うろうろドクター

日本の医療現場は、訴訟リスクにおびえ、過重労働で疲弊しています。少しでも良くなることを願ってブログを書いています。

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がんでない前立腺摘出=検査報告書を取り違えか−佐賀大病院
5月29日22時30分配信 時事通信

 佐賀大学医学部付属病院(佐賀市)は29日、
60代男性のがんではない前立腺を全摘出する手術をしたと発表した。
別の患者の検査報告書を基に、誤ってがんと診断した可能性があるとして、
2人の病理組織診断を行い報告書を作成した検査会社に事実関係についての調査を依頼した。
 付属病院によると、別の医院で前立腺がんと診断された60代男性が昨年11月、付属病院を受診。
医院での所見や、医院から依頼され病理組織診断を行った検査会社の報告書から、
付属病院もがんと診断し、1月に全摘出手術を行った。
不幸な出来事です。
同じ泌尿器科医としても、残念でたまりません。

しかし、医療を人間が行なう以上は、検体取り違えや病理組織検査での誤診の可能性はゼロには出来ません。


誤って手術を受けられた患者さんにはきっちりと補償をすべきですが、

執刀医が刑事罰を問われるようなことは、あってはならないと考えます。


手術の適応となる早期前立腺癌の殆どは、
PSA(Prostate Specific Antigen(前立腺特異抗原))高値で発見され、
前立腺生検により『がん』と診断されます。

そのほとんどは、触診やMRI・CTなどの画像検査で異常所見の無く、
手術中に『がんの有無』を調べる事はできません。
前立腺がんに、部分切除という術式は存在しません。

検体の取り違えがあっても、執刀医は「神でない限り」手術中に解るはずがないのです。

また取り違えたのは、生検を行なった医師か、標本を作った検査会社か、病理診断を行なった医師か?
今の時点で判断を下すのは不可能です。

しかも、ごく小さいがんで、生検では陽性と出たが、
全摘標本にはがんは無かった可能性さえもあります。

完全なシステムエラーであり、一定確率で起こり得るのですが、

医者嫌いのマスコミに理解して頂くのは難しいでしょうね…
記事のコメントも『ミスをした医師は許せない』という論調が多いですね。

どこかでミスがあった可能性は高く、原因を究明し再発防止を行なう事は重要です。

その為にも、個人の責任を問わず、正直に話させることが不可欠です。


もちろん、患者さんへの補償は十二分に行なうべきです。(民事もしくは調停でね)


西日本新聞の記事がありましたので、追記しておきます。
がんないのに前立腺摘出 佐賀、検査結果取り違え
2008年5月29日 西日本新聞

 佐賀大病院は29日、前立腺がんではない60代の男性から
手術で前立腺を全摘出するミスがあったと発表した。男性が最初に受診した民間医院で、
同じ日に組織検査を受けて前立腺がんが疑われた別人の検査結果と、
データが入れ替わっていたことが原因という。

 佐賀大病院の釘宮隆患者サービス課長は「再発防止策を考えたい」と話している。

 佐賀大病院によると、男性は昨年10月、腫瘍マーカーの数値が高いことから、
かかりつけの医院で前立腺の組織検査を受けた。
組織を調べた検査会社は「がんが認められる」と医院に報告。
男性は医院の紹介で今年1月、佐賀大病院で全摘出手術を受けた。

 ところが男性と同じ日に前立腺の組織検査を受け「異常なし」とされていた人物に今月、
再検査でがんが見つかり、昨年の検査結果を調べ直したところ、
検査会社が2人のデータを取り違えていたことが判明した。

 ただ、間違って摘出された男性の前立腺からは、
がんになる恐れがある病変が偶然見つかったという。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/25588

昨年の検査結果を調べ直したところ、検査会社が2人のデータを取り違えていたことが判明した。

昨年10月に陰性の結果が出て、5月に再生検ですから、間隔はかなり短いですね。
(普通は1年くらいは開けます)
「『異常なし』とされていた人物」は、臨床的にはかなり強く癌を疑われたのでしょう…
(PSA測定値とか、MRI所見などで)

再発防止に努めるしかありません…

閉じる コメント(7)

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http://blogs.yahoo.co.jp/fri05301/MYBLOG/yblog.html?m=l

2008/5/30(金) 午後 4:43 [ お宝芸能情報満載!! ]

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不幸な出来事です。患者さんには一日も早いご回復をお祈りいたします。
検査会社の報告書が間違っていたということでしょうか?
何回も生検することはがん細胞をまき散らすことでもあるし、控えると思いますが・・・それで間違って報告書が来たら・・・ぞっとします。
うろうろ先生のおっしゃる通り、システム上の責任を追及すべきであって、医師の責任を追及するのは違うと思います。

2008/5/30(金) 午後 4:54 かいつま(開 妻)

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検体のとり違いの他に、病理で癌に見えちゃった可能性はないのでしょうか?
病理診断も絶対ではありません。胃の生検でも炎症が混じってくると異形成と読まれてしまうことが稀ではありません。肉眼所見と乖離があるので、消化器はおかしいと思えば、疑義紹介できるのですが、乳がんや前立腺がんなど、生検が頼りの分野は、病理診断の不確実性をかんがえれば、こういう事例は稀にあり得ることだと思います。学問的には誰が悪いと言う話でもない可能性があると思います。
治療の限界があるように病理の限界も一般の人には啓蒙しなくてはないのでしょうね。

2008/5/31(土) 午前 10:30 [ sap*oro*p ]

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開妻さん、コメント有難うございます。
>検査会社の報告書が間違っていたということでしょうか?
西日本新聞の記事を信じれば、検査会社での取り違えだそうです。

>何回も生検することはがん細胞をまき散らすことでもあるし、
>控えると思いますが・・・
仮に佐賀大病院で再度検査をして陰性だったとしても
癌の否定にはならないので(前立腺生検自体も発熱・排尿困難などのリスクがあります)、
前医の『がん』という診断を信じることになります。

これで、医師の刑事責任を問うのは無謀だと思います。

2008/5/31(土) 午後 0:16 さすらい泌尿器科医

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sapporo4p先生、コメント有難うございます。
仰るとおりで、前立腺がんは生検が頼りです。
肉眼的(内視鏡)では解りませんし、エコーやMRIで解る症例も限られています。

西日本新聞の記事によれば、
>がんになる恐れがある病変が偶然見つかった
のですが、これはあくまでも偶然です。
(偶然、がんが見つかった可能性もあった訳です)

>治療の限界があるように病理の限界も一般の人には啓蒙しなくてはないのでしょうね。
その通りだと思います。
前立腺生検という検査自体が、ピンポン玉位の大きさの前立腺に
10箇所くらい針を刺して組織を採取する、という検査ですから。
全ての前立腺がんを1回で診断できる訳ではないのです。

医療を人間が行なう限り、不確実性やミスは付きまとうのです。
それを少しでも減らすようにわれわれは努力しているのですが…

2008/5/31(土) 午後 0:29 さすらい泌尿器科医

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仰る様に、明らかなシステムエラーの一例ですね。
賠償をするのは勿論だと思いますが、現状のこの国で民事なり調停で行ったとしても、払うのは誰になるのでしょう…表向きは、検査会社等が当事者になるのかもしれませんが、賠償をした後で会社から担当者個人や執刀医本人へ請求や訴訟が仕掛けられる事が容易に想像されます。
しかしながら、前立腺生検が難しく、生検で一度黒と出てしまえば、二回目に白と出ても白と言う事が出来ない事は、一般の方々特にこの国の方々には理解してもらえないのでしょう。
お決まりの感情論やら煽りに乗せられて、癌ではないものを切り取ったとこれでもかとリンチするのでしょう。

2008/5/31(土) 午後 3:19 [ 内科医研究中 ]

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内科医研究中先生、コメント有難うございます。
>賠償をするのは勿論だと思いますが、
>現状のこの国で民事なり調停で行ったとしても、
>払うのは誰になるのでしょう…
原告勝訴の場合『全員が全額を支払う義務』を負います。
恐ろしい事にその場合、原告は
「誰でも好きな人に対して全額分について強制執行」することができるそうです。

つまりカネを取りやすい病院(や検査会社)に請求することになるようです…

2008/6/2(月) 午後 1:43 さすらい泌尿器科医

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