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ここ数日、アシネトバクターに関する報道はめっきり減りましたね… 多剤耐性菌:アシネトバクター、過去3年で感染拡大−−厚労省調査 毎日新聞 2010年9月11日 東京朝刊 ほとんどの抗生物質が効かない多剤耐性菌アシネトバクターが09年度、全国49の医療機関で計97人から検出されていたことが、厚生労働省研究班(主任研究者、荒川宜親・国立感染症研究所細菌第2部長)の調査で分かった。荒川部長は「多剤耐性のアシネトバクターが国内でも広く薄く出現していることを認識し、医療機関などの関係者は院内感染対策を徹底すべきだ」と話している。 調査は3月、全国の200床以上の全医療機関約2700カ所に調査用紙を送って実施。4月末までに回答のあった771施設(回答率28・4%)の状況をまとめた。 09年度までの3年間の検出状況を聞いたところ、同菌が検出された医療機関数と患者数は▽07年度は39施設(5・1%)51人▽08年度は37施設(4・8%)81人▽09年度は49施設(6・4%)97人−−で、検出された患者数は年々増加。3年間で計92施設(11・9%)で検出されていた。 3年間に菌が検出された検体の種類別では、痰(たん)が67%で最も多く、尿9・9%▽血液5・6%▽便3・9%▽その他13・5%−−だった。 院内感染が広がっていない点について、荒川部長は「菌株を検査しておらず詳細は分からない」としながらも、「現在問題になっている耐性度の高い菌に比べ、日本土着のおとなしい株の可能性がある。施設も感染防止対策を十分に行っていたため広がらなかったとみられるが、警戒を怠ってはならない」と分析している。【佐々木洋】http://mainichi.jp/select/science/news/20100911ddm041040189000c.html 医療機関などの関係者は院内感染対策を徹底すべきだ無責任に言ってくれますが、予算をつけて欲しいものです。一方、青木眞先生の非常にわかり易い記事が、日経メディカルにありましたので、 転載させて頂きます。 2010.9.13
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/opinion/orgnl/201009/516604.html不毛なアシネトバクター騒動とその背景にある誤解 青木眞(感染症コンサルタント) 聞き手:山崎 大作=日経メディカルオンライン 帝京大病院で、院内感染によりアシネトバクター菌に集団感染したことについて、現場の冷ややかさとは対照的に、新聞は連日、熱心に報道している。日々、全国の医療機関でアシネトバクターが新たに検出されたことが発表されているほか、帝京大では9月8日、救急や新規入院の受け入れを中止する事態にまでなった。だが、医療界からは今回の騒ぎを疑問視する声も少なくない。感染症に詳しい青木眞氏に話を聞いた。 アシネトバクターに関する騒動を見て、「この国は予想通り新型インフルエンザから何も学習して来なかったな…」と思いました。学習する構造を持たない組織はMRSA、HIV、SARS、新型インフルエンザと同じ誤りを繰り返すのです。恐らくこれからも。 今回、騒動になっているアシネトバクターという菌は、濃厚に抗菌薬を使わざるを得ない高度医療の場では、多かれ少なかれ見つかる可能性の高い菌です。探し回れば、これから色々な医療機関で見つかってもおかしくありません。またアシネトバクターはもともと抗菌薬に対して耐性が強い菌です。「多剤耐性アシネトバクター」というと何か恐ろしいイメージですが、「生まれつき耐性がある菌が、また少し追加で耐性を獲得した」という程度の話で、珍しさでいえば、「ある大きな病院に行ったら新世代のMRIがあった」というのに近いレベル。「もともとそんなものなのに、何を騒いでいるんだろう」というのが私の率直な感想です。生まれつき抗菌薬が効きにくい菌を「耐性だ」と大騒ぎし、不必要に恐れるのはどうなのでしょうか。医療現場としては比較的良くある風景のはずです。前からあることを、今になって突然持ち出して、無理に問題にしているように感じます。 感染症は耐性よりも、生命や健康のアウトカムが問題 もちろん、薬が効かなくなるというのは、患者さんの状態により対処しづらくなることではあります。ですが、一連の報道は、あまりに「薬が効かない」という点だけが注目され、この耐性菌が臨床現場にどの程度のインパクトがあり、患者さんにどの程度の脅威になるかという視点が抜け落ちています。 かつて、同様に耐性菌で騒がれたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、もともと凶暴で病原性の高い黄色ブドウ球菌に抗菌薬が効きにくくなったという点でテロリストが大きなナイフを手にした感じがありました。それに対し今回の耐性アシネトバクターは、100歳を超えたご高齢の方がナイフを持たされてただ座っているようなもの。周囲にいるほとんどの人にとってはさしたる危険性はありません。アシネトバクターはもともと、人に危害を与える能力の低い菌なのです。 病院には、免疫力の落ちた人が狭い空間に集まりますから、アシネトバクターもそれなりの脅威にはなり得ます。ただ、仮にアシネトバクターが培養で検出された方が亡くなったとしても、本当にアシネトバクターの感染症によって亡くなったのか、もともとの疾患、例えば末期癌が悪化したためだったのかは、適切な臨床的、疫学的な検討が無ければ分かりません。そのような意味ではアシネトバクターは「患者さんの状態が非常に悪いですよ」という標識・マーカーのような存在なのです。私がよく「アシネトバクターは殺し屋ではなくて葬儀屋」であるという所以です。 帝京大病院を批判するならば、入院患者数、重症度も加味した上で、多剤耐性のアシネトバクターでどれだけの方が亡くなっているのかを考えていく必要があるのです。そのような疫学的なコモンセンスが今の日本には欠けているのではないでしょうか。現在、「抗菌薬が効かない」ということが、「患者さんの死亡率上昇」とイコールで考えられているような気がします。抗菌薬が効く効かないだけではなく、それが患者さんの生命や健康にどのような影響を与えるかを考えていかなければいけません。 何を調査し、その結果をどのように生かすのか? 感染管理の世界では、アシネトバクターが問題になる背景やその対処法などは既に分かっています。やるべきことの概略は分かっているのです。厚生労働省はアシネトバクターの発生状況について、実態調査を行う方針のようですが、限られた医療資源で苦闘する忙しい現場に新しい負荷報告義務を課して何を達成しようというのでしょうか? そもそも、疫学的専門性のない人が行う実態調査は、恐らくその方法にも、結果の判定法にも多くの問題を抱えているはずですから、新しい対策が生まれる可能性はほとんどありません。新たな調査研究を始める予算があるならば、それを感染管理の看護師を増やすことに使った方が余程効果的でしょう。 繰り返しになりますが、耐性アシネトバクターは高度医療の副産物的な要素が極めて強いものです。重症の患者さんを守ろうとして、丁寧に培養検査をするからアシネトバクターは見つかるだけのこと。いい加減に抗菌薬を使い、培養もしない病院では見つかりません。さらに言えば、アシネトバクターが検出されたからといって、業務上過失致死容疑などで警察が介入するようなことになれば、医療機関が取る策は「培養しない」「重症患者は受け入れない」という萎縮医療です。そして、最後に割を食うのは患者さんなのです。 私は泌尿器科医ですので、膀胱炎の患者さんなどを常時診察しています。 抗生物質も使用しますし、培養検査もしますが、 『普通』の患者さんから検出される菌の多くは、大腸菌や腸球菌などであり、抗生物質も非常によく効きます。ただ、何度も『膀胱炎→抗生物質投与』を繰り返すと、抗生物質の効かない菌種が増えてきます。(緑膿菌、MRSA、アシネトバクターなど) アシネトバクターは「患者さんの状態が非常に悪いですよ」という標識・マーカーのような存在なのです。まったく同感です。健康な方が、必要以上に恐れる必要はありません。 抗生物質の効かない膀胱炎などに苦しまない為にも、 抗生物質の適正利用(自己判断で勝手に中止しない、誰かからもらって中途半端に服用しない)や、膀胱炎を起こさないような生活習慣をお願い致します。m(__)m |
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2010年09月14日
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