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今年の春、体調崩してブログを中断。そのあと、母の死もあって、映画やDVDを見ることが極端に減ってしまったが、それでも何本かは鑑賞していた。
たとえば、≪第9地区≫や≪永遠の子供たち≫とか。
でも、レビューを書かずにそのままにしていたのは、今から思うとちょっと残念。
と言うわけで、久しぶりに先日みた映画のレビューを、久しぶりに少しだけ書いてみることにした。
さて見た映画は、
≪インセプション≫
D:クリストファー・ノーラン
A:ディカプリオ、渡辺謙、トム・ハーディ、マリオン・コティヤール、キリアン・マーフィ、エレン・ペイジ等々
あらすじ:他人の夢の中に侵入し、アイデアを抜きとる商売をしているコブ(ディカプリオ)。ある日、サイト―(渡辺謙)の夢に侵入し失敗するが、逆に彼から依頼を受ける。その依頼とは、ライバルの大企業の会長の息子の夢に侵入し、彼の父から引き継ぐ会社を分割するというアイデアを植えつける(インセプト)すること。
アイデアを盗むのではなく、インセプトするのは不可能ともいわれていたが、コブは、引き離された子供たちに会いたいがために、その依頼を引き受け、早速チームを作り、3層の夢の世界を作り上げる計画を練り上げ、いよいよ実行に取り掛かる。しかし、コブには自らの夢に妻の幻影が付きまとうという問題を抱えていた。さて、その問題を抱えながらも、夢に深く潜り、インセプトに成功することができるか?!
■たしか2時間半近くの大作だったけど、あっという間に感じたほど、集中して見てしまった。
途中、アクションシーン等、若干だれることはあったにしろ(ノーラン監督は、アクションの撮り方がうまくないと思う)、話運びが絶妙で、次の展開がどうなるのか、ついつい見入ってしまった。
とはいえ、このことは、「話運び」のうまさであって、「話」それ自体のうまさに直結はしないようにも思う。
実は、映画を見ながら、ひっかかるところは少なからずあった。でも、話運びが巧みなので、それらは一応置いておきながら最後までみてしまったのだが、見終わってみると、その引っかかりを思い出してしまい、釈然としない部分も少なくない映画なのだ。
■しかし、この映画が一見の価値のあるものであることは、間違いない。
まずは、階層的な構造を持つ夢というアイデアだ。
その階層性、そして夢の共有という仕掛けをフルに使った「話運び」のうまさは、この映画の肝になっていると言ってもいいだろう。
夢の映像化も、また素晴らしい。
もちろん、夢って、こんなにクリアではないという見方もあるかもしれないが、この映画での夢とは、単なる夢ではなく、実は現実以上に豊富な情報量をもつ夢の可能性に注目し、その可能性を極限に追求して構築した「夢の世界」であるとみなしたほうがよいだろう。
つまり、この映画は、そうした夢の力を現実での生活以上に重視している世界での出来ごとなのだ(会長の息子が、夢への侵入からプロテクトする訓練を受けているような世界なのだ)。
■というわけでこの映画も、夢と現実のどちらがリアルなのか、現実に生きることと夢に生きることとの、どこに違いがあるのか、そもそも生きるとは何か、現実でも夢でもリアルに感じたほうが生きるべき場なのではないか等々、ノーランらしいテーマがぷんぷんする映画であり、その点は面白かったのだが、どうも、そうしたテーマそのものが十分に追求されていたというよりは、むしろ、夢の構造の面白さや映像化の妙などに、力点が置かれてしまったような気がする。
簡単にいってしまえば、エンターテイメント性に引きずられてしまったというか・・・。
そしてこのことが、先にも述べたように、ストーリーの詰めやキャラ設定等に引っかかりを感じてしまうことにつながっているように思われるのだ。
■たとえば、渡辺謙の役サイト―。
彼の実態は、実は不明なのだが、かなりの大物ということになっている。しかし、そんな大物が、コブの仕事の現場に同行するだろうか?
そして、そもそも渡辺謙のたたずまいや演技(肩幅狭くて貧相・・・)には、あまり大物感が感じられず説得力に欠けるので、私は彼が出てくると、ちょっと集中力がそがれてしまった。
また、そもそもインセプションなどという不可能に近い任務の依頼目的が、企業の解体なんて・・・。
いや、企業の解体それ自体が問題なのではなく、もしそうであれば、他の方法をとったほうが、より確実で、しかも安上がりだったのでは?とも思った
それに、インセプトするアイデアのもとになるのが、父・息子の確執だなんて・・・・。それならば、もっと確実に、息子をたらしこむ技はいくらでもあるだろう。
つまり、夢へのインセプションという「大技」の枠となる物語が、あまりにもチャチで、ときどきふと我に返ると、あれ?という疑問が出てくるのを抑えきれず、集中力がときたま阻害されてしまうのだ。
こんな問題、誰もが指摘できそうな点なのだから、なぜノーランは放置したんだろう?
映画は、枠がしっかりしてこそ、見ごたえがあるというのに・・・。
(まあ、映画ラストの解釈と関連して、「すべてがまだ夢の中」「結局は子供を取り戻したいが故のコブの夢の構築」という見方をすれば、こうした疑問も吹っ飛ぶかもしれないが、それはどうかな〜)
■とはいえ、夢の階層化や、2層目の夢の中での浮遊シーンなど(3層目の雪山シーンはあまり面白くなかったなぁ)、今でも時折ふと思い出してしまうシーンもあり、特に大画面で見ると、後を引くかもしれない。
その意味では、みて損はない映画と思う。
ディカプリオや渡辺謙の演技はちょっと首をひねる部分はあったが、他の役者はいい。特にトム・ハーディと、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットの二人はいい。
(私の好きなキリアン・マーフィは、相当演技を抑えていたような・・・)
話運びも、意外とシンプルで丁寧だったので、映画好きな方は、一度ご覧になってください。
あと、ハンス・ジマーの音楽が、ムードを高めてくれます!
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