送を拒否した病院は患者を捨てた」とか言う人間が跋扈する事実…。(「医師は応酬義務を果たしていない」と味方を後ろから撃つ人間までいるし…。)
いつになったら、牟田口症候群による「医師叩き」「病院叩き」が無くなるのでしょうかね…。
2009/1/19(月) 午後 2:02 [ KRTさん ]
都筑てんがさん、その通りです。
墨東病院の危うさは以前から指摘されていました。
「東京陥落」事件は起こるべくして起こったのだと思います。
>いつになったら、牟田口症候群による
>「医師叩き」「病院叩き」が無くなるのでしょうかね…。
医療が完全に崩壊するのと、どっちが先ですかね…
2009/1/19(月) 午後 7:20
当方のブログに都筑てんがさんからコメントを頂き、読ませていただきました。
私も同じように医療の現況を憂え、また医療崩壊を唱えてきました。TBさせていただきます。
今後も読ませていただきます。
2009/7/27(月) 午前 0:17 [ ceo*s*cra ]
ceo*s*craさん、記事を拝見しました。
今後とも宜しくお願いします。m(__)m
過酷な現場を知る産科医として、情報発信頂ければ幸いです。
2009/7/27(月) 午後 5:38
はじめまして。
ブログへのコメントありがとうございました。
医療問題については素人ですが、子供を産んでみて前より医療問題について気になるようになりました。
政府は少子化への対策といってますが、産院や保育所といった基盤を無視して場当たり的に金をばらまいている印象しかありません。
お仕事の傍ら大変だと思いますが、情報発信頑張ってください。
2009/8/8(土) 午後 11:17 [ がちゃぴん ]
がちゃぴんさん、コメントしたのは都筑てんがさんみたいですが…(汗)
医療問題に関心を持って頂いて幸いです。
今後とも宜しくお願いします。m(__)m
2009/8/8(土) 午後 11:43