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こんかいは、企業の人事などからの相談が多い」問題です。
フレックスタイム制の制度説明に関しては厚生労働省のパンフレット「フレックスタイム制の適正な導入のために」をご覧下さい。同パンフレットにもQ & Aが設けられていますので、ここではそれ以外の問題について記載します。
コアタイムが設けられているフレックスタイム制では問題になりませんが、コアタイムが
設定されていない場合には所定休日以外に欠勤する場合がでてきます。この欠勤日は有給
休暇や所定休日とは性格を異にしますが、外形的には見分けが付きません。このような欠
勤をそのまま認めることもできますが、社内的に様々な問題があるということで、労働者
の意志に基づいて振替休日を活用するのも一つの方法です。
労基法第39条7項では「…就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それ
ぞれ、平均賃金もしくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」を支払うか
又は「…労働者の過半数代表者(労働組合が過半数を組織している場合はその組合)との書面
による協定により……健康保険法第99条第1項に定める標準報酬日額」を支払うと定めています。
以上説明したとおり有給休暇に支払われる賃金には3種類の支払い方が認められています。
しかし、多くの事業所では所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払っている
ものと思われます。それは、所定労働時間働いたことにして支払った方がイチイチその都 度計算
しなくて済み、計算に要する人件費を節約できる上に労働者のウケもいいからです。
しかし、フレックスタイムでは各日の労働時間は労働者自身で決めているので所定労働時間
をどう見るかという問題が生じます。
ところで、フレックスタイム制では労使協定で定める事項の一つに「標準となる1日の
労働時間」があります。フレックスタイム制で働く労働者が有給休暇を取得した場合には、
「…標準となる1日の労働時間労働したものとして取り扱うこととする。」とされています。
(平成9年3月25日基発第195号)
フレックスタイム制では労使協定によって清算期間内(通常は1ヶ月間)の総所定労働時間
が決まっています。日々の所定労働時間は決まっていません。日々の労働時間は労働者が
自分で決定します。労働者は1ヶ月の総所定労働 時間を目標に働きますが、その総所定労働
時間を超過して働いた場合には、その超過した時 間が時間外労働時間となります。
時間外労働が全く無いというのは少ないとは思いますが、仮に清算期間の総所定労働時間に
満たない場合には欠勤控除規定によって賃金控除するっことになります。従って、欠勤控除
規定を整備しておく必要があります。
不足時間を次期清算期間へ繰り越し、次期清算期間の総所定労働時間に上乗せすることは可
能ですが、上乗せ分を加えた次期清算期間の労働時間が法定労働時間の枠内である必要があ
ります。労使協定で決まっている次期清算期間の総所定労働時間が法定労働時間枠いっぱい
の場合には繰越しはできません。
実際に働いた時間が清算期間の総所定労働時間に満たない場合に満たない時間を翌清算機関
に上乗せしたとします。その場合、所定労働時間に満たない期間の賃金は過払いとなりますが、
繰り越された次期清算機関で清算される結果になります。
【参考】 その期間を平均し1週間あたりの労働時間が第32条1項の労働時間を超えない範囲内において労働
させる期間。
フレックスタイム制の下で労働する労働者が有給休暇を取得した時は、ここで定めた時間労働
したものとされる。
清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間数が時間外労働時間数となる。
(労使協定で決定している清算期間における総労働時間数とは異なるので注意が必要)
労使協定の総労働時間数が法定労働時間の総枠を下回っている場合には、労使協定の
総労働時間数を超え法定労働時間の総枠までの時間数は法定内時間外労働として割増
し無しの賃金を支払わなければならない。
【法定労働時間の総枠の計算式】
A;清算期間における法定労働時間の総枠
B;週の法定労働時間(原則として40時間、例外として44時間がある。)
C;清算期間における暦日数(清算期間が1ヶ月の場合には29日〜31日)
A=B×C÷7 この計算式によって清算期間1ヶ月、週の法定内40時間の場合
法定労働時間の総枠は次のようになる。
算式によって計算した法定労働時間の総枠結果は下のとおりです。
(但し、1週間の法定労働時間が40時間、清算期間が1ヶ月の場合)
結論から言うと賃金カットはできないということになります。
フレックスタイム制では始業・終業時刻を労働者が決定するので遅刻はあり得ない
ことになる。
ではコアタイムに遅刻した場合にはどうか。
結論から言うと賃金カットはできないことになります。
コアタイムに遅刻したとしても清算期間の労使協定で決定した総労働時間を働いている
場合にはカットすることができないことになるからです。
但し、コアタイムに遅刻した場合には就業規則の制裁規定によって労基法第91条の制限
の範囲内でカットすることは可能です。
かたい話になるが、始業時間・終業時刻は労働者が決定するのがフレックスタイムなの
で、労働者の同意を得て出席をしてもらう、出張してもらうということになります。
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賃金関係・労働時間
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休業手当(労基法26条)に関する諸問題
使用者の責めに帰すべき休業とは
(休業手当) 判例では使用者の責めに帰すべき事由を使用者の故意過失に限らず広く認める傾向にある。使用者の責めに帰すべき事由には使用者側に起因する経営管理上の障害であって、使用者として不可抗力を主張しえない全ての場合が含まれる。 最高裁第二小法廷判決 ノースウエスト航空事件昭和62年7月17日 この点については「日通名古屋製鉄作業事件 平3.7.22 名古屋地裁判決」が参考になる。懲戒処分が決められるまでの調査期間の自宅待機命令は通常は使用者の都合と解され「使用者の責めに帰すべき事由」となる。使用者が休業手当の支払義務を免れるためには、当該労働者を就労させないことにつき、不正行為の再発、証拠湮滅のおそれなどの緊急かつ合理的な理由が存するか、又はこれを実質的な出勤停止処分に転化させる懲戒規定上の根拠が存在することを要するとしている。また、出勤停止が懲戒処分として行われたのであればその他の処分はできなくなる。詳しくは判決の概要を上にリンクさせてあるので読んで欲しい。
このような就業規則に基づいて行われた自宅待機期間についても原則として休業手当の支払いは免れない。懲戒処分前の自宅謹慎でさえ原則として休業手当の支払いが必要なのである。成績不良者の自宅待機は当然に休業手当の支払い対象となる。 最近、この種の就業規則の規定で被害を受ける労働者がでてきた。さすがに自宅待機は懲戒処分としては行われていない。使用者の眼鏡に適わない労働者を退職に追い込むために利用されることが多い。自宅待機命令自体が使用者の権利の濫用であることが多い。
労働安全衛生法66条の規定によって使用者には健康診断が義務付けられている。この健康診断の結果に基づいて行われる休業や時間短縮については使用者の責めに帰すべき事由とはならないので原則として休業手当の支払い義務は生じない。これについての通達を以下に紹介する。 昭和23年10月21日基発1529号昭和63年3月14日基発150号もっとも、大企業においては私傷病による病欠について賃金控除を行わないところもある。このような、就業規則や慣例がある場合には私傷病だからといって賃金カットすることは不当な不利益変更にあたる。また、病気による休職に対して共済組合等から賃金に代わる手当が支給されるところもある。 最近、問題になるのは「業務に耐え得ないと使用者が判断した場合には休業を命ずることがある。」との就業規則の規定である。これは上の通達に照らせば休業手当の支給をしなければならないケースに相当する可能性が高い。
3.11でこのケースが沢山生じた。勿論、使用者の責めに帰すべき事由には当たらないので法26条の休業手当の支給義務は無いが、慣例的にこのような場合で無賃金を支払っている企業の場合には不利益変更になる可能性がある。派遣社員が派遣先の休業に伴って休んでも派遣元が雇用主であるために一概に使用者の責めに帰すべき事由でではないとは言い切れないこともある。意外とケースバイケースで複雑だった。3.11に関して厚労省のだしたQ&Aがあるから参考にして頂きたい。 民報536条2項によれば労働者は賃金の全額の請求権があることになるが、この点について昭和22年12月15日の通達(基発502号)では次のように説明している。
昭和22年12月15日基発502号 使用者の責めに帰すべき休業期間中の休日については休業手当の支払い義務は無い。この点について昭和24年3月22日の通達(基収4077号)は次のように説明している。
昭和24年3月22日基収4077号 |
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平均賃金の基本的算出方法
平均賃金についての定めは労基法12条と同法施行規則2条〜4条にあある。
《算定期間の起算日について》
賃金の締切日がある場合の起算日
《算定期間中の以下の期間とその間の賃金を除外する》
算定期間の3ヶ月の中に以下の期間がある場合には、その日数とその期間中の賃金を控除して平均賃金を算出する。(労基法12条3項)この期間を除外しないと平均賃金が不当に低くなるために規定されている。
※上の「使用者の責に帰すべき事由による休業期間」については労基法26条により事業主から休業手当が支払われるが、平均賃金の算出の際には、その期間と休業手当の両方を除外して算出する。
【参考】
懲戒処分による出勤停止期間 |
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事業主が給与明細書を発行しなければならない法的理由
事業主が労働者に給与明細書を発行し渡さなければならないのは、理屈など不要で社会通念上の常識だと思う。残念ながら当然発行されるべき給与明細書が発行されないとの訴えは意外と多いのが現実である。法的な裏付けを知っても、はじめから遵法精神の乏しい事業主には効き目が無いかも知れないが、役立つ場合もあるので解説することにした。
まず、所得税法の231条がありその第1項で「居住者に対し国内において給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その給与等、退職手当等又は公的年金等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。」と定めている。
次に「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」というものがあり労働者の賃金から控除した保険料の明細書の作成と交付を義務付けている。労働保険には労災保険と雇用保険があるが労災保険は事業主が100%負担するので明細書の作成は雇用保険料ということになる。
また、健康保険法で被保険者である従業員の賃金から控除した保険料の明細書を渡すよう規定している。
更に、厚生年金保険法にも同様の規定がある。
加えて、所得税に関しては所得税法226条により源泉徴収票の交付が事業主に義務付けられています。在職者に関しては翌年の1月末までに、中途退職者に対しては退職日以降1カ月以内に交付することが義務つけられている。事業主が何らかの理由で源泉徴収票を発行しない場合には居住地を管轄する税務署に対して源泉徴収票不交付の届け出をすることができます。
労働基準法では労働基準局長名で発せられる通達(平成10年9月10日付け基発530号)で振り込みの対象となっている労働者に対して計算書を交付することを義務つけている。なお、この通達は給与が振り込まれた場合について規定しているが、手渡し等他の方法で支払われる場合も準用されるべきものと考える。
第1項 居住者に対し国内において給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その給与等、退職手当等又は公的年金等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。
第2項 前項の給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、同項の規定による給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者の承諾を得て、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者の請求があるときは、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書を当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者に交付しなければならない。
第3項 前項本文の場合において、同項の給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、第一項の給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書を交付したものとみなす。 「事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、前条第1項又は第3項の規定による被保険者の負担すべき額に相当する額を当該被保険者に支払う賃金から控除することができる。この場合において、事業主は、労働保険料控除に関する計算書を作成し、その控除額を当該被保険者に知らせなければならない。」
(保険料の源泉控除) 第167条 第1項 事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。 第2項 事業主は、被保険者に対して通貨をもって賞与を支払う場合においては、被保険者の負担すべき標準賞与額に係る保険料に相当する額を当該賞与から控除することができる。 第3項 事業主は、前二項の規定によって保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。 (保険料の源泉控除) 第84条 第1項 事業主は、被保険者に対して通貨をもつて報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所又は船舶に使用されなくなつた場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。 第2項 事業主は、被保険者に対して通貨をもつて賞与を支払う場合においては、被保険者の負担すべき標準賞与額に係る保険料に相当する額を当該賞与から控除することができる。 第3項 事業主は、前二項の規定によつて保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。 使用者は、口座振り込み等の対象となっている個々の労働者に対し、所定の賃金支払い日に、次に記載する賃金等を記載した賃金の支払いに関する計算書を交付すること。
(1)基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額
(2)源泉徴収税額、労働者が負担すべき社会保険料額等賃金から控除した金額がある場合には、事項ごとにその金額
(3)口座振込等を行った金額 |
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賃金控除に関する過半数代表者との書面による協定
労基法24条では賃金から控除できるものとして法令で別段の定めがある場合と事業上の過半数代表者との書面による協定がある場合の二つを挙げている。また、裁判の判例では労働者の同意のあるものについても控除できるとされている。
過半数代表者との書面による協定がある場合であるが、控除する項目について法令上の制限はないが「その他必要なもの」等曖昧な協定書のでは認められない。労使協定さえあれば何でも控除できるわけではない。その点については次に示す【参考資料】を参考にしてください。
【参考資料】労働基準法解釈総覧改定14版P255から また、控除額の限度については労基法上は定められていないが、控除目的が差押えの場合には限度が設けられている。この点について労働基準局長が疑義に答えて発する通達(基収)で以下のように説明されている。
【参考資料】労働基準法解釈総覧改定14版P256から上の参考資料で民法第510条、民事執行法第152条については、差し押さえの場合の控除額制限なので、通常の控除では限度がないということになる。 |





