警察に通知、「故意に近い悪質な医療行為に起因する死亡」−厚労省研究班
6月22日22時52分配信 医療介護CBニュース
診療行為に関連した死亡の調査分析法などについて、昨年度から研究を進めている厚生労働省の「診療行為関連死調査人材育成班」の研究代表者を務める東京逓信病院の木村哲病院長らは6月21日、中間報告会を開いた。この中で、「届け出等判断等の標準化に関する研究」のグループリーダーを務める虎の門病院の山口徹院長は、医療安全調査委員会(仮称)が警察へ通知する範囲について、「『故意に近い悪質な』医療行為に起因する死亡」などとした。
冒頭、あいさつした厚労省医療安全推進室の佐原康之室長は、「(厚労省の)第三次試案、大綱案に批判的な意見の中には、医療事故の調査と責任追及とは完全に切り離すべきだという意見がある」と指摘。こうした意見に対し、「医師や看護師という医療のプロとして、実施した医療に対する責任というものから完全に逃れることはできないのではないか。プロとしての責任からいたずらに逃れようとすれば、社会は逆にそれを医療界の無責任と見る。これでは医療界は社会からの信頼を失ってしまうのではないか」と反論した。
同時に、「プロフェッショナルとしての責任が理不尽な方向で追及されることは適切ではない」とも指摘。日常的に死と隣り合わせの医療における死亡事故の調査や評価は「医療者が中心となって、専門的かつ科学的に行われなければならないし、個々の医療現場の状況を十分踏まえたものでなければならない」「個人の責任追及を目的とするものではなく、医療の質や安全の向上に主眼を置いた調査や評価でなければならない」と述べた。
その上で、佐原氏は「医療者、患者、法律関係者、さまざまな立場の方がその垣根を越えて、信頼の上に新しいシステムのできるよう引き続き努力していきたい」と語った。
■「著しく無謀な医療」「リピーター医師」など
続いて研究報告が行われ、初めに山口氏が「医療機関から医療安全調への届出」と「医療安全調から警察への通知」の範囲について報告した。
厚労省の第三次試案と大綱案は、医療機関から医療安全調への届出範囲について、(1)誤った医療を行ったことが明らかであり、その行った医療に起因して、患者が死亡した事案(その行った医療に起因すると疑われるものを含む)(2)誤った医療を行ったことは明らかではないが、行った医療に起因して、患者が死亡した事案(行った医療に起因すると疑われるものを含み、死亡を予期しなかったものに限る)―のいずれかに該当すると医療機関が判断した場合としている。
山口氏のグループでは、これに関連して「明らかな誤った医療」「○○に起因する死亡」「予期された死亡」について、より具体的な内容を検討した。
その結果、「明らかな誤った医療」を「判断に医学的専門性を必要としない誤った医療」と定義。
また、「○○に起因する死亡」については、「○○によると医学的・合理的に判断できる死亡」とした。さらに、死亡が行った医療に起因すると判断する際の時間的な目安について、「事例発生後、2週間以内の死亡」「退院後24時間以内の死亡」とした。
「予期された死亡」については、「医療行為に伴い一定の確率で発生する事象(いわゆる合併症)として医学的・合理的に説明できる死亡」と定義した。
さらに、第三次試案で示された「医療機関からの届出範囲の流れ図」を、臨床的思考に沿って再構成した。
一方、医療安全調から警察への通知範囲について、大綱案では「標準的な医療行為から著しく逸脱した医療に起因する死亡」としている。
これに対し、同グループでは通知範囲を「『故意に近い悪質な』医療行為に起因する死亡」とした。具体的には、「医学的根拠がない不必要な医療」や、危険性が少なく、より有効的な選択肢があることを承知の上で、危険性の極めて高い医療行為を実施するなどした「著しく無謀な医療」、致命的となる可能性が高い緊急性の異常に気付きながら、それに対応する医療行為を行わないなどの「著しい怠慢」を挙げた。
また、故意や事実の隠ぺい、診療録などの偽造や変造、過去に行政処分を受けたのと同じか、類似した医療行為に起因して患者を死亡させた「リピーター医師」についても、通知範囲に含めるとした。
一方、悪意によらない通常の過失や、知識不足、不注意などによる誤った医療行為については、行政処分で対処するとした。また、極めて基本的な医学常識の欠如や、非常識な不注意による医療事故の取り扱いについては、今後の検討課題とした。
■診療行為、2つの視点で評価
続いて、「事例評価法・報告書作成マニュアルに関する研究」のグループリーダーを務める東大医学部附属病院血管外科の宮田哲郎准教授が、「死因究明の評価法について」と題して、調査結果報告書の作成に係る評価方法などについて説明した。
このグループでは、2007年度に作成された「評価に携わる医師等のための評価の視点・判断基準マニュアル(案)」の実地検証を「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」などで行い、同マニュアルの08年度版を作成した。
宮田氏は報告で、モデル事業で明らかになった調査結果報告書の作成に当たっての問題点として、診療行為の評価の視点や基準、道筋などがあると述べた。
診療行為の評価視点は、診療行為の時点においてその行為が適切であったか否かという評価視点(診療行為の医学的評価)と、結果から見てどのような対応をすれば死亡を回避できたかという評価視点(再発防止への提言)の2点に明確に区別する必要性があるとした。
また、評価の基準となる「標準的医療」については、▽各学会で示されているガイドライン▽医師一般に知られている診療方針▽医療機関の特性によって差のないもの-としながらも、ガイドラインは柔軟に適応されるべきものであり、特定の状況では特殊な診療も適切と認められる場合があることなどから、今後も引き続き検討し、明らかにすることが課題とした。
評価の道筋として宮田氏は、(1)診断の評価(2)適応の評価(3)治療手技の評価(4)患者管理の評価(5)システムエラーとしての評価-が望ましいとした。また、評価は「何をしたのか」だけでなく、「何をしなかったのか」についても行い、評価結果が一つにまとまらない場合は、複数の評価を列挙することを提案した。
具体的に、「適応の評価」では、選択した治療が標準的治療の範囲に入るかなどの評価を行うが、標準的治療法には幅があるため、評価を記載する際は、標準的な対処法が一つしかなかったと解釈されかねない表現は避けるべきとした。
■第三者機関、早期設立を
また、「医療の良心を守る市民の会」の永井裕之代表が、遺族の立場から「医療に安全文化を」と題した発表を行い、医療事故調査を実施する第三者機関の早期設立を訴えた。永井代表は医療機関の医療事故対応について、「組織防衛に走る」と批判。医療者が逃げずに誠意を示すことが重要とし、患者やその家族への公正な対応を求めた。また、現在行われているモデル事業について、「もっと発展させてもいいと思っている」「展開させることが(第三者機関の実現に)一番早いのではないか」と述べた。
警察への通知範囲について、'''大綱案では「標準的な医療行為から著しく逸脱した医療に起因する死亡」としている。
医療安全調査委員会(仮称)が警察へ通知する範囲について、「『故意に近い悪質な』医療行為に起因する死亡」などとした。
この範囲があいまいで、
『標準的な医療行為から著しく逸脱した医療』や『故意に近い悪質な医療行為』を、その気になればいくらでも広く取れるから、われわれ『現場の医師』は反発しているのですけどね…
先日の(遺族団体主催の) 国会議員シンポでも
医療安全調、大綱案での創設に賛成意見はなかった
のですが、まったくご理解頂けないようです…
まあ、安全地帯にいる佐原さんにご理解頂くのは無理でしょうが…
われわれは、『故意または、診療記録等の記録の改ざんおよび隠蔽』
を警察に通知するのには反対しませんし、
全国医師連盟試案で示した。
調査委員会を医療訴訟に前置すること
を提案しています。
あと、この記事には書かれていない重要な内容としては、
m3の 医療維新からですが、
モデル事業に参加した遺族へのアンケートです。
モデル事業参加への動機(複数回答)
正確な死因を知りたい 19人
医療ミスの有無を知りたい 12人
亡くなった方にできるだけのことをしてあげたい 4人
医学の進歩のため 5人
トラブルに備えて証拠を確保しておきたい 3人
家族・警察からの勧め 各2人
医療機関から協力を求められた 2人
評価結果報告の説明への納得度(医療機関からの説明)
十分納得 1人、一応納得 5人、あまり納得せず 3人、全く納得せず 10人、
覚えていないので分からない 2人
評価結果報告の説明への納得度(モデル事業からの説明)
十分納得 2人、一応納得 9人、あまり納得せず 6人、全く納得せず 3人
モデル事業参加前後の意識の変化(当該医療機関に対する信頼)
改善 1人、変化なし 8人、悪化 9人
モデル事業参加前後の意識の変化(医療界全般に対する信頼)
改善 6人、変化なし 5人、悪化 6人
調査の回収率は39%
時間もお金もかけた「モデル事業」なのですから、
医療機関側やモデル事業担当者が、いい加減にやったことは考えにくいです。
(医療機関の中には、『モデル事業で原因究明をはじめ、すべて実施してくれる』などと考え、
遺族への対応が疎かになったケースもあると見られる」という意見がありましたが…)
調査に返答しなかった遺族が「納得」している可能性はさらに低いと予想されますので、
非常に厳しい数字です。
少なくとも、
『遺族の納得・慰撫』のために事故調査を行なうという発想は間違いだ
という事がはっきりしたのは大きな収穫です。
医療過誤の有無を問わない患者家族救済制度を打ち立てること
こそが唯一の解決策だと、私は思いますけどね…
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私は医療は素人ですが「私の子(妻・夫)が死ぬはずが無い」「病院に連れて行ったのに死んだのは何か医療ミスがあったに違いない」って思い込んだ人を説得するのは無理だと思うんです。
最近は誰かのせいにしないと自分の悲しみを消化できない人が多いです。自分で自分の悲しみを引き受ける、家族の死の喪失感を徐々にでも受け容れていく。そういう精神的訓練のほうが解決になる気がします。誰を責めても亡くなった人は戻ってきません。
人は誰でも死ぬ。妊娠中であっても。生まれたばかりの赤ちゃんであっても。
そういう厳然たる事実を引き受けられなくて医療者に八つ当たりするのは、その人のためにも悲しい事だと思います。
2009/6/25(木) 午後 8:38 [ 通りすがり ]
キサ・ゴータミの説話
http://blogs.dion.ne.jp/bodhisattva/archives/6601734.html
日本人に必要なのはこちらでしょう
2009/6/25(木) 午後 9:17 [ 元外科医 ]
事故調の報告書で、民事提訴がどうなるか不明です。 まず死因を究明するスタッフはどうするのでしょうね、病理医、法医学者も入ってまた?。 コロナー制度なんてまねしても、あちらは、家族も究明して、それを以後に生かすために参加している様ですから、根底が違えば、無意味かもしれませんね。
家族のへ精神的緩和制度もあります、それも入っての話でしょうね。 それに、鑑定書が多数出た場合の意思決定はどうするのでしょうね。 事故調からとは鑑定書も別途出る可能性も有りますし。
2009/6/25(木) 午後 9:39 [ おみぞ ]
「標準から逸脱した医療」「故意に近い悪質な医療」誰もが青戸病院事件を想像しますね。ただこの解釈次第では「医療(特に外科手術)の萎縮」に繋がることになり、最悪、外科系医師(手術をする医師)の激減を招きかねませんね。患者側のみならず医師側にも安心して手術ができるための補償体制が絶対に必要でしょう。
2009/6/26(金) 午前 10:32 [ SNS ]
通りすがりさん、悲しいですがそうなんですよね…
医療事故に遭ってから、「医療の不確実性と限界」を説明しても
納得してもらえる方は少ないです。
こういう立派な方はめったに居ません…(涙)
http://blogs.yahoo.co.jp/taddy442000/26484496.html
>最近は誰かのせいにしないと自分の悲しみを消化できない人が多いです。
その通りですね。
日本人の質は大人も子供も落ちているような気がします…
>自分で自分の悲しみを引き受ける、家族の死の喪失感を徐々にでも受け容れていく。
>そういう精神的訓練のほうが解決になる気がします。
仰るとおりですが、そういう「グリーフケア」を行なうことができる
人材も少ないのですよね…
http://www.e-sogi.com/arekore/griefcare.html
2009/6/26(金) 午後 0:22
元外科医さん、いい話ですね。
多くの方に読んで頂きたいものです。
2009/6/26(金) 午後 0:26
おみぞさん、今の厚労省案のままで医療安全調査委員会が作られれば、
その報告書は、民事にも流用可能です。
つまり、遺族側弁護士にとっては、
勝利確定の鑑定書が無料で手に入る訳です。
美味しいですよね…
一方、調査委員会に参加する能力を持つ、病理医・法医学医は全く足りません。
よっぽど上手に入り口を制限しない限り、パンクするのは自明です。
2009/6/26(金) 午後 0:34
SNSさん、こんなあいまいな表現のままでは、
世論の厳罰化の方向性もあり、何時基準が厳しくなってもおかしくはありませんよね。
リスクのある医療に勇気を持って立ち向かっている医師を責めるより、
減少を食い止め、増やす対策の方がよっぽど大事だと思います。
まあ、事故調反対派を一人も入れない発表者のメンバーからも、
厚労省が仕組んだ事故調推進劇であったようですが、
絶対に許しません。
>患者側のみならず医師側にも安心して手術ができるための補償体制が絶対に必要でしょう。
そういう発想はこのメンバーに期待するのは無理でしょうね…
2009/6/26(金) 午後 0:44
うろうろ先生お久しぶりです。
>医療事故に遭ってから、「医療の不確実性と限界」を説明しても
>納得してもらえる方は少ないです。
悲しいですが、医療者が言うと「言い訳だ。庇いあいだ」という風にしか取らない人もいます...
普段から【医療の不確実性と限界があること】を全員の共通認識になってほしいですが、どうしたらそうなるんでしょうね...。
2009/6/26(金) 午後 8:29 [ ancomochi ]
ancomochiさん、その通りdすね。
このCBの記事にも、
>永井代表は医療機関の医療事故対応について、
>「組織防衛に走る」と批判。
とありますし、
m3の記事にも(同じく永井氏の発言です)
>原因究明、再発防止をもっと徹底してやるべき。
>これをやり、説明したら、ほとんどの被害者は納得するが、
>それができていない。
アンケートの結果を見るまでもなく、
そんな訳ないでしょうに。
こういう非現実的な考え方で、
欠陥だらけの事故調厚労省案を推進しないで欲しいものです。
2009/6/27(土) 午前 2:19
>普段から【医療の不確実性と限界があること】を
>全員の共通認識になってほしいですが、
>どうしたらそうなるんでしょうね...。
やはり「スーパードクター」「神の手」系の医師をもてはやし、
現実から目を背けるマスコミの姿勢が最大のがんだと思っています。
手強いです…
2009/6/27(土) 午前 2:25
最近でこそ情報が外に出るようになりましたが、インフォームドコンセントの制度前後は患者とその家族にとって悩ましい時代でしたね。
そして情報開示時代に入って、エラーという罪を誰がどの程度線引きするのかも難しい問題になってきたようなきがします。
大変勉強になりました。
2010/1/21(木) 午前 8:54 [ dalichoko ]
chokoboさん、医療を含めて人間が行なう事は、
どんなに注意をしようとも、一定の確率でエラーが起きてしまいます。
エラーをしてしまった個人を罰しても、エラーは防げない事や、
再発防止の為には、当事者の罪を問わずに正直に話させる事が大切なのですが、
なかなか理解してもらえません…
2010/1/21(木) 午後 7:43