|
本当の「NICU満床」とは―特集「新生児医療、“声なき声”の実態」(1)
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/19565.html12月8日19時19分配信 医療介護CBニュース 「新生児は声を上げることができないから、問題が表に出てこない。“声なき声”を聞き、医療従事者が声を上げていかねばならない」―。15年以上にわたり、未熟児として生まれる赤ちゃんを見続けている網塚貴介氏(青森県立中央病院総合周産期母子医療センター新生児集中治療管理部門部長)が訴える。周産期医療での救急受け入れ困難の問題を受け、NICU(新生児集中治療管理室)が慢性的に満床であるなど、新生児医療が抱える問題が見えてきたものの、氷山の一角にすぎない。低出生体重児や長期入院患者の増加、後方病床の不備、過重労働など、新生児医療の現場には山ほどの問題があふれている。“声なき声”のひしめく現場の実態はどうなっているのか―。5回にわたってお届けする。(熊田梨恵) 今年10月に東京都内で起こった、妊婦が複数の医療機関から受け入れを断られた後で死亡した問題は、周産期の救急医療に関するさまざまな問題を浮き彫りにした。そのうちの一つに、周産期母子医療センターの体制がある。 周産期母子医療センターは、母体や新生児などに必要な医療を提供するために病院に設置されており、「総合」と「地域」の2種類がある。「総合」センターは、三次医療圏に1か所程度あり、常に母体や新生児の搬送を受け入れられるように24時間医師を配置したNICUやMFICU(母体・胎児集中治療管理室)を設置していることなどが要件で、重症の妊娠中毒症などハイリスクの妊婦に対応できる重装備の施設だ。一方の「地域」センターは、二次医療圏に1か所程度で、産科と小児科を設置し、常時小児科医がいることなどが要件。「総合」センター1か所に対して複数の「地域」センターが整備されている自治体がほとんどだが、東京都のように三次医療圏に9つの「総合」センターがあり、機能が分散している所もある。 ところが、この周産期母子医療センターで、NICUが満床であるために母体の救急搬送を受け入れられないという事態が多発している。さらに、札幌市内で昨年11月に、未熟児がNICUの満床などを理由に7病院に受け入れを断られた後に死亡した新生児搬送に関する問題が報道された。厚生労働省の調べによると、昨年度は母体搬送を受け入れられなかった「総合」センターが53か所(有効回答74か所)あり、このうち9割超が「NICU満床」を理由に挙げていた。新生児搬送を受け入れられなかった42か所(有効回答70か所)についても、9割超が「NICU満床」を理由としていた。 全国的に起こっている「NICU満床」とは、一体どのような状態なのだろうか。 青森県内の周産期医療の中核を担う青森県立中央病院総合周産期母子医療センター(NICU9床)。在胎週数が26週未満の切迫早産や先天異常の胎児の妊娠などハイリスクの妊婦が、外来や近隣の医療機関からの搬送によって集まってくる。生まれたばかりの未熟児の赤ちゃんは、自力で呼吸や体温調節ができないので、NICU内の温度の保たれた保育器の中で、人工呼吸や点滴などの処置を受ける。同センターは県内で最も未熟性の高い新生児を受け入れる役割を担っており、「ここが受け入れなければ、ほかはない」(網塚氏)。 11月26日、同センターのNICUに、新たに1000グラム未満の未熟児の赤ちゃんが入院した。モニターのアラーム音がスタッフにすぐ聞こえる距離に置かれた保育器の中で、人工呼吸と点滴の処置を受けて眠っている。 一方で、この赤ちゃんを受け入れるために、まだNICUでのケアが必要な赤ちゃんがNICUの後方病床であるGCU(Growing Care Unit=継続保育室)に送られていた。9月末に1000グラム未満で生まれた未熟児で、現在は約1700グラムにまで成長しているが、人工呼吸のために必要なチューブがまだ鼻から通っている。数日前にも、同様にNICUでのケアが必要な約1500グラムの赤ちゃんが、GCUに送られたばかりだ。同院にある9床のNICUは、波はあるものの満床になることが多いため、その場合はこうしてNICUでのケアが必要な赤ちゃんであっても、GCUに送ることで何とか受け入れている。網塚氏は、「どの病院もNICUは足りていないので、大体が満床。それでも受け入れなければならなくなった場合は、人工呼吸器などが付いていても何とかGCUに送り、新しい赤ちゃんに対応している。『NICU満床で受け入れられない』というのは、『後方病床のGCUにも送れないほどの状態』というのが本当の意味。単純にNICUだけが満床で断っているのではない」と語る。 ■増える低出生体重児 NICUでの治療が必要な新生児は年間約3万6000人いるのに対し、国内のNICUは約2000床にとどまる。これほどNICUが逼迫(ひっぱく)した状態になっているのはなぜだろうか。 NICUに入院する新生児の増加の背景には、高齢出産の増加や女性の喫煙率の上昇などさまざまな要因で、全国的に低体重で生まれる新生児が増えていることがある。 厚労省の人口動態調査によると、出生時の体重が「未熟児」の分類になる2500グラム未満の新生児が年々増加している。特に1000グラム未満の子どもの増加が顕著で、2006年には3460人と、10年前に比べて約1.3倍になった。出生時の平均体重は、1975年に3200グラムで最高を記録して以来、年々低下。2006年には3010グラムと、統計を開始した1951年の3100グラムを下回った。また、出生数が年々減少している一方で、「未熟児」が全体に占める割合は増えており、2006年には9.6%と、平均体重が最高を記録した1975年の5.1%のほぼ2倍だ。 さらに、日本小児科学会の調べによると、1000グラム未満の新生児の入院数は、2005年には3037件と、1990年の1.5倍に増えた。 しかし、後方病床のGCUに赤ちゃんを送ればNICUで受け入れられると単純に考えるわけにはいかない。GCUはそもそも、NICUでのケアが必要のなくなった赤ちゃんが入院する“回復期”病床だ。24時間小児科医がおり、看護師が3:1で配置されているNICUに比べると、GCUはこうした配置基準がないため、ケアも手薄になる。網塚氏は「無理に新しい赤ちゃんを受け入れると、それまでNICUに入院していた赤ちゃんがケアの手薄な状態に置かれ、危険にさらされる」と話す。 青森県立中央病院総合周産期母子医療センターのこの赤ちゃんのケースでも、GCUに送られた赤ちゃんはまだ人工呼吸器が付いていて、NICUでのケアが必要な状態だった。新生児医療連絡会の調べによると、各病院によって差があるものの、全国のGCUでは1人の看護師が平均して9、10人の患者を見ている。1000グラム未満で生まれた赤ちゃんの場合、診療報酬では120日間はNICUに入院する赤ちゃんについて「新生児入院医療管理加算」を算定できるが、現状では次々と赤ちゃんが入ってくるため、算定可能日数の約半分ぐらいしか入院していられないという。 ■一人でミルクを飲む赤ちゃん 「ここしか受け入れるところがないという病院では、こうして無理に赤ちゃんをGCUに押し出しているので、“一人飲み”が起きている」(網塚氏)。“一人飲み”とは、本来なら3時間ごとにスタッフが赤ちゃんを抱っこしてミルクを飲ませるところを、保育器の中で寝ている赤ちゃんに哺乳瓶をくわえさせ、赤ちゃんが一人でミルクを飲むという状態だ。忙しくて手が足りないため、そうせざるを得ないという。 東日本のある周産期母子医療センター。ここでも“一人飲み”は起きている。NICU部門の責任者の看護師は、「GCUの中にも人工呼吸器を付けた赤ちゃんが多く、モニターから少しも目が離せないので、見える所に新生児のコット(保育器を出た赤ちゃんが入るベッド)を引っ張ってきて見ている。“一人飲み”は誤飲やむせなど、医療事故にもつながりかねないので、したくないのは当たり前。でもこの状態ではとても回らない」と、苦渋の表情を見せる。このセンターでは、医師や看護師が泣きやまない赤ちゃんをおんぶして仕事をすることもあるという。センターの医師も、「ちょっと抱いたら安心するのか泣きやむ。赤ちゃんも寂しいのだと思う」と話す。 網塚氏は「一人の看護師が約10人もの赤ちゃんを見るのは無理。保育所でも保育士の配置は3:1と児童福祉法で定められているのに、医療が必要な小さい赤ちゃんが無法状態に置かれているのは人権問題。ただでさえ医療が必要な赤ちゃんが、抱っこもされないで一人で哺乳瓶から飲むという状態があってよいのか」と憤る。 ■置き去りにされた家族ケア 青森県立中央病院で10年以上、新生児看護に携わってきたNICUの主任看護師の溝江和佳子さんも、GCUのケアは心もとないと話す。「NICUの赤ちゃんは小さな変化も見逃せないので、きめ細かな配慮が必要だし、使用する薬などの分量も細かく決められている。NICUではマンツーマンでケアができるが、GCUではミルクを飲ませることや、体温や血圧の管理、投薬などでとても忙しくなり、看護師が走り回っている。ご家族も『大変そうですね』と優しく言ってくださるが、不満もあると思う。本当はご家族の気持ちに寄り添った精神的なケアも充実させたい」。一般的にNICUやGCUを退院した赤ちゃんは在宅に戻るので、人工呼吸器や移動用のバギーなど、在宅ケアの準備が必要だ。そのための相談に乗ったり、地域の保健師と連絡調整をしたりすることなどは、看護師の役割になる。しかし、“一人飲み”がある病院の看護師は、「ミルクをあげるための抱っこもままならない状態では、とてもその余裕はない」と、苦々しげに語っている。 (続く) 私は4月の超党派議連のシンポジウムでこの話を聞いて衝撃を受けたものです…。 (と言いながら、ブログ記事が無いのですが…(獏)) 『NICU満床で受け入れられない』というのは、『後方病床のGCUにも送れないほどの状態』というのが本当の意味。単純にNICUだけが満床で断っているのではない医療者のこんな努力があることを、「たらい回し」「搬送拒否」と安易に書く大手マスコミは知らないのでしょうね… |
全体表示
[ リスト ]





このような厳しい現実を無視したまま、脳内の都合のよい世界、言霊の世界で生きているような人ばかりになってしまったら、映画マトリックスのように機械に全てを委ねて飼育されるしかないのでは。
というより、すでに精神風土としては実質そうなっているような気がして怖いです。そして夢から醒めた時には荒涼とした廃虚が広がっている・・・
Welcome to the reality...
2008/12/9(火) 午前 2:44
じゃあ、看護師さんを増やして…とか思うのは…素人考えなのでしょうね。
現在の診療報酬では経営が成り立たないでしょうし、
人が多いと、勤務交代の引継ぎ(申し送り?)等の人と人との連携も煩雑なり、
ミスを誘発する可能性も高くなる?
先月、拙ブログにも少し書いたのですが、今の若いコ(10代前半〜20代)を見ても、
無事元気な児を生めるのか、出産リスクは高そうだなとか、他人事ながら心配になります。
もっとも…(話が跳びますが)
国民の生命(と財産)を守るべき「厚生労働省」と「防衛省」が、今国民から最も信頼されてない行政機関という由々しき事態では…、どうしようもないのかも…。
2008/12/9(火) 午前 7:21 [ 少彦梛(一患者) ]
自分も知ってはいましたが、ここまで荒れ果てていたとは…専門外なので、一人飲み等の詳細までは知りませんでした。
本来なら、看護師等のコメディカルスタッフを増やして対応したい所ではあっても、他業種では考えられないほど人件費が嵩んでいますし、そもそも雇った分を賄える診療報酬にもなっていませんから。
それに、診療報酬の変更に伴う看護基準の改悪で、看護師の引き抜き合戦にもなっていますから…こんな慢性期病院からも引き抜いて使い物になるのか、というような所にも触手を伸ばしている状況なので…自分の外来先も、急性期を診ているのに、それでも引き抜き・補充不足が常態化しています。
いつ、一人飲みによる誤嚥で訴訟が起きて、いつもの医療叩きが始まるのか…心配でなりません。
2008/12/9(火) 午前 10:51 [ 内科医研究中 ]
20年以上も前から、ひとり飲みの現実はありました。
それほど、産科&新生児のスタッフ不足していたように思います。
2008/12/9(火) 午後 0:05
Wagonさん、コメント有難うございます。
学会の上層部には、こんな厳しい現実がわからないのでしょうかね?
岡井先生!
>そして夢から醒めた時には荒涼とした廃虚が広がっている・・・
その時は目前のような気がしています…
2008/12/9(火) 午後 6:55
少彦梛(一患者)さん、コメント有難うございます。
>じゃあ、看護師さんを増やして…とか思うのは…素人考えなのでしょうね。
普通の考え方だと思います。
学会の上層部の人間には何故か無理みたいですが…
>現在の診療報酬では経営が成り立たないでしょうし…
今日の記事に詳しく出ていますが
https://www.cabrain.net/news/article/newsId/19584.html
NICUには多くの看護スタッフが必要です。
多くの病院で赤字部門だそうです…
http://med2008.blog40.fc2.com/blog-entry-523.html
(コメント欄です)
>国民の生命(と財産)を守るべき「厚生労働省」と「防衛省」が、
>今国民から最も信頼されてない行政機関という由々しき事態では…
世も末ですね…
2008/12/9(火) 午後 7:18
内科医研究中先生、本当に酷いですよね…
>いつ、一人飲みによる誤嚥で訴訟が起きて、
>いつもの医療叩きが始まるのか…心配でなりません。
今、大事故が起きないのが不思議なくらいです…
2008/12/9(火) 午後 7:20
開妻さん、コメント有難うございます。
>20年以上も前から、ひとり飲みの現実はありました。
そんなに昔からありましたか…
ずーっと対策されてこなかったのですね…
2008/12/9(火) 午後 7:22