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【埼玉】 ネットワーク入り目指し、県内で母体搬送の基盤作り埼玉県外への母体搬送
2012年2月1日16時10分 朝日新聞 ◇周産期医療 県外との共同運用めざす 早産などの危険が迫った妊婦のため、都県境を越えて出産できる病院を探すネットワークの試行が31日、東京都と神奈川県で始まった。その背景として県外への妊婦搬送数の多さが指摘される埼玉県も、仲間入りを目指し、基盤となる県内でのネットワークの運用を昨秋から始めている。 ◇受け入れ先の「調整役」に 県は昨年10月から、危険度の高い妊産婦や新生児を県内の別の病院に移す際、医療機関に代わって受け入れ先を探す「母体・新生児搬送コーディネーター」を県医師会に置いている。県助産師会から1人が24時間常駐している。 県医療整備課は「首都圏でのネットワークに参加するには、同じ仕組みを作らなければならなかった」と説明する。 あわせて、県内を7地区に分け、新生児集中治療室(NICU)やお産の設備が整った7カ所の「地域周産期母子医療センター」の病院を割り振った。センターは南部に集中しているが、同課は「北部の空白地域にも対応できるようネットワーク化した」と説明する。 対象は、母体搬送の9割前後を占める病院間搬送。転院の必要がある場合、従来はかかりつけ医が自助努力で、受け入れ先が見つかるまで探していたという。それを昨年10月以降、母体搬送の流れを決めて運用している。 従来の連携先が無理な場合は、原則として担当センターが受け入れることになった。センターも受け入れられない場合はコーディネーターが、他地区のセンターや、より高度な埼玉医大総合医療センター「総合周産期母子医療センター」に照会する。それでも受け入れ先がなければ、担当センターが県外の搬送先などを探すことになる。 このシステムで扱ったのは約2カ月で38件。おおむね6割が県内、4割が県外搬送だった。同課は「コーディネーターの権限を広げ、他都県のコーディネーターと連携できる仕組みにしたい」と説明している。 ◇県外病院への依存限界 民間任せで 態勢に遅れ 県内の出生数は2010年が5万9437人。10年間で約7千人減った。一方で、県医師会によると、子どもが助かる可能性が高い妊娠6カ月以降の母体の救急搬送数は、1996年が約600人だったのに対し、2000年代は800〜1千人前後で推移し、10年は1046人だった。 子どもの数は減っているものの、出産年齢の高齢化や不妊治療などで、危険度の高い妊婦が増えている傾向の一端ともみられる。同年の県外搬送は164件。「関東ブロック産婦人科医会」の調査によると、2番目に多い神奈川県の66件を大きく上回り、1都9県で飛び抜けて多い。 これらの調査を実施し、埼玉県内のシステム作りを提案してきた川口市立医療センターの栃木武一院長は「明らかに、首都圏では埼玉が『悪者』になっている」と指摘する。 ◇医師養成公立大なし 特に都内への搬送が7割前後を占めるといい、「県内では医師を養成する公立大学がなく、公立病院は東京の医大の出先のようになっていて、転院が必要な時は医師が出身の医大病院に頼んでいた」と説明する。 しかし近年、医師不足で、大学病院での受け入れを断られる例が増えてきた。受け入れ先は公立病院が大学病院を上回るようになり、自治体予算で埼玉など他県の患者を引き受けることへの批判も出てきたという。 「これまで民間任せで何となく回っていたため、県は設備投資や仕組み作りをしてこなかった」 栃木院長の調査では、周産期医療施設の整備格差が表れ、東部と北部で県外搬送の割合が高い。「つてが頼りでは問い合わせ先も偏る。他県に比べて整備が遅れていたが、担当地区割りとコーディネーター制が始まり、県内での搬送数が増えるのでは」と期待する。 ◇NICU充足率67% 新生児集中治療室(NICU)の不足も深刻だ。搬送例の多くが切迫早産で、未熟児対応が必要になる。国が求める整備目標値では埼玉県の場合、全体で150〜180床が必要だが、現在は10院で計101床。約67%という充足率は、首都圏で最も低い。 うち30床がある埼玉医大総合医療センターの田村正徳・総合周産期母子医療センター長は「依頼があっても半分くらいしか受けられない状態」と言う。 都内に打診しても、都内で08年、妊婦が複数の病院に受け入れを断られて死亡する問題が起きた後は受け入れが難しく、探すのに3時間以上かかったこともあった。医師が電話の問い合わせに追われ、病院の業務にも支障が出かねない状態だという。 こうした問題を解消するため、県は4年後に150床を超える整備を目指す。国の基金で同センターのNICUを全国最大規模の60床に増やすほか、さいたま市のさいたま新都心への移転を計画している県立小児医療センターとさいたま赤十字病院の機能を強化して、対応するという。 ただ、NICUの設備費は県の補助対象だが、医師や看護師の人件費は対象外で、4院が准NICU扱いになっている。 田村センター長は「周産期医療センターは勤務が厳しく、看護師の定着率が悪い。新人で補充する春にはさらに入院制限をかける悪循環が生じている。施設だけでなく人材の面でも対策が急務」と訴える。 ◇広域で患者振り分けを 周産期医療に詳しい海野信也・北里大学病院(相模原市)副院長 東京都と神奈川県の連携は、遅れている埼玉県を引き上げる狙いもある。都市部には多くの周産期センターがあり、広域で患者を振り分ける仕組みが必要だ。 今回の連携で注目されるのは(安定後に自宅近くの受け入れ病院へ送り返す)「戻り搬送」。数年前、北里大病院からも長野県に妊婦を運んだことがある。早産にならず持ちこたえたため病院のドクターカーで迎えに行った。 戻り搬送のコストは(居住地の)県が負担するようにしてほしい。NICU整備も含め、お産にかける予算を社会全体で増やしていく必要がある。(談) ◇退院後の環境整備必要 東京都周産期医療協議会委員の楠田聡・東京女子医大母子総合医療センター教授 東京都は09年、周産期搬送コーディネーターのシステムを作った。とはいえ、首都圏各県から都内へ時間をかけて運ばれていて、都県境を越えた搬送のルール作りが課題だった。 連携ができても、NICUの満床が解消されなければ問題は解決しない。床数増に加え、新生児が退院できる環境を整えることが必要だ。NICUのスタッフや、新生児の在宅医療を提供する医師、看護師を増やすことも不可欠。全てそろってはじめて、NICUはうまく機能する。(談) この話もどうなることやら… |
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