うろうろドクター

日本の医療現場は、訴訟リスクにおびえ、過重労働で疲弊しています。少しでも良くなることを願ってブログを書いています。

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「その1」から続きます。
Q4 :日本にも無過失補償制度はある?

 日本には無過失補償制度はありません。これが、日本が「ワクチン後進国」となっている大きな要因のひとつです。

 日本だけでなく、諸外国においても、ワクチンに関する不幸な歴史がありました。ワクチン接種後の有害事象が、ワクチンによる副作用だと思われ(実はワクチンが原因ではなかったものが多い)、訴訟などのトラブルを繰り返してきました。

 国やワクチンメーカーが訴えられ、メーカーがワクチン製造から撤退すると、国民に必要なワクチンが供給されなくなりました。ワクチンの接種率が低下し、ワクチンで防げる病気が再び流行し死者が増えるなど、惨事が繰り返されました。

 これでは、国民全体の不利益となってしまいます。

 それに、ワクチンで病気を防ぐことは、自然現象に対する人類の挑戦なのですから、絶対に完璧ということはありません。誰にも過失がなくても、極めてまれに重篤な後遺障害などが起きてしまいます。にもかかわらず、訴訟で誰かに過失があったことにして賠償金を払わせるのは、不条理ではありませんか。

 こうしたワクチンの歴史から学んだ諸外国は、ワクチン接種後の有害事象で、後遺障害が残った人々、医療や介護が必要となる人々に対して補償する、無過失補償・免責制度を作ってきました。

 例えば、アメリカ国民は、ワクチンの無過失補償・免責制度によって、2つの選択肢を得ました。この制度で補償金を受け取るか、従来通り裁判で誰かの過失を追及するかのどちらかです。補償金を受け取ったら訴訟を起こせませんし、訴訟を起こすなら補償金を受け取ることはできません。

厚労省は保険のようにリスクを誰がどう分散して担うか議論してこなかった

 無過失補償・免責制度は、訴訟で誰かの過失責任を問うのではなく、有害事象が起きた人々を広く救済しようという考えに基づいています。

 「過失があったか、なかったか」が問題にならないのは、国民やワクチン接種した人々がわずかずつお金を出しあい、有害事象が起きた人々の生活をお互いに助け合おうという発想があるからでしょう。

 有害事象のリスクを分散して受け止めようという考え方で、例えばアメリカは、ワクチンの値段に上乗せして集めたお金から支払う保険のような仕組みですし、フランスは国民の税金から支払う仕組みです。だから、皆で出し合ったそのお金を受け取った人は、誰に対しても訴訟を起こさないという約束が、合理的なものとして国民の合意となったのでしょう。

 アメリカの無過失補償・免責制度はワクチンを対象としていますが、フランスではもっと幅広く患者を救済しようという概念で、ワクチンだけでなくあらゆる医療事故を対象としています。

 その一方で日本は、有害事象が起きた人々から目をそむけ、ワクチンのリスクから逃げてきました。厚労省は保険のようにリスクを誰がどう分散して担うのかという議論をしてこなかったのです。

Q5 :日本では「過失がないのに過失を認定」?

 無過失補償・免責制度がないために、日本の裁判所は、後遺障害が残った人々の救済のために広く過失責任を認める傾向があります。誰かに過失があることにして、その人(又はその人の代わりに国等)に賠償金を支払わせる仕組みです。

 例えば平成3年4月19日の最高裁判決があります。昭和43年に小樽市保健所で痘そうのワクチンを受けた後、下半身麻痺、知能障害が残ったとして、国に損害賠償請求したケースです。この判決文には、次の記載があります。

 裁判所では「必要な予診を尽くしたかどうか」が論点となっていますが、医療の現実の世界で、ワクチン接種する前に健康状態に関する質問などしたら未来がわかるとでもいうのでしょうか? 人類にはどうしようもなく確率的に起きてしまう有害事象が誰に起こるか、医師は予言すべきだというのでしょうか? 未来の自然現象を予言する能力を、医師が持っているわけではありません。

 現実の世界と乖離した判決を繰り返すばかりで、無過失補償・免責制度という第2の道を作ってこなかった日本では、人類には不可能な「予診」義務なるものが医師に負わされています。

 医療現場で日々繰り返されている「予診」は、一体誰のために、何のために行われているのでしょうか? それは、国の責任を医師に転嫁するためのセレモニーとしか言いようがありません。

 誰の過失かという不毛な議論を続け、ワクチンが普及しないことは、国民全体の不利益です。誰かに過失を負わせるしか救済する道がない現状から早く脱却し、ワクチン接種率を高めて国民の命や健康を守るためには、訴訟ではない「もうひとつの道」を用意する必要があるのです。

Q6 :日本の補償制度は「過失ありき」?

 日本にも一応、補償制度はありますが、救済する範囲が狭いことや、補償金額が低いことなど、十分な制度とは言えません。そして、諸外国の無過失補償・免責制度との大きな違いは、日本では誰かに過失があったことにして、その人(またはその人の代わりに国等)に賠償させるという裁判のような発想に縛られたままであることです。

 予防接種法に定められたワクチン(定期接種と臨時接種)の場合、国が国民の税金から支払いますが、それ以外のワクチン(任意接種)の場合、メーカーの拠出金から補償が支払われます(表)。つまり、訴訟になればほぼ必ず過失を認められる国と訴訟対象となるメーカーに、訴訟になる前から支払わせる仕組みと言えます。

誰かの過失を追及せずとも補償してもらえる無過失補償・免責制度が必要

 一方、国民にとっては、あるワクチンが定期接種であろうと任意接種であろうと、確率的に起きてしまう有害事象のリスクは同じです。にもかかわらず、定期接種の補償金額(死亡時42.8百万円)と、任意接種の補償金額(死亡時7.1百万円)は大きく異なります。厚労省がワクチンを定期接種化せず、任意接種のまま据え置いていることは、国民の不利益なのです。

 国民の命や健康を守るためには、接種率を上げる必要があります。そのためには、きちんと定期接種化して十分な補償を用意するとともに、誰かの過失を追及せずとも補償してもらえる無過失補償・免責制度が必要なのです。

 お互いに助け合おうという発想ではないため、誰に対しても訴訟を起こさないという合意ができていない日本では、免責制度がなく、補償金を受け取った人もさらに過失を追及する訴訟を起こすことができます。こうして日本では、「過失があったか、なかったか」という不幸な議論が繰り返されるのです。

 厚労省が定期接種化を避けるのは、無過失補償・免責制度がない日本では、「過失がないのに過失を認定」されるため、その架空の「過失」を、厚労省から医療現場の医師たちに責任転嫁しているというわけです。

(文/文/村重直子〈医師、元・厚生労働省大臣政策室政策官〉)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20101115-00000001-trendy-soci

昨年の新型インフルエンザの大流行の際に「無過失補償」の話が出たのですが
流行の収束とともに立ち消えになってしまいました…

日本には無過失補償制度はありません。

先日も取り上げた、「『産科無過失補償制度』があるじゃないか!」と言われそうですが、

あれは、金額が少ないのと

補償金を受け取ったら訴訟を起こせませんし、訴訟を起こすなら補償金を受け取ることはできません。

という制度になっていない、という致命的な欠陥があります。

定期接種の補償金額(死亡時42.8百万円)と、任意接種の補償金額(死亡時7.1百万円)は大きく異なります。

という現状を何とかしたいものです。

実際の予防接種健康被害者数 認定者数のデータはこちらです。

閉じる コメント(11)

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>予防接種の直前、患者さんに「今日は体調悪くないですか?」という、なんとも意味のなさげな問診をするのって、「国が現場の医者に責任を転嫁するためのものだ」と、現場シンポで村重直子さんが言っていた。予防接種の予診という一見無意味な「セレモニー」に、こんなに恐ろしい意味があったとは!
http://twitter.com/kimuratomo/status/4113454877114369

確かに言ってますね…(汗)

2010/11/15(月) 午後 7:25 さすらい泌尿器科医

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ワクチンのリスクばかりを声高に叫ぶ声は、国民の側でも強いわけですから、ある意味現状は「国民の声」の通りとも言えるのでしょう。

可能な範囲で、正確な情報をこどもたちには伝えていきたいと思いますので、また勉強させてください。
リスクとメリットを知った上で判断できるこどもたちを育てていけたら、と思います。

2010/11/16(火) 午前 7:53 [ はにほ ]

勉強になる記事をご紹介下さって有り難うございます。

>「過失があったか、なかったか」という不幸な議論

予防接種の推進は大切なことなのですが、そのために副作用が疑われる人に「こういう症状は接種無しでも希に起きることなんだから、副作用じゃない」という主張をぶつける専門家がいるのが気になります。

予防接種は免疫ですから、必ず一定の割合で副作用は出るはずです。そして免疫が個人の体質や環境に大きく影響を受けていることを考えるに、ごく一部ではありますが予測出来ない副作用はあるはずです。

それをあり得ないことと突っぱねることは、狂信的な予防接種否定派の思う壺でしょうね。

民主党の議員さんと無過失補償について話し合う機会がありそうだったのですが、政権のゴタゴタで先延ばしになっているようです。
でも機会があるごとに必要性を伝えていこうと考えています。

2010/11/16(火) 午前 8:33 [ bloom@花咲く小径 ]

先日娘のインフル予防接種に小児科に行ったところ
Hibや肺炎球菌ワクチンで来ている方も多くて
こんな近場でできて、やっとこの時が来たかと思いました。
Hibも肺炎球菌も、娘の時は1時間以上かけて通院し
個人輸入のため1回2本で4万近くかかったので。しかも(×4)
予防接種の副反応よりも、実際病気になって苦しむ姿を
できるだけ減らしたいというのが親心かと思うのですが・・・。
任意だけでなく無料の予防接種さえ受けさせない方もいるようですし
考え方はそれぞれなんだなーと思います。

男の子はおたふく(高熱による不妊の後遺症が怖い)、
女の子は水ぼうそう(痕が残るから)を受けさせた方がいいと
話しているお母さん方がいて、
ムンプス難聴とかあまり知られていないんだなと思いました。
私たち、親の方も常にアンテナを張って勉強しないと
子供の命を守れないと感じています。

2010/11/16(火) 午前 11:44 くままく

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無過失補償など全くない日本ではワクチンで何か起これば100%現場(医師)の責任。あの問診票の医師直筆サインはそのため。
被害者に訴えられればそれで医師生命はピンチですよ。
いくら丁寧に問診や予診をやったところでどれだけ意味があるのか?ある一定の確率で地雷は存在しますからね。地雷を踏んだ医師はそれで医師終了。こんな国ではますます医療は崩壊・荒廃するだけです。

2010/11/16(火) 午後 5:50 [ NMD ]

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はにほさん、『ワクチンのリスクばかりを声高に叫ぶ声』は、
国民の側というよりは、やはりマスコミ(←被害者団体)の影響が強いのではないでしょうか?

日本国内から一歩も出ないのなら、ワクチンを受けなくても良いのですが、
海外では通用しないのが現実だと思います。

2010/11/16(火) 午後 6:18 さすらい泌尿器科医

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bloom@花咲く小径さん、無過失補償の話は是非ともお願いします。m(__)m

「副作用じゃない」という専門家側の過剰な拒絶は、
長年バッシングにさらされた結果なのでしょうね…

予防接種否定派は感情で訴えてきますが、
専門家はあくまでも、冷静に科学的に反論しないといけませんね。

2010/11/16(火) 午後 6:26 さすらい泌尿器科医

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くままくさん、Hibや肺炎球菌ワクチンの流通は
以前よりは良くなってきたようですね。

定期接種にして欲しいものですけどね…
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101019-00000003-cbn-soci

2010/11/16(火) 午後 6:32 さすらい泌尿器科医

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NMDさん、いくら丁寧に問診や予診をしても、
副作用が出るかどうかは神頼みに近いですよね。

>地雷を踏んだ医師はそれで医師終了。
最近は普通に誠意を持って診療していれば、
そうは「医師終了」にまではならないと思われますが、
訴訟の負担は心身ともに大きいですからね…

今後、風向きが変わる可能性はありますし…

2010/11/16(火) 午後 6:39 さすらい泌尿器科医

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そうですね。つい過激な表現をして申し訳ありません。
今年すでに200人くらいの人にワクチン打ちました。
何とか風向きが変わる事を願うばかりです。

2010/11/17(水) 午前 10:26 [ NMD ]

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NMDさん、せめて風向きが悪い方向には変わらないで欲しいですね…

2010/11/17(水) 午前 10:50 さすらい泌尿器科医


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さすらい泌尿器科医
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