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長い、堅苦しい文章ですみません。
地方私立高校教師のホンネにお付き合いくださりありがとうございます。
一見遠回りをしておりますが、今の高校教育をめぐる
環境を大まかに眺めています。
長い文章が嫌という方は、最初の(まとめ)だけ
読んでくださる形でも参考になるかと思います。
よろしければ、お付き合いください。
(第二回まとめ)
・都市部以外の地域では原則公立高校が優位=高偏差値
地方では、公立が第一志望・私立は滑り止めになりがち
・都市部では私立高校が優位になり、公立高校が後手にまわることも
・こうした状況の中で大学合格実績を何とかしようとした
高校では授業時数を増やそうとして未履修問題が起こる
・こうした状況の中でセンター試験利用方式の大学受験が増加
大学と高校の利害が一致し、構造的に合格者水増しが起こる
前回に見たように、特に地方では学費の安い公立に人気が集まりやすい。
つまり、高偏差値高校は公立、私立はその滑り止めといった
構図になりやすいわけです。
(もし例外的に人気のある私立があれば、それは
その学校にしかない価値があり、ブランドが成立しているからです)
一方、都市部では階層分化が進み、高収入層は私立の高い学費を
負担してでも、公立よりクオリティの高い教育を求める親が
増えてきます。(反面教育にお金をかけられない下位層も出てきます)
ここから授業料の割高な私立が優位に立てる雰囲気ができます。
公立の小中学校の授業崩壊が、高収入層の私立学校選択に拍車をかけます。
こうして地方と違い、学力面で私立優位の構図が
都市部では生じやすくなります。
一方で上位層に選ばれない公立は、私立の下に甘んじることになります。
こうした競争の中で生じた、地方の私立や都市部の公立など
下位になった高校はどうやって
この入学者の学力差というハンデを克服するか。
一つには、授業時間を増やす、ということが挙げられます。
こうして起こった問題が、例の未履修問題です。
指導要領に定められた時間数では、社会などの科目は
終わりません。これは学力が最高に高い中核校ですら終わらない量です。
低学力の高校にとってはなおのこと、です。
ここから時間が足りないのなら受験に必要ない教科の時間を削り、
その分を受験科目に充てる。さらに授業のコマ数を増やす。
放課後も補修する。朝早くに補修をする。
土曜も補修する。夏休みなど長期休みも補修する…
こうして学力が低い分、授業に時間をかけて丁寧に教えることで
ハンデを克服し、出口の大学合格数などを少しでも
良くしようとするのです。
しかし、それでもなかなか思うような結果は出ません。
他の高校も同じような努力をしているからです。
そこでどうするか。ここでいんちき臭い手が使われます。
併願が可能で、一人で複数回受験し、複数合格が可能な
有名私立大学を優秀な生徒に受験させ、その分を受験合格者にカウントし
大学合格者を実質水増ししてしまおう、となるわけです。
この水増し問題は、高校だけでなく大学にも責任のある問題です。
制度的に水増しできる受験方式を私立大学が認めるようになったからです。
私立大学にとって、入学者だけでなく受験者も減るのは死活問題です。
受験者が払う一人あたり数万円の受験料も
収入として当てにした経営をしてきており、
もしこれが減少すると経営に大きな影響を与えるからです。
こうした受験料減収を何とかするために
行なわれたのがセンター試験利用方式。
昔共通一次といわれた、国公立一次試験用の
試験結果データ(※センター試験は全問選択式マーク問題です)
だけを利用して私立大学も試験を実施するのです。
(もちろんこれまでどおりの形式の一般入試も実施するのです)
こうしてセンター試験の結果だけで合否を出すことで、
私立大学はほとんど手間をかけずに受験料2万円弱を稼げる訳です。
(センター試験の結果は大学側が求めると開示されるので、
データベースにアクセスするだけで合否判定が出来るわけです)
この形式を遣うと、1月中旬に行なわれるセンター試験一回で
好成績を収めれば、その成績で複数大学に出願でき、
出願するだけで合格することが出来るのです。
つまり、大学まで受験に行き、その大学オリジナルの問題を
解かなくていい。受験生にとって、勉強の負担、宿泊費などの経費負担、
さらに時間的な制約(受験日が重なって受験できない、など)から
解放される便利な受験方法になります。
受験料と書類を送るだけで、いくらでも併願が可能。
こうなると、センター試験で優秀な成績さえ収めれば、
あとは受験料と書類を送るだけで、有名私立大学の
合格通知をコレクションすることが可能になります。
例の大学合格者水増し事件でも、利用されたのは例外なく
このセンター試験利用形式の有名私立大学受験です。
(高校によっては、大学に払う受験料を学校が負担し、
学校が生徒にお願いして書類を出させる、ということもやっています。
とにかくなりふりかまわず合格者数が欲しいわけですね)
大学側は、少子化の中減る受験料収入を、簡単に補いたい。
高校側は、少しでも合格実績を増やし、次年度の生徒募集で
少しでも優秀な生徒が集まる高校にしたい。
こうした利害が一致して、センター試験利用方式での
合格者水増しが成立するわけです。
ばれなきゃ今後も続けたかった…こう思っているのは
高校だけでなく大学も同じはずです。共犯関係ですね。
ここまで見てお分かりになるとおり、高校も大学も
教育機関であるとともに、経営を求められる状況になっているのが
お分かりになると思います。
経営はどうしても黒字・赤字の別を生み、
赤字の学校は工夫して黒字転換しないと、倒産…。
つまり勤めている教員は失業することになるので、
とにかく黒字化←生徒増←卒業後の進路の実績アップの努力を
求められるようになるわけです。
こうした状況下では、高校も大学も、受験者に対しては
「営業的」な対応をするようになり、さかんに
説明会やHPや雑誌などで宣伝を行なうようになっています。
あの東大や京大ですら、私立大学と共同で受験説明会を
行なう御時世です。明らかに時代は変わってきています。
次回以降では、こうした学校の「宣伝」をどうやって
正確に読み解くか。こういった話をしていこうと思います。
長くなりますが、お付き合いください。
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