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朝日、読売、毎日の社説もイマイチですが、 産経の社説の酷さは際立っています。 【主張】院内感染 悪質な隠蔽許さぬ処分を
http://sankei.jp.msn.com/life/body/100907/bdy1009070244001-n1.htm2010.9.7 02:43 産経新聞 帝京大病院(東京都板橋区)で46人もの入院患者が対象となる院内感染が発生し、感染が原因で少なくとも9人が亡くなった。情報共有が大幅に遅れ、拡大防止策が後手に回った結果、国内最大規模の被害につながった可能性が強い。 感染症対策は、早期発見に基づく感染ルートの特定と速やかな情報の公表が大切だ。ところが、病院側は何度も公表の機会がありながら、1年近くも情報を伏せてきた。悪質な隠蔽(いんぺい)行為と言わざるを得ない。 警視庁が、業務上過失致死の疑いもあるとみて医師ら病院関係者から感染が起きた経緯について事情を聴いたのは当然だ。東京都に加え、厚生労働省も医療法に基づいた異例の立ち入り検査を行った。行政としても結果次第で、特定機能病院の指定取り消しや一定期間の業務停止も含めて厳しい処分で臨む必要がある。 今回、院内感染を起こした病原体は、ほとんどの抗生剤が効かない「多剤耐性アシネトバクター」(MRAB)と呼ばれる細菌だ。その後の調査で、別種の多剤耐性菌により死者が出ていることも分かり、やはり院内感染が原因との見方が強い。 病院では昨年8月時点で最初とみられる感染者が見つかり、死亡者も出ていたのに、感染との因果関係が確認できないとして、対策部署への報告はなかった。 保健所への報告や外部への公表は今月に入ってからだ。8月初旬には厚労省と都による定例の立ち入り検査が実施されていたが、報告もしていない。菌が検出された患者の転院時にも情報が転院先に伝えられなかった。病院側は「もう少し早く報告、公表すべきだった」と対応の不備を認めているが、結果の重大さに対する責任ある発言とはいえない。 MRABは、免疫力の落ちた術後の患者が感染すると、肺炎や敗血症を引き起こして死亡するケースがある。院内感染菌のひとつとして世界中で問題になっている。健康な人でも感染し、有効な抗生剤がない「スーパー耐性菌」も国内の大学病院で見つかったことが明らかになった。 厚労省は今後、報告制度の在り方について検討する有識者会議を立ち上げるという。だが、どんなルールも医療機関としての自覚が前提となる。さもなければ絵に描いたもちにすぎない。 感染症対策は、早期発見に基づく感染ルートの特定と速やかな情報の公表が大切だ。『感染ルートの特定』や『情報の公表』で、患者さんは治癒するのですかね…そんな事より、 目の前の患者さんの救命に全力を尽くし、感染拡大を防ぐのが医師をはじめとする医療者の責務です。岩田先生はこう仰っています。厚労省に報告しなかったのはけしからん、というのは筋の通らない議論である。 そもそも、厚労省は耐性アシネトバクターを重要視してこなかった。 数年前、僕は厚労省の多剤耐性菌を担当している官僚と話をしたことがある。どこの部署だったかは忘れたけど(僕は担当部署を暗記するという官僚的な才能が全くない)。そのとき、多剤耐性アシネトバクターの問題やコリスチン・ポリミキシンの導入についても具申したのだが「メジャーな学会が問題にしていない」「誰も特に困っていない」「あなただけがそう言っているんじゃないですか」と全く相手にされなかった。彼ももう今は別の部署にいるけどね。 病院にアシネトバクター届け出の「義務」はない。H21年の通知で「お願い」されただけなのだ。法的拘束力はない。 もし厚労省が本気でこの菌を問題にしていたのならば、感染症法改正をして届け出感染症にしておけばよかったのである。コリスチンを緊急承認して治療体制を整えればよかったのである。そう言う営為を全くやらないでおいて、コリスチンについては未承認薬の流れでようやく議論されるようになったばかりだ。ことが起きると「なぜ報告しない」と難じるのは全く持って筋違いな物言いだ。今まで自分たちは何をやっていたというのだ。また 警視庁が、業務上過失致死の疑いもあるとみて医師ら病院関係者から感染が起きた経緯について事情を聴いたのは当然だ。医療の実情も知らないくせに、こうやって医療不信を煽るのは止めて欲しいものです。森澤先生の投稿です。
自治医科大学附属病院・感染制御部長、感染症科(兼任)科長
産経は森澤雄司 2010年9月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp (前略) 医療技術の進歩や管理基準の向上、医療従事者の熱意と誠意に関らず、病院それ自体は感染症の温床であり、医療関連感染防止はすべての医療従事者にとってつねに最重要の課題の一つであり続けています。 医療行為には必ず内在する感染リスクがあり、血管内留置カテーテル関連血流感染症や外科手術部位感染症などは、語弊を恐れずに言えば ”起こるべくして起こる” 合併症を医療従事者の不断の努力によって防止しているのです。日常的なケアのどこかに些細な破綻があっただけでも重大な結果をもたらしてしまうのです。 また、病院という限定された空間に多数の患者が抗菌薬を投与されている状況は、抗菌薬耐性菌を集約することとなり、一般的にまれな高度耐性菌が病院においては日常的に跋扈することとなっています。 高齢化社会に伴う患者数の増加、医療の高度先進化の一方で、医療費削減を求める現状においては病院における経費削減が経営上の必要課題となっていますから、医療の現場はますます少ないスタッフ数や予算でより多くの業務を負担しなければならず、患者と医療従事者のいずれにとっても安全が脅かされていると考えなければなりません。医療安全は広く国民の間で議論されなければならない重大事であります。 今回の問題となっている多剤耐性アシネトバクター・バウマニは医療関連感染防止にとって重大な脅威です。高度耐性菌としては MRSA や多剤耐性緑膿菌が有名ですが、これらの細菌と比較しても多剤耐性アシネトバクター・バウマニへの対策は極めて困難であることが知られています。 一般的に MRSA 対策は医療従事者の手指衛生と適切な個人防護具(手袋・ガウン・マスクなど)使用の徹底により対応することが出来ます。 一方、緑膿菌やアシネトバクター・バウマニは栄養要求性が低く、さまざまな環境で生き延びることが可能であるために環境対策も必要となります。 緑膿菌は乾燥に弱く、いわゆる水周りを押さえれば対策できるのに対して、アシネトバクター・バウマニは乾燥に強く、カーテンや診療端末のキーボードやマウスのような通常の環境表面でも数週間以上にわたり生存します。多剤耐性アシネトバクター・バウマニ対策には膨大な環境調査が必要であり、しかも細菌はスタッフや患者の手指などを介して環境を移動しますから、一度の環境調査だけですべてが明らかになるとは限りません。海外からは医療従事者が使用するPHSを介してアウトブレイクが認められたという報告もあり、多剤耐性アシネトバクター・バウマニへの対策は困難を極めます。 そしてアシネトバクター・バウマニは抗菌薬耐性を獲得する能力にも優れており、耐性化したアシネトバクター・バウマニの中には多剤耐性緑膿菌と同じく現時点でわが国に使用可能なすべての抗菌薬へ耐性を示す場合があることが知られています。すなわち、高度耐性アシネトバクター・バウマニが感染症の起因菌となった場合、わが国では治療できないのです。 幸いなことに緑膿菌やアシネトバクター・バウマニは必ず感染症を起こすわけではなく、単に保菌状態で過ぎる場合が多いのですが、侵襲的な医療処置が行われている患者では先述したような医療関連感染症を生じることがあり、病院内では重大なリスクとして対応する必要があります。 厚生労働省でも多剤耐性アシネトバクター・バウマニの重大性を考慮して、昨年 2009年1月には都道府県に対して病院内における発生を報告するように求めた通知が出されています。 しかし、これは法的義務ではなく、少なくとも医療の現場に対して明確な通達であったとは言い難いと判断しています。 一部の報道では今回の帝京大学病院における事例について、保健所へ報告されていなかったことが最大の問題点であるかのように取り上げられていますが、厚生労働省からの通知は都道府県への “「お願い」ベース” であり、法的な義務ではなかったはずです。 また、一般的に考えると、公衆衛生行政の介入で今回のような医療関連感染アウトブレイクが制圧できるとは考えにくく、もしも行政側の担当者が保身に走って一方的な “病棟閉鎖命令” などの過剰な対策を安易に乱発するようなことにでもなれば、医療現場の混乱は必至です。病棟を閉鎖してしまうと、その期間、患者は受け皿を失って、適切な医療が提供されないこととなります。 高い見識と専門性を有する専門家によるリスク・アセスメントに基いた方針決定こそが必要です。わが国では日本看護協会が認定する感染管理認定看護師が1,000名以上に及んでおり、豊富な臨床経験と高い専門性に裏打ちされた現場での活躍が期待されますが、残念ながら多くの施設では十分な権限を与えられていません。”素人” による場当たり的かつ責任回避的な対策ではなく、現場に根付いたプロの判断が優先されることを願って止みません。 さて、これも一部の報道による情報でしかありませんが、今回の事例について警視庁が業務上過失致死の疑いで動くのではないかとされています。 私たち医療従事者はつねに医療関連感染症の予防と制圧を心掛けており、理念として“ゼロ・トレランス”、1例の医療関連感染症も容認しない態度で理想を目指すべきであると考えています。 しかし、実際には医療関連感染症を完全に根絶することは現時点で不可能です。故意による事例であればともかく、医療の結果が望ましくなかったという理由で警察が介入するような事態になれば、医療現場は必要以上に防護的となり、積極的な侵襲的医療処置行為を妨げる結果ともなりかねません。 リスクの高い重症例や耐性菌の保菌患者は受け入れ先を失うかもしれません。 処罰的な態度で “医療事故” に臨むことが国民の利益になるとは考えられず、むしろ結果的に“医療崩壊” を一層に進めてしまう可能性すらあります。私たちは第2の「大野病院事件」を許してはならないのです。 (後略) 病棟を閉鎖してしまうと、その期間、患者は受け皿を失って、適切な医療が提供されないこととなります。ここまで理解した上で、社説を書いているのでしょうかね… |
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