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ここ数日、アシネトバクターに関する報道はめっきり減りましたね… 多剤耐性菌:アシネトバクター、過去3年で感染拡大−−厚労省調査 毎日新聞 2010年9月11日 東京朝刊 ほとんどの抗生物質が効かない多剤耐性菌アシネトバクターが09年度、全国49の医療機関で計97人から検出されていたことが、厚生労働省研究班(主任研究者、荒川宜親・国立感染症研究所細菌第2部長)の調査で分かった。荒川部長は「多剤耐性のアシネトバクターが国内でも広く薄く出現していることを認識し、医療機関などの関係者は院内感染対策を徹底すべきだ」と話している。 調査は3月、全国の200床以上の全医療機関約2700カ所に調査用紙を送って実施。4月末までに回答のあった771施設(回答率28・4%)の状況をまとめた。 09年度までの3年間の検出状況を聞いたところ、同菌が検出された医療機関数と患者数は▽07年度は39施設(5・1%)51人▽08年度は37施設(4・8%)81人▽09年度は49施設(6・4%)97人−−で、検出された患者数は年々増加。3年間で計92施設(11・9%)で検出されていた。 3年間に菌が検出された検体の種類別では、痰(たん)が67%で最も多く、尿9・9%▽血液5・6%▽便3・9%▽その他13・5%−−だった。 院内感染が広がっていない点について、荒川部長は「菌株を検査しておらず詳細は分からない」としながらも、「現在問題になっている耐性度の高い菌に比べ、日本土着のおとなしい株の可能性がある。施設も感染防止対策を十分に行っていたため広がらなかったとみられるが、警戒を怠ってはならない」と分析している。【佐々木洋】http://mainichi.jp/select/science/news/20100911ddm041040189000c.html 医療機関などの関係者は院内感染対策を徹底すべきだ無責任に言ってくれますが、予算をつけて欲しいものです。一方、青木眞先生の非常にわかり易い記事が、日経メディカルにありましたので、 転載させて頂きます。 2010.9.13
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/opinion/orgnl/201009/516604.html不毛なアシネトバクター騒動とその背景にある誤解 青木眞(感染症コンサルタント) 聞き手:山崎 大作=日経メディカルオンライン 帝京大病院で、院内感染によりアシネトバクター菌に集団感染したことについて、現場の冷ややかさとは対照的に、新聞は連日、熱心に報道している。日々、全国の医療機関でアシネトバクターが新たに検出されたことが発表されているほか、帝京大では9月8日、救急や新規入院の受け入れを中止する事態にまでなった。だが、医療界からは今回の騒ぎを疑問視する声も少なくない。感染症に詳しい青木眞氏に話を聞いた。 アシネトバクターに関する騒動を見て、「この国は予想通り新型インフルエンザから何も学習して来なかったな…」と思いました。学習する構造を持たない組織はMRSA、HIV、SARS、新型インフルエンザと同じ誤りを繰り返すのです。恐らくこれからも。 今回、騒動になっているアシネトバクターという菌は、濃厚に抗菌薬を使わざるを得ない高度医療の場では、多かれ少なかれ見つかる可能性の高い菌です。探し回れば、これから色々な医療機関で見つかってもおかしくありません。またアシネトバクターはもともと抗菌薬に対して耐性が強い菌です。「多剤耐性アシネトバクター」というと何か恐ろしいイメージですが、「生まれつき耐性がある菌が、また少し追加で耐性を獲得した」という程度の話で、珍しさでいえば、「ある大きな病院に行ったら新世代のMRIがあった」というのに近いレベル。「もともとそんなものなのに、何を騒いでいるんだろう」というのが私の率直な感想です。生まれつき抗菌薬が効きにくい菌を「耐性だ」と大騒ぎし、不必要に恐れるのはどうなのでしょうか。医療現場としては比較的良くある風景のはずです。前からあることを、今になって突然持ち出して、無理に問題にしているように感じます。 感染症は耐性よりも、生命や健康のアウトカムが問題 もちろん、薬が効かなくなるというのは、患者さんの状態により対処しづらくなることではあります。ですが、一連の報道は、あまりに「薬が効かない」という点だけが注目され、この耐性菌が臨床現場にどの程度のインパクトがあり、患者さんにどの程度の脅威になるかという視点が抜け落ちています。 かつて、同様に耐性菌で騒がれたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、もともと凶暴で病原性の高い黄色ブドウ球菌に抗菌薬が効きにくくなったという点でテロリストが大きなナイフを手にした感じがありました。それに対し今回の耐性アシネトバクターは、100歳を超えたご高齢の方がナイフを持たされてただ座っているようなもの。周囲にいるほとんどの人にとってはさしたる危険性はありません。アシネトバクターはもともと、人に危害を与える能力の低い菌なのです。 病院には、免疫力の落ちた人が狭い空間に集まりますから、アシネトバクターもそれなりの脅威にはなり得ます。ただ、仮にアシネトバクターが培養で検出された方が亡くなったとしても、本当にアシネトバクターの感染症によって亡くなったのか、もともとの疾患、例えば末期癌が悪化したためだったのかは、適切な臨床的、疫学的な検討が無ければ分かりません。そのような意味ではアシネトバクターは「患者さんの状態が非常に悪いですよ」という標識・マーカーのような存在なのです。私がよく「アシネトバクターは殺し屋ではなくて葬儀屋」であるという所以です。 帝京大病院を批判するならば、入院患者数、重症度も加味した上で、多剤耐性のアシネトバクターでどれだけの方が亡くなっているのかを考えていく必要があるのです。そのような疫学的なコモンセンスが今の日本には欠けているのではないでしょうか。現在、「抗菌薬が効かない」ということが、「患者さんの死亡率上昇」とイコールで考えられているような気がします。抗菌薬が効く効かないだけではなく、それが患者さんの生命や健康にどのような影響を与えるかを考えていかなければいけません。 何を調査し、その結果をどのように生かすのか? 感染管理の世界では、アシネトバクターが問題になる背景やその対処法などは既に分かっています。やるべきことの概略は分かっているのです。厚生労働省はアシネトバクターの発生状況について、実態調査を行う方針のようですが、限られた医療資源で苦闘する忙しい現場に新しい負荷報告義務を課して何を達成しようというのでしょうか? そもそも、疫学的専門性のない人が行う実態調査は、恐らくその方法にも、結果の判定法にも多くの問題を抱えているはずですから、新しい対策が生まれる可能性はほとんどありません。新たな調査研究を始める予算があるならば、それを感染管理の看護師を増やすことに使った方が余程効果的でしょう。 繰り返しになりますが、耐性アシネトバクターは高度医療の副産物的な要素が極めて強いものです。重症の患者さんを守ろうとして、丁寧に培養検査をするからアシネトバクターは見つかるだけのこと。いい加減に抗菌薬を使い、培養もしない病院では見つかりません。さらに言えば、アシネトバクターが検出されたからといって、業務上過失致死容疑などで警察が介入するようなことになれば、医療機関が取る策は「培養しない」「重症患者は受け入れない」という萎縮医療です。そして、最後に割を食うのは患者さんなのです。 私は泌尿器科医ですので、膀胱炎の患者さんなどを常時診察しています。 抗生物質も使用しますし、培養検査もしますが、 『普通』の患者さんから検出される菌の多くは、大腸菌や腸球菌などであり、抗生物質も非常によく効きます。ただ、何度も『膀胱炎→抗生物質投与』を繰り返すと、抗生物質の効かない菌種が増えてきます。(緑膿菌、MRSA、アシネトバクターなど) アシネトバクターは「患者さんの状態が非常に悪いですよ」という標識・マーカーのような存在なのです。まったく同感です。健康な方が、必要以上に恐れる必要はありません。 抗生物質の効かない膀胱炎などに苦しまない為にも、 抗生物質の適正利用(自己判断で勝手に中止しない、誰かからもらって中途半端に服用しない)や、膀胱炎を起こさないような生活習慣をお願い致します。m(__)m |
インフルエンザ
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朝日、読売、毎日の社説もイマイチですが、 産経の社説の酷さは際立っています。 【主張】院内感染 悪質な隠蔽許さぬ処分を
http://sankei.jp.msn.com/life/body/100907/bdy1009070244001-n1.htm2010.9.7 02:43 産経新聞 帝京大病院(東京都板橋区)で46人もの入院患者が対象となる院内感染が発生し、感染が原因で少なくとも9人が亡くなった。情報共有が大幅に遅れ、拡大防止策が後手に回った結果、国内最大規模の被害につながった可能性が強い。 感染症対策は、早期発見に基づく感染ルートの特定と速やかな情報の公表が大切だ。ところが、病院側は何度も公表の機会がありながら、1年近くも情報を伏せてきた。悪質な隠蔽(いんぺい)行為と言わざるを得ない。 警視庁が、業務上過失致死の疑いもあるとみて医師ら病院関係者から感染が起きた経緯について事情を聴いたのは当然だ。東京都に加え、厚生労働省も医療法に基づいた異例の立ち入り検査を行った。行政としても結果次第で、特定機能病院の指定取り消しや一定期間の業務停止も含めて厳しい処分で臨む必要がある。 今回、院内感染を起こした病原体は、ほとんどの抗生剤が効かない「多剤耐性アシネトバクター」(MRAB)と呼ばれる細菌だ。その後の調査で、別種の多剤耐性菌により死者が出ていることも分かり、やはり院内感染が原因との見方が強い。 病院では昨年8月時点で最初とみられる感染者が見つかり、死亡者も出ていたのに、感染との因果関係が確認できないとして、対策部署への報告はなかった。 保健所への報告や外部への公表は今月に入ってからだ。8月初旬には厚労省と都による定例の立ち入り検査が実施されていたが、報告もしていない。菌が検出された患者の転院時にも情報が転院先に伝えられなかった。病院側は「もう少し早く報告、公表すべきだった」と対応の不備を認めているが、結果の重大さに対する責任ある発言とはいえない。 MRABは、免疫力の落ちた術後の患者が感染すると、肺炎や敗血症を引き起こして死亡するケースがある。院内感染菌のひとつとして世界中で問題になっている。健康な人でも感染し、有効な抗生剤がない「スーパー耐性菌」も国内の大学病院で見つかったことが明らかになった。 厚労省は今後、報告制度の在り方について検討する有識者会議を立ち上げるという。だが、どんなルールも医療機関としての自覚が前提となる。さもなければ絵に描いたもちにすぎない。 感染症対策は、早期発見に基づく感染ルートの特定と速やかな情報の公表が大切だ。『感染ルートの特定』や『情報の公表』で、患者さんは治癒するのですかね…そんな事より、 目の前の患者さんの救命に全力を尽くし、感染拡大を防ぐのが医師をはじめとする医療者の責務です。岩田先生はこう仰っています。厚労省に報告しなかったのはけしからん、というのは筋の通らない議論である。 そもそも、厚労省は耐性アシネトバクターを重要視してこなかった。 数年前、僕は厚労省の多剤耐性菌を担当している官僚と話をしたことがある。どこの部署だったかは忘れたけど(僕は担当部署を暗記するという官僚的な才能が全くない)。そのとき、多剤耐性アシネトバクターの問題やコリスチン・ポリミキシンの導入についても具申したのだが「メジャーな学会が問題にしていない」「誰も特に困っていない」「あなただけがそう言っているんじゃないですか」と全く相手にされなかった。彼ももう今は別の部署にいるけどね。 病院にアシネトバクター届け出の「義務」はない。H21年の通知で「お願い」されただけなのだ。法的拘束力はない。 もし厚労省が本気でこの菌を問題にしていたのならば、感染症法改正をして届け出感染症にしておけばよかったのである。コリスチンを緊急承認して治療体制を整えればよかったのである。そう言う営為を全くやらないでおいて、コリスチンについては未承認薬の流れでようやく議論されるようになったばかりだ。ことが起きると「なぜ報告しない」と難じるのは全く持って筋違いな物言いだ。今まで自分たちは何をやっていたというのだ。また 警視庁が、業務上過失致死の疑いもあるとみて医師ら病院関係者から感染が起きた経緯について事情を聴いたのは当然だ。医療の実情も知らないくせに、こうやって医療不信を煽るのは止めて欲しいものです。森澤先生の投稿です。
自治医科大学附属病院・感染制御部長、感染症科(兼任)科長
産経は森澤雄司 2010年9月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp (前略) 医療技術の進歩や管理基準の向上、医療従事者の熱意と誠意に関らず、病院それ自体は感染症の温床であり、医療関連感染防止はすべての医療従事者にとってつねに最重要の課題の一つであり続けています。 医療行為には必ず内在する感染リスクがあり、血管内留置カテーテル関連血流感染症や外科手術部位感染症などは、語弊を恐れずに言えば ”起こるべくして起こる” 合併症を医療従事者の不断の努力によって防止しているのです。日常的なケアのどこかに些細な破綻があっただけでも重大な結果をもたらしてしまうのです。 また、病院という限定された空間に多数の患者が抗菌薬を投与されている状況は、抗菌薬耐性菌を集約することとなり、一般的にまれな高度耐性菌が病院においては日常的に跋扈することとなっています。 高齢化社会に伴う患者数の増加、医療の高度先進化の一方で、医療費削減を求める現状においては病院における経費削減が経営上の必要課題となっていますから、医療の現場はますます少ないスタッフ数や予算でより多くの業務を負担しなければならず、患者と医療従事者のいずれにとっても安全が脅かされていると考えなければなりません。医療安全は広く国民の間で議論されなければならない重大事であります。 今回の問題となっている多剤耐性アシネトバクター・バウマニは医療関連感染防止にとって重大な脅威です。高度耐性菌としては MRSA や多剤耐性緑膿菌が有名ですが、これらの細菌と比較しても多剤耐性アシネトバクター・バウマニへの対策は極めて困難であることが知られています。 一般的に MRSA 対策は医療従事者の手指衛生と適切な個人防護具(手袋・ガウン・マスクなど)使用の徹底により対応することが出来ます。 一方、緑膿菌やアシネトバクター・バウマニは栄養要求性が低く、さまざまな環境で生き延びることが可能であるために環境対策も必要となります。 緑膿菌は乾燥に弱く、いわゆる水周りを押さえれば対策できるのに対して、アシネトバクター・バウマニは乾燥に強く、カーテンや診療端末のキーボードやマウスのような通常の環境表面でも数週間以上にわたり生存します。多剤耐性アシネトバクター・バウマニ対策には膨大な環境調査が必要であり、しかも細菌はスタッフや患者の手指などを介して環境を移動しますから、一度の環境調査だけですべてが明らかになるとは限りません。海外からは医療従事者が使用するPHSを介してアウトブレイクが認められたという報告もあり、多剤耐性アシネトバクター・バウマニへの対策は困難を極めます。 そしてアシネトバクター・バウマニは抗菌薬耐性を獲得する能力にも優れており、耐性化したアシネトバクター・バウマニの中には多剤耐性緑膿菌と同じく現時点でわが国に使用可能なすべての抗菌薬へ耐性を示す場合があることが知られています。すなわち、高度耐性アシネトバクター・バウマニが感染症の起因菌となった場合、わが国では治療できないのです。 幸いなことに緑膿菌やアシネトバクター・バウマニは必ず感染症を起こすわけではなく、単に保菌状態で過ぎる場合が多いのですが、侵襲的な医療処置が行われている患者では先述したような医療関連感染症を生じることがあり、病院内では重大なリスクとして対応する必要があります。 厚生労働省でも多剤耐性アシネトバクター・バウマニの重大性を考慮して、昨年 2009年1月には都道府県に対して病院内における発生を報告するように求めた通知が出されています。 しかし、これは法的義務ではなく、少なくとも医療の現場に対して明確な通達であったとは言い難いと判断しています。 一部の報道では今回の帝京大学病院における事例について、保健所へ報告されていなかったことが最大の問題点であるかのように取り上げられていますが、厚生労働省からの通知は都道府県への “「お願い」ベース” であり、法的な義務ではなかったはずです。 また、一般的に考えると、公衆衛生行政の介入で今回のような医療関連感染アウトブレイクが制圧できるとは考えにくく、もしも行政側の担当者が保身に走って一方的な “病棟閉鎖命令” などの過剰な対策を安易に乱発するようなことにでもなれば、医療現場の混乱は必至です。病棟を閉鎖してしまうと、その期間、患者は受け皿を失って、適切な医療が提供されないこととなります。 高い見識と専門性を有する専門家によるリスク・アセスメントに基いた方針決定こそが必要です。わが国では日本看護協会が認定する感染管理認定看護師が1,000名以上に及んでおり、豊富な臨床経験と高い専門性に裏打ちされた現場での活躍が期待されますが、残念ながら多くの施設では十分な権限を与えられていません。”素人” による場当たり的かつ責任回避的な対策ではなく、現場に根付いたプロの判断が優先されることを願って止みません。 さて、これも一部の報道による情報でしかありませんが、今回の事例について警視庁が業務上過失致死の疑いで動くのではないかとされています。 私たち医療従事者はつねに医療関連感染症の予防と制圧を心掛けており、理念として“ゼロ・トレランス”、1例の医療関連感染症も容認しない態度で理想を目指すべきであると考えています。 しかし、実際には医療関連感染症を完全に根絶することは現時点で不可能です。故意による事例であればともかく、医療の結果が望ましくなかったという理由で警察が介入するような事態になれば、医療現場は必要以上に防護的となり、積極的な侵襲的医療処置行為を妨げる結果ともなりかねません。 リスクの高い重症例や耐性菌の保菌患者は受け入れ先を失うかもしれません。 処罰的な態度で “医療事故” に臨むことが国民の利益になるとは考えられず、むしろ結果的に“医療崩壊” を一層に進めてしまう可能性すらあります。私たちは第2の「大野病院事件」を許してはならないのです。 (後略) 病棟を閉鎖してしまうと、その期間、患者は受け皿を失って、適切な医療が提供されないこととなります。ここまで理解した上で、社説を書いているのでしょうかね… |
新タイプの耐性菌検出、国内初=インドからの帰国者―獨協医大
時事通信 9月6日(月)13時22分配信
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菌検出は昨夏、多剤耐性と疑わず 帝京大で感染拡大2010年9月4日1時13分 朝日新聞
http://www.asahicom.jp/national/update/0904/images/TKY201009030624.jpghttp://www.asahicom.jp/images08/common/icn_zoom.gif
複数の抗生剤の効かない細菌アシネトバクターによる院内感染の疑いで、わずか1年で少なくとも患者9人が死亡した。帝京大学病院は5月に異変に気づいて内部調査を始めながら、9月まで外部に報告、公表を一切しなかった。3日の会見でその理由は明確にされず、どこからどのように感染が広がったのかもよくわからない。対応が遅れる間に被害はじわじわ広がった。
「命を守る病院でこのようなことをして申し訳ない」
会見冒頭、森田茂穂帝京大病院長らはコメントを読み上げると、深々と頭を下げた。
国や東京都などへの報告や対応が遅いのではないかと問われると、森田院長は「現時点では、公表すべきだったと思う」と述べた。
病院や都によると、病院が調査と対策に乗り出したのは、今年4〜5月に約10人の患者から多剤耐性菌が見つかったことがきっかけだった。その調査で2009年8月に第1号の感染者が出ていた可能性が分かった。
10月には、耐性菌との因果関係が否定できない最初の死亡者が出ていた。主治医はこの時点で、抗生剤が効きにくかったことを把握しながら、院内感染対策にあたる感染制御部に報告しなかったという。最初の死亡例では、菌の感受性の検査で「多剤耐性」という結果が出た。しかし、主治医はある抗生剤が効いたため、多剤耐性とは認識しなかったという。
報告がなかったことについて、森田院長は「情報伝達が共有されていないという重大な側面です」と対応の誤りを認めた。
病院では、この多剤耐性菌が見つかった場合は、感染制御部に報告する決まりがある。
都などへの報告や公表が遅れた理由を複数回、問われても、院長らは「申し訳ない」「不備があったと認めざるを得ません」と繰り返すだけだった。一方で「当時、患者さんに百%治療にあたることを念頭においていたため」とも述べた。
また、感染が相次いでいたことを把握していなかったのか、との問いについては、「2月までは月ごとの報告は1とか2、多くて3だったので」と答えるにとどまった。
都などへの報告も遅れた。板橋区保健所や都への報告は、発表前日の今月2日だった。感染した患者への説明も死亡した患者の遺族以外へは「きょうの会見が終わった後」という。
都医療安全課の田中敦子課長は「4月だけで約10人の感染が確認されており、その時点で報告があれば、速やかな対応ができた。7月30日に調査委員会を開いた時点では、明らかに集団感染を認識していたと考えられ、遅くとも、その時点で報告があるべきだった」と話した。
■階を超え感染、経路は不明
感染は15〜17階にある内科系の西病棟を中心に広がった。感染者46人のうち25人が集中する。16階の血液・総合内科と17階の腎臓・総合内科の2病棟で特に多かった。
アシネトバクターは人工呼吸器や点滴の管を介して感染する可能性がある。尿や痰(たん)、膿(うみ)などにも含まれ、トイレが感染原因になることもある。昨年の福岡大病院の例では、人工呼吸器の関連器具の消毒が不十分で菌が残ったのが主な感染源だったほか、血管に入れる細い管や包帯を載せた台車、ベッドなどからも菌が検出された。
帝京大病院の説明では、医師は複数の病棟の患者を受け持つ。こうした医療従事者が感染を媒介した可能性がある。手術の過程で感染した患者がいることや、人工呼吸器周辺から菌が検出されたことも明かした。
都の田中課長は3日の記者会見で、「病院スタッフによって菌が運ばれた可能性は否定できない」。中川原米俊医療政策部長は「感染ルート解明が第一。患者がいるので拡大防止が大事だ」と述べ、感染経路を突き止める姿勢を強調した。そもそも菌がどこから院内に持ち込まれたのかもわかっていない。
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で、お約束の『業務上過失致死容疑を視野に』という話です…
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院内感染、9人死亡 帝京大病院 警視庁聴取へ 4カ月報告せず産経新聞 9月4日(土)7時58分配信 帝京大学医学部付属病院(東京都板橋区)は3日、抗菌薬に耐性を持つ細菌「多剤耐性アシネトバクター」(MRAB)に患者46人が感染し、27人が死亡していたと発表した。死亡例のうち9人に関してはMRAB感染が直接の死因となった可能性があるという。警視庁は安全管理に問題があった疑いがあるとみて、業務上過失致死容疑を視野に医師らから事情を聴く方針を固めた。
[図でみる] 帝京大病院のMRAB感染者分布 同病院は今年5月には院内感染の発生を認識していたが、厚生労働省や東京都などに報告したのは今月2日だった。 厚労省は昨年1月、福岡大病院でMRAB感染が起きたことを受け、感染防止体制の徹底や、国への速やかな報告を医療機関に通知している。 感染患者が転院した際、転院先の病院に当初感染を伝えていなかったケースもあったという。また、8月に国と都が合同で立ち入り検査した際にもMRABには触れなかった。 森田茂穂(しげほ)院長は会見で「このような事態を未然に防ぐことができなかったことをおわびしたい」と謝罪した。 同病院によると、昨年10月、急性大動脈解離などで入院中の76歳の女性が死亡。主治医は女性が細菌に感染し、抗菌薬が効きにくいことも認識していたが、院内感染の対策部署には報告していなかった。 その後も院内では感染者が異なるフロアで散発的に発生。今年4月から5月にかけ、約10人の患者からMRABが検出されたことで、MRABの感染対策や一時的な新規入院の制限などに乗り出した。 感染が確認されたのは、35〜89歳の男女46人で、27人がすでに死亡。うち9人は感染が死亡の原因になった可能性が否定できず、6人は関連が不明。12人は原疾患が死亡原因で、感染との因果関係はないとしている。現在、院内の感染者は9人いるという。 また、MRABに感染した2人が他病院に転院。このうち1人は転院先に感染の事実が伝えられたものの院内感染については伏せられた。もう1人は、転院当初は感染自体が伝えられなかった。 森田院長は報告が遅れた理由を「患者に対する治療に専念していた」と説明。「今までのやり方に不備があったことは認めざるを得ない」と話している。 同病院は高度な先端医療行為を行う特定機能病院の指定などを受けている。 【用語解説】アシネトバクター菌 土壌や水の中、人の皮膚などに広く存在する細菌。健康な人への病原性は低いが、手術後など免疫が低下した状態で人工呼吸器などを介して体内に入ると肺炎などを起こして重症化し、死亡することもある。以前は抗菌薬で治療できたが、欧米でほとんどの薬が効かない多剤耐性菌が登場し、院内感染の原因として注目されるようになった。 ーーーーーーーーーー 今日の読売の社説です…
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院内感染 速やかに情報開示し再発防げ(9月4日付・読売社説)2010年9月4日01時16分 読売新聞
高度医療をになう大学病院で、なぜこれほど大規模な院内感染が起きてしまったのか。
帝京大学医学部付属病院(東京都板橋区)は3日、がんなど重病で入院していた患者46人が、ほとんどの抗生物質が効かない多剤耐性の「アシネトバクター」と呼ばれる細菌に感染していた、と発表した。
感染者のうち27人が亡くなっており、この中の9人は感染が死因につながった可能性を否定できない、という。
犠牲者9人とすれば、2000年に大阪で、02年に東京で、いずれもセラチア菌の院内感染で犠牲者が出たケースを上回り、近年では例のない被害である。
帝京大は、今年4〜5月に感染者が増加したため、調査委員会を設置して調べていたという。保健所へ届け出たのは、今月2日だった。あまりにも遅すぎる。
アシネトバクター自体はどこにでもいる細菌で、健康な人が感染しても影響はない。だが、重症患者など抵抗力が衰えている人が感染すると、肺炎や敗血症などを起こすことがある。
福岡市の福岡大病院でも23人が感染したことが、昨年1月に判明している。多剤耐性アシネトバクターによる大規模感染はこれが国内初の事例で、厚生労働省は注意を呼びかけていた。
高度医療機関には抵抗力の弱い重症患者が集まるため、ひとたび院内感染が起きれば、取り返しのつかないことになる。
今回の帝京大病院の場合は、どのような経路で感染が広がったのか。公表が遅れたのはなぜか。
大学病院などには院内感染担当者の配置が義務づけられているはずだが、そこに油断や落ち度はなかったのか。
帝京大は調査委による独自の調査結果をもとに、こうした疑問に答えなければならない。厚労省と東京都も、徹底した調査で事実関係を究明すべきだ。
院内感染は、どんなに警戒しても完全には防ぎきれないことも事実である。治療で抗生物質が多用されていることで、新たな耐性菌を生み出してもいる。
多剤耐性アシネトバクターは、まだ国内の感染報告は少ない。しかし、別の多剤耐性菌による院内感染は多数発生している。
拡大を防ぐには、早期発見と迅速な対応が欠かせない。そのためには、全国規模の監視体制を強化するとともに、医療機関は感染の事実はすばやく開示し、発生情報を共有しなければならない。
ーーーーーーーーーー 医学の歴史は、抗生物質の開発と、耐性菌の出現との闘いでもあります。 もちろん、帝京大学病院の対応にも大いに問題がありますが、
帝京大学病院をバッシングするだけでは、問題は解決できません。
極論すれば、院内感染が起きた時点で、病棟(病院)を閉鎖し職員を隔離すれば、
それ以上の蔓延は防げますが、多くの患者さんが困りますし、病院が潰れるかもしれません。
こういう「不幸な経験」を基に十分な検討を重ねることにより、「適切な安全管理」が可能となるのです。
故意にアシネトバクターを院内感染させた人物はいない(ハズ)だから、誰かを『業務上過失致死』で処罰しても問題の解決には繋がらないはずです。
警察に「捜査するな」と言う権限は、われわれにはありませんし、
故意犯の可能性はゼロではないですので… |
<新型インフル>タミフル早期投与が低死亡率に寄与毎日新聞 9月3日(金)7時32分配信 昨年大流行した新型インフルエンザ(H1N1)で、日本の感染者の死亡率が他国に比べて大幅に低かった原因は治療薬の早期投与とする分析を慶応大病院小児科とけいゆう病院(横浜市)がまとめた。香港で始まったインフルエンザ国際会議で3日、発表する。
両病院は09年6月〜10年1月に入院した1000人の子ども(平均6.4歳)を調べた。それによると、死亡したのは1人で致死率は0.1%、約98%(984人)がタミフルなどの治療薬を使用。このうち発症時期が分かった667人のうち約89%(593人)が投与期間とされる発症48時間以内に処方されていた。米国やアルゼンチンでも患者の8割近くが治療薬を使用しているが、48時間以内の処置は5割以下、致死率は5〜7%というデータがある。【関東晋慈】 ーーーーーーーーーーーー
新型インフル、早期投薬で死亡率に差 横浜の医師ら結論2010年9月3日5時2分 朝日新聞
新型の豚インフルエンザによる日本の死亡率が世界的に極めて低かったのは、48時間以内に治療を受けた患者が多かったためだ。けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫医師らのチームが国内で1千人の小児患者を分析してこう結論づけた。3日から香港で開かれるインフル対策の国際会議で発表する。
昨年6月から今年1月までに国内25病院に入院した小児の1千人分(平均年齢6.4歳)を調べた。亡くなったのは1人。症状は65%が息ができなくなるなどの呼吸器障害で、26%が脳症やけいれんなどの神経に障害が出るものだった。9%は脱水症状。
ほぼ全員の984人が抗ウイルス薬を飲んでいた。症状が出てから抗ウイルス薬を飲むまでの時間がわかった667人では、48時間以内に薬を飲んでいたのは89%だった。このうち29%が12時間以内、38%が12〜24時間以内と、さらに早い時期に飲んでいた。
米国では48時間以内は39〜51%にとどまった。抗ウイルス薬を飲んでいた小児の割合自体も75〜79%と低かった。アルゼンチンは48時間以内が12〜13%だった。
子どもから大人までの全体の死者数は米国が推計約1万2千人に対し日本は約200人と少ない。厚生労働省によると、人口10万人あたりの死亡率は、米国3.96(推計)、カナダ1.32、メキシコ1.05。日本0.16だった。
菅谷さんは「医療水準が変わらない米国などでは薬を飲み始めるのが発症から何日もたってからという例が少なくない。死亡率の差は薬を飲む時期が早かったとしか考えられない」と話している。(熊井洋美)
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相変わらず、新型インフルエンザウイルスの流行はありませんが、
昨年の流行の総括の発表があったようです。
ただ、次回の流行時もここまでタミフルが有効とは限りませんので、
まずはワクチン接種を受けるべきでしょうね。
ちなみに副作用はこんな感じだったようです。
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新型インフルワクチン、副作用1万人に1人2010年8月26日10時55分 読売新聞
厚生労働省の検討会は25日、昨シーズンの新型インフルエンザワクチンについて、副作用の傾向や頻度は通常の季節性インフルエンザワクチンと大差なかったと結論付けた。
ただ、重い持病のある高齢者などでは直接の因果関係は認められなかったが、死亡例の報告もあったため、今年10月からのワクチン接種でも、注意を呼びかける。
新型ワクチンの推定接種者数は約2200万人。副作用は計2433人分報告され、このうち重い症状は417人分だった。季節性ワクチンと副作用の報告方法が異なるため、単純に比較はできないが、大きな違いはなかったという。
また、接種後の死亡例が133例報告されたが、接種と直接の因果関係が認められた例はなかった。
今年10月からは新型に加え、季節性のA香港型、B型を含む3種混合ワクチンの接種が始まる。国内メーカーは約5800万回分を生産する見込み。
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