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さて、1日に2本連続で見たDVDの2本目は・・・・ D:黒澤明 A:三船敏郎、仲代達也、三橋達也、山崎努 あらすじ:ナショナルシューズの重役・権藤は、他の重役たちと権力闘争の瀬戸際にあった。その時、彼の息子とを誘拐したという電話が入る。すぐにその誘拐は、息子ではなく、息子と遊んでいた運転手の息子が間違われたことが発覚するが、犯人はそれでも同様の金を要求した。権藤は、自分の窮地との板挟みになるが、金を払うことを決意する。そして特急第二こだまで、その受けわたしが行われることになるが、犯人側は、まんまと警察の裏をかいて成功した。子供は無事に戻ったものの、権藤は重役の地位を追われ、犯人は捕まらない。さて警察は犯人を追いつめることができるのか。 1963年作品。この映画が封切らてすぐに「吉展ちゃん誘拐事件」も発生しており、当時の世相もビビッドに反映されている。 ■や〜、すごいな。 脚本も映像も、計算尽くされているというか・・・・たとえば、冒頭から身代金受けわたしのこだまのシーンまで、ほぼ3分の1以上だろうか、ずっと権藤家のリビングが舞台で、カメラはほとんど外に出ないなんて! その限定された空間で、権藤の置かれている立場、仕事および家族関係、誘拐事件発生、その間違いの発覚、警察の動き、警察官たちの権藤家への印象やその変化まで、手に取るように浮かび上がるし、その緊張感のすごさ! 見ているほうも、役者の表情どれ一つとして見過ごせないほど、画面にくぎ付けになってしまった。 そうした緊張感は、かの有名な特急列車での受け渡しシーン(これは本番1回限りの撮影だったという)などにも表れているし、また、リビングから列車の場面への転換や、犯人の暗い狭い部屋の窓から権藤家を見上げる図などの、場面展開や構図の巧妙さにも衝撃を受けた。 ■本当にこの映画には、見どころが多い。 警察の捜査会議の場面なども、たんなる警察の捜査手法というだけでなく、この場面で、観客に犯人に結びつく手がかりが開陳されることによって、その後観客自身も推理に参加できるという、ミステリーのだいご味を一気に味わうことができる仕掛けになっているのだ。 こうした場面の積み重ねがあるからこそ、ラスト近くの警察の追跡シーンがいやがおうにも盛り上がっていく。 その過程で、犯人が偶然権藤を見かけ、たばこの火を借りるシーンがあるが、これも心憎い。 そして、犯人の逮捕の場面では、花が咲いて、善悪、陰陽を際立たせるという、黒澤お得意の対照法だ。 また、ラスト場面も、印象深い。 実は、それまで犯人(山崎努)は何度も姿を出し、そのいら立ちなども表現しているのだが、声に関しては、誘拐の電話以外には、直接発していないのだ。 ところが、死刑判決を受けて権藤に面会する最後の最後に、はじめてその体から声を発するため、その説得力は重い。 そこで犯人は、強がって自己正当化しようとする言葉しか発しない。 しかし、体はそれを裏切って震え始める・・・その様子をじっと見る権藤。 これだけで一つの人間ドラマになるようなシーンだ。そして、権藤の目の前で、面会終了を意味するシャッターが降りて、この映画も終わるのだ・・・。 ■他にも、ひとつひとつのシーンを再現したくなるほど、濃密で完成されたシーンの連続だったと思う。 役者もよかった。運転手の青木役が、ちょっと大根だったけど(まあ、それゆえ、この青木に感情移入できなかったのが、逆にドラマの焦点を明確にしたので、けがの光明かな・・・。 有能かつ情熱も併せ持つ刑事の仲代達也も、その相棒でちょっと柄は悪いが有能なはげでメタボな刑事役の人も、権力に弱く自分のことしか考えない部下の三橋達也も、自らの境遇に理不尽ないらだちを感じて八つ当たり的な思いを育ててるインターン&犯人の山崎努も、みな、よかった。 一人ひとりが生き生きしていたなぁ〜。 ただし、主役・三船敏郎について一言。 もちろん、彼の演技は、この映画でも、その豪快さと人間味が絶妙であり、画面にいるだけですごい存在感をかもしだしてた。そしてその存在こそ、この役にはぴったりだと思った。 しかしそれって、逆に、三船には主役以外にはできないのではないか、という気もしてきた。 本当に、三船敏郎って、不世出の役者だったんだと思うし、黒澤映画も彼なしには大成しなかったのかもしれない。でも、だからこそ、黒澤と袂を分かったんだろうとも思う。 その意味では、この映画は、三船敏郎の存在感とそれゆえの業にも、つい思いを巡らせてしまうほど、彼の魅力も全開になっている作品であった。 ■確かにこの映画は、思弁的・思索的な作品ではなく、むしろ、娯楽大作だ。 しかし、人間の行動がしっかり描かれているから、自分もその場面に実際に置かれているような感じになってしまうほどの説得力にあふれている。 そのうえ、推理の道筋もしっかり&緊張感あふれる話運びで、どうあの犯人にたどり着き、どのように逮捕するのか、という意味でのミステリー的な要素もきちんと森子と揉まれているのだ。 娯楽映画って、こういうものをいうんじゃないだろうか。 娯楽作品だからこそ、手を抜かないでほしいのに・・・。見終わって、昨今の映画のふがいなさが逆に際立ってしまったようで、この映画の感想とは別の次元で、がっかり、という思いも生まれてしまった。 邦画が最近ひどいという話はよく聞くけど、洋画でも、これほど作りこんだ作品って、そうお目にかかれないよなぁ。 ■というわけで、きっとこの映画を語ろうと思ったら、それこそ何日もかかってしまうほど、見ごたえのある映画だし、とにかく面白い! きっとこういう映画を見ると、映画を見る目だけでなく、人生の「天国と地獄」とは何か等々、基本的な何かも学べる気がするんだが・・・とにかく一人でも多くの人に見てもらいたい映画である。
143分、ちょっと長いかもしれないが、じっくり見てはいかが? (私も、もう一度見てみることにしよう!) |

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はじめまして。
この映画、娯楽大作でありながら、
いろいろな教訓を含んだ、まさに黒澤映画の真骨頂でしょうね。
私は、何回も観ました。
TBさせてください。
2010/7/5(月) 午前 8:55
猫さん様、ご訪問&コメント&TB、どうもありがとうございました。
この映画って、本当に様々な要素が詰まっていますよね。しかも、難しげな作品でなく、堂々の娯楽作品。時代背景のある事件モノなのに、今見ても全然古びていないし。
私も、また近々見てみたいと思っています・・・・というより、今後も何度も見そうなので、DVDを購入しようかなぁ。
2010/7/5(月) 午後 4:27