うろうろドクター

日本の医療現場は、訴訟リスクにおびえ、過重労働で疲弊しています。少しでも良くなることを願ってブログを書いています。

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世界的大流行の確実性高く=新型インフルで舛添厚労相
4月30日13時31分配信 時事通信

 衆院厚生労働委員会は30日、新型インフルエンザ問題について集中審議を行った。舛添要一厚労相はこの中で、新型インフルエンザが「パンデミック、世界的大流行になる確実性が極めて高くなった」との見通しを示した。
 また、厚労省の上田博三健康局長は、新型インフルエンザに効果があるとされる治療薬のタミフルを既に3380万人分確保し、さらに830万人分を確保する予定と公表。やはり治療薬のリレンザは国で268万人分を備蓄済みで、都道府県でも133万人分を備蓄する予定と明らかにした
豚インフルはフェーズ5に入ってしまいましたが、

医療現場の皆さんに向けて、神戸大 岩田教授から非常にプラクティカルなメッセージが出ております。

転載自由とのことですので、ペーストいたします。

岩田教授は、管理人(近畿医療福祉大学 勝田吉彰先生)が北京で大使館医務官を務めていたとき、北京SOSクリニックにて山下医師ともども在留邦人の信頼を集めておられました。SARSの修羅場を共に経験したいわば戦友です。
以下、岩田教授のメッセージペースト。「研修医」とあるのは「すべての医療関係者」と読み替えて良いと思います。

豚インフルについて、研修医の皆さんへ
・まず、毎日の診療を大切にしてください。
呼吸器症状の有無を確認し、ないときに安易に「上気道炎」と診断せず、旅行歴、シックコンタクト、動物暴露歴など問診を充分に聴取してください。
患者さんが言わない、ということはその事実がない、という意味ではありません。せきをしていますか?と聞かなければ、せきをしている とは言わないかも知れません。原因不明の発熱であれば、必ず血液培養を検討してください。バイタルサインを大切にしてください。 バイタルサインの重要度は重要な順番に、血圧、脈拍、呼吸数、(第五のバイタル)酸素飽和度、そして、体温です。極端な低体温などはまずいですが、発熱患者で大切なのは体温「以外」のバイタルサインと意識状態であることは認識してください。発症のオンセット、潜伏期など、時間の感覚には鋭敏になってください。要するに、ブタインフルエンザ診療のポイントは普段の診療の延長線上にしかありません。ほとんど特別なものはないことを理解してください。上記の診療は診療所、大学病院、どこのセッティングでも可能です。大抵の感染症診療は、大抵のセッティングで可能なのです。

・自分の身を護ってください。
とくに初診患者では外科用マスクの着用をお奨めします。患者の診察前とあとで、ちゃんと手を洗っていますか。
 呼吸器検体を採取するなら採痰ブースが理想的ですが、理想的な環境がないからといって嘆く必要は少しもありません。「うちには○○がない」と何百万遍となえても嘆いても、物事は一つも前に進みません。「うちには○○がないので、代わりに何が出 来るだろう」と考えてください。考えても思いつかなかったら、そこで思考停止に陥るのではなく、分かっていそうな上の先生に相談してください。いつだって相談することは大切なのです。
診察室で痰を採取するなら、部屋の外に出て患者さんだけにしてあげるのもいいかもしれません。日常診療でも、とくに女性の患者は人前で痰なんて出せないものです。呼吸器検体を扱うとき、気管内挿管時などはゴーグル、マスク(できればN95)、ガウン、手袋が必要です。採血時やラインを取るときも手袋をしたほうがよいでしょう。 こういうことは豚インフルに関わらず、ほとんどすべての患者さんに通用する策に過ぎません。
繰り返しますが、日常診療をまっとうにやることが最強の豚インフル対策です。

・あなたが不安に思っているときは、それ以上に周りはもっと不安かも知れません。
自分の不安は5秒間だけ棚上げにして、まずは周りの不安に対応してあげてください。豚インフルのリスクは、少なくとも僕たちが今知っている限り、かつて遭遇した感染症のリスクをむちゃくちゃに逸脱しているわけではありません。北京にい たときは、在住日本人がSARSのリスクにおののいてパニックに陥りましたが、実際にはそれよりもはるかに死亡者の多かった交通事故には全く無頓着でした。ぼくたちはリスクをまっとうに見つめる訓練を受けておらず、しばしばリスクを歪めて捕らえてしまいます。普段の診療をちゃんとやっているのなら、豚インフルのリスクに不安を感じるのはいいとしても、パニックになる必要はありません。

今分かっていることでベストを尽くしてください。
分からないことはたくさんあります。なぜメキシコ?なぜメキシコでは死亡率が 高いの?これからパンデミックになるの?分かりません。今、世界 のどの専門家に訊いても分かりません。時間と気分に余裕のあると きにはこのような疑問に思考をめぐらせるのも楽しい知的遊戯ですが、現場でどがちゃかしているときは、時間の無駄以外の何者でもありません。知者と愚者を分けるのは、知識の多寡ではなく、自分が知らないこと、現時点ではわかり得ないこととそうでないものを 峻別できるか否かにかかっています。そして、分からないことには素直に「分かりません」というのが誠実でまっとうな回答なのです。

・情報は一所懸命収集してください。でも、情報には「中庸」で対峙しましょう。
炭疽菌事件では、米国CDCが「過去のデータ」を 参照して郵便局員に「封をした郵便物から炭疽感染はない。いつもどおり仕事をしなさい」と言いました。それは間違いで、郵便局員の患者・死者がでてしまいました。未曾有の出来事では、過去のデータは参考になりますが、すがりつくほどの価値はありません。「最新の」情報の多くはガセネタです。ガセネタだったことにむかつくのではなく、こういうときはガセネタが出やすいものである、と腹をくくってしまうのが一番です。他者を変えるのと、自分が変わるのでは、後者が圧倒的にらくちんです。

・自らの不安を否定する必要はありません。臆病なこともOKです。
ぼくが北京で発熱患者を診療するとき、本当はこわくてこわくて嫌で嫌で仕方がありませんでした。危険に対してなんのためらいもなく飛び込んでいくのは、ノミが人を咬みに行くような蛮行で、それを「勇気」とは呼びません。勇気とは恐怖を認識しつつ、その恐怖に震えおののきながら、それでも歯を食いしばってリスクと対峙する態度を言います。従って勇気とは臆病者特有の属性で、リスクフリーの強者は、定義からして勇気を持ち得ません。

・チームを大切にしてください。チーム医療とは、ただ集団で仕事をすることではありません。
今の自分がチームの中でどのような立 ち位置にあるのか考えてみてください。自分がチームに何が出来るか、考えてください。考えて分からなければ、チームリーダーに訊くのが大切です。自分が自分が、ではなく、チームのために自分が どこまで役に立てるか考えてください。タミフルをだれにどのくらい処方するかは、その施設でちゃんと決めておきましょう。「俺だけに適用されるルール」を作らないことがチーム医療では大切です。我を抑えて、チームのためにこころを尽くせば、チームのみんなもあなたのためにこころを尽くしてくれます。あなたに求められているのは、不眠不休でぶっ倒れるまで働き続ける勇者になることではなく、適度に休養を取って「ぶったおれない」ことなのです。 それをチームは望んでいるのです。

・ぼくは、大切な研修医の皆さんが安全に確実に着実に、この問題を乗り越えてくれることを、こころから祈っています。

検疫官に励ましを!!も合わせてご覧下さい。

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閉じる コメント(21)

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うろうろ先生、記事待っておりました。
転載・トラバします。

2009/4/30(木) 午後 5:54 まお 返信する

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フェーズ5に入りましたね。
フェーズ6は間も無くですね。
タミフルもリレンザも有効みたいですが、
ワクチンを急いで欲しいですね。
岩田教授のメッセージとても勉強に
成りました。ポチっ!☆

2009/4/30(木) 午後 6:11 bug*nno*e 返信する

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検疫官の皆様に、感謝を届けるこそ忘れては成らない事と存じます。 この事態が長引けば必ず過労死される方が出られます。 日夜影で日本を感染病から守って頂いている方がたです。

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
(平成十年十月二日法律第百十四号)
最終改正:平成二〇年六月一八日法律第七三号


(国民の責務)
第4条 国民は、感染症に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、感染症の患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならない。


と有ります。

2009/4/30(木) 午後 7:07 [ おみぞ ] 返信する

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ほねやすめ先生、転載有難うございます。
私も祈っています。

2009/4/30(木) 午後 7:17 さすらい泌尿器科医 返信する

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まおさん、どうも有難うございます。

なんか恥ずかしいですが…(笑)

2009/4/30(木) 午後 7:18 さすらい泌尿器科医 返信する

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おみぞさん、検疫官の方々にはいくら感謝しても足りませんよね。
みんなで励ましの声を届けましょう。

こんな法律があったんですね。
今こそ『国民の責務』を果たす時ですね。

2009/4/30(木) 午後 7:21 さすらい泌尿器科医 返信する

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BUGINNOSEさん、ポチ有難うございます。
フェーズ6にならず、犠牲者もなるべく少なく済むことを願っています。

ワクチンもなるべく早くできるといいのですが、
今までワクチン行政をマスコミがさんざんバッシングしてきただけに、
どうでしょうか?

2009/4/30(木) 午後 7:24 さすらい泌尿器科医 返信する

うちの病院でも・・・大変な騒ぎ。
マスコミが、病院の玄関先でカメラを肩に構えています。

もた、何をいわれるのやら・・・怖いですね。

2009/4/30(木) 午後 7:36 [ 愛結(ayu) ] 返信する

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ワクチンは、ピークに間に合わないと思います。1からの開発になりますし。 バイオ製造は現時点では不可能でしょう。製造は初期は卵からしか製造できないでしょうから。

タミフルにすがって、自己の抗体にと言う所です。 それに、警戒されていたH5N1亜型の様な凶暴さではなくですから。 通常の2〜3倍との予想がされています。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO114.html

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

非医療関係者は目にしない法律ですからね。

2009/4/30(木) 午後 7:43 [ おみぞ ] 返信する

私も是非転載させてください(^^)。

2009/4/30(木) 午後 7:52 [ ruby ] 返信する

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愛結さん、ウチの病院は静かですね。(笑)

お疲れさまです。

2009/4/30(木) 午後 7:53 さすらい泌尿器科医 返信する

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おみぞさん、私も間に合わないと思います。
それでも作るしかありませんが…

>警戒されていたH5N1亜型の様な凶暴さではなくですから。
インドネシアやエジプトで遺伝子交換しないといいですが…

http://obgy.typepad.jp/blog/2009/04/post-e190.html

2009/4/30(木) 午後 7:56 さすらい泌尿器科医 返信する

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morpheus先生、どうも有難うございます。
刻々と変わる状況を正確に受け止め、冷静に対応することは大切ですね。

2009/4/30(木) 午後 7:57 さすらい泌尿器科医 返信する

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作っておく必要はあるとお思います。 次に備えて。

砂川富正 先生は、インドネシアもそうですが、どういう見解をお持ちかお尋ねしたところです(こんな時に聞くな、憤怒)。 エジプトの件は勝田吉彰先生は、ご関心ないようです。 まったく起こらないとも言えない所が難儀です。 あちらは、生命誕生の頃から、細胞分裂の急激な突然変異で生き延びてきていますからね。こっちは遅れて、減数分裂で緩やかな突然変異にて対抗しているわけですから。 あっちの方が対応が早い、は〜。 抗体での対応ですかね。 この先果てしなく攻防は続くわけですから、多分ホモサピエンスが地球上に存続の限り。

2009/4/30(木) 午後 9:15 [ おみぞ ] 返信する

はじめまして。
私は看護師をしてます。
岩田教授のメッセージ、コピペさせて頂きました。
先生のお書きになる記事、いつも感心しながら拝見してます。

2009/5/1(金) 午前 1:48 [ say*ri*h*202 ] 返信する

すごくためになるお話でしたので、転載させていただきました。

2009/5/1(金) 午前 9:11 [ LIFEONE ] 返信する

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おみぞさん、確かにどんなに遅れようと作る必要はあるでしょうね。

>この先果てしなく攻防は続くわけですから、
>多分ホモサピエンスが地球上に存続の限り。
その通りですね。終わりはありません。

今後も、延々と攻防を続けるしかないですね。

2009/5/1(金) 午後 1:03 さすらい泌尿器科医 返信する

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say*ri*h*202さん、こういういい記事はどんどん広めてくださいね。

ウイルスは封じ込めないといけませんが…(笑)

2009/5/1(金) 午後 1:04 さすらい泌尿器科医 返信する

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LIFEONEさん、転載有難うございます。

確かにちょっと読みにくいですね。

2009/5/1(金) 午後 1:05 さすらい泌尿器科医 返信する

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先生。豚さんの件より。こちらのほうが面白いかも。 家禽にH5N1ワクチンの投与は、耐性および突然変異を誘発させる可能性が。

http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0004915

Paradox of Vaccination: Is Vaccination Really Effective against Avian Flu Epidemics?

2009/5/4(月) 午後 1:31 [ おみぞ ] 返信する

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